ヴァルーシアの蛇人間

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ヴァルーシアの蛇人間(Serpent Men)は、クトゥルフ神話に登場する知的爬虫類種族のことであり、ヒト型爬虫類に相当する存在である。 の頭部を持ち、二足歩行するこの種族は、人類より前に地上を支配していた知的種族の一つであるという設定である。

ロバート・E・ハワードキング・カル(カル王)の物語のために作成した架空の種族。初登場作品は、『ウィアード・テイルズ』1929年8月号収録の『影の王国』。

解説

出自

まずロバート・E・ハワードが『影の王国』(1929)にて登場させた種族である。ヴァルーシアとは、アトランティスにあった人間の王国の名前である。人類以前の古代種族であり、人類に追いやられたが戻って来て、王国を裏から牛耳っていた。

また、クラーク・アシュトン・スミスは独自に『二重の影』と『七つの呪い』(共に1934)で、蛇人間を描写している。この時点では、ハワードとは無関係なスミス独自の爬虫類人であった。

世界観の接続

その後、ハワードとラヴクラフトが、複数の作品で、お互いの世界観を(お遊び的に)結び付ける。このときに呪物「輝くトラペゾヘドロン」の過去の持ち主がヴァルーシアの蛇人間であるとなった[注 1]。やがて、複数作家たちの爬虫類人の設定は統合され、クトゥルフ神話の種族「蛇人間」が成立する。

蛇人間と退化種(後述)は、ハワードのヒロイック・ファンタジーの複数シリーズをつなぐ存在でもある。『影の王国』はアトランティスのキング・カルのシリーズ、『闇の種族』はハイボリア時代英語版[注 2]英雄コナンのシリーズ、『大地の妖蛆』は3世紀スコットランドのブラン・マク・モーンのシリーズであり、さらに加えてラヴクラフトの世界観が接続されている。

体系化後

リン・カーターは、「エイボンの書」にまつわる短編群を通して、蛇人間の歴史を整理した。

彼らは二畳紀(ペルム紀)に出現し[注 3]、蛇の神イグを崇拝して、超大陸パンゲアのヴァルーシアに帝国を築いた。帝国が滅びた後、彼らは北米地下のヨスに逃れる[注 4]が、ツァトゥグァに帰依したことでイグの怒りを買う。やがてヨスを出てハイパーボリアに行き(スミス作品の時代)、続いてアトランティスに行く(ハワード作品の時代)。パンゲアのヴァルーシア国の名が、アトランティスのヴァルーシア国へと続いている。

クトゥルフ神話

主な登場作品

人物

亜種族

大地の妖蛆
仮称。ハワードの複数作品に登場する種族。ハワードは固有名を設定しておらず、呼称の一つが各種事典で種族名とされている[1][2]
ブリテン島に、最初に棲みついた種族。新興のピクト人に敗れ、地下へと追いやられた。蛇にたとえられ、黄色い目が特徴とされている[3]。人間種族との混血がいる。
作中では蛇に形容される程度の説明だが、TRPGではほぼ蛇人間の亜種・劣化種として扱われる。蛇人間の高度な科学の知識は失われ、原始宗教を奉じる穴居人に堕ちている。
登場作品:ロバート・E・ハワードの諸作品
無名都市の爬虫類
ラヴクラフトの『無名都市』に登場する爬虫類生物。TRPGにて、蛇人間の亜種族として取り込まれた。
アラビア砂漠の無名都市にて、四本足で匍匐生活し、クトゥルフを崇める。かつては海底におり、都市ごと地上に浮上した[4]
登場作品:無名都市(ラヴクラフト)、永劫の探究第4部(ダーレス)、牙の子ら(ジョン・ランガン)

関連項目

脚注

注釈

  1. ^ 単なる蛇人間ではなく、ヴァルーシアの蛇人間であることが強調されている。
  2. ^ スミスのハイパーボリアと名前が似ている。作劇の話をすれば、古ギリシア伝説のヒュペルボレイオスをモデルに、ハワードがハイボリアを作り、スミスがハイパーボリアを作った。
  3. ^ 現実の古生物学との矛盾・兼ね合いが出てくる。
  4. ^ ラヴクラフトが『墳丘の怪』で言及した種族を、カーターは蛇人間と設定した。

出典

  1. ^ エンサイクロペディア・クトゥルフ英語版』大地の妖蛆」159-160ページ。
  2. ^ KADOKAWAエンダーブレイン『マレウス・モンストロルム』「大地の妖蛆」67-68ページ。
  3. ^ ハワード『夜の末裔』の記述から。ここに着目しているのがカーター『最も忌まわしきもの』。
  4. ^ オーガスト・ダーレス『永劫の探究』による後付け設定。この時代には、無名都市の支配権が交代してハスターの勢力下になっている。