血尿

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血尿(けつにょう)は、尿赤血球)が混入していること。赤血球尿とも呼ぶ。ミオグロビン尿・ヘモグロビン尿とともに、潜血反応が陽性を示す。

頻度

健康診断における潜血陽性率は、大学生で4~5%、40代は男6%女10%、60代は男11%女24%、80代以上は男17%女29%である(女性は月経血による偽陽性がかなり含まれていると思われる)。

分類

肉眼的血尿と顕微鏡的血尿に分けて考えられる。血尿かであるかどうかを調べるには顕微鏡的尿沈渣で赤血球が含まれるかどうかを調べるまでは分からない。尿沈渣検査で赤血球が5個/1視野以上あればなんらかの病気を示唆するが、良性の家族性血尿は治療不要である。尿中赤血球に破壊、変形が見られれば、糸球体病変を示唆する。

肉眼的血尿

尿が赤いことを肉眼的血尿という。これは患者の主訴、あるいは尿の色調変化のことであり必ずしも血尿ではない場合がある。色調変化があり顕微鏡的尿沈渣で赤血球が含まれれば肉眼的に確認できる血尿ということになる。この場合は1lの尿中に1ml以上の血液が入っていると見られる。特に症状がないのに血尿だけを認める場合、尿路の腎癌、腎盂癌、尿管癌、膀胱癌など)の可能性があるが、若年者ではその可能性は低い。

尿の色調変化があるが尿沈渣検査で赤血球が認められない場合は色素尿といわれる。ポルフィリン症、ヘモグロビン尿、ミオグロビン尿などが知られている。尿潜血反応陽性ならばミオグロビン尿やヘモグロビン尿、尿潜血反応が陰性ならばリファンピシンプロポフォールなどの薬剤性血尿やビート尿などが疑われる。ミオグロビン陽は横紋筋融解症で認められるもので、激しい運動の後や臥床や圧迫による筋壊死による血清CKの上昇が認められる。持続すると急性腎不全となるため大量輸液などが必要となる場合がある。またヘモグロビン尿は溶血性疾患でおこることが多く、血清の間接ビリルビンやLDHが上昇する、また重症熱傷で起こることもある。ヘモグロビン尿も持続すると腎不全を起こすことがある。重症熱傷の場合はハプトグロビンの補充療法を行い、ヘモグロビンと結合させることによって腎不全を防ぐという治療も存在する。

尿沈渣検査で赤血球が認められる肉眼的血尿の場合、糸球体からの出血か非糸球体からの出血か予測する方法がある。糸球体からの出血の場合は糸球体を通過する際に赤血球が破損するため不均一赤血球や赤血球円柱が認められることが知られている。また糸球体血尿の場合は凝固しないことがしられている。この場合はほとんどは腎臓内科の疾患となる。非糸球体血尿の場合は均一赤血球であり凝固しやすいことがしらている。この場合は泌尿器の疾患である場合が多い。非糸球体出血で代表的な緊急症に膀胱タンポナーデというものがある。膀胱タンポナーデでは非糸球体血尿が凝固することで膀胱出口を塞ぎ尿閉に陥ることである。膀胱タンポナーデは精巣捻転フルニエ症候群とならんで泌尿器科的緊急疾患とされている。

顕微鏡的血尿

顕微鏡的血尿は、顕微鏡検査でのみ赤血球を認める血尿。尿中に赤血球が5個/1視野以上ある場合に顕微鏡的血尿とする。

尿検体

新鮮尿(随時尿)による採取直後の検査が望ましい。早朝第一尿採取後、時間が経過してから検体を検査すれば、溶血によって顕微鏡検査が不正確になる。最近は家庭で潜血を自己検査できるキットが市販されている。

鑑別

原因疾患は、膀胱炎尿路結石ネフローゼ症候群腎癌尿管癌膀胱癌、等の尿路系疾患がある。

参考文献

関連項目