アメリカ合衆国国定歴史建造物

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ミフリン砦の兵舎 (en).
アメリカ国外の歴史登録財第1号はタンジェの在モロッコアメリカ公使館(en
ナバホ・ネイション首都機能を置くアリゾナ州ウィンドウロック (en)。
キャッツキル山地の麓に位置するリゾートホテルのモハンク・マウンテン・ハウス。1895年-1916年にここで協議された国際仲裁裁判 (en) は常設仲裁裁判所 (ハーグ) 設立の基盤となった。
法律の施行された1963年のNHL登録票。対象はアカデミー・オブ・ミュージックである (フィラデルフィア)。
シカゴ商品取引所ビル (シカゴ)。所在地ばかりかアメリカを象徴する建造物。

アメリカ合衆国国定歴史建造物(アメリカがっしゅうこくこくていれきしけんぞうぶつ、National Historic Landmark=NHL)は、アメリカ合衆国文化遺産保護制度の一つ。アメリカ合衆国内務省長官が、歴史的に価値のある建造物や街区、地点、物体もしくは構造物などを指定するものである。

概要[編集]

アメリカ合衆国国定歴史建造物 (National Historic Landmark, NHL) は、アメリカ合衆国連邦政府により国家レベルで歴史的に意義のあるものと公式に認識されている建築物場所構造物、または物体を言う。9万件以上のアメリカ合衆国国家歴史登録財と重複していないNHLは約2,500件 (~3%) に留まる。

NHLと類似する認定歴史地区(英語)アメリカ合衆国国定歴史建造物地区 (National Historic Landmark District, NHLD) という。この地区には建築物場所構造物、または物体の貢献的財産 (en) と非貢献的財産を含む。登録に当たり貢献的財産を区別する場合としない場合がある。

制度の沿革[編集]

「歴史地区法」(en) が議会で可決する以前は、国家が指定すべき価値のある文化遺産の保護をアメリカ合衆国議会が担当し断続的に取り組んでいた。1935年に議会で同法が成立すると、内務長官に権限を与え、歴史遺産の公的記録と整理および「国家の歴史にとって意義がある」ものの指定を許可し、歴史的に重要な連邦所有財産の管理は国立公園局に割り当てた[1]。その後、数十年にわたり史跡調査などの事業により、アメリカの歴史的建造物調査(en) を行って文化的あるいは建築史的に特徴のある文化財を選別してきた[2]。この法制により登録された文化財は国定史跡 (en) に指定されたが、1935年12月20日指定の第1号はミズーリ州セントルイスにある国定記念物 (en) の ジェファーソン・ナショナル・エクスパンション・メモリアル (当時の名称はジェファーソン国定エクスパンション記念公園) である。また国定史跡の第1号は1938年3月17日にセーラム海事国定史跡 (en) が指定された[3]。法制による調査データの管轄がアメリカ合衆国国立公園局に移管された1960年10月9日から、国定史跡制定事業がさらに正式な手続きを踏むようになる[4]。やがてその事業の一部として1966年10月9日にはアメリカ合衆国国家歴史登録財の選出規準と指定手続きが正式に発効、内務長官フレッド・シートン (en) により即日92ヶ所が指定された。この最初期の指定対象にはアイオワ州スーシティルイス・クラーク探検隊のフロイド隊員の埋葬地 (en) など政治的な配慮が反映しており、登録日は同年6月30日だがさまざまな理由により数件の NHL 登録は遅れて公表されている。いずれにしても登録 (NHLでも歴史登録財でも) により地域行政の文化財保護条例に影響を与えるため、1980年には登録手順を改訂し、所有者の同意を得ることが義務化された[5]

指定の条件[編集]

内務長官による指定の条件は以下の通り。

  • アメリカの歴史にとって重要な出来事が発生した場所。
  • 著名な人物の居住地・勤務地などであった場所。
  • アメリカ合衆国の理念にとって象徴となる場所。
  • 際立つ建築設計や建築技術の例となるもの。
  • 生活様式の典型例となるもの。
  • 考古学上、価値がある情報を与えるもの。

NHLの例[編集]

現在では全米50州とワシントンD.C.で約2,500ヶ所超が指定を受け (英語版の州別一覧参照)、NHL全体の四分の一が3つの州 (ペンシルベニア州マサチューセッツ州ニューヨーク州) に集中している。さらにそのうちの3都市 (ボストンフィラデルフィアニューヨーク) にある NHL の合計は、40州の総計を上回る。バージニア州カリフォルニア州、さらには全米50州中もっともNHLが集中するペンシルバニア州、マサチューセッツ州とニューヨーク州では、それぞれの登録総数がニューヨーク市単独の登録件数を下回る。あるいはワシントンD.C.のNHL登録件数は74件である。

そのほかにアメリカの海外領土やコモンウェルス盟約国あるいは外国にも国外登録財があり、プエルトリコヴァージン諸島およびその他のコモンウェルスに合計15件、また盟約国としてミクロネシアほかに5件、モロッコに1件 (en) である[6][注釈 1]。また、NHLに登録された船舶と沈船は100件以上(英語)にのぼる。

その他[編集]

国定歴史建造物 (NHL) のおよそ半数は民間の所有 (en) である[7]。新規制定には国立公園局の示唆に負うところが大きく、また同局により制定されたランドマークの保護管理が行われる。民間の任意団体「National Historic Landmark Stewards Association」には制定物件の所有者や知人が加盟し、NHLの保全や補修、保護を呼びかけている。

事前に登録財ではなかった国定歴史建造物は、指定と同時にアメリカ合衆国国家歴史登録財へも登録される。歴史建造物指定をきっかけに記載された登録財は、全体のおよそ3パーセントを占める[8]

脚注[編集]

  1. ^ NHL の登録件数と所在地の詳細は「州別のNHL総覧」(en) を参照。国立公園局発表資料「National Historic Landmarks Survey List of National Historic Landmarks by State」の修正と補足を試みた。

出典[編集]

  1. ^ Robinson, Nicholas (1982). Environmental Regulation of Real Property. 1. New York: Law Journal Press. 
  2. ^ Lee, Antoinette Josephine (1997). The American Mosaic: Preserving a Nation's Heritage. Detroit: Wayne State University Press. ISBN 978-0-8143-2719-7. 
  3. ^ McDonnell, Janet; Mackintosh, Barry (2005). The National Parks: Shaping the System. Washington, DC: Government Printing Office. p. 52. ISBN 978-0-912627-73-1. 
  4. ^ Frank, Karolin; Petersen, Patricia (2002). Historic Preservation in the USA. Berlin: Springer. p. 66. ISBN 978-3-540-41735-4. 
  5. ^ Robinson 1982, pp. 6:24.
  6. ^ National Park Service (2007年11月). “National Historic Landmarks Survey: List of National Historic Landmarks by State (国定史跡調査:州別NHL総覧) (PDF)”. 2008年7月1日閲覧。
  7. ^ National Historic Landmarks Update, National Park Service, October 2004
  8. ^ Title 36 of the Code of Federal Regulations, Part 65”. 合衆国政府印刷局. 2008年4月5日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]