アストンマーティン・シグネット

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アストンマーティン・シグネット
フロント
リヤ
日本仕様 
概要
製造国 日本の旗 日本
販売期間 2011年 - 2013年
ボディ
乗車定員 2人-4人
ボディタイプ 3ドアマイクロクーペ
駆動方式 FF
パワートレイン
エンジン 1NR-FE型1.3L直4
変速機 スーパーCVT-i
6速MT
前: マクファーソンストラット
後: トーションビーム
前: マクファーソンストラット
後: トーションビーム
車両寸法
ホイールベース 2,000mm
全長 3,078mm
全幅 1,680mm
全高 1,500mm
車両重量 988kg
その他
姉妹車 トヨタ・iQ
サイオン・iQ
製造事業者 トヨタ自動車
系譜
後継 (なし)
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シグネットCYGNET )はイギリスの自動車メーカー、アストンマーティンがかつて販売したハッチバックタイプのコンパクトカーマイクロクーペ)。ベースとなっているのはトヨタ・iQである。車名は白鳥に由来。

日本においてはアストンマーティンのラインアップ中、唯一の5ナンバーサイズである。

概要[編集]

アストンマーティンの当時の車種体系はDBS V123代目ヴァンテージなどといった大型のスポーツカーGTカーが中心だが、将来的に環境性能(CAFE=企業平均燃費[1])に優れる小型車をラインナップする必要があると判断[2][3]。そこで、トヨタ自動車との連携により開発されたのがシグネットである。

シグネットのベースにiQが選ばれた理由は「シャシー性能の高さ」「サイズ」「高い安全性」「プロポーション」の4つがアストンマーティンの提唱する高級小型車像にマッチしたためである[4]

iQの完成車両を日本のトヨタ高岡工場より輸送された後、ボディの内外装を分解し、1台1台職人の手作業によりシグネットへとカスタマイズする方法が採られているため、完成には1台あたり約150時間を要する[4]

メカニズム[編集]

基本骨格をiQと共用するも、ルーフ、左右ドア、リアフェンダーを除く外板パネル全てが専用設計となった。フロントにはアストンマーティンのアイデンティティーである「ブライトフィニッシュグリル」が装着され、エンジンフードにはDBSと共通のエアインテークを追加、フロントフェンダー(スカットル上部)にもエアアウトレットを設けられ、iQとは異なる外観意匠としている。リアコンビランプも当時のDBシリーズと共通イメージのU字型となっているが、DB各車が内側に開いているのに対し、シグネットは外側に開いている。

インテリアについてはiQをベースとするも、アストンマーティンならではのクラフトマンシップをふんだんに注入することでスポーティさと高級感を付加し、赤色をベースに黒色を組み合わせた本革のシート表皮とトリムをはじめとして、センタークラスターの一部もアストンマーティンらしさを打ち出したダッシュボードとの連続性のあるものに変更されている。

F・Rサスペンション、1.3L のトヨタ・1NR-FE直列4気筒エンジン、6速マニュアルトランスミッションまたはCVTなど、シャシやパワートレインはiQそのものである。ただし、アストンマーティンらしさを強調するため、消音材を追加して静粛性を高めたほか、エンジンマウントも変更して静粛性と走りの質を向上させた[4]

メーカー公認のPR画像がYouTubeで閲覧可能である。

歴史[編集]

  • 2009年6月29日 - トヨタ・iQをベースに新しいコンセプトカーとして概要を発表。クリエイティブで環境に優しく、小型車でありながらプレステージ性を付加することで高い存在感を発揮することを目標に製作された。また同日、トヨタもTME(トヨタ・モーター・ヨーロッパ)を通じて、アストンマーティンにiQをOEM供給すると発表している。
    • 12月16日 - 量産仕様の写真を初公開するとともに概要を発表。
  • 2011年1月 - 市販仕様発表。同年4月から生産開始。あわせて、生産開始記念モデル「Launch Editions」を発表した。価格は30.995ポンド(約409万円)〜。
    • 7月 - フランスのアパレルブランド「コレット」とのコラボレーションで製作された世界限定14台の「シグネット&コレット」を発表。エクステリアをライトニングシルバーで塗装し、フロントバンパーとボンネットにブルーのストライプが、ドアミラーアルミホイールにもブルーのアクセントが添えられている。一方、インテリアはチョコレートブラウンのレザートリムを基調とし、サンバイザーもアルカンターラで仕上げられる。英国での価格は48.995ポンド(約620万円)より。
    • 10月25日 - 日本および香港にて計50台の限定販売をすることを発表。この限定販売だけのために「Launch Edition White」と「Launch Edition Black」の2種を用意。日本での価格は475万円〜[5]
  • 2013年9月 - 生産終了。[6]
    • 12月 - 販売終了。
  • 2018年7月、シグネットのワンオフモデルとなる「V8シグネット」が発表された。V8シグネットは顧客の要望で同社のパーソナライズ部門「Q by Aston Martin」により製造され、V8ヴァンテージSに搭載されている4.7リットルのV8エンジンを搭載し、最高出力は430BHP、最大トルク490Nm、0-100km/hの加速は4.2秒、最高速度は274km/h。4点式ハーネスを備えたバケットシートやFIAに準拠した消火システム、ヴァンテージの計器クラスタ取り入れた別注のカーボンファイバー複合計器パネルが内装に採用されるなど、量産モデルとは異なるサーキット走行を意識した仕様となっている。[7]

外部リンク[編集]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ CAFE=Corporate Average Fuel Efficiencyの略。自動車製造企業ごとに企業平均の燃費を算定し、その燃費が基準値を下回らないように義務付けられている。
  2. ^ 6代目トヨタ社長である豊田章男が副社長だった2007年ニュルブルクリンク24時間レースに選手として出場した際、同じピットであったアストンマーティンのベッツCEOと知り合い、検討を進めていた。
  3. ^ 結局、(サイオンブランドも含めた)ベースのiQが販売不振だったこともあり、シグネットがアメリカ市場で販売されることはなかった。
  4. ^ a b c 【アストンマーティン シグネット 日本発表】トヨタiQを選んだ理由カービュー2011年10月28日
  5. ^ アストンマーティン、シグネットを日本導入カービュー2011年10月25日
  6. ^ アストンマーティン シグネット、生産終了Response.2013年10月3日
  7. ^ 「トヨタiQ」ベースでアストンマーティンの4.7リットルV8エンジンを搭載した究極のモデル「V8シグネット」が登場!”. Idea Web Tools | 自動車とテクノロジーのニュースブログ. 2020年1月14日閲覧。