カリン (バラ科)

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カリン
カリンの花
カリン
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: バラ目 Rosales
: バラ科 Rosaceae
亜科 : シモツケ亜科 Spiraeoideae[1]
: ナシ連 Pyreae[1]
亜連 : ナシ亜連 Pyrinae[1]
: カリン属 Pseudocydonia
: カリン P. sinensis
学名
Pseudocydonia sinensis (Thouin) C.K.Schneid.[2]
シノニム
和名
カリン(榠樝、花梨)
英名
Chinese quince
果実
二つ割にしたカリン

カリン(花梨、榠樝、学名: Pseudocydonia sinensis)は、バラ科の1種の落葉高木である。その果実はカリン酒などの原料になる。

分類[編集]

かつてボケ属 Chaenomeles とする説もあったが、C. K. Schneider が1属1種のカリン属 Pseudocydonia を提唱し[4]分子系統で確認された[1][5]。 カリン(属)に最も近縁なのはマルメロ属 (Cydonia) とカナメモチ属 (Photinia) であり[1][5]、それに次ぐのがナシ亜連の他の属で、かつて属していたボケ属のほか、リンゴ属ナシ属などがある。マルメロCydonia oblonga)は同科で果実も似ているが「カリン」と称するのは正しくない。マルメロの葉の縁には細鋸歯がない。

漢名の「木瓜」や「万寿果」をもってパパイア科パパイア属のパパイア(番木瓜、乳瓜)と混同される場合があるが、全くの別種である。

また、マメ科のカリン(花梨)とは和名が同じであるが、全くの別種である(近縁でもない)。

名称[編集]

和名カリンは、材の木目が三味線の胴や竿、座卓に使われる唐木の花櫚(かりん、花梨とも書く)に似ているので名づけられたものである[6]。 カリンの属名 Pseudocydonia は偽のマルメロを意味する。

別名 安蘭樹(アンランジュ)または菴羅樹(あんらじゅ)「菴羅」はマンゴーの別名だが古い時代の日本では誤訳により花梨を指す場合がある。

果実は生薬名を和木瓜(わもっか)という。ただし和木瓜をボケクサボケとする人もあるし、カリンを木瓜(もっか)とする人もいるが、木瓜はボケの果実である[7]。なお、日本薬局方外生薬規格においてカリンの果実を木瓜として規定していることから,日本の市場で木瓜として流通しているのは実はカリン(榠樝)である[8]

中国語では『爾雅』にも記載がある「木瓜」を標準名とする[9]。他に「榠樝」(めいさ)[7]、「榠楂」(『図経本草』)、木李(『詩経』)、「木瓜海棠」、「光皮木瓜」[9]、「香木瓜」、「梗木瓜」、「鉄脚梨」、「万寿果」などの名称がある。「木瓜」は他にボケ類パパイア(「番木瓜」の略)を意味しうる。

特徴[編集]

原産は中国東部で、陝西省山東省湖北省江西省安徽省江蘇省浙江省広東省広西チワン族自治区などに分布する[9]。日本への伝来時期は不明。主に栽培され[7]、適湿地でよく育ち、耐寒性がある。

落葉高木[6]。花期は4 - 5月頃で、新葉とともに5枚の花弁からなる白や淡紅色の花を咲かせる[6]互生し、倒卵形ないし楕円状卵形、長さ3 - 8センチメートル (cm) 、先は尖り基部は円く、葉縁に細鋸歯がある。

未熟な実は表面に褐色の綿状の毛が密生する。成熟した果実は楕円形か卵形をしており黄色で大型[6]トリテルペン化合物による芳しい香りを放ち、収穫した果実を部屋に置くと部屋じゅうが香りで満たされるほどである。このため中国では「香木瓜」とも呼ばれる。秋(10 - 11月)に収穫される。

花・果実とも楽しめ、さらに樹皮・新緑・紅葉が非常に美しいため家庭果樹として最適である。語呂合わせで「金は貸すが借りない」の縁起を担ぎ庭の表にカリンを植え、裏にカシノキを植えると商売繁盛に良いとも言われる。

混同されやすい果実が良く似たマルメロは、イラン、トルキスタン原産といわれ、果実は球形で表面にビロード状の綿毛が密生しているが、カリンは洋ナシ型で綿毛はなく、表面がつるりとしているので見分けがつく[6][7]

利用[編集]

果肉は渋く石細胞が多く、硬い[6]。生食には適さず、砂糖漬け、コンポートリキュール等に加工される。加熱すると渋みは消え、果肉は鮮やかな赤色に変わる。

カリンの果実に含まれる成分はなど炎症に効くとされ、のど飴に配合されていることが多い。

加工食品[編集]

薬用[編集]

果実は榠樝(めいさ)と称して薬用にする[6]。土木瓜(どもっか)、和木瓜(わもっか)とも称する[7]。秋9 - 10月ころに、黄変する前の未熟果で淡緑色のものを採集して、輪切りにしたもの陰干して調製し生薬とする[6]

民間療法で咳止め、吐き気に利用し、榠樝を1日量3 - 5グラム、水400 ccに入れて煎じて3回に分けて服用する用法が知られる[7]。中国では酔い覚まし、切り、順気、下痢止めの効用があるとされている[9]。咳止め、疲労回復にはカリン酒を毎日、盃1 - 2杯のむとよいといわれている[6]。ハチミツ漬けを1日2 - 3回、小さじ一杯程度を湯に溶いて飲むのもよい[7]。痰が絡むような咳に良いといわれており、服用する者の体質は問わないとされている[7]

果実の栄養成分、有効成分として、糖分約18%、脂質約0.2%、たんぱく質約0.4%、リンゴ酸約2.5%、灰分約0.7%、苦味質、精油クエン酸などを含んでいる[6]。リンゴ酸やクエン酸には、鉄分の吸収を促進する作用があるといわれ、疲労回復に役立つと考えられている[6]。種子にはわずかにアミグダリンを含んでおり、消化管内で腐敗発酵の防止に役立ち、吸収後は中枢神経に作用して、咳止めに役立つといわれている[6]。ただし、アミグダリンは加水分解により猛毒のシアン化水素も発生するため、国立健康・栄養研究所などが注意を呼びかけている[10]

木材[編集]

比較的固い事から、家具などの材木として利用される。

生産地[編集]

画像[編集]

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d e Potter, D.; Eriksson, T.; Evans, R.C.; Oh, S.H.; Smedmark, J.E.E.; Morgan, D.R.; Kerr, M.; Robertson, K.R.; Arsenault, M.P.; Dickinson, T.A.; Campbell, C.S. (2007), “Phylogeny and classification of Rosaceae”, Plant Systematics and Evolution 266 (1–2): 5–43, doi:10.1007/s00606-007-0539-9, http://biology.umaine.edu/Amelanchier/Rosaceae_2007.pdf 
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Pseudocydonia sinensis (Thouin) C.K.Schneid.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2020年5月23日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Chaenomeles sinensis (Thouin) Koehne”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2020年5月23日閲覧。
  4. ^ Schneider, C. K. (1906) Species varietatesque Pomacearum novae. Repertorium novarum specierum regni vegetabilis 3: 177-183.
  5. ^ a b C. S. Campbell, R. C. Evans, D. R. Morgan, T. A. Dickinson, and M. P. Arsenault (2007), “Phylogeny of subtribe Pyrinae (formerly the Maloideae, Rosaceae): Limited resolution of a complex evolutionary history”, Pl. Syst. Evol. 266: 119–145, doi:10.1007/s00606-007-0545-y, http://biology.umaine.edu/Amelanchier/Pyrinae_2007.pdf 
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m 田中孝治 1995, p. 130.
  7. ^ a b c d e f g h i 貝津好孝 1995, p. 88.
  8. ^ 漢方のくすりの事典 -生薬・ハーブ・民間薬-,医歯薬出版株式会社,2004年 第1版第7刷発行
  9. ^ a b c d 《中国植物志》第36卷350頁 木瓜” (中国語). 中国科学院植物研究所 (1974年). 2017年6月10日閲覧。[1]
  10. ^ 話題の食品成分の科学情報:アミグダリンについて - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所)公開日2009年02月19日、閲覧日2011年11月23日
  11. ^ 白河建成14万亩木瓜产业基地 标志产品走向全国” (中国語). 中国新闻网 (2011年6月13日). 2017年6月10日閲覧。

参考文献[編集]

  • 貝津好孝『日本の薬草』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年7月20日、88頁。ISBN 4-09-208016-6
  • 田中孝治『効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法』講談社〈ベストライフ〉、1995年2月15日、130頁。ISBN 4-06-195372-9

外部リンク[編集]