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差金決済取引

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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差金決済取引(さきんけっさいとりひき,英語: Contract for Difference: CFD)とは投資商品の一つで、証拠金(保証金)を業者に預託し、原資産となる国内外の株価価格など金融商品の価格や指数を参照して差金決済による通貨の売買を行なう取引をいう。

特徴

証拠金を預け、レバレッジをかけて取引を行うことから、外国為替証拠金取引(FX)も差金決済取引の一つと言える。ただし、一般には、外国為替のものをFX、それ以外の株式株価指数等のものはCFDと呼ぶ。

株式市場の場合、多くの個人投資家は就労時間と株式市場の取引時間が重なってしまうが、例えばニューヨーク金融市場の取引時間は日本時間深夜になるなど、会社員などでもリアルタイムに取引を行うことが出来る。
  • 売りから入れる
指数が上昇する場面でも、下降する場面でも「売り」、「買い」のポジションを使い分けることにより利益を狙うことが出来る。これは株式信用取引における空売りやFXも含めた各種商品先物取引と同様である。
株式の現物取引の差金決済取引は禁止されており、それゆえ、買い付け余力が残っていない場合は、同一銘柄を一日に何度も取引することは出来ないが、CFDでの株式取引は現物取引ではないので、同一銘柄を一日に何度も取引できる。
株式の場合、様々な銘柄を組み合わせて売買するには資金も労力も必要だが、CFDでは株式指数商品などにおいてレバレッジをかけて取引が出来るため、少額から投資が出来る。ただし一般にハイリスク・ハイリターンな取引になることに留意する必要がある。これはFX同様、一般にレバレッジをかけて取引することで証拠金の数倍から数百倍の額を取引することが可能となるため、少ない元手で短期に多額の利益を上げることが出来ることがある一方、予想と反対の値動きをした場合には多額の損失を被るためである。ロスカット制度がない、あるいは市場の混乱、システムトラブル等で正常に取引できなかった場合は、証拠金以上の被害を受け、追加保証金の差し入れを要求されることもある。
  • 金利調整額
国外の価格や指数を用いた取引の場合、自国との金利差があるため、その調整として金利調整額の支払い、または受取りが生じる。基本的にポジションが「買い」の場合は金利調整額を支払う。これは外国為替証拠金取引(FX)におけるスワップポイントに相当するものと言えるが、FXとは仕組みが異なるため逆になる点に注意が必要である。
  • 配当金調整額
特定企業の株価等を指数とする取引の場合、配当金に相当する調整額のやり取りがなされ、ポジションが「買い」の時は受け取り、ポジションが「売り」の時は支払いとなる。一般に同一取引で支払い額は受取額を下回り、その差額はCFD業者の利益となる。
注意点
CFDの提供元によって約定までの時間、流動性提供能力に大きな違いがあるとされ、上場先物などとは異なる。取引は市場を介しておこなわれるのではなく、カウンターパーティ(相手方金融機関)との差金決済となる。また預託金の分別管理が義務付けられていないため、業者によっては当該業者の破産などにより預託金が返還されないリスクがある(カウンターパーティリスク)。業者選別に関しては特に注意が必要である。

歴史

CFDと同様のものは、もと「バケットショップ(Bucket shop)」と呼ばれ19世紀末頃から20世紀初頭にかけて自然発生的に登場した。これは場外取引店(Consolidator)の一種で、取引所の会員権をもたない仲買人が小口投資家を相手におこなう不正規のもので、1929年の株式暴落の際に詐欺行為として全面禁止された。

現代のCFDは1990年代前半に、ロンドンで始まった。アメリカでは1997年の法改正によりCFDが開始された。

日本での歴史

日本では2002年松井証券が金の保証金取引を開始したが、国内商品先物取引業界からクレームが上がって結局取りやめた。

さらに、2005年11月1日より、ひまわり証券が証券CFDを初めて提供を開始した。2008年頃より取り扱う証券会社等が増加している。

東京金融取引所が、日経225先物ではなく、日経平均株価そのものをCFDとして、2009年度中に上場させることを、2008年12月4日に発表した[2]。愛称は「くりっく株365」とした[3]

2010年10月1日、東京金融取引所が取引所株価指数証拠金取引の上場認可を金融庁より取得[4]

同年10月7日、取引開始日を同年11月22日としたことを発表[5]。当初の取引可能銘柄は以下のとおり。

  • 日経225証拠金取引
  • FTSE100証拠金取引
  • DAX証拠金取引

同年10月21日、東京金融取引所は同年12月13日より以下の銘柄の取引を開始すると発表した[6]

同年11月22日、「くりっく株365」のサービスが正式に開始された。

種類

税金

日本において、証券会社との相対取引によるCFDで利益を上げた場合、その所得は雑所得として総合課税の対象となる。

東京金融取引所による取引所CFDであるくりっく株365においては、一律20%の申告分離課税が適用され、取引所外国為替証拠金取引(くりっく365・大証FX)、証券先物取引(日経225先物取引等)、商品先物取引との損益通算、および3年間の損失繰越控除が可能である[7]

法律

日本国の法律において、現物株式の差金決済取引は禁止されている。しかし、CFDでの株式の差金決済取引は、現物株が移動するのではなく、証券会社と相対取引をするのみであり、この問題を解決している。注文を証券会社が受け取ると、それをカウンターパーティーに発注し、そして、それをヘッジ市場にてヘッジ取引する仕組みとなっている。

なお、FXへの規制が強化された後、同種のデリバティブであるCFDについても、2010年12月28日「金融商品取引法改正等に係る政令・内閣府令」が公布され、2011年1月1日から最大レバレッジが制限されている。

脚注

  1. ^ 通信速度やサーバーの処理能力の関係で、「スリッページ」(スリップ、滑り)と呼ばれるラグが生ずることがある。
  2. ^ 新株価指数先物(CFD)の上場について 東京金融取引所 Press Release 平成20年12月4日
  3. ^ 取引所株価指数証拠金取引の愛称・商品ロゴ 等について 東京金融取引所 CFD上場準備室 平成22年4月28日
  4. ^ 取引所株価指数証拠金取引(くりっく株365)上場認可取得のお知らせ 金融取からのお知らせ 2010年10月1日
  5. ^ 「くりっく株365」の取引開始日等について 金融取からのお知らせ 平成22年10月7日
  6. ^ 「FTSE中国25証拠金取引」「FTSE TWSE 台湾50証拠金取引」の取引開始日について 金融取からのお知らせ 平成22年10月21日
  7. ^ 税制について 取引所CFD【くりっく株365】

関連項目

外部リンク