阿部洋一

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阿部 洋一
生誕 (1981-12-06) 1981年12月6日(42歳)
日本の旗 日本千葉県
国籍 日本の旗 日本
職業 漫画家
活動期間 2006年 -
ジャンル 少年漫画青年漫画
代表作 「血潜り林檎と金魚鉢男」など
受賞 平成23年度 [第15回] 文化庁メディア芸術祭マンガ部門 審査委員会推薦作品
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阿部 洋一(あべ よういち、1981年12月6日[1] - )は、日本漫画家千葉県出身[2]男性京都精華大学芸術学部マンガ学科ストーリーマンガコース卒業[2]

代表作に平成23年度 [第15回] 文化庁メディア芸術祭マンガ部門の審査委員会推薦作品に選出された「血潜り林檎と金魚鉢男」など[3]

来歴[編集]

幼少時から近所に船溜まりがあったためよく魚の頭の絵を描いており、小学生の頃になると将来の夢として漫画家を志すようになる[1]

高校時代は漫画研究部に所属し、林田球ウエダハジメ唐沢なをき等の漫画と出会ったことで「太く個性的なタッチでも商業誌に描けるのか」と感動したという[1]。卒業後は地元を離れ[1]、2000年4月に新設された京都精華大学芸術学部マンガ学科ストーリーマンガコースに第1期生として入学[2]。この時の同期生として、同業者の助野嘉昭やフリー編集者の呉塵罡などがいた[4][5][注 1]

2004年に同大学を卒業後[2]、2005年10月に『月刊サンデージェネックス』(小学館)編集部主催の第15回GX新人賞にて努力賞を受賞[10]したが同誌でのデビューは叶わず、2006年頃は『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)にてデビューを目指していた[5]。大学時代の教員からの紹介がきっかけとなり、新創刊の少年誌『月刊少年ファング』(リイド社)連載の「少女奇談まこら」で漫画家デビューを果たす[2][5]。同誌は創刊から1年後の2007年に休刊したが、その後は講談社集英社などに執筆の場を広げ、『別冊少年マガジン』(講談社)創刊号から「バニラスパイダー」を連載した。

2011年には『電撃コミック ジャパン』(アスキー・メディアワークス)にて連載していた「血潜り林檎と金魚鉢男」が、平成23年度 [第15回] 文化庁メディア芸術祭マンガ部門の審査委員会推薦作品に選出された[3]。「血潜り林檎と金魚鉢男」は「オニクジョ」と共に、中国アニメ制作会社NiceBoatAnimationによってアニメーションPV化されている[11][12]

作風[編集]

太い線を使った独特なタッチの絵や奇抜な設定を用いながらも、リアルな描写と淡々としたストーリー展開を織り交ぜる独自の作風が持ち味[13][14][3]。画風は昭和風・和風を思わせるが、これに関しては「幼少期に船溜まりの町で育った体験がベースにあるのでは」と阿部自身が述懐している[1]。なお執筆作品内にホラー・グロテスクと取れる描写が存在することがあるが、これは大学生の頃から変わっていない[5]。ただ、フェチ要素を含む少年少女の物語を描く方が自身の好き放題やっているという[15]。これらの作風は、『別冊少年マガジン』(講談社)創刊時の班長であった朴鐘顕には「唯一無二」、『電撃コミック ジャパン』編集長であった勝見正克には「オンリーワンな才能」と評されている[16][17]

大学生時代には当時教授であった漫画編集者山本順也から映画を見るように薦められ、それがきっかけで視聴し始めた映画の中でも三池崇史黒沢清塚本晋也といった映画監督の作品が好みであると挙げている[5]。このうち三池監督作品の『DEAD OR ALIVE 犯罪者』は、影響・衝撃を受けた作品であるという[18]。この他影響を受けた漫画として『魔剣X ANOTHER』(林田球)と『フリクリ』(ウエダハジメ)も挙げている[19]

作品リスト[編集]

連載[編集]

読み切り[編集]

  • 河童の食卓(『食漫』vol.00(2007年10月発売)) - 旧版『血潜り林檎と金魚鉢男』第2巻に収録。
  • 血潜り林檎と金魚鉢男(『月刊ComicREX』2008年6月号/2009年4月号) - 新装版『血潜り林檎と金魚鉢男』第2巻及び第3巻に収録。連載開始前のプロトタイプ
  • どうぶつよんこま[注 2](『別冊少年マガジン』2010年3月号) - 単行本未収録。
  • チラッとバニラスパイダー(『週刊少年マガジン』2010年26号/36・37合併号) - 『バニラスパイダー』第2巻に収録。宣伝漫画。
  • よんこま![注 3](『マガジンSPECIAL』2010年No.7/2013年No.9/2014年No.1) - 単行本未収録。
  • オニクジョ(『ウルトラジャンプ』2011年2月号/2014年2月号) - 『阿部洋一短編集 オニクジョ』に収録。2011年掲載分は旧版『血潜り林檎と金魚鉢男』第3巻にも収録。
  • 金属のキミへ(『ウルトラジャンプ』2013年4月号) - 『阿部洋一短編集 オニクジョ』に収録。
  • 京都のおもいで[注 4](『月刊少年チャンピオン』2013年10月号) - 単行本未収録。
  • 斬殺!ポニーテール(『ウルトラジャンプ』2016年10月号) - 単行本未収録。
  • 果肉の娘(『キッチュ』ワイズ出版創刊号(2016年12月発売)) - 単行本未収録。
  • 劇画狼のエクストリームマンガ学園015「それはただの先輩のチンコ」[注 5](『リイドカフェ』2017年4月8日) - 後にこの読み切りを第1話として連載化。
  • 潤いの友達(『ハヤカワ・ミステリマガジン』2017年11月号) - 単行本未収録。
  • 須弥山(『キッチュ』ワイズ出版第二号(2019年2月発売)) - 藤原カムイ花輪和一ほし埜日高トモキチと共に執筆したリレー漫画[22]。単行本未収録。
  • 月へ(『キッチュ』ワイズ出版第三号(2021年5月発売)) - 単行本未収録。

この他に同人誌時代の『キッチュ』(呉塵罡が編集)にもいくつか作品を発表している。この内第三号に掲載された「ぢごく」は旧版『血潜り林檎と金魚鉢男』第2巻に収録され、3.5復活号と第五号に掲載された「それはただの先輩のチンコ」は商業作品として連載化されている。

書籍[編集]

各巻の詳細は該当項目を参照。

漫画単行本[編集]

書籍イラスト[編集]

その他[編集]

など。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ なお2人とも一時的ではあるものの、阿部の作画スタッフとして作品を手伝っている(単行本で確認できる限りでは、助野は「少女奇談まこら」[6]、呉は鬼山龍宿ペンネームで「少女奇談まこら」[6]「バニラスパイダー」[7]「橙は、半透明に二度寝する」[8]「新・血潜り林檎と金魚鉢男」[9])。
  2. ^ 雷句誠の「どうぶつの国」を題材とした4コマ漫画企画。「バニラスパイダー」とのコラボ作品を執筆。
  3. ^ 『マガジンSPECIAL』の連載企画。2010年掲載分は「バニラスパイダー」、それ以外は「橙は、半透明に二度寝する」の4コマ漫画を執筆。
  4. ^ 企画「ご当地コミックフェスタ」の1作として掲載されたエッセイ漫画
  5. ^ 絶版本収録作品や単行本未収録作品を紹介する企画「劇画狼のエクストリームマンガ学園」の第15回にて配信[20]。元々は同人誌時代の『キッチュ』3.5復活号に掲載された10ページ漫画だったが、この掲載にあたり8ページ加筆されている[21][20]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e 「[非日常な彼女]043.阿部洋一 interview」『月刊!スピリッツ』第34巻第15号、小学館、2013年4月号、30頁。 
  2. ^ a b c d e 京都精華大学 卒業生ファイル 卒業生の仕事、生き方、歩き方。”. 京都精華大学. 京都精華大学 (2014年4月30日). 2015年12月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月17日閲覧。
  3. ^ a b c 血潜り林檎と金魚鉢男 | 審査委員会推薦作品 | マンガ部門 | 第15回 2011年 |”. 文化庁メディア芸術祭 歴代受賞作品. 文化庁. 2016年5月5日閲覧。
  4. ^ 田中圭一 (2015年11月6日). “田中圭一×『双星の陰陽師』助野嘉昭先生インタビュー”. 電子書籍・漫画(マンガ)| BookLive!. BookLive. 2016年5月5日閲覧。
  5. ^ a b c d e 聞き手:鬼山龍宿 構成:くれたかし「作家インタビュー:阿部洋一」『総合マンガ誌 キッチュ』 第二号、キッチュ出版、2010年8月、13-18頁。 
  6. ^ a b 原作:平野俊貴植竹須美男 作画:阿部洋一『完全版 少女奇談まこら』 第2巻(初版)、発行:アスキー・メディアワークス 発売:角川グループパブリッシング電撃ジャパンコミックス〉、2011年10月15日、2頁。ISBN 978-4-04-886054-3 
  7. ^ 阿部洋一『バニラスパイダー』 第1巻(第1刷)、講談社講談社コミックスマガジン〉、2010年4月16日、189頁。ISBN 978-4-06-384290-6 
  8. ^ 阿部洋一『橙は、半透明に二度寝する』 第1巻(第1刷)、講談社〈講談社コミックスマガジン〉、2014年6月9日、191頁。ISBN 978-4-06-395115-8 
  9. ^ 阿部洋一『新・血潜り林檎と金魚鉢男』 第2巻(第1刷)、発行:アース・スター エンターテイメント 発売:泰文堂〈アース・スター コミックス〉、2017年5月25日、241頁。ISBN 978-4-8030-0993-4 
  10. ^ 「第15回GX新人賞発表」『月刊サンデージェネックス』第6巻第11号、小学館、2005年11月号、345頁。 
  11. ^ 好传动画 官网 《潜血者林檎与金鱼缸男》” [NiceBoatAnimation 公式サイト 《血潜り林檎と金魚鉢男》] (中国語). 好传动画 官网. 天津市好传文化传播有限公司. 2017年12月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月17日閲覧。
  12. ^ 好传动画 官网 《鬼驱除》” [NiceBoatAnimation 公式サイト 《オニクジョ》] (中国語). 好传动画 官网. 天津市好传文化传播有限公司. 2017年12月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月17日閲覧。
  13. ^ ササキバラ・ゴウ (2010年5月23日). “バニラスパイダー1 [作]阿部洋一”. BOOK asahi.com:朝日新聞社の書評サイト. 朝日新聞社. 2016年5月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年7月12日閲覧。
  14. ^ 朴鐘顕 (2009年9月9日). “阿部洋一先生は最高です。”. 『別マガ』班長は今日も困っている。. 講談社. 2009年9月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年9月26日閲覧。
  15. ^ 小林聖 (2020年7月9日). “「羊角のマジョロミ」特集 阿部洋一×海法紀光対談 - コミックナタリー 特集・インタビュー”. ナタリー - ポップカルチャーのニュースサイト. ナターシャ. 2020年7月12日閲覧。
  16. ^ 朴鐘顕 (2009年11月17日). “「バニラスパイダー」は、唯一無二!”. 『別マガ』班長は今日も困っている。. 講談社. 2012年2月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年9月26日閲覧。
  17. ^ マンガ質問状 : 「血潜り林檎と金魚鉢男」 畳くさい和風な吸血鬼を考えた オンリーワンの発想に脱帽”. MANTANWEB(まんたんウェブ) - 毎日新聞デジタル. 毎日新聞社 (2012年2月27日). 2012年6月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年5月5日閲覧。
  18. ^ 聞き手・構成:呉塵罡「特別企画対談 阿部洋一×助野嘉昭×キッチュ」『総合マンガ誌 キッチュ』 第六号、キッチュ出版、2014年12月、62-71頁。 
  19. ^ 「第18回 マンガの現場 阿部洋一先生徹底解剖!!」『別冊少年マガジン』第5巻第7号、講談社、2013年7月号、596-598頁。 
  20. ^ a b 4/8(土)正午『エクストリームマンガ学園』を更新 - LEED Cafe”. LEED Cafe - webまんが リイドカフェ. リイド社 (2017年4月8日). 2017年5月6日閲覧。
  21. ^ 本誌情報>3.5復活号”. 総合マンガ誌「キッチュ」創作と娯楽の狭間を目指したマンガ・サブカルチャー誌. 2017年5月6日閲覧。
  22. ^ 本誌情報>ワイズ出版創刊二号”. 総合マンガ誌「キッチュ」創作と娯楽の狭間を目指したマンガ・サブカルチャー誌. 2019年9月17日閲覧。

外部リンク[編集]