トーションビーム式サスペンション

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

トーションビーム式サスペンション(Torsion beam suspension)とは、自動車のサスペンション形式のひとつ。カタログには「車軸式」などと表記されることもある。英名でTwist-beamとも呼ばれる。

VW Golf Mk 3のリアサスペンション

概要[編集]

前輪駆動(FWD、FF)車の後輪に多く用いられるが、それらから派生した4WD車の後輪でも使用されることがある。左右のトレーリングアーム(トレーリングリンク)が、「ねじれ」(トーション)を許容する「横梁」(クロスビーム)でつながれていて、このねじれにより左右の車輪はある程度個別に上下動(ストローク)できる。このため車軸懸架(固定車軸)と独立懸架の中間的な存在とされる。


初代フォルクスワーゲン・ゴルフの成功により多くのメーカーが追従し、比較的軽量な小型FF車におけるリアサスペンションのスタンダードとなった。日本でも軽自動車から大衆車、そのやや上級のファミリーカーにまで多く見られるリアサスペンション形式であるが、トヨタ・アルファード/ヴェルファイアのように高額で車両総重量が2トンに達した車種での採用例もある。

クロスビームの断面形状は、丸形や角形の中空鋼管のほか、I形、<形、⊂形、∩形などが見られる。トレーリングアーム(トレーリングリンク)とハブは剛結である。サスペンションスプリングには通常コイルばねが組み合わされるが、PSA・プジョーシトロエンは荷室へのばねの張り出しを嫌い、小型車では2本のトーションバー・スプリングを用いている。

クロスビームの接合位置により後述の様に分類されるが、どの方式も横力による影響は避けられず、ブッシュやアームがたわむ事によりトーアウトの傾向を示す。これは結果的にコンプライアンスステアがオーバーステアを示す事となるため、市販車に求められる操縦安定性能の点から好ましくない。
このため現在はカップルドビーム方式でアームのピボット(車体のトレーリングアーム支点)軸を斜めとしたものが一般的である。これは旋回時には車輪にかかる横力がピボット軸のブッシュを斜め方向にたわませて、外輪が前方に移動する方向にユニット全体が回転することでトーアウト傾向を打ち消し、乗り心地を悪化させない軟らかいブッシュを使用しながら安定性を確保することを意図している。

長所[編集]

  • ストロークに伴う対地キャンバートレッドの変化が少ない。左右両輪が同方向にストロークした場合は、車軸式と同様にほぼ変化しない。また左右輪が逆ストロークした際には、ビームやアームのねじれにより車体がロールしても対地キャンバーの倒れを低減する。
  • 簡素な構造による省スペース性により、左右輪の間に燃料タンクや荷室などを設けられる。
  • 部品点数と可動(摺動)部分を大幅に少なくできるため、コストを抑えられる。
  • クロスビームがスタビライザー(アンチロールバー)として働き、抗ロール性が得られる。
  • クロスビームがピボット(車体のトレーリングアーム支点)寄りの場合は、バネ下荷重が車軸式より軽くなる。

短所[編集]

  • キャンバーなどのサスペンションジオメトリ変化の自由度が低い。左右同ストロークでは左右ともキャンバーは変化しない。一方、左右が逆ストロークではバンプ側がネガティブキャンバー、リバンプ側がポジティブキャンバーになる。
  • 独立懸架に比べて左右の車輪が逆ストロークとなる悪路ではトーションビームのスタビライザー効果により接地性が低くなる。
  • ボディーに入力を伝えるポイントが左右2点のピボット部だけになるので、操縦安定性と乗り心地とを両立させるためのピボットのゴムブッシュの硬さ設定が難しい。ブッシュを柔らかくすると乗り心地が良くなるが位置決め精度が落ちてNVHでサス全体が揺動するし、ブッシュを固くすると位置決め精度が上がるがNVHが強くなって乗り心地が低下する。

種類[編集]

大きく分けるとクロスビームとトレーリングアームの接合位置により以下の三種類に分類される。 図中の橙色の部分がクロスビーム、黄色はトレーリングアーム(トレーリングリンク)、緑色はラテラルロッド(パナールロッド)となる。

  • ピボットビーム:クロスビームが車軸と離れているため両輪の独立性が高くとれ、他よりも独立懸架(トレーリングアーム式)に近い。タイヤからの横力の影響をクロスビーム、トレーリングアームともに受けやすいため、高い曲げ剛性が必要となる。前述の初代ゴルフはこの方式をとっている。
  • カップルドビーム(カップルドリンク):現在の主流といえるレイアウト。形状の自由度が高く設計次第で剛性を高く取りやすい。近年の形状解析や材質の進歩から軽量かつ高剛性のトーションビームを低コストで製造できるようになったため廉価帯の車両を含めカップルドビームを採用する事が多くなっている。
  • アクスルビーム:車軸とほぼ同軸にクロスビームがあるため、他よりも車軸懸架(3リンク式)に近い。形状的に横剛性が低いためラテラルロッドなど[1]による保持が必要となる。設計が簡素で済むことから一時期は多用されたが、ホイールストロークと同等のビーム可動域が車室・荷室を圧迫することもあり、現在はカップルドビームに移行しつつある。

脚注[編集]

  1. ^ 日産が「マルチリンクビーム式」と呼称したものでは、横方向の規制をスコットラッセルリンクとした。

関連項目[編集]