クトゥルフの呼び声 (TRPG)

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クトゥルフの呼び声』(クトゥルフのよびごえ、Call of Cthulhu)とは、アメリカのゲーム会社であるケイオシアム社が製作したクトゥルフ神話の世界観を体験するホラーもののテーブルトークRPG(TRPG)である。日本語版はホビージャパンエンターブレインから発売されている。

翻訳版のタイトルはホビージャパン版は『クトゥルフの呼び声』であったが、エンターブレイン版は『クトゥルフ神話TRPG』となっている。なお、d20システムをつかったスピンオフ作品である『コール・オブ・クトゥルフ d20』という製品も新紀元社より翻訳されており、それについてもこの項目で併せて扱う。

概要[編集]

怪物退治をテーマにしているものが圧倒的に多いテーブルトークRPGというジャンルの中で、怪物と戦うのではなく怪物に恐怖する『ホラーもの』というテーマを真正面から扱った数少ないゲームの1つ。1981年アメリカ合衆国ケイオシアム社から発売され、現在まで関連製品が発売され続けている長寿シリーズとなっている。

ゲームデザインは『ルーンクエスト』などにも関わっているサンディ・ピーターセン(Sandy Petersen)や『ストームブリンガー』などにも関わっているリン・ウィリス(Lynn Willis)が担当。日本語版の翻訳については1986年から現在にいたるまで中山てい子が中心になって行われている。

怪奇小説マニアとしても知られる俳優の佐野史郎はこのゲームのプレイ経験を持ち、神話アンソロジー『秘神界』のショートインタビューにて、最も好きな神話作品として挙げている。「ゲームクエスト1997年7月号よりコラム「〈クトゥルフ〉に呼ばれて」を連載していたこともあり、「季刊R・P・G」第1号に詳細なインタビュー記事が掲載されている。

クトゥルフ神話[編集]

『クトゥルフの呼び声』は20世紀初頭のアメリカで活躍した怪奇小説家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトが作り出した架空の神話体系「クトゥルフ神話」の世界をテーマにしたゲームである。

「クトゥルフ神話」とはラヴクラフトが提唱した、コズミック・ホラー(宇宙的恐怖)」と称されるホラー小説群である。ラヴクラフトの死後も彼のファン達により、現在に至るまで「クトゥルフ神話」の世界観に基づいた作品が作られ続けており、このテーブルトークRPGもそのムーブメントの中で生まれたゲームである。

「クトゥルフ神話」の世界観においては、我々の住むこの宇宙は本当は強力な力を持つ邪悪な神々に支配されており、地球の人間などゴミのような存在にすぎないとされている。ただ、ゴミのような存在ゆえに宇宙の神々は人間たちを気にも留めず放置しており、幸運にも地球の人間たちは生き延びている。しかし、ふとしたきっかけから人間が支配者ら、宇宙の真実の欠片を手に入れることがある。人間が知的好奇心から知られざる神々の姿を覗こうとしたとき、その者は例外なく破滅の道をたどることになる。

以上がラヴクラフトの提唱する「宇宙的恐怖」の基本的なコンセプトである。『クトゥルフの呼び声』もこのコンセプトを完全に再現することを目的にしており、プレイヤーキャラクターは様々なきっかけから宇宙的恐怖について調査するはめになってしまう人間たちを演ずることになる。 しかし、基本的に宇宙的恐怖について知れば知るほどプレイヤーキャラクターは破滅に近づく。ゲームとしてはプレイヤーキャラクターの死亡率は異常なほど高く、無傷でシナリオを解くことなどほぼ不可能であるが、それこそがこのゲームが他のテーブルトークRPGにはない特徴にもなっている。つまりこのゲームは「恐怖を楽しむ」ことこそが目的であり、ホラー映画をはらはらしながら見るのと同じ感覚で遊ぶゲームなのである。プレイヤーキャラクターが悲惨な目にあってもむしろそれを喜ぶ「ホラー映画の観客」としての視点がプレイヤーには求められる。 なお、本作は「恐怖を楽しむ」ゲームではあるが、「シナリオ上で提示される事件を解決し、できる限り無事な姿で生還すること」をゲーム的な勝利として位置づけられている作品でもある。プレイヤー自らがキャラクターをわざと悲惨な目にあわせるゲームではないことに注意が必要である。

なお、オーガスト・ダーレスが体系化したクトゥルフ神話には、神々が善悪に別れており、四大元素に対応しているというものが存在するが、この二点については宇宙的恐怖を弱めるという理由で本作では採用しないという立場が明言されている。ただし、これは善悪属性や四大元素を再現するためのデータやルールを実装しないという意味にすぎず、ユーザーが善悪二元論や四大元素説に基づくシナリオをプレイすることについてはなんら障害がない。また、旧神の印は存在するものとしてゲームデータとして実装されており、基準については曖昧である。

システム[編集]

基幹システムは『ルーンクエスト』や『ストームブリンガー』などと同じベーシック・ロールプレイングを採用している。プレイヤーキャラクターの創造は、シナリオの舞台となる時代/地域ごとにリスト化された職業リストの中から1つを選び、その職業に適する技能を習得することで行われる。

このゲームではゲームマスターのことを「キーパー」と呼ぶ。これはThe Keeper of Arcane Loreの略であり、日本語にするなら「神秘の護り手」「いにしえの知識の守護者」のような意味となる。また、日本語版のルールブックおよび関連製品では本作のプレイヤーキャラクター(PC)を「探索者」と呼称しているが、これは日本語版の独自の呼称であり、原語版では単に"Character"としか呼称されていない。これ以後は日本語版に合わせた表記とする。

他のベーシック・ロールプレイングを使用したゲームと比べると戦闘に関するルールはかなり簡略化されており、代わりに文献調査に関するルールが厳密に作られている。これは『クトゥルフの呼び声』で再現されるシチュエーションに、古代の魔導書や研究者の残した日記を読み返すというものが多いからである(日記を読むことが多いというのは一見すると不自然なように思えるが、これはラヴクラフトの小説の多くが「宇宙的恐怖の被害にあったものが残した手記による回想」という形式で書かれているからである。被害者の日記を読み返すことは『クトゥルフの呼び声』ではもっとも重要な情報源になることが多い)。

正気と狂気[編集]

特徴的なルールとしては「正気度」というものがある。つまりはPCがどれだけ理性を保っていられるかを示すものである。

正気度の数値は、SANという能力値から算出される「正気度ポイント(Sanity Point)」であらわされ、ショッキングな出来事に遭遇したり、宇宙的恐怖に関する知識を「知ってしまった」ときに「正気度ロール」と呼ばれる行為判定を行い、これに失敗すると正気度ポイントが減っていく。正気度ポイントが多く減ってしまうとプレイヤーキャラクターは狂気に陥り奇異的な行動を行うようになる。また、一部の強力な宇宙的恐怖相手だと正気度ロールに成功しても正気度ポイントが減ってしまう(失敗時よりは少ない)。なお、恐怖に慣れていくことにより自動的に正気度ロールに成功するようになるのだが、あくまでも判定に成功するだけの為、成功でも減る相手に対しては完璧ではない。これは、恐怖そのものが人間の本能であるため完全に取り除くことは不可能ということを表している。また慣れるのも種族ごとに細分化されており、宇宙的恐怖全般に慣れる訳ではない。

正気度ロールの目標値は現在の正気度ポイントであり、正気度ロールに失敗すればするほど正気度ロールに失敗しやすくなっていく。また、正気度ポイントの最大値は【クトゥルフ神話】スキルの上昇とともに減っていく。

狂気は「一時的狂気」と「不定の狂気」に分かれていて、「一時的狂気」は数分から数時間でおさまるパニック状態に過ぎないが、「不定の狂気」に陥ったものは精神病院に入って適切な治療を受けないと正気には戻れない。また、恐怖症などの精神的疾患を残す場合もある。正気度が完全に0になったものは完全な狂人となる。宇宙的恐怖の信奉者の多くは完全な狂人である。このような状態になったPCはNPCとして扱われることとなる。

事件を解決できるか最悪でも生還できたならば安堵感からか正気度が回復するが、回復量は減少量より少ないのが普通である。また、宇宙的恐怖に対して卑小なPCが対抗するには、知識を深め対抗策を講じて行くしかないが、前述の通り【クトゥルフ神話】スキルが増えるほど正気度の最大値が減る。そのため、PCは宇宙的恐怖に(一時的に)勝利しても破滅に向かって行くこととなる。

人間より圧倒的に能力が上回る宇宙的恐怖が一度顕現すれば、その存在と戦う前から結果が見えている。 対して探索者は知恵で対抗するのだが、それでも眷属の人間を上回る肉体と恐怖を感じさせる外見に苦戦し、またその過程で知ってしまった知識に翻弄されていくことになる。

正気と狂気が細かくルールで表現されているのは、ラヴクラフトの小説の多くにおいて宇宙的恐怖に出遭った被害者が狂人として描かれているからである。

魔法[編集]

適切な知識を有するものならば魔法を使用することが可能である。しかし、この世界の魔法は一般的なファンタジーの魔法と異なり宇宙的恐怖にかかわるものであり、その行使には正気度の損失を伴う。 また、魔法の習得に必要な魔術書は忌まわしき書として焚書・発売禁止となっているため非常に貴重であり、また断片的ながら宇宙的恐怖に関する記述がなされているため読むことで正気度を損失することになる。

ほとんどの魔法は召喚魔法のため、怪物が魔法を使うことは少なく、人間が使用する場合が大半である。

正気度ポイントが0である魔物の信奉者はこれ以上発狂しようが無い為、個人的に魔術書を持っている者か、あるいは教団で魔術書を読むことが許された幹部クラスに限られているが、マジックポイントが許す限り魔法を使用できる。

また、深きものどもの様な魔法を行使可能な知恵を持つ魔物も居るが、基本的に教団の一般信者と扱いは変わらず魔法を使うものは少ない。

世界設定[編集]

ゲームの舞台になるのは、「狂乱の時代」といわれた1920年代アメリカを基本にしている。これはラヴクラフトの怪奇小説の多くがこの時代に出版されたためである。

サプリメントの中には1920年代のアメリカ以外の時代/地域で遊ぶための情報が載っている物もある。それらのサプリメントではその時代 / 地域出身のプレイヤーキャラクターを創造するためののルールやデータが掲載されているのだが、その時代 / 地域の風俗や文化、物品の価格なども併せて掲載されている。

最新版の基本ルールブックでは、「1890年代」、「1920年代」、「現代」の3つの時代をフォローしていて、キャラクターを作るときはシナリオの時代設定に併せて、どの時代の出身かを選んでから作るようになっている。

「現代もの」としての『クトゥルフの呼び声』[編集]

『クトゥルフの呼び声』は日本のユーザーにおいてはホラーものとしてのゲームだけでなく「近現代を舞台にしたテーブルトークRPG」としてもクトゥルフ神話ファン以外にも人気が出たタイトルである。

『クトゥルフの呼び声』は初めて日本語で販売されたのは、テーブルトークRPG黎明期である1986年のことであった。当時は日本語版ダンジョンズ&ドラゴンズが初登場して間もない頃で、ファミコンで『ドラゴンクエスト』が出たばかりの年でもある。TRPGどころかRPGそのものの知名度も低い時代であり、その中で「剣と魔法のファンタジーではないRPG」というのはかなり挑戦的なタイトルであったといえる。

クトゥルフ神話自体も日本では知名度があまり高くなかったこともあり(むしろ、このゲームの翻訳がきっかけで日本のSF/ファンタジーのファンに「クトゥルフ神話」が広まった部分もある)、このゲームは発売のかなり当初から「20世紀を舞台にしている」ことの方に注目された。日本市場において中世ファンタジー世界以外を舞台にしたTRPGが主流になるのは1990年代後半以降のことであり、1980年代において20世紀を舞台にしたTRPGというのはそれだけで強いインパクトを持っていたのである。

特に、基幹システムであるベーシック・ロールプレイングは世界観を限定しない汎用システムであるため、ほとんど無改造で現代日本を舞台にすることも可能なことが注目された。『クトゥルフの呼び声』は1920年代の人間を前提とした技能が揃っているが、これらの技能は実は20世紀末の人間に適応してもほとんど違和感がなかったのである(コンピュータプログラミングに関係する技能だけは他の技能で代用できないが、1980年代での『現代』ではコンピュータはまだまだ一般には浸透していなかったため、「現代もの」として遊ぶときにコンピュータに関する技能がなくてもあまり問題ではなかった)。

ユーザーの間では伝奇アクションもの、探偵もの、学園ものなど、およそクトゥルフ神話とは直接関係ないようなテーマのシナリオも、このシステムで遊ばれることが多かったようだ。ベーシック・ロールプレイングを搭載しているため、恐怖要素に関するルールを排除しても十分「現代を舞台にしたゲーム」として遊ぶことができたのである。特に文献調査に関するルールが詳細な点は、ホラーと関係ない現代ものとも相性が良かった。

このようなユーザー側の需要を加味して、日本では『クトゥルフの呼び声』を現代日本で遊べるサプリメントが日本オリジナルで作られた。また、『クトゥルフの呼び声』をベースにした学園ドラマRPG『放課後怪奇くらぶ』が発売された。

ただしこのような需要はあくまで日本のテーブルトークRPGに「現代もの」のゲームがほとんどなかった1990年代前半までのものであった。ホビージャパンでの『クトゥルフの呼び声』の展開が停止した1990年代後半からは日本のテーブルトークRPGの世界に「現代もの」のゲームが一気に増え始めたのである。21世紀に入ってから『クトゥルフ』のTRPGが新紀元社やエンターブレインから再展開しているが、この時点では『クトゥルフ』でホラー要素のない汎用的な現代ものを遊びたいという需要はほとんどなくなっている。

作品一覧[編集]

日本語で展開されている製品のみ記述する。発売年は特に注釈がない限りは日本語版が発売された年を示している。 便宜上、1986年から1994年までホビージャパンを中心に展開されていた時期を「第一期」、2003年以降にエンターブレイン新紀元社により展開されている時期を「第二期」とする。

第一期[編集]

第一期では「タクテクス」誌とその後継である「RPGマガジン」誌でゲームのサポートが行われており、雑誌掲載されたシナリオの中には製品化されていないものも数多くある。

ルールブック(第一期)[編集]

クトゥルフの呼び声
基本ルールブック(ボックス版)。1986年発売。1983年に米国で発売された『Call of Cthulhu』の第二版(Second Edition)の翻訳だが、第三版(Third Edition)のルール変更も可能な限り織り込んだという。舞台としている時代は1920年代のみ。シナリオは全部で7つとかなり豊富に掲載されていた。
クトゥルフの呼び声(改訂版)
基本ルールブック(A4判書籍)。1993年発売。ISBN 978-4938461928
1992年に米国で発売された『Call of Cthulhu』の第五版(Fifth Edition)の翻訳。これまでのルール関連のサプリメントの統合や、スキルの主旨変更や統廃合がメインの改訂で、ルールの大枠はほとんど変更ないため、それまでに発売されたサプリメントはこの改訂版でも全て使用可能である。この第五版に統合されたため、クトゥルフコンパニオン、クトゥルフバイガスライト、クトゥルフナウは、絶版となった(しかし、全てが掲載されているわけでなく、各サプリメントにはあっても、第五版には無い記事もある)。
また、オーガスト・ダーレスの神話解釈に基づいた訳語「旧支配者」を原語のカタカナ表記である「グレート・オールド・ワン」に変更するなど、翻訳に関するコンセプトがより「ラヴクラフト原理主義」になっている。

資料集・解説書(第一期)[編集]

クトゥルフ・ハンドブック
日本オリジナル編集による『クトゥルフの呼び声』のゲーム解説書(A5判書籍)。1988年発売。著者は山本弘ISBN 978-4938461461
クトゥルフ神話の宇宙観の初心者向き解説を中心として、「恐怖を楽しむ」という普通のTRPGとは違う遊び方の今作のプレイングに関するガイドを載せている。いわゆる「○○がわかる本」の系統で、メインの舞台である20年代アメリカの文化・風習などもガイドされている他、草彅琢仁による神話生物のイラストも掲載されている。
1993年には改訂版として『クトゥルフ・ハンドブック 改訂新版』が刊行された(A5判書籍)。ISBN 978-4938461966
クトゥルフモンスターガイド
資料集(A4判書籍)。1989年発売。ISBN 978-4938461454
ゲームに出てくる神話生物たちの生態を美麗なカラーイラストで紹介したガイドブック。
クトゥルフモンスターガイド2
資料集(A4判書籍)。1989年発売。ISBN 978-4938461508
上記『クトゥルフモンスターガイド』の続編。今作ではドリームランドの神話生物がメインになっている。
クトゥルフ神話図説
資料集(A4判書籍)。1994年発売。ISBN 978-4894250444
『クトゥルフモンスターガイド』と『クトゥルフモンスターガイド2』を合本にして復刻したもの。

サプリメント(第一期)[編集]

ウェンディゴへの挑戦
サプリメント(ボックス版)。1986年発売。パラグラフ形式のソロ・シナリオ(いわゆるゲームブック)で、男性か女性の既成探索者「ネーデルマン博士」となり、学生や現地人ガイドからなる探検隊を率いてカナダの大森林に『ハニナー神話』の謎を追う。
ヨグ=ソトースの影
サプリメント(ボックス版)。1987年発売。7つの連作シナリオから構成された長編のキャンペーンシナリオ。謎の秘密結社の影を追い、アメリカ国内はもとよりイースター島そしてルルイエまで世界を股にかけた冒険を繰り広げる。
療養所の悪魔
サプリメント(ボックス版)。1987年発売。7つの短編シナリオを収録したシナリオ集。ミステリ調からコメディ、B級SFなど、幅広い雰囲気のシナリオが収録されている。
ユゴスからの侵略
サプリメント(ボックス版)。1987年発売。8つの連作シナリオから構成された長編のキャンペーンシナリオ。世界的大企業の陰謀を阻止すべく世界中を駆け巡る。アメリカ合衆国からはじまり、ヨーロッパ、エジプト、そしてセラエノの大図書館と宇宙にまで手を伸ばす大冒険シナリオ。
クトゥルフ・コンパニオン
サプリメント(ボックス版)。1987年発売。呪文、モンスター、精神疾患など様々な追加データと、幾ばくかのシナリオを収録。サドウスキィ博士の論文として、世界で神話生物がどう呼ばれているかなど、研究論文の発表のようなものも掲載されている。マスタースクリーンも添付されている。
クトゥルフ・バイ・ガスライト
サプリメント(ボックス版)。1988年発売。1890年代のイギリスを舞台にするための追加ルールおよび設定資料集。シャーロック・ホームズモリアーティ教授との対決に邪神の陰謀が絡むというシナリオ「ヨークシャーの怪事件」も収録。
黄昏の天使
日本オリジナルサプリメント(ボックス版)。1988年発売。日本神話をクトゥルフ神話とからめた、全八話からなる大規模かつ重厚なキャンペーンシナリオ集。探索者は、日本中を駆け回り、日本神話や民話、そして古代出雲王朝の謎に触れつつ、黄昏の天使の野望を阻止すべく奮闘する事になる。本作品は三部構成となる予定だった「夜叉姫伝説」の前日譚が作者の予想以上のボリュームとなったため単体で発売されたもので、「夜叉姫伝説第一部」とのサブタイトルがついているが、第二部「ローレライ=パルティータ」以降は発売されなかった。現代(発売当時の1988年)の日本を舞台にするための追加ルールおよび設定資料も付随している。1980年代の日本で登場する可能性のある車両、航空機、戦車などの他、暗視装置等、細かなガジェットデータも掲載されている。第一期においては唯一発売された日本製キャンペーンシナリオでもある。
ニャルラトテップの仮面
サプリメント(ボックス版)。1989年発売。非常なボリュームがあるキャンペーンシナリオ集。ニューヨーク、ロンドン、カイロ、ケニヤ、上海の5つの都市で起こる様々な事件が大量の情報とともに書かれており、それらの事件を調べていくうちに次第に大邪神ニャルラトテップの陰謀が暴露されていくというもの。一つの都市の事件を全て体験するだけでも、数回のプレイが必要。
クトゥルフ・ナウ
サプリメント(ボックス版)。1989年発売。現代(英語版発売当時の1987年)アメリカを舞台にするための追加ルールおよび設定資料集。20年代から格段に進化した調査方法に対応すべく、弾道学や血液検査などの法医学や写真の技術などに大きくページが割いてあるのが特徴。
アーカムのすべて
サプリメント(ボックス版)。1991年発売。ラヴクラフトの小説の舞台として良く使われるマサチューセッツ州の架空の街「アーカム」の詳細なシティガイド。アーカムを舞台にしない場合でも、1920年代のアメリカの文化や風俗を知るための設定資料集として使用できる。
13の恐怖
サプリメント(A4判書籍)。1991年発売。クトゥルフ神話と関係ない、普通(どちらかと言えば、B級)のホラーものをテーマにした短編シナリオ集。13日の金曜日エイリアンなど、著名なホラー映画をモチーフにした様々なシナリオを13本収録している。
クトゥルフスーパースクリーン
サプリメント(A4版)。1994年発売。スーパースクリーンのシリーズの一つで、データ集に加えて「1920年代探索者コンパニオン」が付属していた。これは原書版「Investigator's Companion Volume1」の翻訳であり。1920年代のアメリカにおける文化、風俗、交通、生活、物品の価格表などを記載した設定資料集になっている。『ガスライト』や『ナウ』のような時代ごとのサプリメントの1920年代バージョンである。スーパースクリーンがバインダーであり、それに綴じられる様になっているため、ルーズリーフ形式になっている。

リプレイ(第一期)[編集]

クトゥルフ・ワールド・ツアー
リプレイ集(A4判書籍)。1990年発売。日本オリジナル編集。
王道とは一風変わったシナリオを掘り下げており、『ナウ』を使った現代もの、『ガスライト』を使った19世紀英国もの、平安時代を舞台にしたもの、ハイパーボレアを舞台にしたものの4編を収録。リプレイだけでなく、同じような舞台でシナリオを作るときのガイダンスも載せている。

第二期[編集]

日本の『クトゥルフ』のTRPGの歴史は約10年の沈黙の後、雑誌『Role&Roll』の創刊と共に復活した。第二期における翻訳元はエンターブレインと新紀元社と二つに分かれているのだが、関わっているスタッフはほぼ共通しており、サポート雑誌も『Role&Roll』で統一されている。

だが、第二期では製品名に『クトゥルフの呼び声』という名前が使われていない。製品としてはホビージャパン版と同じくケイオシアム社のテーブルトークRPG『Call of Cthulhu』の系譜に属する。

ルールブック(第二期)[編集]

コール・オブ・クトゥルフ d20
基本ルールブック(A4判書籍)。2003年に新紀元社より発売。ISBN 978-4775302125
2001年に米国のウィザーズ・オブ・ザ・コースト社から発売された『Call of Cthulhu Roleplaying Game』の翻訳。ベーシック・ロールプレイングでなくd20システムによる『クトゥルフ』のTRPGである。『ダンジョンズ&ドラゴンズ』とルールが完全互換しているため、これがあればD&Dのファンタジー世界に召喚されたクトゥルフを冒険者が退治するシナリオも可能。
クトゥルフ神話TRPG
基本ルールブック(B5判書籍)。2004年にエンターブレインより発売。ISBN 978-4757720206
2004年に米国で発売された『Call of Cthulhu』の第六版(Sixth Edition)の翻訳。米国版の販売からわずか半年で日本語版の発売という、当時のTRPGでは異例の速さで翻訳された。ベーシック・ロールプレイング版であり、大枠のルールはホビージャパン版とほとんど変わっていない。そのためホビージャパン版のサプリメントもそのまま使用可能。『クトゥルフの呼び声(改訂版)』と同じく、1890年代、1920年代、現代(2004年)の3つの時代を舞台にできる。

資料集・解説書(第二期)[編集]

クトゥルフ神話ガイドブック 20世紀の恐怖神話
クトゥルフ神話のブックガイド(A5判書籍)。2004年に新紀元社より発売。著者は朱鷺田祐介ISBN 978-4775302538
クトゥルフ神話に関係する小説や映像作品、ゲームを紹介した本で、テーブルトークRPGも多く扱っている。朝松健の諸作品や『斬魔大聖デモンベイン』『エンジェルフォイゾン』など日本製のクトゥルフ神話作品が多く紹介されているのが特徴。巻末には英語版のテーブルトークRPG『Call of Cthulhu』全関連製品のリストが載っている(2004年までのリスト)。
エンサイクロペディア・クトゥルフ
資料集(A5判書籍)。2007年に新紀元社より発売。ISBN 978-4775305317
クトゥルフ神話の百科事典。テーブルトークRPGとは直接関係ないものの、『クトゥルフ神話TRPG』の関連資料としても使えるという触れ込みで翻訳されている。訳語も『クトゥルフ神話TRPG』と統一されている。
クトゥルフ神話TRPG入門 るるいえびぎなーず
『クトゥルフ神話TRPG』の入門書。2012年11月30日にエンターブレインより発売(A5版書籍)。ISBN 978-4047282339
著者は内山靖二郎とアーカム・メンバーズ、イラスト担当は狐印ほか。

サプリメント(第二期)[編集]

H.P.ラヴクラフト アーカム
『クトゥルフ神話TRPG』『コール・オブ・クトゥルフd20』の共用サプリメント(B5判書籍)。2004年に新紀元社より発売。ISBN 978-4775303597
ラヴクラフトの小説の舞台として良く使われるマサチューセッツ州の架空の街「アーカム」の詳細なシティガイド。ホビージャパン版『アーカムのすべて』と内容はほぼ同じ(同じ原書を翻訳している)。ただし、d20システム用のデータも追記されている。
クトゥルフ・ダークエイジ
独立型サプリメント(B5判書籍)。2005年に新紀元社より発売。ISBN 978-4775303870
中世ヨーロッパを舞台にするための追加ルールおよび設定資料集。ベーシック・ロールプレイングによるキャラクターメイキングや判定ルールも掲載されており、基本ルールブックがなくてもこれ一冊でプレイができる「独立型サプリメント」である。
クトゥルフ神話TRPG キーパーコンパニオン
『クトゥルフ神話TRPG』のサプリメント(B5判書籍)。2005年に新紀元社より発売。ISBN 978-4757724952
呪文や魔導書、モンスターなどのデータを大量に掲載しているゲームマスター(GM)用のサプリメント。
クトゥルフ神話TRPG クトゥルフと帝国
日本オリジナル編集による『クトゥルフ神話TRPG』『コール・オブ・クトゥルフd20』の共用サプリメント(B5判書籍)。2005年にエンターブレインより発売。ISBN 978-4757725829
1920〜1930年代の日本(および日本の統治下にあったアジア諸国)を舞台にするための追加ルールおよび設定資料集。つまり、大正ロマンの時代から、軍靴の足音が聞こえる昭和初期までの時代である。
なお、第一期の展開時に、同じコンセプトのサプリメントが同じタイトルで出版される予定があったが頓挫している。本作はその幻の企画のオマージュであると思われるが、製作スタッフは当時とは異なっているため、第一期で予定されていた企画が再始動したわけではない。
クトゥルフ神話TRPG 比叡山炎上
日本オリジナル編集による独立型サプリメント(B5判書籍)。2006年にエンターブレインより発売。著者は朱鷺田祐介ISBN 978-4757728172
戦国時代の日本を舞台にするための追加ルールおよび設定資料集。『クトゥルフ・ダークエイジ』と同じく基本ルールブックがなくてもこれ一冊でプレイができる「独立型サプリメント」である。アメリカで「Ninjya Cthulhu」のタイトルで英訳される予定になっている。
クトゥルフ神話TRPG 七つの怪談
シナリオ集(B5判書籍)。2007年に新紀元社より発売。ISBN 978-4775306109
日本を舞台にした7本のシナリオを収録。コンセプトは、「古来より日本に伝わる伝説や怪談をクトゥルフ神話として解釈する」というもの。シナリオはそれそれ独立している。
掲載されているシナリオは『クトゥルフ神話TRPG』で扱うことを前提としている。
クトゥルフ神話TRPG マレウス・モンストロルム
モンスターデータ集(B5判書籍)。『クトゥルフ神話TRPG』のサプリメントで、2008年にエンターブレインより発売。ISBN 978-4-7577-4142-3
クトゥルフ神話に登場するモンスターたちのデータや解説を多数掲載。
クトゥルフ神話TRPG ラヴクラフトの幻夢境
ラブクラフトの諸作品に出てくる異世界「幻夢境(ドリームランド)」のワールドガイド(B5判書籍)。『クトゥルフ神話TRPG』のサプリメントで、2009年にエンターブレインより発売。ISBN 978-4757747371
クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2010
現代(発売当時の2010年)の日本を舞台にするための追加ルールおよび設定資料。警察や自衛隊が使用する武装などのデータも掲載されている。『クトゥルフ神話TRPG』のサプリメントで、2010年にエンターブレインより発売。ISBN 978-4047264236
1988年に発売された『黄昏の天使』と同じコンセプトのサプリメントだが、22年を経た後の「現代」であるためその世界観は大きく異なる。
クトゥルフ・ワールドツアー クトゥルフ・ホラーショウ
『クトゥルフ神話TRPG』でB級ホラー映画のノリを再現するためのガイダンスブック。2011年1月にアークライトから発売。参考作品解説やマスタリングガイドのほか、B級ホラー映画シナリオ専用の追加ルールも掲載されている。
タイトルは第一期で「一風変わったクトゥルフもの」を掘り下げたガイドブック「クトゥルフ・ワールドツアー」のオマージュ。また、内容のコンセプト自体も第一期のサプリメント「13の恐怖」に近いものとなっている。
クトゥルフ神話TRPG インスマスからの脱出
ラヴクラフトの小説「インスマスを覆う影」の舞台となったマサチューセッツ州の架空の街「インスマス」の詳細なシティガイド(B5判書籍)。『クトゥルフ神話TRPG』のサプリメントで、2011年にエンターブレインより発売。ISBN 978-4047272019
クトゥルフ・ワールドツアー 忌まわしき古代遺跡
第二期版「ワールドツアー」の第二段。クトゥルフ神話に関連する古代遺跡のガイドブック。2011年7月にアークライトから発売。ニャルラトテップの遺跡を舞台にしたシナリオ『トートの剣』を翻訳して収録している。
クトゥルフ・ワールドツアー ナチス邪神帝国の陰謀
第二期版「ワールドツアー」の第三段。第二次世界大戦期を舞台のシナリオを作成するときのガイダンスと、実際のシナリオを3本収録。2012年2月にアークライトから発売。ニャルラトテップの遺跡を舞台にしたシナリオ『トートの剣』を翻訳して収録している。
クトゥルフ神話TRPG ダニッチの怪
ラヴクラフトの小説「ダニッチの怪」の舞台となったマサチューセッツ州の架空の街「ダニッチ」の詳細なシティガイド(B5判書籍)。『クトゥルフ神話TRPG』のサプリメントで、2012年にエンターブレインより発売。ISBN 978-4047277441
クトゥルフ神話TRPG クトゥルフカルト・ナウ
『クトゥルフ2010』の続篇にあたるサプリメント(B5判書籍)。現代日本に暗躍するカルト(人間社会に潜むクリーチャー集団、新興宗教、先端企業、血族など)を紹介したガイドブック。2013年2月にエンターブレインより発売。ISBN 978-4047284593
クトゥルフ神話TRPG キーパーコンパニオン改訂新版
上述している『キーパーコンパニオン』に、異界の機械に関する追加データとキーパースクリーンを付記した新装版。2013年3月にエンターブレインより発売。ISBN 978-4047288171

リプレイ(第二期)[編集]

クトゥルフと帝国リプレイ 白無垢の仮面
『クトゥルフと帝国』のリプレイ(新書)。2006年に新紀元社より発売。著者は内山靖二郎ISBN 978-4775305010
このリプレイで描かれた設定は、後に刊行された同著者の『るるいえ』リプレイシリーズの内容にも組み込まれている。
クトゥルフ神話TRPGリプレイ るるいえあんてぃーく
『クトゥルフ神話TRPG』のリプレイ。2009年にエンターブレインより発売(A5版書籍)。ISBN 978-4047262393
るるいえシリーズ第1弾。現代日本にある骨董品店「るるいえ堂」に集まる怪異を描く。著者は内山靖二郎、イラスト担当は狐印
クトゥルフ神話TRPGリプレイ みなせゼミの名状しがたき夏休み
『クトゥルフ神話TRPG』のリプレイ(新書)。2010年に新紀元社より発売。著者は内山靖二郎、イラスト担当は青木邦夫ISBN 978-4775308462
Role&Roll誌増刊で掲載された「水無瀬ゼミシリーズ」のリプレイ2編と書き下ろし続編を加えたもの。入門者向けのつくりが意識されており、ルールブック未所持の読者を対象に、ルール紹介やプレイングガイダンスも掲載されている。
クトゥルフ神話TRPGリプレイ るるいえはいすくーる
『クトゥルフ神話TRPG』のリプレイ。2010年12月にエンターブレインより発売(A5版書籍)。ISBN 978-4047269071
るるいえシリーズ第2弾。『るるいえあんてぃーく』からシナリオ・プレイヤーを継続する続編で、今度の舞台は私立高校の「御津門学園」。著者は内山靖二郎、イラスト担当は狐印。
クトゥルフ神話TRPGリプレイ るるいえばけーしょん
『クトゥルフ神話TRPG』のリプレイ。2011年11月30日にエンターブレインより発売(A5版書籍)。ISBN 978-4047276703
るるいえシリーズ第3弾。前作までのキャラクターの成長を受けて、海外から異世界までまたにかける壮大な冒険ものとなっている。著者は内山靖二郎、イラスト担当は狐印。
クトゥルフ神話TRPGリプレイ るるいえばーすでい
『クトゥルフ神話TRPG』のリプレイ。2012年9月28日にエンターブレインより発売(A5版書籍)。ISBN 978-4047283299
るるいえシリーズ第4弾。著者は内山靖二郎、イラスト担当は狐印。
クトゥルフ神話TRPGリプレイ るるいえとらべらーず
『クトゥルフ神話TRPG』のリプレイ。2013年8月30日にエンターブレインより発売(A5版書籍)。ISBN 978-4047289512
るるいえシリーズ第5弾。著者は内山靖二郎、イラスト担当は狐印。リプレイの登場人物によるオリジナルエピソード収録のドラマCDが付属する。
クトゥルフ神話TRPGリプレイ るるいえぐりもあーる
『クトゥルフ神話TRPG』のリプレイ。2014年6月30日にエンターブレインより発売(A5版書籍)。ISBN 978-4047297524
るるいえシリーズ第6弾。著者は内山靖二郎、イラスト担当は狐印。

ドラマCD(第二期)[編集]

『クトゥルフ神話TRPGリプレイ るるいえとらべらーず』に付属。「るるいえ・うぃっち・ぷろじぇくと」「るるいえ堂改造計画」の2つのエピソードが収録されている。

スタッフ

キャスト

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

  • Chaosium.com (英語版の発売元)
  • アークライト (日本語版第二期の翻訳。Role & Roll誌にてサポート記事『アーカム計画』連載)
  • ひきだしの中身 (第二期の主要スタッフの一人である内山靖二郎のサイト。『クトゥルフ』TRPGのシナリオが豊富)