久坂部羊
久坂部 羊(くさかべ よう、1955年7月3日[1] - )は、日本の小説家、推理作家、医師。本名・久家義之[1]。血液型AB型[1]。
略歴
大阪府生まれ[1][2]。大阪府立三国丘高校(26期)[3][4]、大阪大学医学部卒業[2]。大阪大学医学部附属病院にて外科および麻酔科を研修。その後大阪府立成人病センターで麻酔科、神戸掖済会病院で一般外科に勤務[5]。サウジアラビア、オーストリア、パプアニューギニアの在外公館で医務官として勤務し[1]、帰国後は在宅医療に従事[2]。同人誌『VIKING』での活動を経て、2003年に『廃用身』で作家デビュー。
第2作『破裂』は、単行本の帯に「医者は、三人殺して初めて、一人前になる」と衝撃的な文句がつけられ、現代版『白い巨塔』とも評される。
2014年、『悪医』で第3回日本医療小説大賞を受賞[6]。2015年、『移植屋さん』で「第8回上方落語台本募集」(上方落語協会)優秀賞を受賞[7]。
2015年現在は健診センターで非常勤医師として働き、大阪人間科学大学で講師を務めている[1]。
人物
既婚者で、息子が1人と娘が2人いる[1]。また、父親も医師である[1]。
医療崩壊に関連して「医師に労基法はそぐわない」「医師の勤務が労基法に違反している云々などは、現場の医師にとっては寝言に等しい」「医師に労基法を適用して、臨床研修制度が大きな矛盾を抱えたことは記憶に新しい。研修医に30万円程度の給料を保障したため、指導医のほうが安月給になったり、週末や当直明けを休みにしたため、研修医の一部が、医師のありようを学ぶ前に、休暇の権利を覚えたりするようになった」と発言している。[8]
若い頃はドストエフスキーや三島由紀夫といった純文学が好きだったが、40歳を過ぎる頃からエンターテインメント性の高い大衆小説にも目を向けるようになり、高村薫や桐野夏生らの作品を読んで「純文学よりはるかに面白い」と衝撃を受け、自身が執筆する作品も純文学から大衆小説へと方向転換した[1]。しかし文芸誌に応募しても芽が出ず、作家の山田詠美に「こんなに面白い題材で、よくこんなにつまらない小説が書けるものだ」と批判された[1]。
著書
久家義之(くげよしゆき) 名義
- 大使館なんかいらない(2001年3月 幻冬舎 / 2002年7月 幻冬舎文庫)
- 呆然!ニッポン大使館―外務省医務官の泣き笑い駐在記(2002年7月 徳間文庫)
- 老いて楽になる人、老いて苦しくなる人(2002年12月 ビジネス社)
久坂部羊名義
医療系
- 大学病院のウラは墓場 医学部が患者を殺す(2006年11月 幻冬舎新書)
- 日本人の死に時 そんなに長生きしたいですか(2007年1月 幻冬舎新書)
- 思い通りの死に方(2012年9月 幻冬舎新書) - 中村仁一との共著
- 医療幻想 「思い込み」が患者を殺す(2013年2月 ちくま新書)
- 人間の死に方 医者だった父の、多くを望まない最期(2014年9月 幻冬舎新書)
小説
- 廃用身(2003年5月 幻冬舎 / 2005年4月 幻冬舎文庫)
- 破裂(2004年11月 幻冬舎 / 2007年7月 幻冬舎文庫【上・下】)
- 無痛(2006年4月 幻冬舎 / 2008年9月 幻冬舎文庫)
- まず石を投げよ(2008年11月 朝日新聞出版)
- 【改題】糾弾 まず石を投げよ(2012年1月 朝日文庫)
- 神の手(2010年5月 NHK出版【上・下】 / 2012年5月 幻冬舎文庫【上・下】)
- 第五番(2012年2月 幻冬舎) - 「無痛」続編
- 第五番 無痛II(2015年8月 幻冬舎文庫)
- 悪医(2013年11月 朝日新聞出版)
- 嗤う名医(2014年2月 集英社)
- 収録作品:寝たきりの殺意 / シリコン / 至高の名医 / 愛ドクロ / 名医の微笑 / 嘘はキライ
- 芥川症(2014年6月 新潮社)
- 収録作品:病院の中 / 他生門 / 耳 / クモの意図 / 極楽変 / バナナ粥 / 或利口の一生
- いつか、あなたも(2014年9月 実業之日本社)
- 収録作品:綿をつめる / 罪滅ぼし / オカリナの夜 / アロエのチカラ / いつか、あなたも / セカンド・ベスト
- 虚栄(2015年10月 KADOKAWA/角川書店)
アンソロジー
「」内が久坂部羊の作品
- ミステリ愛。免許皆伝!(2010年3月 講談社ノベルス)「祝葬」
映像化作品
テレビドラマ
- 第三のミス〜まず石を投げよ〜(2009年12月13日、WOWOW「ドラマW」枠で放送、監督:水谷俊之、主演:黒木瞳)
- 無痛〜診える眼〜(2015年10月7日 - 12月16日、フジテレビ「水曜10時」枠で放送、主演:西島秀俊)[1][9]
- 破裂(2015年10月10日 - 11月21日、全7話、NHK総合「土曜ドラマ」枠で放送、主演:椎名桔平)[1]
脚注
- ^ a b c d e f g h i j k l “久坂部羊氏、10月NHKとフジで小説Wドラマ化”. nikkansports.com. (2015年8月18日) 2015年12月10日閲覧。
- ^ a b c “死をみる仕事 久坂部羊(小説家、医師)”. msn産経ニュース. (2014年9月14日) 2014年9月24日閲覧。
- ^ “同級生交歓”. 文藝春秋WEB. 文藝春秋 (2015年1月21日). 2015年12月10日閲覧。
- ^ “高26回・久坂部羊氏の『破裂』が土曜ドラマに”. 三丘同窓会. 大阪府立三国丘高校 (2015年7月21日). 2015年12月10日閲覧。
- ^ “医療幻想―「思い込み」が患者を殺す”. 著作者について. 筑摩書房. 2015年12月10日閲覧。
- ^ “第3回日本医療小説大賞に久坂部羊さん”. BOOK.asahi.com (2014年4月1日). 2014年4月3日閲覧。
- ^ “小説家・久坂部羊さん、「上方落語台本募集」で優秀賞 :”. スポーツ報知 (報知新聞社). (2015年12月9日) 2015年12月9日閲覧。
- ^ 産経新聞2008年3月27日
- ^ “名物キャラ誕生予感!西島秀俊、神の眼持つ医師役でフジ系連ドラ主演”. SANSPO.COM (2015年8月5日). 2015年8月5日閲覧。
外部リンク
- 老いの現実(上)医師・作家 久坂部羊 - 【話の肖像画】MSN産経ニュース