ウルーピー

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ウルーピーとアルジュナ。
ウルーピーとアルジュナ。

ウルーピー (Ulūpī) は、インド叙事詩マハーバーラタ』に登場するナーガ族の女性(ナーギニー)。ナーガ王アイラーヴァタの家系に属するカウラヴィヤ王の王女[1]アルジュナとの間にイラーヴァット英語版を生んだとされる[2]

物語[編集]

ウルーピーはアルジュナが12年間追放されていたとき、アルジュナに恋をした。そこでアルジュナが火の供儀のためにガンジス川沐浴し、陸に上がろうとしたとき、彼を水中に引き入れた。そして父カウラヴィヤの宮殿に連れて行った。アルジュナはそこに聖火があったので火の儀式を完遂した。その後ウルーピーはアルジュナに自分の思いを伝え、情交を求めた。最初アルジュナは拒否したが、ウルーピーは望みが叶えられないならば死ぬと言ったため、その夜を宮殿で過ごし、翌朝陸に戻った[3]

なお『マハーバーラタ』6巻によると、ウルーピーがアルジュナに出会ったとき彼女の夫はガルダに殺されていて、アルジュナに恋をした彼女をアイラーヴァタ王がアルジュナに託したという話である[4]。しかし息子のイラーヴァットはクル・クシェートラの戦い英語版においてパーンダヴァ側で戦い、戦死した[5]

戦後、アルジュナがチトラーンガダーの息子バブルヴァーハナを訪れ、息子のへりくだった態度に不満な様子を見せたとき、ウルーピーはバブルヴァーハナにクシャトリヤの生き方を説き、父と戦うようにけしかけた。彼の矢が老いたアルジュナを殺すと、魔法の薬を与えてアルジュナを蘇生させた[6][注釈 1]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 池田運訳『マハバーラト iv』p.575 では、蘇生に使われたのは摩尼宝珠となっている。

脚注[編集]

  1. ^ 『マハーバーラタ』1巻206・18。
  2. ^ 『マハーバーラタ』6巻86・6。
  3. ^ 『マハーバーラタ』1巻206・11~34。
  4. ^ 『マハーバーラタ』6巻86・7~8。
  5. ^ 『マハーバーラタ』6巻86・5~71。
  6. ^ 菅沼晃『インド神話伝説辞典』p.258。

参考文献[編集]

  • 『マハバーラト iv』池田運訳、講談社出版サービスセンター、2009年1月。ISBN 978-4-87601-810-9 
  • マハーバーラタ 原典訳 2(第1巻(139-225章) 第2巻(1-72章))』上村勝彦訳、筑摩書房ちくま学芸文庫〉、2002年3月。ISBN 978-4-480-08602-0 
  • 『マハーバーラタ 原典訳 6(1-117章)』上村勝彦訳、筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉、2002年11月。ISBN 978-4-480-08606-8 
  • 菅沼晃編 編『インド神話伝説辞典』東京堂出版、1985年3月。ISBN 978-4-490-10191-1  ※特に注記がなければページ番号は本文