クトゥルフ神話の猫

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クトゥルフ神話の猫(クトゥルフのねこ)では、クトゥルフ神話に登場するについて記載する。

クトゥルフ神話の創始者であるハワード・フィリップス・ラヴクラフトは猫が好きだった。彼は『猫と犬』というエッセイにて、猫があらゆる面で犬よりも優れているという持論を熱弁している[1]。ラヴクラフトはまた猫を小説作品にも登場させ、『壁のなかの鼠』『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』では共に、猫が邪悪な気配に警戒する場面がある[2]

ドリームランド[編集]

ドリームランドのウルタールの町には、猫を殺してはならないという法律があり、猫の神殿も建っている。ランドルフ・カーターが危機に見舞われたときは、猫の友である彼を救出すべく、ウルタールの「老いた将軍猫」が率いる猫軍が動いた。

また土星[注 1]にも「猫」という種族がいる。彼ら「土星の猫」たちは、アートそのものといった異形の姿をしている[3]。地球の猫とは似つかない姿をした彼らは、月までやって来て、地球の猫と対立し合っている。

さらにTRPGにおいては「天王星の猫」という種も登場する[3]

猫神ブバスティス[編集]

エジプト神話の猫神バステトの異称が、ブバスティスである。ブバスティスとは、もともとバステトが崇拝された都市の名前だったが、転じて神名となった。

バステト(ブバスティス)は、エジプト神話において、猫の頭をした女性として登場する。エジプト神話には、ライオンや雌ライオンの頭を持った神が他にも登場し、バステトと同一視されることがある。当初はネコ科動物らしい攻撃性の高い面が強く、時代を重ねて温厚な守護の神へと変わっていく。バーストが崇拝された都市ブバスティスは、猫のミイラの主要な保管地であった。

クトゥルフ神話においては、この神はバーストまたはブバスティスの名で呼ばれる。

ラヴクラフトは、先述のように猫を称賛する際に、ブバスティスの名を持ち出すことがあった。

ロバート・ブロックが、ブバスティスを邪神として描写する。ブロックはエジプトを題材とした神話作品群にて、猫神ブバスティスを、暗黒神ナイアーラトテップ勢力の一柱とした。ナイアーラトテップはネコ科の野獣を従え、ブバスティスもまた人身御供を食らう血生臭い邪神である。ネフレン=カの没落の際には、ブバスティスの神官団は船でイギリスに逃亡した(暗黒のファラオの神殿ブバスティスの子ら)。『妖蛆の秘密』の「サラセン人の儀式」の章に記される。

ラヴクラフトとブロックは、ラヴクラフト書簡の名前「ラヴェ=ケラフ」(猫好きのラヴクラフトをもじった名)を、バーストの神官の名前に設定した。バーストの神官ラヴェ=ケラフは、「暗黒の儀式」(黒い儀式、とも)という著書がある、アトランティスの大神官クラーカッシュ=トンと同時代の人物だと設定されている。[4]

神ブバスティス(バースト)の位置づけは、資料によってバラバラで、一貫していない。多面性のある神である。

その他[編集]

西洋では黒猫は不吉とされることが多い。ダーレスの『ピーバディ家の遺産』では、妖術師の使い魔としての黒猫が登場する。

アリシア・Y』では、ナイアーラトテップが人間体と黒猫の姿で登場する。

脚注[編集]

【凡例】

  • 全集:創元推理文庫『ラヴクラフト全集』、全7巻+別巻上下
  • クト:青心社文庫『暗黒神話大系クトゥルー』、全13巻
  • 定本:国書刊行会『定本ラヴクラフト全集』、全10巻

注釈[編集]

  1. ^ 目覚めの世界の土星=サイクラノーシュとは異なる。

出典[編集]

  1. ^ 定本4に収録。
  2. ^ 全集1、全集2に収録。
  3. ^ a b 『サンディ・ピーターセンのクトゥルフモンスターズガイドII 幻夢境の生物たち』26-27ページでイラスト付きの解説がある。
  4. ^ ソノラマ文庫海外シリーズ「暗黒界の悪霊」『自滅の魔術』『嘲笑う食屍鬼』。さらにクト2『クトゥルー神話の魔道書』リン・カーターにて解説あり。設定のみ存在しているようなものであり、ほとんど使用されていない。
  5. ^ クト13収録。
  6. ^ クト1収録。
  7. ^ ホビージャパン『クトゥルフの呼び声』(第5版・日本1993年版)137ページ。
  8. ^ エンターブレイン『クトゥルフ神話TRPG』(第6版・日本語2004年版)224ページ。
  9. ^ 新紀元社『マレウス・モンストロルム』230ページ。
  10. ^ KADOKAWA『ラヴクラフトの幻夢境』145ページ。
  11. ^ 山本弘『クトゥルフ・ハンドブック』50ページ。