ダコタ・ハウス
ダコタ・ハウス | |
ダコタ・ハウス | |
所在地 | ニューヨーク市マンハッタン区72番通り西1 |
---|---|
座標 | 北緯40度46分36秒 西経73度58分35秒 / 北緯40.7767度 西経73.9764度 |
建設 | 1880年10月25日 着工1884年10月27日 竣工[1]。 |
建築家 | ヘンリー・J・ハーデンバーフ |
建築様式 | ルネサンス建築 |
NRHP登録番号 | 72000869 |
指定・解除日 | |
NRHP指定日 | 1972年4月26日[2] |
NHL指定日 | 1976年12月8日[3] |
ダコタ・ハウス (The Dakota、Dakota Apartments) は、アメリカ合衆国ニューヨーク市マンハッタン区アッパー・ウエスト・サイドにある高級集合住宅(コーポラティブハウス)である。1880年着工、1884年竣工。
ここに住んでいたジョン・レノン(ビートルズ)が1980年12月8日、マーク・チャップマンに射殺された場所 (建物玄関前) としても知られている。
The Dakotaという名称の由来には、諸説ある。1つ目は、建設当時マンハッタン区のアッパー・ウエスト・サイドは、あたかもダコタ準州のように、まだ住宅の数がまばらだったからという説。2つ目は、1933年の新聞に書かれているもので、発注主のエドワード・クラークがダコタ準州が好きだったからという説[4]である。日本ではダコタ・ハウスと呼ばれるが現地ではそのように呼ばれることはない。
立地
[編集]マンハッタン区を南北に走るセントラル・パーク・ウェストと、東西に走る72丁目および73丁目の、計3本の道路に挟まれた角地に立地している。
同じ72丁目沿いには、ホテル・オルコットがある。
セントラル・パーク・ウェストを挟んだ先には「セントラル・パーク」が広がっており、南東に面した部屋の窓からは、眺望が可能である[5][6]。
地下鉄B/C線で72丁目駅で下車するとすぐ目の前。入り口には警備員が常駐していて、住民以外は立ち入り禁止になっている。[7]
歴史
[編集]後にマンハッタンの「プラザホテル」の建設でもコンビを組むこととなるシンガーミシン社長のエドワード・クラークが、ヘンリー・J・ハーデンバーフに設計を依頼して、建てられた[8]。
当時、マンハッタンのアパートメント形式の住宅としては、2番目に着工された[9]。
1972年に、アメリカ合衆国国家歴史登録財(NRHP)に選ばれ、1976年には、アメリカ合衆国国定歴史建造物(NHL)に指定された[3][10]。
なお、ダコタ・ハウスの役員会による入居審査基準は、ニューヨークで最も厳しいとされ、単に資産や収入が多いだけでは入居できない[11]。今までにビリー・ジョエル、シェール、メラニー・グリフィス、マドンナ、カーリー・サイモン、アレックス・ロドリゲス、ジャド・アパトー、ティア・レオーニなどが入居を拒否されている[12]。また、20年近くすでに入居者であった黒人の投資家がもう一戸を買い足そうとしたところ、役員会に拒否されたため、人種差別的であるとして訴訟を起こした[13]。
この節の加筆が望まれています。 |
建物の特徴
[編集]- 構造
「ロ」の字型の構造になっており、その大きな中庭には噴水がある[14][15]。建設時の総戸数は65。
2010年のウォール・ストリート・ジャーナルの記事によると、地上10階建てになっており、その最上階の(屋根の軒先の下の)部屋は、当初はメイドの部屋になっていた(後に一般居住用として販売)[11]。
- デザイン
鋭角の妻と、多数のドーマー(小窓)がある深い屋根が象徴的で、テラコッタを用いたスパンドレル(2つのアーチに挟まれた三角小間)とパネル、壁龕、バルコニー、バラスター(手すり子)には、北ドイツルネサンス様式の特徴がある。ドイツ風の外観に対し、内装は建設当時流行っていたフランス・バロック様式を取り入れたもので、各戸違ったデザインが施されているが、アンフィラードと呼ばれる連続式に整列した部屋と4m以上ある高い天井が特徴である。
1階外側の柵(フェンス)には、ドラゴンをモチーフにした金属製の飾りが、多数設置されている[16]。
- 設備
当初から、館内に自家発電装置があり、セントラルヒーティングが導入されているなど、画期的な設備をそなえていた[9]。
ジョン・レノンの死
[編集]近所のセントラル・パークには、ジョン・レノンを偲ぶ「ストロベリー・フィールズ」(楽曲ストロベリー・フィールズ・フォーエバーに因む)という小広場が作られており、そこには「イマジン碑」(平面的な黒と白のモザイク模様のメダリオン)がある[17]。
ジョンとヨーコは1973年にダコタ・ハウスに転居。7階に2戸と別の階に3戸の計5戸を少なくとも所有しており、自宅のほかに、倉庫、ヨーコのスタジオ、ゲストハウスとして使用(倉庫にしていた1戸は2008年に売却)。ただし、1973年半ばから二人は別居状態にあり、ジョンは秘書で恋人のメイ・パンと暮らしていたため、1974年末までジョンは住んでいない[18]。1975年にはここでショーンが生まれ、ジョンは音楽活動を一時休止して子育てに励んだ。1980年のジョンの死後もヨーコは2023年まで住み続け、毎年中庭で開かれる住民のポトラック・パーティ(食べものを各自が持ち寄るパーティ)では、ジョンの生前からの習慣を引き次いで毎回寿司を差し入れていた[19]。
登場作品
[編集]- 『あめりか物語』所収「長髪」(1908年の永井荷風の小説) - 主人公の藤ケ埼国雄の住居のモデルという説がある[20]。
- ローズマリーの赤ちゃん(1968年の映画) - 外観を使用。
- ふりだしに戻る (Time and Again)(1970年のジャック・フィニイのSF小説) - 作品内の主舞台。
- クルーエル・インテンションズ(1999年の映画) - 外観を使用。
- バニラ・スカイ(2001年の映画) - 主人公のデヴィッド・エイムス(演:トム・クルーズ)の住むペントハウス[21]が、ダコタ・ハウスの中にあるという設定[22]。
- Grendel(アメリカンコミック) - 主人公のHunter Roseが、ダコタ・ハウスに住んでいる設定[23]。
- 花より男子2(リターンズ)(2007年のドラマ) - 道明寺司(演:松本潤)がダコタ・ハウスに住んでいる設定[要出典]。
ダコタ・ハウスに住んだ著名人
[編集]- ローレン・バコール (Lauren Bacall) - 女優[24]
- ハーレー・ボールドウィン (Harley Baldwin) - デベロッパー、画商[25]
- ウォード・ベネット (Ward Bennett) - 建築家、デザイナー[26]
- レナード・バーンスタイン (Leonard Bernstein) - 作曲家、指揮者[27]
- コニー・チャン (Connie Chung) - ニュースキャスター[28]
- ローズマリー・クルーニー (Rosemary Clooney) - 歌手、女優[29]
- ハーラン・コーベン (Harlan Coben) - 作家[30]
- ホセ・フェラー (José Ferrer) - 俳優[31]
- ロバータ・フラック (Roberta Flack) - 歌手(オノ・ヨーコの隣室)[32][33]
- ロス・フォード(Roth Ford)- 女優(ペーター・ファン・アイク の元妻。兄も別のフロアに住んでいた。死後、二人に長年仕えたネパール人の使用人が2戸とも相続し、世間を騒がせた)[34]
- ジュディ・ガーランド (Judy Garland) - 女優[28]
- リリアン・ギッシュ (Lillian Gish) - 女優[35]
- ウィリアム・インジ (William Inge) - 脚本家[28]
- ボリス・カーロフ (Boris Karloff) - 俳優[31]
- ジョン・レノン (John Lennon) - 歌手、作曲家[31](ダコタ・ハウス内に5室所有していた)[33]
- ショーン・レノン (Sean Lennon) - 歌手
- ジョン・マッデン (John Madden) - フットボールコーチ、コメンテーター
- アルバート・メイスルズ (Albert Maysles) - ドキュメンタリー映画作家、メイスルズ兄弟の兄[36]
- ルドルフ・ヌレエフ (Rudolf Nureyev) - 男性バレエダンサー[37]
- ジョー・ネイマス (Joe Namath) - プロフットボール選手[38]
- オノ・ヨーコ (Yoko Ono) - アーティスト
- ジャック・パランス (Jack Palance) - 俳優[39]
- モーリー・ポヴィッチ (Maury Povich) - テレビ司会者
- ギルダ・ラドナー (Gilda Radner) - コメディアン、女優[40]
- レックス・リード (Rex Reed) - 映画評論家[28]
- ジェイソン・ロバーズ (Jason Robards) - 俳優[41]
- ジェーン・ローゼンタール (Jane Rosenthal) - 映画プロデューサー[42]
- ウィルバー・ロス (Wilbur Ross) - 投資家[43]
- ロバート・ライアン (Robert Ryan) - 俳優(ジョン・レノンとオノ・ヨーコは部屋をライアンから借りており、ライアンの死後、その部屋を購入したといわれている)[44]
今まで、数多くの個性的なクリエーター、アーティストが住んできた。しかし、最近はそうでもないというような苦言を、2005年にアルバート・メイスルズが述べたことを、「ニューヨーク・タイムズ紙」は報じた。同年、彼が売りに出した部屋を、カルト女優[要出典]とも称されるメラニー・グリフィスと夫で俳優のアントニオ・バンデラスが購入しようとしたが、役員会が拒否したという件があった[45]。
過去にも、ジーン・シモンズ(キッスのベーシスト)[46]や、ビリー・ジョエル[47]といったアーティストが、入居を拒否されたことがあった。
脚注
[編集]- 出典
- ^ The Historic American Buildings Survey(HABS), The Dakota (Apartments), 1 West 72nd Street, Central Park West, New York, New York County, NY[リンク切れ], page 2. URL last. Retrieved 24 October 2006.
- ^ National Park Service (15 March 2006). "National Register Information System". National Register of Historic Places. National Park Service.
{{cite web}}
: Cite webテンプレートでは|access-date=
引数が必須です。 (説明) - ^ a b “Dakota Apartments”. National Historic Landmark summary listing. National Park Service (2007年9月11日). 2011年6月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年9月19日閲覧。
- ^ Gray, Christopher. New York Streetscapes. Harry N. Abrams, Inc.. pp. 326–328. ISBN 0810944413
- ^ Google-Map - ジョンが教えてくれる“大切なこと”/映画『ジョン・レノン,ニューヨーク』
- ^ Brockmann, Jorg et al. (2002). One Thousand New York Buildings, pp. 342–343., p. 342, - Google ブックス
- ^ “ニューヨーク旅行なら「ダコタ・ハウス」を見に行こう!独特な建築物は必見 | tabiyori どんな時も旅日和に”. tabiyori[タビヨリ] (2019年7月5日). 2021年9月3日閲覧。
- ^ The superintendent of the construction of the Dakota Building was George Henry Griebel, born and trained in Berlin, Prussia, and Karl Jacobson, who were hired as architects for the project. "Griebel also designed and supervised buildings for the Clark Estate for a period of eighteen years after building the Dakota Building including the Singer Manufacturing Company Office Building on Third Avenue and Sixteenth Street, fourteen houses on West Eighty-fifth St, a row of houses on West Seventy-fourth Street; both being near Columbus Ave,the Barnett Store, Columbus and Seventy-fourth St and many others."
- ^ a b コモン・るみ「NYビルディング万華鏡14」- 週刊NY生活 No.209 3面
- ^ Carolyn Pitts (1976年8月10日). National Register of Historic Places Inventory: Dakota Apartments (PDF) (Report). National Park Service. 2009年6月21日閲覧。 and Accompanying photos, exterior, undated (PDF, 1.65 MB)
- ^ a b “使用人から億万長者へ - ダコタハウスで生まれたアメリカンドリーム”. WSJ日本版. (2010年5月12日)
- ^ “The Dakota: New York’s Most Exclusive Building”. CNBC. (2011年8月2日)
- ^ “Dakota Discrimination Suit Threatens Building's Image”. The New York Times. (2011年2月2日)
- ^ 海外旅行ガイドブック - 地球の歩き方編集部・取材&日記
- ^ NY/アッパーウエスト/ダコタハウス02
- ^ The Dakota - Quadrophenia
- ^ “The Dakota”. TravelGoat.com. オリジナルの2007年9月28日時点におけるアーカイブ。
- ^ “Sharing the Dakota With John Lennon”. The New York Times. (2010年12月7日)
- ^ “An Apartment That Ticks All the Boxes”. The New York Times. (2012年4月8日)
- ^ 永井荷風が暮らした百年前のマンハッタン・2 - コモンるみのこぼれ話 from New York
- ^ バニラ・スカイ オフィシャルサイト/プロダクション・ノート3
- ^ バニラ・スカイ
- ^ Grendel: Devil Child #1, pp. 1–5
- ^ "At Home With Lauren Bacall" The New York Times Home & Garden section, February 24, 2005
- ^ "New York Observer" 29 June 1992
- ^ "Ward Bennett, 85, Dies; Designed With American Style", "The New York Times" August 16, 2003
- ^ “Buy Leonard Bernstein's Dakota Apartment for Only 25.5 Million”. (2006年11月5日)
- ^ a b c d Appleton, Kate. “Landmarks: The Dakota” (英語). New York Magazine website. 2009年12月30日閲覧。
- ^ "Life At The Dakota", Stephen Birmingham, 1979.
- ^ "Thriller at the Dakota! Harlan Coben's Discounted Duplex", The New York Observor,April 21, 2010
- ^ a b c Kane, Larry (2005). Lennon Revealed. Running Press. pp. 20. ISBN 9780762423644
- ^ “Roberta Flack” (英語). The Sydney Mordning Herald. (2009年1月28日)
- ^ a b Haughney, Christine (2010年12月6日). “Sharing the Dakota With John Lennon” (英語). The New York Times
- ^ “I leave it all to my butler – the dying wish of reclusive star” (英語). The Independent. (2010年5月13日)
- ^ "Homesteading at the Dakota," The New York Times. July 27, 2010, p. R–2; Ruth P. Smith's apartment was once the home of Lillian Gish.
- ^ Rosenblum, Constance (2009年8月2日). “A Life in Pictures: Albert Maysles”. The New York Times 2010年5月25日閲覧。
- ^ The contents of Rudolf Nureyev's Dakota apartment fetched almost $8 million in a two-day sale at Christie's ("Nureyev Auction Tops Estimates", The New York Times, January 15, 1995)
- ^ "Joe Namath Looses Some Of His Padding", "New York Daily News" February 21, 2000
- ^ Stephen Birmingham, Life at the Dakota: New York's most unusual address 1996:85.
- ^ "We lived in the legendary Dakota apartment building and held each other tight on the night John Lennon was killed." (Radner, It's Always Something)
- ^ He and his wife Lauren Bacall shared an apartment
- ^ A Morning at the Dakota", "The Washington Post" February 19, 2008
- ^ "Who's Killing Betsey?", "New York Magazine" May 13, 1996
- ^ Robert Ryan (I) - Biography
- ^ Neuman, William (June 19, 2005). “New Co-op for Soup Executive”. The New York Times May 25, 2010閲覧。
- ^ Tony Schwartz. "Plan by Nixon to Buy Co-op in City Is Opposed by Some Other Owners :Board Vote Called Favorable." The New York Times, August 1, 1979.
- ^ Albin Krebs. "Notes on People: Dakota Blocks Billy Joel's Bid to Buy Apartment." The New York Times, June 28, 1980.
- 参考文献
- Birmingham, S.: Life at the Dakota, Syracuse University Press. Reprint edition, 1996. ISBN 0-8156-0338-X. Originally published by Random House, 1979, ISBN 0-394-41079-3.
- Brockmann, Jorg and Bill Harris. (2002). One Thousand New York Buildings. New York: Black Dog & Leventhal. ISBN 157912237X/ISBN 9781579122379; OCLC 48619292
- Schoenauer, N.: 6000 Years of Housing, 3rd ed., pp. 335 – 336, W.W. Norton & Co., 2001. ISBN 0-393-73120-0.
- Alpern, A.: New York's fabulous luxury apartments: with original floor plans from the Dakota, River House, Olympic Tower, and other great buildings. New York: Dover Publications, 1975, 1987, Exterior views and sample floor plans as well as brief historical synopses, each with architect, builder, date built, and when applicable, date razed.
- Van Pelt, D. Leslie's History of the Greater New York, Volume III New York: Arkell Publishing Company 110 Fifth Avenue, 1898,
- L. A. Williams Publishing and Engraving Company. Encyclopedia of Biography and Genealogy, vol. III pp. 656.