俳優

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俳優(はいゆう)とは、演劇映画テレビドラマなどにおいてある演技する者、あるいはそれを職業とする者を指す。役者(やくしゃ)とも呼ばれる。女優(じょゆう)は、女性の俳優を指す。

本項における記述は、主に日本の俳優についての記述である。

概要

呼称

俳優の「優」には「芝居を職業とする人」という意味がある。女性の俳優を指す「女優」という呼称に対応して、男性の俳優を指す「男優」という言葉が存在するが、一般には俳優の呼称が使われることが多い。ただし、授賞などで俳優を性別で分類しなければならない場合とアダルトビデオのAV男優は別である。

俳優が演じる対象の性別によってその役割が特別な呼称を持つ場合があり、また俳優が実際の性別とは異なる役を演じる場合もある。歌舞伎の場合は「立役」、「女形」があり、宝塚歌劇団では「男役」、「娘役」がある[1]

俳優は広義には演技者全体を指す名称であるが、現代の日本においては、歌舞伎新派役者などの伝統的かつ特殊な演技法による者を除外し、新劇およびこれと方法論を共有する演技者をもって狭義の俳優と言うことがある[2]

仕事内容

職業俳優の業務は、商業的に観衆に対する一般公開を目的とした劇作品を製作するために、その脚本(シナリオ)に基づき、プロデューサー演出家映画監督などの指導・指示の下、共演者や製作スタッフなどと協力して、その上演や撮影にあたって、与えられたキャスト(配役)を演じることにある。単に本番の演技をこなすだけではなく充実した演技を行うためにその過程として、通常は役作りの上、打合せ、稽古リハーサルなどを繰り返すといった膨大な下準備を伴う。また、政治活動に参加する俳優も存在するが、伝統的に日本の俳優は将来の仕事の幅や一部の消費者離れを恐れて政治色をあまり出さない傾向にある。

役作り

一般的にデビューしてから最初に大きく評価を受けた役を「当たり役」と呼ぶ。これに当たると「ブレイク」として、人気俳優として仕事が来るようになる。しかし、当たり役の効果が大きすぎると、以後その当たり役に似たイメージの仕事しか来なくなり、そのイメージを極めて性格俳優になるという事もあるが大半は飽きられ、マンネリズムを起こし仕事の幅が狭まる。最悪のケースでは自殺や引退にまで追い込まれるという大きなリスクを背負う事になる。また、主人公や重要人物を苦しめたり、いじめを行う等マイナスイメージを持つキャラクターが当たり役になると視聴者から「あの人はいじめを行う」と思われ家族やその親族がいわれの無い誹謗、中傷、差別の目が向けられるなどの問題も発生する。

職業としての俳優

日本

1950年代から1960年代にかけて五社協定という取決めがあり、映画会社と専属契約を結んだいわゆる映画俳優は、自社製作の映画以外への出演が制限されるなど、明確に活動範囲を区分されていた。そのため初期の大河ドラマは、歌舞伎界や新劇などの俳優に頼らざるを得なかった事情がある。同時期の民放のテレビドラマも同様で、海外ドラマを輸入して放送したり、テレビ局で制作するドラマには、映画俳優以外の俳優や新人を起用することで対処していた。

1970年代になり、邦画の斜陽化に伴って五社協定が自然崩壊し、さらには映画会社がテレビドラマの外注先になってテレビ映画を制作するなど、映画とテレビとの垣根はほぼ消滅したが、既にテレビドラマの制作現場では映画俳優に頼らないシステムが確立されていたため、別ジャンルから俳優業に参入するケースは以前より増えた。ただし、テレビドラマにおいては俳優の実力よりも、テレビ局と所属事務所、あるいは番組スポンサーとの関係や、俳優個人の人気すなわち視聴率を取れるかどうかを重視してキャスティングすることが多く、視聴者が疑問を感じるキャスティングがされる場合もある。

1990年代以降、テレビ局主導で映画製作が行われるケースも一般的になり、テレビドラマの制作スタイル(俳優業を本業としない者が俳優を兼業するスタイル)の領域も拡大傾向にある。一方で、俳優と名乗りながらバラエティ番組などで活動している者も多数おり、職業としての俳優という区分はあいまいになりつつある。これについて、映画俳優の設定が確立しているアメリカと違い、拘束時間が長い割に金銭的に恵まれない日本の俳優の環境が指摘されることもあるが、俳優個人の価値観や所属事務所の方針の問題も大きい。また、それぞれの出身の職業をあくまで本業としつつ、俳優業を含めて様々な活動を行う者もおり、マルチタレントと呼ばれる場合がある。これは評価される場合もあるが、否定的な見方をされることも多い。

俳優業は華やかな一面、厳しい世界だと言われている。俳優として有名になれるのはほんのわずかであり、収入も安定していないため、挫折する者が多い。また、ずっと俳優でいられる保証はない。

出身

俳優は同じ舞台や映画、テレビドラマなどで共演するが、それぞれの出身は様々であろう。AV女優歌舞伎役者劇団員モデル歌手タレントアイドルミュージシャンスポーツ選手など、様々な職種から俳優業に参入する場合がある。傾向として、近年においては男女ともにモデル出身者が急増している。特に女性の場合、1980年代後半ごろからモデル出身者が激増している。また、アイドルも冬の時代を迎える直前である1980年代の中盤から増え始め、今やアイドル的な活動はごく初期のうちにとどめ、早々に俳優に転向する者も急増しており、かつては一定数の勢力があった劇団や舞台出身者、子役出身者は特に女優においては主演助演級に限定すれば相当の減少が認められる。

俳優の分類

俳優の主な活動範囲に注目して、「舞台俳優」、「映画俳優」などと呼ぶ場合もあるが、現在の日本国内において劇場用映画を活動拠点にできる者は皆無に近い。海外の俳優の場合は、舞台中心に活動しているとしても日本で接触する機会は少なく、映画俳優として認識されるのが一般的である。米国では舞台俳優、映画俳優のほか「テレビ俳優」も区別される傾向にある。

上記以外にも、それぞれの特色や得意な分野に着目してキャスティングされることがある。この場合ジャンル分けして分類される。しかし、このジャンル分けに明確な基準はなく、流動的である。

大御所俳優、名題役者、二枚目俳優、二枚目半俳優、三枚目俳優、脇役俳優、端役俳優(チョイ役俳優)、性格俳優Character actor)、悪役俳優、喜劇俳優、時代劇俳優、剣劇俳優、アクション俳優、老け役俳優、個性派俳優(怪優(かいゆう))、子役大部屋俳優エキストラ俳優、ヘタレ役の俳優(主に男優)、脱ぎ女優、ミュージカル俳優、スーツアクタープライベートアクター、動物俳優

アニメ洋画吹き替えなどに声だけで出演する俳優は「声優」と称される。

日本における女優の歴史

日本では、歌舞伎の創始者といわれる出雲阿国のように、江戸時代初期には女性が芝居に出演していたが、寛永年間(1624年-1643年)に遊女歌舞伎が禁止されたため、それ以降女性が芝居に出ることは原則として不可能になった。代わって、男性が女形として女性の役を演じ、この伝統が明治に入っても続いていた。1899年(明治32年)、川上音二郎一座に所属する川上貞奴が女形の代役として、サンフランシスコ公演にて急遽出演して成功をおさめ、これによって川上貞奴は、「日本初の女優」と呼ばれるようになった。

川上貞奴は、1908年(明治41年)、渋沢栄一などの後援をえて、東京・に「帝国女優養成所」を開所し、本格的に女優育成の事業を開始した。一期生には、森律子、村田喜久子などがいた。

1914年(大正3年)、小林一三が宝塚少女歌劇団(現・宝塚歌劇団)を設立し、女性が男性役も演じる、女性による歌劇・芝居の形式も誕生した。宝塚歌劇団に所属する女優(女性団員)は「タカラジェンヌ」(宝塚とパリジェンヌの合成語)と呼ばれている。

「日本における女優の歴史」参考文献

脚注

  1. ^ 主演の男役は「トップスター」、主演の娘役は「トップ娘役」と呼ばれる。
  2. ^ しかしながら、主として歌舞伎俳優の団体である日本俳優協会(歴代会長は全員歌舞伎俳優である)も俳優の名を団体名に冠しており、団体における会員は自らを単に「俳優」と呼称する例も見られる。

関連項目