パック (衛星)

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パック
Puck
ボイジャー2号が撮影したパック
ボイジャー2号が撮影したパック
仮符号・別名 Uranus XV
S/1985 U 1
視等級 (V) 20.5[1]
分類 天王星の衛星
発見
発見日 1985年12月30日[2]
発見者 ボイジャー2号
S・P・シノット[2]
(ボイジャー撮像チーム)
軌道要素と性質
平均公転半径 86,004.444 ± 0.064 km[3]
離心率 (e) 0.00012 ± 0.000061[3]
公転周期 (P) 0.76183287 日[3]
軌道傾斜角 (i) 0.31921°[3]
(天王星の赤道に対して)
近日点引数 (ω) 177.094°[4]
昇交点黄経 (Ω) 268.734°[4]
平均近点角 (M) 245.796°[4]
天王星の衛星
物理的性質
平均半径 81 ± 2 km[5]
表面積 82,447.96 km2[6]
体積 2,226,095 km3[6]
質量 2.9×1018 kg[7]
平均密度 1.3 g/cm3[7] (仮定値)
表面重力 0.029 m/s2[6]
脱出速度 ~0.069 km/s
自転周期 同期回転[5]
アルベド(反射能) 0.11 ± 0.015 (幾何アルベド)
0.035 ± 0.006 (ボンドアルベド)[8]
赤道傾斜角 0[5]
表面温度 ~64 K
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パック[9][10] (Uranus XV Puck) は、天王星の第15衛星である。

発見と命名[編集]

パックは、ボイジャー2号1985年12月30日に撮影した画像の中から、ボイジャーの画像解析チームによって発見された[2]。発見は翌1986年1月9日に国際天文学連合のサーキュラーで公表され、S/1985 U 1 という仮符号が与えられた[11]。その後1988年6月8日に、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『夏の夜の夢』に登場するいたずら好きの妖精であるパックに因んで命名された[2][12]。また、Uranus XV という確定番号が与えられた[12]

物理的特徴[編集]

パックは直径がおよそ 162 km あり、天王星の5大衛星で最も内側のミランダより内側を公転する小型の衛星群の中では最も大きい[7][13]。5大衛星で最も小さいミランダと、内側の小型の衛星群で2番目に大きいポーシャの中間的なサイズを持つ。パックの軌道は天王星の環とミランダの間に位置している。

ボイジャー2号によって発見された多数の天王星の衛星のうちパックだけは一足先に発見されたため、ボイジャー2号が幾分か詳細に観測できるように観測予定を組むことが出来た[14]。観測で得られたパックの画像は、わずかにつぶれた球形をしており、長軸と短軸の比率は 0.97 ± 0.04 と 1 に近いものであった[5]。表面は多数のクレーターに覆われており[1]、灰色をしている[5]ハッブル宇宙望遠鏡と大型の地上望遠鏡を用いた観測では、パックのスペクトル中に水氷による吸収の特徴が発見されている[8][15]

パック表面で発見されているクレーターのうち 3 個は名前が与えられており、最も大きいものは直径が 45 km ほどある[14]。パックが妖精であることから、クレーターには妖精にちなんだ命名がされている(パックの地形一覧英語版を参照)。

内部構造[編集]

パックの内部構造についてはほとんどが分かっていない。おそらくはと暗い物質の混合物からなると考えられており、後者は天王星の環に見られる物質と似たものである[15]。この暗い物質は、岩石か放射線によって変性した炭素化合物だろうと考えられている。明るい光条を持ったクレーターが見られないことから、パックの内部は分化していないことが示唆される。すなわち氷成分と氷以外の化合物は核とマントルに分離せずに存在している[14]

出典[編集]

  1. ^ a b Thomas, P.; Veverka, J.; Johnson, T.V.; Brown, Robert Hamilton (1987). “Voyager observations of 1985U1”. Icarus 72 (1): 79–83. Bibcode1987Icar...72...79T. doi:10.1016/0019-1035(87)90121-7. 
  2. ^ a b c d Planet and Satellite Names and Discoverers”. Planetary Names. 国際天文学連合. 2015年1月11日閲覧。
  3. ^ a b c d Jacobson, R. A. (1998). “The Orbits of the Inner Uranian Satellites From Hubble Space Telescope and Voyager 2 Observations”. The Astronomical Journal 115 (3): 1195–1199. Bibcode1998AJ....115.1195J. doi:10.1086/300263. 
  4. ^ a b c Jet Propulsion Laboratory (2013年8月23日). “Planetary Satellite Mean Orbital Parameters”. Jet Propulsion Laboratory Solar System Dynamics. ジェット推進研究所. 2018年12月25日閲覧。
  5. ^ a b c d e Karkoschka, Erich (2001). “Voyager's Eleventh Discovery of a Satellite of Uranus and Photometry and the First Size Measurements of Nine Satellites”. Icarus 151 (1): 69–77. Bibcode2001Icar..151...69K. doi:10.1006/icar.2001.6597. 
  6. ^ a b c In Depth | Puck – Solar System Exploration: NASA Science”. アメリカ航空宇宙局 (2017年12月5日). 2018年12月25日閲覧。
  7. ^ a b c Jet Propulsion Laboratory (2015年2月19日). “Planetary Satellite Physical Parameters”. Jet Propulsion Laboratory Solar System Dynamics. ジェット推進研究所. 2018年12月25日閲覧。
  8. ^ a b Karkoschka, Erich (2001). “Comprehensive Photometry of the Rings and 16 Satellites of Uranus with the Hubble Space Telescope”. Icarus 151 (1): 51–68. Bibcode2001Icar..151...51K. doi:10.1006/icar.2001.6596. 
  9. ^ 『オックスフォード天文学辞典』朝倉書店、初版第1刷、318頁。ISBN 4-254-15017-2
  10. ^ 太陽系内の衛星表”. 国立科学博物館. 2019年3月9日閲覧。
  11. ^ Brian G. Marsden (1986年1月9日). “IAUC 4159: Sats OF URANUS AND NEPTUNE; 1982i”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 国際天文学連合. 2018年12月25日閲覧。
  12. ^ a b Brian G. Marsden (1988年6月8日). “IAUC 4609: ASM 2000+25; Sats OF SATURN AND URANUS; 3C 279, PKS 1510-089 AND OJ 287”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 国際天文学連合. 2018年12月25日閲覧。
  13. ^ Scott S. Sheppard. “Uranus Satellite and Moon Data”. Carnegie Science. 2018年12月25日閲覧。
  14. ^ a b c Smith, B. A.; Soderblom, L. A.; Beebe, A.; Bliss, D.; Boyce, J. M.; Brahic, A.; Briggs, G. A.; Brown, R. H. et al. (4 July 1986). “Voyager 2 in the Uranian System: Imaging Science Results”. Science 233 (4759): 43–64. Bibcode1986Sci...233...43S. doi:10.1126/science.233.4759.43. PMID 17812889. 
  15. ^ a b Dumas, Christophe; Smith, Bradford A.; Terrile, Richard J. (2003). “Hubble Space Telescope NICMOS Multiband Photometry of Proteus and Puck”. The Astronomical Journal 126 (2): 1080–1085. Bibcode2003AJ....126.1080D. doi:10.1086/375909.