OL

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OL(オーエル、和製英語: office lady の略)とは、「女性の会社員(事務員)」を意味する和製英語である。

かつて働く若い女性に対する呼称として広く使用されていたBGbusiness girl)などに代わる呼び名を1964年に、週刊雑誌『女性自身』が公募し、11月25日に読者投票の結果誕生した造語である[1][2]

OLの定義[編集]

OLとは、企業の補助的な業務を担当する一般職の女性社員もしくは女性事務員のみを指す語である。したがって同じ会社員でも総合職であったり、役職が付いたりするとOLとはもう言わない。女性警察官、女性自衛官消防官(救急隊や警防部門のみ。ポンプ隊やはしご隊、特別救助隊には女性はいない)、医師(女医)、看護師機長船員弁護士公認会計士などといった高度に責任を有するまたは高度な国家資格を要する職業は、OLの中には含まれないことが多い。ただし最近では、職種に関わらず「オフィスで働く女性」全般を指す言葉として利用されることも多い[3]

元々は日本で作られた言葉であるが、日本文化の影響を受けている香港や台湾においても使われることがある。

歴史と概略[編集]

背景-大正時代の職業婦人[編集]

専門分野、事務職業、会社員、販売等の第三次産業で働く女性を表す言葉として、大正時代から昭和初期にかけて「職業婦人」が用いられた[4]

1919年に刊行した与謝野晶子『心頭雑草』に「自動車の婦人運転手が東京に、婦人の郵便配達人が九州の某所に、(中略)、近く電車の婦人運転手が美濃国で採用されました。」とみえるように、大正時代に医師(女医)、教師、判任官、婦人運転手等のこうした専門分野で働く女性が目立つようなった。

1920年以降から、各種産業の合理化と第三次産業の拡大、西洋文化の波及とともに、女性の職種も会社員、洋式の美容師、タイピスト、エレベーターガール等、幅広い分野となり、1940年代にかけて職業婦人は急激に増加した。

戦後のビジネス街[編集]

戦後、産業は活気を徐々に取り戻し、戦前にビジネス街として発展していた地域も回復していく。東京丸の内では、戦前からの計画であった新丸の内ビルディングが1952年に竣工され、1959年から煉瓦街は急速に建て替えられ、近代的なビルに生まれ変わってゆく。

また、1950年代から「三種の神器」と呼ばれる白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫等の家電製品が普及し、女性の家事負担の軽減に寄与、こうした中で女性が社会で働く場が再度増え、丸の内のビジネス街でも働く女性が増加していった。

昭和中期以降は「business girl」の頭文字を取った「BG」[5]というもの単語が有った。しかし、再建を目指し戦後に丸の内のオフィスで働いていた女性達の間で「BG」の呼称は、耳にしたこともなく、「ビジネスガール」の呼称が暫くの間使用された程度であったという。

昭和時代-丸の内のOL[編集]

女性自身による
BG代替語の誌上公募の結果[6]
順位 名称 票数
1 オフィス・レディー 4256
2 オフィス・ガール 4189
3 サラリー・ガール 2964
4 キャリア・ガール 2894
5 ビジネス・レディー 2302
6 オフィス・ウーマン 2016
7 ビジネス・ウーマン 1882
8 BG廃止反対 1401
9 キャリア・ウーマン 1274
10 ワーク・レディー 965
投票総数26,481票
なお紙面では11位以下も記載されている

「英語で BG は bar girl の略称で、これは売春婦という意味だ」という噂[7]東京オリンピックを翌年に控えた1963年に広まり、NHKはこの実態のない噂から9月にこの単語の使用を止めた。この機運に伴い週刊誌『女性自身』が「東京オリンピックで来日する外国人の誤解を防ぐため」この単語を使わないようにする事を提案し、代替語の誌上公募を行った結果、11月には候補の中から「OL」を選出したと発表した。

この「OL(オフィスレディー)」は『約30000通の投書の内最多の4256票を獲得した』と発表されていたが本来は7位であり、実際の1位は「OG(オフィスガール)」だった事実が後に明かされた。当時の編集長である櫻井秀勲が『「職場の女の子」という意味の様で個人的に気に入らない』という私情から「オフィスレディー」が1位になったかの様に捏造したという[8]

「OL」と決まったものの世間一般へ浸透するまでには長い時間を要する事となる。1973年から1975年の間には完全に定着していった。

昭和時代後期には、丸の内の近代的なビジネス街オフィスで働く女性を指して「丸の内のOL」と称され、後に補佐業務あるいは一般職の女性社員等に対して「OL」が使用されるようになった。また、一般職或いは専門職に限らず、特に優秀な女性に対して「キャリアウーマン」が用いられた。

英語圏[編集]

英語圏の英語での同じ意味の表現は office worker(オフィス従業員)や company employee(会社員)がこれにあたるが、通常これらには female を付けて「女性のオフィス従業員」という表現はしない[9]

脚注[編集]

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  1. ^ 『OLたちの「レジスタンス」』(小笠原祐子著、p.2)
  2. ^ 『外来語の語源』(吉沢典夫、石綿敏雄著、p.2)
  3. ^ 東電OL殺人事件」のように、高学歴の総合職社員であっても女性社員であることを端的に表現するためにOLという言葉が使われることもまれにある。
  4. ^ 高島平三郎『婦人の生涯』、1915年、職業婦人増加の傾向
  5. ^ 当時ルポライターだった五島勉による造語。五島は1964年(昭和39年)に『BGスパイ デパートを燃やせ』(芸文社)という産業小説を書いている。「ビジネスガール」という呼称自体については、雑誌「中央公論」昭和5年8月号P238「町を彷徨する」に「銘仙姿のビジネスガール」という表現があり、昭和初期にすでにこの言葉があったことがわかる。
  6. ^ 出典: 女性自身、昭和38年11月25日号
  7. ^ 英語で「売春婦」は prostitute を始め、俗語として call girlstreetwalkercamp followerwhorehooker など枚挙にいとまがないが、bar girl という単語は無い。1960年代前半の日本なら「一人でバーに飲みにいくような女はふしだら」と思われたかもしれないが、欧米でそうした偏見は既に1940年代前半には無くなっていた。
  8. ^ 朝日新聞 平成23年10月1日夕刊4ページ 昭和史再訪  「実はOLは7位。私が強引に1位にしました」 当時の編集長、櫻井秀勲さんが白状する。本当の1位は「オフィス・ガール」だったが、「職場の男性上司が『ウチの女の子』と呼ぶのに重なる『ガール』が気に入らなかった。高卒から短大、大卒と、いずれ女性の学歴も上がっていくのに合わなくなると思っていました」
  9. ^ これはアメリカ、カナダ、イギリスなど英語圏の諸国では、職場にかかわること全般において、性別・年齢・人種・ 宗教・性的指向などの「本人と不可分の属性」は不公平な差別に繋がりかねない、または差別があったと思われかねないことから、必要もないのにこれらを公表したり尋ねたりすることはタブーとして戒められているためである。

関連項目[編集]