キハダ (植物)
キハダ | |||||||||||||||||||||
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キハダ
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Phellodendron amurense Rupr. var. amurense (1857)[1] | |||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||
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和名 | |||||||||||||||||||||
キハダ(黄膚、黄檗、黄蘗、黄柏) | |||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||
Amur Corktree |
キハダ(黄蘗[8]、学名: Phellodendron amurense)はミカン科キハダ属の落葉高木。山地に生える。外樹皮を剥がすと見える内樹皮が黄色いのが特徴で、和名の由来となっている。この内樹皮は薬用にされ、オウバクという生薬になる。
名称
[編集]和名は、樹皮の表皮と内部の木質部との間にある内皮が、鮮やかな黄色であることから、「黄色い肌」の意に由来する[9]。別名は、シコロ[10]、シコロベ[10]、オウバク(黄檗)[11]、キハダが転訛してキワダ[9]のほか、内皮に苦味があることからニガキ[12]ともよばれている。米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)によれば、ヒロハノキハダ、エゾキハダ、アムールキハダ、ミヤマキハダはキハダの別名とされる[1]。
中国植物名(漢名)は、黃蘗[1]/黄柏(おうばく)[10]という。
分布・生育地
[編集]アジア東北部の台湾、朝鮮半島、中国の河北省から雲南省にかけて、またヒマラヤの山地に自生しており、日本では北海道(渡島半島・後志・胆振・日高・石狩)・本州・四国・九州・琉球に分布する[13][14]。山地に生え[10]、沢沿いに多い[8]。
形態・生態
[編集]落葉高木で雌雄異株[13]。樹高は10 - 25メートル (m)、目通り直径30センチメートル (cm) 程度になる[9][11]。樹皮はコルク質で、成木の外樹皮は淡褐灰色から暗褐色で、縦に深い溝ができ、内樹皮は濃鮮黄色で厚い[13][14][8]。若い樹皮はサクラに似ていて、赤褐色で滑らか、無毛である[8]。
葉は、対生葉序で奇数羽状複葉、長さは20 - 45 cmある[13][11]。小葉は5 - 13枚で、長さ5 - 10 cmの長楕円形、裏は白っぽく、葉縁は波状になる[13][11][15]。春に冬芽から芽吹き、展開した後から花序も出てくる[8]。
花期は5 - 7月[8]。雌雄異株[8]。本年生の枝先に円錐花序を出して、黄緑色の小さな花を多数つける[13][11]。果期は10月[11][15]。果実は核果で、直径10ミリメートル (mm) ほどの球形で緑色から黒く熟する[13][16]。核は、柿の種のような形をしている[16]。冬でも黒く熟した果実が雌株によく残っている[8]。
冬芽は半球形の鱗芽で褐色をしており、落葉するまで葉柄基部に包まれている葉柄内芽である。芽鱗は2枚で、毛が密生する[8]。枝先には仮頂芽を2個つけ、側芽は枝に対生する[8]。冬芽を囲む大きな馬蹄形やU字形の葉痕が目立ち、維管束痕が3個つく[8]。
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樹形
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樹皮
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葉
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花序
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果実
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冬芽と葉痕
利用
[編集]樹皮からコルク質を取り除いて乾燥させたものは、生薬の黄檗(おうばく、黄柏)として知られ、薬用のほか染料の材料としても用いられる。蜜源植物としても利用される。
生薬
[編集]生薬・ハーブ | |
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効能 | 健胃薬 |
原料 | キハダ樹皮 |
成分 | ベルベリンなど |
臨床データ | |
販売名 | 一般用医薬品検索 |
法的規制 | |
データベースID | |
KEGG | E00063 D06689 |
別名 | 黄檗、黄柏、en:Huáng bǎi |
樹皮からコルク質・外樹皮を取り除いて乾燥させると生薬の黄柏(おうばく)となり[10]、12 - 20年で採取できるようになる[13]。樹皮が厚いほど良品とされる[10]。夏のころ(6 - 7月)、樹液流動の盛んな時期に根際から切り倒して枝を払い、幹や枝の太い部分を1メートル間隔に輪状と縦傷をつけて切れ目を入れ、傷口にくさびを差し込んで樹皮をはぎ取り、外皮を除いて内皮の鮮黄色の部分を日干しして採取したものである[10][13][17]。
黄柏にはアルカロイドのベルベリン、パルマチン、マグノフィリンをはじめ、オバクノン、タンニン、粘液質などの薬用成分が含まれており、特にベルベリンは苦味成分と抗菌作用を持つといわれる[17][14]。主に苦味健胃、整腸剤として、製薬原料として用いられ[13][17]、陀羅尼助、百草などの薬に配合されている[15]。また、黄連解毒湯や加味解毒湯などの漢方方剤に含まれる。粘液質やタンニンには収斂や消炎作用があり、打ち身や捻挫に外用される[17]。日本薬局方においては、黄柏を粉末にしたものを「オウバク末」として薬局などで取り扱われており[17]、本種と同属植物を黄柏の基原植物としている。
民間療法では、胃炎、口内炎、急性腸炎、腹痛、下痢に、黄柏の粉末(オウバク末)1回量1グラムを1日3回服用する用法が知られている[10][13][17]。強い苦味のため、眠気覚ましとしても用いられたといわれている。妊婦や胃腸が冷える人への服用は禁忌とされる[10]。
このほか、打撲や捻挫、腰痛、関節リウマチなどに、中皮を粉末にして同量の小麦粉と合わせて酢でドロドロに練り、布やガーゼに塗って冷湿布にして患部に貼り、乾いたら張り替える[13][18]。
サプリメント
[編集]海外では、シナホオノキ の抽出物とキハダからの抽出物を合わせたサプリメント製品(リローラ、Relora®)が販売され、コルチゾールを低下させるとの報告がある[19]。
染料
[編集]キハダは、黄蘗色(きはだいろ)ともよばれる鮮やかな黄色の染料で[15][20]、黄色に染め上げる以外に赤や緑色の下染めにも利用される。なかでも、紅花を用いた染物の下染めに用いられるのが代表的で、紅花特有の鮮紅色を一層引き立てるのに役立っている。なお、キハダは珍しい塩基性の染料で、酸性でないとうまく染め上がらない。このため、キハダで下染めをした後は洗浄を十分にする必要がある。
虫食いを防ぐ効果を期待し、仏教経典用紙の染色にも使われた時代もある。現存する正倉院文書や薬師寺伝来の『魚養経』などは経年によって茶色く変色しているが、染めた直後は墨書された文字を映えさせる効果もある[21]。
木材
[編集]キハダの心材も黄色がかっており、木目が明確であるため、家具材などに使用される[15]。ただし、軽量で軟らかいため、あまりにも強い荷重がかかる場所には向いていない。一部では桑の代用材として使用されるが、その場合には桑との区別として「女桑」と表記される。
脚注
[編集]- ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Phellodendron amurense Rupr. var. amurense キハダ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年9月27日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Phellodendron amurense Rupr. var. suberosum (H.Hara) H.Hara キハダ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年9月27日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Phellodendron amurense Rupr. var. lavalleei (Dode) Sprague キハダ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年9月27日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Phellodendron amurense Rupr. var. sachalinense F.Schmidt キハダ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年9月27日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Phellodendron sachalinense (F.Schmidt) Sarg. キハダ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年9月27日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Phellodendron lavalleei Dode キハダ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年9月27日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Phellodendron insulare Nakai キハダ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年9月27日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 118
- ^ a b c 田中孝治 1995, p. 131.
- ^ a b c d e f g h i 貝津好孝 1995, p. 24.
- ^ a b c d e f 西田尚道監修 志村隆・平野勝男編 2009, p. 221.
- ^ 辻井達一 1995, p. 220.
- ^ a b c d e f g h i j k l 馬場篤 1996, p. 44.
- ^ a b c 辻井達一 1995, p. 222.
- ^ a b c d e 平野隆久監修 1997, p. 246.
- ^ a b 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2018, p. 141.
- ^ a b c d e f 田中孝治 1995, p. 132.
- ^ 廣部千恵子「日本の民間薬4 : 皮膚のトラブルに対する民間薬2」『清泉女子大学紀要』第50巻、清泉女子大学、2002年12月、87-132頁、CRID 1050001201663234816、ISSN 05824435、NAID 110000952141。
- ^ “Effect of Magnolia officinalis and Phellodendron amurense (Relora®) on cortisol and psychological mood state in moderately stressed subjects.”. Journal of the International Society of Sports Nutrition. (2013). doi:10.1186/1550-2783-10-37. PMID 23924268.
- ^ 新井清、高沢道孝「古代染色の化学的研究: 第3報古代黄藥染について」『奈良大学紀要』第2号、奈良大学、1973年12月、1-13頁、CRID 1573668927392491136、ISSN 0389-2204、NAID 120002600810。
- ^ 黄蘗色【きはだいろ】『日本経済新聞』朝刊2019年7月14日(NIKKEI The STYLE)18面。
参考文献
[編集]- 貝津好孝『日本の薬草』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年7月20日、24頁。ISBN 4-09-208016-6。
- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、118頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『増補改訂 草木の 種子と果実』誠文堂新光社〈ネイチャーウォッチングガイドブック〉、2018年9月20日、181頁。ISBN 978-4-416-51874-8。
- 田中孝治『効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法』講談社〈ベストライフ〉、1995年2月15日、131 - 132頁。ISBN 4-06-195372-9。
- 辻井達一『日本の樹木』中央公論社〈中公新書〉、1995年4月25日、220 - 223頁。ISBN 4-12-101238-0。
- 平野隆久監修『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、246頁。ISBN 4-522-21557-6。
- 西田尚道監修 志村隆・平野勝男編『日本の樹木』学習研究社〈増補改訂フィールドベスト図鑑 5〉、2009年8月4日、221頁。ISBN 978-4-05-403844-8。
- 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光社、1996年9月27日、44頁。ISBN 4-416-49618-4。
- 伊沢凡人・会田民雄『薬草図鑑:カラー版』家の光協会、1999年8月。ISBN 4-259-53653-2。
- 岡田稔 監修、和田浩志・寺林進・近藤健児 編『原色牧野和漢薬草大圖鑑』北隆館、2002年10月。
- 林弥栄 編『日本の樹木』山と渓谷社〈山渓カラー名鑑〉、1989年9月。ISBN 4-635-09017-5。
外部リンク
[編集]- キハダ 日中医薬研究会・関西支部
(日中医薬研究会の新URLの http://nittyuuiyaku-kennkyuukai.com/ 下には該当URL無し)
- キハダ - 素材情報データベース<有効性情報>(国立健康・栄養研究所)