霜
霜(しも)とは、物体の表面が冷やされることで、空気中の水蒸気が昇華(固体化)し、氷の結晶として堆積したものである。
概要
空気と接触している物体の表面の温度が霜点(温度が0℃以下のときの露点のこと)よりも低くなると、空気中の水蒸気が昇華し、物体の表面から針状の氷の結晶として伸びる。この結晶のこと、あるいはこの現象自体を霜と言う。温度が上昇し融点よりも高くなると氷が融解して水滴となる。
自然現象として霜が発生することを「霜が降りる」と言う。 地域的には、寒帯、冷帯のほか、温帯や乾燥帯で冬の寒さが厳しい地域でみられる。寒候期に、風も弱く穏やかに晴れて放射冷却が発生し、気温がおよそ5℃以下まで下がった朝、地面付近の温度は気温よりも数℃低い0℃以下となり、霜が降りることがある。気温がさらに低い場合は昼間でも発生し、一日中霜が融けないことがある。
周囲より少し窪んだ地形の場所や、谷底などでは、冷気が溜まりやすいため霜も降りやすい。こういう地域は霜道や霜穴などと呼ばれている。
霜は、植物の葉や茎、地面、建物や車の窓などに付着したものが良く目立つが、空気と接触しているあらゆる物体にできる。
地中の水分が凍ってできる霜柱は、霜とは別の現象である。
ガラスの表面では、雪の結晶と同じように、樹枝状などさまざまな形状に氷の結晶が発達するのも見られる。
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十字状の霜
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雪の結晶のような霜
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枝状の霜
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シダの葉状の霜
初霜・終霜
寒候期に最初に発生した霜を初霜(はつしも)あるいは霜の初日、最後に発生した霜を終霜(しゅうそう)あるいは霜の終日という。
霜による影響と対策
窓に付着した霜は窓霜と呼ばれ、窓を不透明にしてしまう。車であれば外が見えなくなるので、取り除く必要がある。
植物に付着すると、霜が植物を直接冷やしてしまい、活動が低下するほか、中の水分が凍って養分などが滞り、枯れてしまうことがある。
霜が毎年降りる地域では、霜が降りる時期に合わせて、農作物やその他の植物に霜対策を施す。しかし、春に晩霜(おそじも)が、秋に早霜(はやじも)が降りると、農作物に大きな被害を与えることも多い(凍霜害)。春と秋の霜が降りるほど気温が下がると予想されるときに霜に関する注意喚起として霜注意報が発表される。この霜注意報は冬には発表されない。
霜の害を防ぐには、地面に水をまいて湿度を上げ、放射冷却を弱める方法や、同じく水を撒きっぱなしにしてあえて凍らせ続けることで作物の温度を零度以上に保つ方法(散水氷結法)、送風機で風を送り、地表の冷気と高いところにある温度の高い空気を混ぜ、気温の低下を防ぐ(防霜ファン)といった方法がある。後者二つは茶畑などでよく用いられている。温暖地の果樹(特に梨)栽培では練炭や薪のコンロを果樹園のあちこちに設置して、晩霜を防ぐ対策がとられる場合もある。
霜は気温が0℃以上でも生じる。これは、霜の発生を決める地表付近の温度と気温は異なり、地表付近の温度のほうが低くなるためである。そのため、植物の生育環境を示す指標としては、「気温0℃」よりも「霜の有無」のほうが実態に近く、熱帯系の植物の生育可能な範囲は往々にして霜が降りるかどうかで決定される。日本では、紀伊半島南岸以南の多くの地域は年間を通じて霜が降りない。この線を北限とする生物がかなりあることが知られている。
冷蔵庫の霜
かつての冷蔵庫は冷凍庫が分離しておらず、同一の庫内に製氷室があったものであるが、この製氷室の壁や氷の周りには霜がよくついた。放っておくと次第に蓄積して固まった氷になり、すべてを巻き込んで固まってしまう。時折これを剥がしてやらなければならなかった。それを行う霜取り機能がついたものもあった。