領収書
領収書(りょうしゅうしょ、英: receipt)は、代金の受取人が支払者に対して、何らかの対価として金銭を受け取ったことを証明するために発行する書類のこと。
領収書を英語でいうと、レシートとなるが、日本語で"レシート"と言うとキャッシュレジスターから印字されたレジ・シートのことを指し、手書きなどで領収書の書式に記載された”領収書”と使い分けることが多い。
領収書に当たるもの
領収書は、「領収書」という文言が入った書面のみを指すのではなく、受取書、引落明細書、領収、受領等の文言の入った書面でも金銭授受の証拠となりうる。受取事実を証明するために請求書や納品書などに「代済」や「了」などと記入したものや、これらの文言の入ったインターネット上の取引画面や電子メールのプリントアウトしたものも同様である。
- スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどのキャッシュレジスター(レジ)でロール紙などに印字され手渡しされる"レシート"も、領収書の一つである。しかし日本においては、レジで機械的に印字されるものをレシートと称することが多く、レシートでは領収書として使えないという認識があり、税法上の「領収書としての要件」を満たしていない場合もあり、別途手書きや打痕印字された「領収書」と文言の入った書式を請求することがある。いずれにしても、レシートも要件を満たしていれば領収書として認められるため、領収書の二重発行とならないように、レシートに『領収書』等と印字したり、『領収書として使える』ということを周知させたりしており、また近年では、操作により宛名・但し書きの記入欄がある領収書スタイルのレシートを発行するレジスターが広く普及している。但し、感熱紙で印刷されたレシートは時間がたつと読めなくなることがあるので、保存には注意が必要。
- 手書きの場合、改竄(書き換え)を防止するために、漢数字でも特に大字(壱(1)、弐(2)、参(3)…)が用いられることが多い。高額な領収書ではチェックライターという専用の機械を使用することもある。
- 領収書を別途発行した場合のレシート無効処理としては、店員の不正防止策として、領収書の控えへレシートを貼り付ける、領収書を発行したレシートを取りまとめレポートとして報告する(レジには発行したレシートの処理通番や発行枚数が記録され、レジ日報として出力可能なものがあり、これとの照合により不正を行っていないことを証明する)がある。また、レシート自体が、領収書スタイルのものとレシートの明細部分を合体させた様式のものとして、別途領収書は手書きを含めて一切発行できないとする日本の家電量販店がある。さらに、領収書に取り扱いが管理された指定印の押印がないものは無効、と明記することで不正対策とするケースもある。
- 納品書として印字するレシート、伝票類に「現金でのお取引の場合は、領収書に代えさせていただきます。」と明記しているものもある。日本のガソリンスタンドで発行されるレシート(伝票)に多い。
- レジから発行される横型領収書については、東芝テックが複数の特許を取得している(日本の特許第2679892号、特許第2912766号、特許第2945880号)。
- 法律的に領収書の要件を満たしても、日本では、法人団体等の不正経理防止対策の一環として、団体の内部規則で法律より厳しい要件条件が定義されている場合もある。
- 公共交通機関の場合
- 日本の鉄道運賃の場合、鉄道駅や旅行会社窓口・専用の指定席券売機で発売される長距離乗車券類を除き、近距離用の金額選択式自動券売機では領収書を発行できる券売機は古い機械では少ない。乗車カード(プリペイドカード)の購入の場合、領収書を発行できる券売機が多い。領収書が必要となった際、購入したきっぷを持って窓口で領収書を作るよう請求すると作ってくれる。ただし無人駅や名古屋鉄道などの駅集中管理システム対応の駅等の場合、駅員がいないために発行が出来ない。そのために領収書が必要な場合は「下車駅で発行(有人駅の場合)」「接続駅等で発行(有人駅の場合)」「郵送」等で対処している。いずれにしても、タッチパネル式の券売機では領収書が発行できるものが多いが、購入する乗車券類の条件、また鉄道事業者等ごとの設定によって発行の可否が制御されている場合もある。
- 日本国外の鉄道を利用した場合、信用乗車制などにより、チケットが手元に残るケースでは、日本の法律の要件を満たせば、領収書の代わりとして利用できると考えられる。
- 日本の路線バスや路面電車も、その乗降システム上、車内で領収書の発行に応じることは難しい。窓口等でプリペイドカードを購入した場合、領収書を発行してもらえる場合がある。高速路線バスは、バス会社や旅行会社窓口で購入して領収書を請求すれば、発行に応じる場合がほとんどである。コンビニエンスストアで高速バスチケットを購入した場合、コンビニエンスストアが、収納代行企業または旅行会社の代理として、収納代行企業または旅行会社名義の領収書を発行する。インターネット上のクレジットカード払いの場合、後日クレジットカード会社が発行するカード利用明細書兼請求書が領収書として認められる事が多い。
- 日本国外の事例は、鉄道とほぼ同じである。
- 日本の場合、空港などの航空会社のカウンターで航空券を購入すれば、領収書の発行は容易に求められる。チケットレスサービス(→電子航空券)でコンビニエンスストアで支払った場合は、前述の高速バスの事例同様、航空会社名義またはコンビニエンスストア自身(収納代行機関として)の名義で領収書が自動発行されるのがほとんである。日本では、インターネットでクレジットカード決済した場合も、航空会社カウンターに申し出るか、自動チェックイン機で発行が可能な場合がある。また、インターネットのウェブサイトを使って表示・印字が可能な場合がある。
- 日本のタクシーではほとんどの場合、領収書(プリンターから打ち出されるレシート形式)が渡される。それ以外の場合も、手書き領収書を備え、発行に応じる。
交付義務
全ての取引について発行が強制されている訳ではないが、日本の民法第486条は「弁済をした者は、弁済を受領した者に対して受取証書の交付を請求することができる。」と規定し、また、債権者が受取証書を発行しないときは、債務者は同時履行の抗弁権を行使して弁済を拒むことができるものと解されている。
しかし、民法第486条の受取証書の交付義務(請求)というルールは任意規定であり、特約が優先されるので、当初の取引(契約)の時点で、当事者間で「領収証の発行義務はない」と決めておけば発行義務なし、ということになる[1]。
弁済を受領した者は、ひとたび受取証書を発行すれば再度の発行義務を免れるが、任意で再発行することは妨げられない。ただし、再発行する場合は、その旨を明記した領収書(受取証書)を発行すべきである。
また、一部の量販店のように各階、あるいは売り場ごとの精算になっている場合、とりあえずレシートを受け取り、複数のレシートを最終的に1枚の領収書にまとめる場合もある。
支払い手段による違い
- 銀行振込等による支払いの場合
- 銀行振込などの場合、直接の金銭支払先は送金手続きをした金融機関となり、その金融機関により明細が発行されるため、それが領収書の代わりとなるという解釈があるが、正確ではない。「振込明細書」は「何の代金なのか」「代金の一部なのか」などの情報が載っていないため、原則としては、銀行振込の場合でも領収証発行義務は消滅しない[1]。
- クレジットカード支払による場合
- クレジットカードによって決済した場合は、支払人(カード利用者)はクレジットカード会社に対して金銭を支払うのでクレジットカード会社発行の利用明細書が領収書相当となる。従って物品やサービス提供者(販売元)は領収書を発行する立場にはなく控え(取引明細)を発行するのみとなる。
税法上の扱い
日本における経理処理では、公共交通機関の運賃や慶弔費などの例外を除き、受取証書で証明ができないと、税法上経費として認められないと誤解されることが多いが、一部の例外(一定額以上の消費税の仕入控除など)を除いて必要経費の形式的証明義務は一切課されていない。課税当局が経費計上を否認するには経費の証明がないことだけでは足らず、計上された経費が架空であることを課税当局自身が証明する必要がある(白色申告の場合を除く)。また、年月日、相手先、内容、対価の明記が必要であるとの誤解があり、消費税法特有の規定であるが、税法一般では「上様」や「品代」の記載でも認められる。
印紙税に関して
金額が5万円以上(2014年(平成26年)3月31日以前は3万円以上)[2]の領収書には原則として収入印紙を貼り、消印をすることで印紙税を納税しなければならない。なお、あらかじめ税務署に届けていれば、「印紙税申告納付につき○○税務署承認済」と領収書に表示(あらかじめフォーマットへの機械印字するケースや印紙貼付欄にスタンプを押捺するケースなどがある)し、印紙額相当分を税務署に納めれば、貼付しなくともよい。
印紙を貼る義務は、領収書の発行側にある。収入印紙を貼らなかった場合、あるいは不足していた場合は、不足した分の3倍の金額の過怠税が課せられる。印紙が貼付されていない領収書であっても、領収書としての有効性には変わりはない。また、収入印紙の貼付義務を免脱するために、取引を分割しないまま受領金額が5万円未満となるように分割して発行した場合には、印紙税法上明確な禁止規定がないため追徴課税は出来ないとされている。なお、クレジットカード会社発行の利用明細書は、課税当局が領収書と認めていないため印紙を貼る必要がない。
領収書の収集趣味
切符、切手、駅弁の包み紙など印刷された紙片を集める収集家のうち、1円(または1通貨単位)以上の商品を買い物をすれば必ず入手できる領収書に着目し、ありとあらゆる領収書を集める収集家も現れた。この場合、領収書を略して「書」と呼ぶことがある。日本の"領収書"の場合、コクヨやヒサゴなど文具メーカー製の既製品はあまり好まれない。発行者オリジナルのものが好まれ、例えば不二家ではマスコットキャラクターであるペコちゃんの絵が入っているかないかで価値が大きく異なるという。また、日本でレシートスタイルの領収書の収集家もいる。店の名前やロゴマークが印刷される物が多くを占めるため価値がある。特に旅行等で地元に進出していないチェーン店はもちろん、その土地にしかないローカルな店の物を実際に買い収集する人も少なくない。
注意点
この節には独自研究が含まれているおそれがあります。 |
- 客の立場としては、通帳や振込金受領書などと付き合わせる必要がある取引明細書(納品書、請求書等を含む)より、その必要の無い領収書のほうが便利であるのは言うまでもない。
しかし、逆に言えば、きちんと付き合わせることの出来るのが、原本の取引明細書と言える。
日本では金額が5万円未満で、印紙貼付の義務が無い場合においては、店側としては納品書等ではなく領収書を発行しても特に不利益がある訳ではないとする意見もあるが、現金での取引が非常にまれな営業形態の場合、領収書の発行履歴が多くて、税務調査などで現金売り上げ隠しと見られることを懸念することがある。 - このような現金受け取り以外の領収書の発行については、納品書など物品ないし役務の授受となる書類を別途発行していないかどうか、検証した上で発行する必要がある。
それでも領収書発行を求められ発行する場合は、具体的な品目はもちろん、取扱日、決済方法、実際の決済名義人など詳細を備考欄などに記入し金銭の流れを明らかにすることが求められる。 - 銀行振込、カード決済、電子マネーと多種多様な決済方法がある現代において、記入という手作業を経て発行された領収書よりも、機械的に印字される領収書や、取引明細書等の方が信用ある証書ということができる。
ただし、日本では偽造が比較的簡単にできるとされる印鑑のほうが、直筆署名(サイン)よりも重要視されるなど、他にも不合理とみられる場合がある商慣習はいくらでも存在する。
脚注
- ^ a b 以下のリンクを参照。ただし、いち弁護士の見解である事は留意されたし。『銀行振込と領収証発行義務~「特約」しとかないとエライ目に~』
- ^ 金額について、税抜金額を記載している、あるいは消費税額が明確に明示されている場合以外の場合では、税込金額で判断される(消費税の免税業者を除くと誤解されることがあるが、印紙税法と消費税法は全く別の法律であり、関係がない)。
関連項目
- 返抄 - 古代・中世における領収書。
- 配当金領収証 - 領収証という名前がついているが、株主が配当金を受け取るための引き換え証である。
- 軍用手票 - 通貨のように流通しているが法的な実態は領収書である。
- 医療費の内容の分かる領収証 - 2006年の診療報酬改定で導入された、診療報酬区分毎の点数等が記載された領収書。
- 統一発票 - 台湾における領収書