ニューヨークオプションカット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ニューヨークオプションカット(New York option cut)とは、ニューヨーク市場における通貨オプション取引の権利行使をする期限の時刻である[1]。この時刻は、ニューヨーク時間午前10時(夏時間9時)[※ 1]NYオプションカットNYカットNYOPなどに略記される。カットオフタイム(cut-off time)ともいう[1]

概要[編集]

外国為替相場は、ニューヨークオプションカットの日時が迫ってくると、オプション注文が多い価格に為替レートが接近することがある[2]。オプションのポジションが調整されるため、この時刻の前と後は時として変動が大きい[1]

ドル/(USD/JPY)によるオプション取引ならば、オプション1本は100万ドル(100万通貨)であり[※ 2]、10億ドル(1000本)の取引で大きな注文(大口足)[3]、20億ドル(2000本)で非常に大きな注文、30億ドル(3000本)で極めて大きな注文とみなされる[4]。1000本以上の大口足が付近にあると、そこに引き寄せられる傾向がある時間帯であると言われている[3]。短期的トレーダーのポジションとして捉えれば、1億ドル(100本)相当でも目立つ取引といえる[※ 3]。この時間帯の前後、このオプションがらみの投資家たちは自分の有利な価格に持って行くために外国為替市場現物取引を活発にする[5]

このオプションは大口の金融機関や企業の間で取引されている[2]。ドル/円ならば例えばオプションの買い手である輸入会社Aは、「ドルコールオプション」(ドル買いをする権利)[※ 4]を証券会社Bから買った。オプション行使価格で取引相手の証券会社Bからドルを買うよりも、市場の相場でドルを買うほうが安いならば、この輸入会社Aはオプション権利を行使せずに権利の手数料[※ 5]だけが相手の証券会社Bへの支払いになる。また例えば実需ではなく投機目的でこのオプションの買い手となるヘッジファンドCは、「ドルプットオプション」(ドル売りをする権利)[※ 6]を銀行Dから買った。オプション行使価格が市場の相場より高ければ、このヘッジファンドCは権利を行使して相手の銀行Dにドルを高く売り、利益を得る。外国為替市場は、オプションの買い手(例では輸入会社AとヘッジファンドC)、売り手(例では証券会社Bと銀行D)の思惑が交錯し、他の参加者たちもオプションを意識するため相場が大きく変動する。

一定の条件下で、このオプションは消滅する。オプションの消滅価格を「オプションバリアー」(option barrier)または「オプショントリガー」(option trigger)という。

日本において金融機関が日本時間午前9時55分のレートに基づいて決定する「仲値」(なかね)や、ロンドン市場においてロンドン時間16時(夏時間15時)[※ 7]の取引価格を決定(フィキシング)する「ロンドンフィキシング」(London Fixing)は、ニューヨークオプションカットのように値動きの大きい時間である。

東京市場においても、日本時間15時に取引量は少ないが通貨オプション「カットオフタイム」がある[1]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 日本時間24時(ニューヨークが夏時間中は23時)。
  2. ^ 銀行間取引市場(インターバンク市場)においては取引の最小単位が100万通貨であり、その数え方が1本(1 Shot)となっている。
  3. ^ 1億ドルの注文は、外国為替市場の1枚(1 Lot)あたり1万通貨の取引に換算して、10000枚(10000 Lot)の注文に相当する。
  4. ^ 詳細には、円を売り(「put」する)、ドルを買う(「call」する)ので、「円プット/ドルコールオプション」もしくは「ドルコール/円プットオプション」という。
  5. ^ この手数料は、保険料のような性質を持ち、「プレミアム」(premium)、「オプション・プレミアム」、「オプション料」、「オプション価格」などという[6]。オプションの契約をした時点であらかじめ支払われるこの手数料は、市場価格と行使価格の差、期限到来までの期間、金利ボラティリティなどにより算定されている[6]
  6. ^ 詳細には、円を買い(「call」する)、ドルを売る(「put」する)ので、「円コール/ドルプットオプション」もしくは「ドルプット/円コールオプション」という。
  7. ^ 日本時間午前1時(ロンドンが夏時間中は24時)。

出典注[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]