松島型防護巡洋艦
| 松島型防護巡洋艦 | |
|---|---|
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| 艦級概観 | |
| 艦種 | 防護巡洋艦 |
| 艦名 | 地名（日本三景） |
| 前級 | 千代田 |
| 次級 | 秋津洲 |
| 要目（松島） | |
| 排水量 | 常備：4,278トン |
| 全長 | 垂線間長：89.9m (295ft) |
| 全幅 | 15.39m (50ft 6in) |
| 吃水 | 6.05m (19ft 10in) |
| 機関 | 形式不明石炭専焼円缶6基 +横置型3段膨張式3気筒レシプロ機関2基2軸推進 |
| 最大出力 | 5,400馬力 |
| 最大速力 | 16.0ノット |
| 航続距離 | 不明 |
| 燃料 | 石炭：670トン |
| 乗員 | 360名 |
| 兵装 | カネー 1890年型 32cm（38口径）単装砲1基 アームストロング 1887年型 12cm（40口径）単装速射砲12基（厳島と橋立は11基） アームストロング 7.6cm（40口径）単装速射砲6門 オチキス 4.7cm（43.5口径）単装機砲6基 35.6cm水上魚雷発射管単装4門 |
| 装甲 | ハーヴェイ鋼 上甲板：39.7mm（1in9/16） 主甲板：38〜51mm（水平部）、75mm（甲板傾斜部）、127mm（機関部） 主砲防盾：100mm（最厚部） 主砲バーベット部：300mm（甲板上部） 揚弾筒：250mm 副砲防盾：110mm（最厚部） 司令塔：127mm（側盾）、35mm（天蓋） |
松島型防護巡洋艦（まつしまがたぼうごじゅんようかん）は、日清戦争及び日露戦争で活躍した旧日本海軍の巡洋艦。艦名から三景艦（さんけいかん）の愛称で知られる。
概要
松島型防護巡洋艦は3隻建造され、それぞれ松島（まつしま）、厳島（いつくしま）、橋立（はしだて）と命名されたが、日本三景である陸奥松島、安芸厳島（宮島）、丹後天橋立から名を取ったことが三景艦と呼ばれた所以である。
本型は艦名の優雅さから日本国民に親しまれたが、親しまれた理由はそれだけではない。理由はあと2つある。
本型が建造されたのはまさに大国清国との衝突が避けられない時期であった。中でもドイツとイギリスの支援を受けて整備した清国北洋艦隊の主力である砲塔装甲艦定遠級「鎮遠（ちんえん）」、「定遠（ていえん）」の2隻は、東洋最大級の主砲である30.5cm砲を4門も備えており、対する日本は24cm砲4門でしかない旧式の装甲艦「扶桑」1隻しかない日本艦隊にとって大いなる脅威であった。本型は、この清国戦艦2隻に対抗するためにフランスから招聘した造船技官エミール・ベルタンの設計により誕生したものである。その主砲はたった1門ながら清国艦隊の主力艦を撃破可能なカネー社の「32cm（38口径）砲」1門を搭載し、その口径では鎮遠、定遠を上回った。
しかし、当時の日本の港湾施設はベルタンの提唱した装甲艦クラスを運用するには能力不足で、加えて予算的に大型艦を購入できず、そのために艦の大きさはフランスの提示した物よりも小型にせざるを得ず、巨砲を小型の船体に収めるために装甲も機関も貧弱な物となってしまった。だが国力の乏しい日本としては一生懸命背伸びをした結果であり、それだけに日本海軍及び国民がかけた期待は大きかった。これが理由の2つ目である。
理由の3つ目は、日清戦争での海上主力対決となった黄海海戦において、本型を主力とした連合艦隊が北洋艦隊を破ったことである。三景艦主砲の32cm砲はあまり役に立たなかったが、副砲である速射砲と、高速を出せる艦隊の運動性の高さを生かし、撃沈はできないまでも敵戦艦の攻撃能力をほとんど奪ってしまった。続いて威海衛攻撃で北洋艦隊を全滅させ、本型は見事に国民の期待に応えたのである。
本型はその後、主力艦の座を富士型などの戦艦に譲った。日露戦争では、本型3隻に日清戦争時に鹵獲されたかつてのライバル「鎮遠」を加えた4隻を中心に、第三艦隊第五戦隊を編成した。主に、哨戒や掃海で活躍した。日本海海戦にも参加、バルチック艦隊を捕捉・触接し、敵艦隊の編成や動向を逐一通報する任を担った。
余談だが、本型は本来4艦建造される予定であった。しかし、上記にあるようにこれらが搭載する砲の運用に問題があり、3隻で打ち切りとなり、3及び4番艦を国内建造するため招いたベルタンを憤激させ、契約が残っているにもかかわらず帰国すると言うこととなった。なお、4番艦の名称は不明だが、一説には、4番艦の代わりに建造された「秋津洲」の艦名がその名前と言われている。
艦形
松島
本型の船体形状は当時、フランス海軍が主力艦から軽艦艇に至るまで主に導入していたタンブル・ホーム型船体である。これは、水線部から上の構造を複雑な曲線を用いて引き絞り、船体重量を軽減できる船体方式で、他国では帝政ロシア海軍やドイツ海軍、アメリカ海軍の前弩級戦艦や巡洋艦にも採用された。外見上の特徴として水線下部の艦首・艦尾は著しく突出し、かつ舷側甲板よりも水線部装甲の部分が突出すると言った特徴的な形状をしている。このため、水線下から甲板に上るに従って船体は引き絞られ甲板面積は小さくなっている。これは、備砲の射界を船体で狭められずに広い射界を得られることや、当時の装甲配置方式では船体の前後に満遍なく装甲を貼る「全体防御方式」のために船体が短くなればその分だけ装甲を貼る面積が減り、船体の軽量化が出来るという目的に採られた手法である。
「松島」の船体形状は長船首楼型船体である。水面部に衝角をもつ艦首甲板上に司令塔を基部にもつ船橋を両脇に付けた艦橋と1本煙突の背後に頂上部に二段の装甲化された見張り所を持つミリタリー・マストが1本立つ。ミリタリーマストとはマストの上部あるいは中段に軽防御の見張り台を配置し、そこに37mm～47mmクラスの機関砲(速射砲)を配置した物である。これは、当時は水雷艇による奇襲攻撃を迎撃するために遠くまで見張らせる高所に対水雷撃退用の速射砲あるいは機関砲を置いたのが始まりである。形状の違いはあれどこの時代の列強各国の大型艦には必須の装備であった。その背後から甲板1段分下がった遮蔽物のない後部甲板上に「カネー 1890年型 32cm（38口径）単装砲」を据えた露砲塔が後向きに1基が配置された。舷側部には副砲の「アームストロング 12cm（40口径）速射砲」を艦首上部に1基、中甲板上に砲郭（ケースメイト）配置で5基の片舷6基で計12基を配置していた。この武装配置により艦首方向に最大で12cm砲2門と4.7cm砲1門、左右方向に最大で32cm砲1門、12cm砲6門、艦尾方向に最大で32cm砲1門が指向できた。
橋立と厳島
「橋立」と「厳島」の船体形状は平甲板型船体である。「松島」と異なり、水面部に衝角をもつ艦首から甲板上に32cm砲を1基配置した。その背後に司令塔を基部にもつ船橋（ブリッジ）を両脇に付けた操舵艦橋と1本煙突の背後に頂上部に二段の装甲化された見張り所を持つミリタリー・マストが1本立つ。舷側部には副砲の「アームストロング 12cm（40口径）速射砲」を船体後部の中甲板上に砲郭（ケースメイト）配置で片舷6基を、艦尾甲板上に後向きに1基の計13基を配置していた。この武装配置により艦首方向に最大で32cm砲1門、左右方向に最大で32cm砲1門、12cm砲6門、艦尾方向に最大で12cm砲1門が指向できた。
兵装
主砲
本型の主砲としてフランスの砲遁メーカーであるカネー社の「カネー 1890年型 32cm（38口径）後装填式ライフル砲」を採用した。その性能は400kgの砲弾を、仰角10度で8,550mまで届かせられ、舷側装甲204mmを貫通でき、449kgの徹甲弾ならば射程8,000mで舷側装甲334mmを貫通できた。
この砲を新設計の単装式の露砲塔に収めた。露砲塔とは、現在の砲塔形式とは違い、火砲の基部のみを装甲で覆う型式を指す型式である。この時代の艦砲は現在と異なりライフル銃のように直接標準で撃ち合うようなものであったため、弾道は水平に近く、砲の上面に砲弾が当たることは想定されていなかった。したがって基部のみを防御する設計が行われ、砲の基部から上は吹き晒しであるか、弾片防御を果たす程度の装甲板で出来たカバーをつけるかであり、本艦は後者の形式を採っていた。この砲を単装砲架に据え付け、砲塔の俯仰能力は仰角10.5度・俯角4度である。旋回角度は単体首尾線方向を0度としては左右140度の旋回角度を持ち、主砲身の俯仰・砲塔の旋回・砲弾の揚弾・装填は主に水圧で行われ、補助に人力を必要とした。発射速度は5分間に1発であった。
副砲、その他備砲
本型の副砲にはイギリスの砲遁メーカー、アームストロング社の「アームストロング 1887年型 12cm（40口径）速射砲」を採用した。その性能は20.4kgの砲弾を、仰角20度で9,050mまで届かせられた。この砲を単装砲架に据え付け、俯仰能力は仰角20度・俯角3度である。旋回角度は舷側配置で150度の旋回角度を持ち、主砲身の俯仰・旋回・砲弾の揚弾・装填は主に人力を必要とした。発射速度は毎分5～6発であった。
その他に対水雷艇用に「7.6cm（40口径）速射砲」を単装砲架で片舷3基ずつ計6基をオチキスの「オチキス 4.7cm（43.5口径）速射砲」を単装砲架で6基を装備した。他に対艦攻撃用に35.6cm単装固定式水上魚雷発射管を水線より上に、艦首と艦尾に1基ずつ、舷側に左右1基ずつで計4基を配置していた。
防御
本型の防御装甲の材質はハーヴェイ鋼であった。この時代の防御巡洋艦の常として水線部に装甲を持たず、防御甲板と舷側が接続する部分は下方に傾斜にさせて敵弾を石炭庫と傾斜部で受け止める様式であった。
装甲厚は甲板上部が39.7mmで断片防御とし、主甲板は水平部は38mmから51mm装甲を貼り、傾斜部は75mmであった。機関部のみ厚さ127mmの装甲隔壁で覆われた。甲板上の32cm露砲塔のバーベットは厚さ300mmの装甲板で覆われ、艦底部の弾薬庫かだ主砲弾を運ぶ揚弾機を防御する揚弾筒は250mmから300mmまで装甲板で防御された。舷側の12cm速射砲は厚さ110mmの防盾が付いていた。水線下は二重底であった。
機関
石炭専焼円缶（スコッチボイラー）6基と横置き型3弾膨張式3気筒レシプロ機関2基を組み合わせて2軸推進で最大出力5,400馬力で速力16.0ノットの設計であった。本型のボイラーは欧州の最新技術を採用された。日本巡洋艦として初のフォックス波形炉筒と鋼製煙管を採用して高温・高圧化されたが、当時の未熟な日本の技術能力では高度すぎる代物で、「厳島」では故障が続発して日清戦争時代には「厳島」は12.8ノット、「橋立」は11ノット程度しか発揮できなかったために黄海開戦時に「松島」が旗艦を務めたなどカタログデータ通りの性能は中々出せなかった。このため、竣工後の1901年に「橋立」はボイラーを宮原式、「厳島」がベルヴィール式水管缶8基に換装し、1902年に「松島」がベルヴィール式水管缶8基に換装して遠洋航行に耐えるようになった。
参考文献
- 「福井静夫 「福井静夫著作集第4巻 日本巡洋艦物語」（光人社、1992年）ISBN 4-7698-0610-8
- 「世界の艦船1991年9月号増刊第32集 日本巡洋艦史」（海人社）
- 「世界の艦船 2012年1月号増刊第754集 日本巡洋艦史」（海人社）
- 「世界の艦船 日本戦艦史」（海人社）
- 「泉 江三 「軍艦メカニズム図鑑 日本の戦艦 上巻」（グランプリ出版）ISBN 4-87687-221-X c2053
- 「Conway All The World's Fightingships 1860-1905」（Conway）
- 「Conway All The World's Fightingships 1906–1921」（Conway）
関連項目
 | この項目は、軍艦に関連した書きかけの項目です。この項目を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています（P:軍事・PJ軍事・PJ船）。 |
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