岡田英弘
岡田 英弘(おかだ ひでひろ、1931年1月24日 - )は、日本の歴史家。学術上の専攻はもともと満洲史、モンゴル史。東京外国語大学名誉教授。東洋文庫専任研究員。
経歴
- 暁星中学校卒業
- 旧制成蹊高等学校高等科理科乙類卒業
- 1953年 - 東京大学文学部東洋史学科卒業
- 1957年 - 『満文老档』の研究で第47回日本学士院賞受賞
- 1958年 - 東京大学大学院博士課程満期退学
- 1959年 - フルブライト奨学金によりアメリカ合衆国シアトル市ワシントン大学に留学(~1961年 )。ニコラス・ポッペらに学ぶ[1]。
- 1963年 - ドイツ連邦共和国ボン大学東洋研究所客員研究員
- 1966年 - 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所助教授
- 1968年 - ワシントン大学客員教授(~1971年 )
- 1973年 - 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授
- 1993年 - 同停年退官、名誉教授
- 1996年 - 常磐大学国際学部教授(~2000年)
- 1999年 - インディアナ大学アルタイ学賞(通称PIACメダル)受賞
- 2002年 - 国際モンゴル学会名誉会員
- 2008年 - モンゴル国政府から北極星勲章(Altan Gadas odon)を受章
人物・主張
中国史、古代日本史、韓国史などで、戦後流布された中国側の正史に追従した[要出典]日本の中国史学会に異を唱えた研究、発言、多くの著作がある。
歴史を理論として確立しているのはヘロドトスに始まるヨーロッパ史と司馬遷らに始まる中国史だけであり、両者の歴史観はまったく原理を異にしていること、そしてその他の地域の歴史は両者いずれかの歴史観による焼き直しであることを主張した[2]。この観点から、両者を単に融合して世界史を記述するのではなく、両者を止揚・昇華させた新たな原理による世界史を構築する必要性を説き、世界史の始まりをモンゴル帝国によるヨーロッパ文明・中国文明の接触に求めている[3]。
岡田は、「私は“群れる”ことができない性質なのを痛感しつつ、学者人生を過ごしてきた。学界では孤立したが、それを苦痛にも、寂しいとも思ったことがない。強がりではなく、どうも私にはそうした神経がないらしい。周囲を恨んだこともない。学界という狭い世界ではなく、メディアに広く求められ認められたことで、私はやりたい学問ができ、主張したいことを主張してこられた」[4]と述べている。
妻は弟子である宮脇淳子。
2015年4月、王岐山(中央政治局常務委員)は中南海を訪れた外国人に、岡田の著書について延々と論じた[5]。
著書
単著
- 『倭国の時代-現代史としての日本古代史』 (文藝春秋 1976年/朝日文庫 1994年/ちくま文庫 2009年)
- 『倭国-東アジア世界の中で』 (中公新書 1977年)
- 『康熙帝の手紙』 (中公新書 1979年/増補改訂版・藤原書店〈清朝史叢書〉 2013年)。再版改題「大清帝国隆盛期の実像」(2016年)
- 『チンギス・ハーン-将に将たるの戦略』 (集英社「中国の英傑9」 1986年/朝日文庫 1994年/「チンギス・ハーンとその子孫-もうひとつのモンゴル通史」 ビジネス社 2016年)
- 『世界史の誕生 モンゴルの発展と伝統』 (筑摩書房[ちくまライブラリー] 1992年/ちくま文庫 1999年)
- 『日本史の誕生 1300年前の外圧が日本を作った』 (弓立社 1994年/ちくま文庫 2008年)
- 『台湾の命運 最も親日的な隣国』 (弓立社 1996年)
- 『中国意外史』(新書館 1997年/「やはり奇妙な中国の常識」 ワック 2003年)
- 『妻も敵なり 中国人の本能と情念』 (クレスト社 1997年/改訂版 「この厄介な国、中国」 ワック 2001年)
- 『現代中国と日本』(新書館 1998年/「厄介な隣人、中国人」 ワック 2008年)
- 『皇帝たちの中国』(原書房 1998年/「誰も知らなかった皇帝たちの中国」 ワック 2006年)
- 『歴史とはなにか』(文春新書 2001年)
- 『歴史の読み方 日本史と世界史を統一する』(弓立社 2001年/「日本人のための歴史学」 ワック 2007年)
- 『モンゴル帝国の興亡』(ちくま新書 2001年)
- 『中国文明の歴史』(講談社現代新書 2004年)
- 『だれが中国をつくったか 負け惜しみの歴史観』(PHP新書 2005年)
- 『モンゴル帝国から大清帝国へ』(藤原書店 2010年)
- 『読む年表 中国の歴史』(ワック 2012年、新版2015年)
著作集
- 『岡田英弘著作集』(全8巻、藤原書店、2013年6月~)
- 第1巻 歴史とは何か
- 第2巻 世界史とは何か
- 第3巻 日本とは何か
- 第4巻 シナ(チャイナ)とは何か
- 第5巻 現代中国の見方
- 第6巻 東アジア史の実像
- 第7巻 歴史家のまなざし
- 第8巻 世界的ユーラシア研究の五〇年(※未刊)
共編著
- (神田信夫・松村潤 共著)『紫禁城の栄光 明・清全史』 文藝春秋、1968年/講談社学術文庫、2006年
- (小堀桂一郎)『家族 文学の中の親子関係』 PHP研究所、1981年
- (護雅夫)『民族の世界史4 中央ユーラシアの世界』 山川出版社、1990年
- (樺山紘一・川田順造・山内昌之)『歴史のある文明・歴史のない文明』 筑摩書房、1992年
- (宮脇淳子ほか)『清朝とは何か 「別冊環16」』 藤原書店、 2009年
訳書
その他
その他
脚注
- ^ 『ニコラス・ポッペ回想録』三一書房p.266,p.304.
- ^ また、古代から高度な文明が存在したインドに「歴史」の概念がないことも、岡田の主張のよりどころの一つであった[要出典]。
- ^ 『歴史とはなにか』文春新書
- ^ 『正論』2005年10月号 13-19頁
- ^ 『「反腐敗」のキーマンは幼なじみ 洞窟で築いた絆』]日本経済新聞2015年7月22日