ロード・エルメロイII世の事件簿

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ロード・エルメロイⅡ世の事件簿
ジャンル 推理小説
小説
著者 三田誠
イラスト 坂本みねぢ
出版社 日本の旗 TYPE-MOON
レーベル TYPE-MOON BOOKS
刊行期間 2014年12月30日 -
巻数 既刊3巻
テンプレート - ノート
プロジェクト ライトノベル
ポータル 文学

ロード・エルメロイⅡ世の事件簿』(ロード・エルメロイにせいのじけんぼ)は、TYPE-MOON作のビジュアルノベルゲーム『Fate/stay night』シリーズのスピンアウト小説。著者は三田誠、イラストは坂本みねぢ

概要

虚淵玄によるスピンオフ小説『Fate/Zero』に登場したキャラクター「ウェイバー・ベルベット」をフィーチャーしたミステリー作品。それ以前に『Character material』発表されていた「ロード・エルメロイⅡ世」だが、『Fate/Zero Material』でウェイバーの後身である事が明らかにされており、『Fate/Apocrypha』『Fate/strange Fake』『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』などで、脇役としてだがその設定で登場を続けていたが、「ロード・エルメロイⅡ世」自身がメインキャラクターとして描かれるのはこれが初めてとなる。

著者の三田誠はTYPE-MOON作品参加は初めて。2007年頃、『Fate/Zero』が刊行開始されていたTYPE-MOON BOOKSレーベルの発刊趣旨を、TYPE-MOONメインライターにしてFateシリーズの原作者である奈須きのこから聞かされていた著者は、いずれ自分も作品を発行したいという希望を奈須に伝えていた。その後、2012年7月に開催されたTYPE-MOON10周年記念イベント「TYPE-MOON Fes.」を観覧した際、『Fate/Zero』のキャラクターであったウェイバーの存在に衝撃を受け、間もなくその後身であるロード・エルメロイⅡ世の物語が語られる予定はあるのかと奈須に問い合わせたところ、奈須から逆に執筆の依頼を受けたという。なお、奈須とはTRPG企画『レッドドラゴン』で共演しており、その場には『Fate/Zero』の著者・虚淵玄や、『Fate/strange Fake』の著者で執筆の協力者としても名前の挙がっている成田良悟も参加していた。

2014年12月30日、TYPE-MOONオリジナルレーベル「TYPE-MOON BOOKS」から単行本第1巻が発刊[1]

登場人物

主人公とその関係者

ロード・エルメロイⅡ世(Lord El-Melloi II
主人公兼探偵役。魔術協会時計塔の現代魔術科学部長にして、時計塔に十二家しかない君主(ロード)の系譜であるエルメロイ派の現当主。本名はウェイバー・ベルベット。汚れるのを嫌う神経質な性格で好奇心が強く、解説魔。横暴なところもあるがマメで面倒見がいい。若いころと変わらず虚弱体質だが、体躯はすらりとした長身。魔術礼装を兼ねた葉巻を愛用している。神経質さが災いして、眉間には常に深いしわが刻まれている。階位は第4階位・祭位(フェス)。
魔術師としては2流以下と弟子にも酷評されているが(本人も自覚している)、時計塔での評価は高く、彼の教導を得て王冠(グランド)の階位を得なかった者はなく、教えを受けた者すべてを束ねれば時計塔の勢力図が書き換えられるとさえ言われる。その為、教えを受けられることは一種のステータスとなっている、という逸話がある(ただし、前述の通り本人は魔術師として二流以下のため、その評価を疎ましがっている)。故に君主(ロード)以外にプロフェッサー・カリスマ、マスター・Vなどとも称される。その知識量と魔術によらない多様な視点により魔術の本質を見抜くことから「魔術の破壊者」とも評される。
ケイネスの死に責任を感じており、ライネスと「内乱で負ったエルメロイの負債を完済する」、「エルメロイの魔術刻印を修復する」、「自分(ライネス)が成人するまで君主の座に就き、それを守る」、「エルメロイの家に入り、自分の義兄兼家庭教師になる」という契約を交わし、ロード・エルメロイⅡ世として縛られることとなる。また、その際に契約の証として「聖遺物」を担保としている。
ある人物との再会のため契約を早期に果たし、一介の魔術師として次回の聖杯戦争参加を目指している。
グレイ(Gray
ロード・エルメロイⅡ世の内弟子の15歳ほどの少女。「拙」という一人称を用いる。学がないことを自覚しており、長い話を覚えること、人が多い環境、近代文明が苦手。霊園の墓守の一族であるが、霊体に対する感応性が以上に強く、幽霊の類が大の苦手。魔術師ではないので魔術は使用しないものの卓越した戦闘技術を持っている。アーサー王の遠縁の子孫であり、容貌は第四次聖杯戦争におけるセイバーのものと酷似している。本人はその顔を晒したがらず、Ⅱ世の指示もあって常に顔を隠すようにフードを深くかぶっている。その実、グレイの一族が聖槍の使い手としてアーサー王を再現するために代々に渡って作ってきた人造人間の一人であり、唯一の成功例。ある時を境に顔や全身がオリジナルに似はじめることに恐怖を感じ、それ以来顔を隠し自分の顔と鏡を嫌うようになる。
Ⅱ世の話から聖杯戦争に興味を持ち、彼とともに参加することを願っている。
アッド
グレイの一族が代々受け継いでいる喋る魔術礼装であり、一行の切り札。匣に目と口がついた形をしており普段はグレイの右手にある「檻」とコートの中に隠されている。戦闘になると大鎌に変形し、周囲の魔力や霊的エネルギーを喰らって自身と所有者を『強化』する能力を持つ。また、大鎌以外にも大盾や破城槌にも変形可能。ただひたすら口が悪く、たびたびⅡ世やグレイから「お仕置き」を受ける。多量のエネルギーを喰らうと封印が開錠され、無機質な口調に代わり、アーサー王の宝具として知られる聖槍「最果てに輝ける槍(ロンゴミニアド)」に変形することができる。
ライネス・エルメロイ・アーチゾルテ
ロード・エルメロイⅡ世の義妹。エルメロイの分家筋でありケイネスの死後、内乱状態に陥ったエルメロイ一派をまとめ上げて権力を掌握した。15歳ほどの少女で普段は中性的な喋り方をするも、慣れた相手や心の声だと年相応に蓮っ葉になる。自他ともに認めるほど性格が悪く相手をイジり甚振り、困惑させて右往左往するさまを見るのが大好きで、Ⅱ世いわく「胃を壊す悪魔」(ライネス曰くエルメロイの家系は大概性格が悪いらしい)。基本サディストであるが、責められるのも嫌いではない。前述のⅡ世と交わさせた契約により、彼をロード・エルメロイⅡ世に仕立て、義兄のためと称して無理難題をたびたび持ち込んでくる。そんな彼女が持ち込む案件から物語が始まる。「相手の底を視る」「魔力を探知できる」「魔力を調整する」能力を持つ魔眼の持ち主。Ⅱ世ほどではないが、魔術師としての能力は高くない。しかしⅡ世いわく、「魔力の精密作業」即ち「魔術の上に魔術を重ねる技術」については先代エルメロイに比肩する才があり、魔眼が安定すればそれなりの魔術師になれる、らしい。
トリムマウ
ライネスの連れる疑似人格が付与された女性型自動人形(オートマタ)の従者。ケイネス・エルメロイの魔術礼装「月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)」をⅡ世の薫陶の下で応用した礼装であり、自由自在に姿を変えられる。
フラット・エルカルドス
ロード・エルメロイⅡ世の弟子の少年魔術師。現代魔術科古参の一人。「天才バカ」、「天恵の忌み子」と称されるⅡ世の胃痛の原因の一つ。唯一の赤点教科である護身術以外はすべて満点という、魔術師として天賦の素養はあるが、奇行が目立つザンネンな生徒。たびたびⅡ世の怒りを買い宿題を増やされている。
Ⅱ世に匹敵する魔術の分析・解析能力により相手の魔術を反転させるカウンターのほか、即興で術式を組み上げて行使する戦法を得意とする。
Fate/strange Fake』に登場する人物。詳細は当該記事を参照。
スヴィン・グラシュエート
ロード・エルメロイⅡ世の弟子の少年魔術師。現代魔術科最古参の学生で、フラットとは双璧と称される。真面目な性格をしているが、彼もまたⅡ世の胃痛の原因。後述にある特異な魔術の家系であるため、時計塔に来たばかりのころは常に孤立感に苛まれていた。グレイに自分と共感するものを感じ取り、彼女を「グレイたん」と呼んで追い掛け回すなど、彼女への執心はやや常軌を逸している。グレイも嫌がっている(スヴィンの行動を敵意の表れと勘違いしている)ことからⅡ世から「グレイに半径5m以上近づかないこと」と釘を刺されている。対象の存在や魔力を臭いで感知でき、普段から鼻を利かせていることからフラットからは「ル・シアン(犬)」というあだ名を付けられているが、本人は嫌がっている。言葉に魔力と「呪い」が帯びている特異体質を持っている。
獣に神秘を見出した獣性魔術の使い手であり、家系の中では最適格者。獣の幻体を纏って強靭な爪牙による高速戦法を得意とする。
クリシュナ
グレイの住む寮の管理人。料理上手
ケイネス・エルメロイ・アーチボルト
エルメロイの先代当主。故人。
Fate/Zero』に登場した人物。その経歴も同作と一致する。詳細は当該記事を参照。

「case.剥離城アドラ」の登場人物

ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト
フィンランド出身の宝石魔術師。エーデルフェルト派の現当主を務める10代後半ほどの女性。愛称はルヴィア。他の魔術の秘奥や神秘を簒奪して成り上がったことから「地上でもっとも優美なハイエナ」と評される。
Fate/stay night』『Fate/hollow ataraxia』に登場する人物。詳細は当該記事を参照。
オルロック・シザームンド
時計塔の重鎮を担う魔術師。白髪を蓄え、車椅子に乗る老人男性。蝶の成長の神秘を起源とした蝶魔術(パピリオ・マギア)を得意とする。
ハイネ・イスタリ(Heine Istari
魔術協会に所属する名門錬金術師。20代半ばほどの実直で礼儀正しい好青年。火と水の二重属性を持ち、「生きている石」を操る。魔術師社会と相いれず、一度教会に出家しているが、とある理由で舞い戻った。
ロザリンド・イスタリ
ハイリの妹。8歳ほどの幼い少女。
フリューガー
傭兵を務める、占星術師(アストロロジャー)の魔術使い。「師父殺し」の異名を持つ、屈強な体格をした中年男性。フリューという愛称を好んで用いる。瓢軽で人懐こい性格。ナイフを使った魔術・占いを得意とする。
時任次郎坊清玄(ときとう じろうぼう せいげん)
修験道を修める魔術師。訛りの入った口調の20歳半ばほどの青年。「飛鉢法」や「烏とび」などの修験道の験力を使う。フリューと同じく瓢軽な言動をする。
化野菱理(あだしの ひしり)
時計塔法政科に所属する魔術師。眼鏡をかけた振り袖姿の女性。
クラウン
ルヴィアゼリッタの第二従僕。モヒカン刈りをした身長2メートルほどの巨躯の男性
ゲリュオン・アッシュボーン
剥離城アドラの主。故人。「修復師」という、欠損した魔術刻印を修復するという稀有な魔術を扱う。
グラニド・アッシュボーン
ゲリュオンの子息。故人。

「case.双貌塔イゼルマ」の登場人物

イノライ・バリュエレータ・アトロホルム
時計塔12学科の一つ・創造科学部長にして、三大貴族の一角バリュエレータ派の貴族(ロード)を勤め上げる老齢の女性魔術師。一人称を「オレ」とするなど性格は若々しく、現代科学にも理解を持っている。
バイロン・バリュエレータ・イゼルマ
バリュエレータ派の一つ、イゼルマ家の現当主。双貌塔イゼルマの領主であり、黄金姫・白銀姫の究極の美の成就を目指す魔術師。
ミック・グラジリエ
時計塔呪詛科に籍を置く男性魔術師。我流のタントラ・ヨーガを用いる。とある人物からスパイの依頼を受け、イゼルマに現れる。
ディアドラ・バリュエレータ・イゼルマ
バイロンの娘。黄金姫を襲名する。本人の魔術師としての特性はないが、その調整され尽くした美貌は多くの魔術師たちを放心させた。
エステラ・バリュエレータ・イゼルマ
バイロンの娘で、ディアドラの妹。白銀姫を襲名する。ディアドラに比肩する美を有する。
マイオ・ブリシサン・クライネルス
時計塔伝承科の君主・ブリシサン派の末席に籍を置く青年魔術師。薬学をもってバイロンに協力している。
イスロー・セブナン
服飾を扱う魔術師。バイロンの要請で黄金姫・白銀姫のドレスを製作する。
カリーナ
ディアドラ付きのメイド。
レジーナ
エステラ付きのメイド。カリーナの妹で、一見して区別が付けづらいほどに外見が似ている。
アトラム・ガリアスタ
褐色肌をした青年魔術師。イゼルマの様子を虎視眈々と見つめている。
テレビアニメ『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』に登場する人物。詳細は当該記事を参照。
蒼崎橙子(あおざき とうこ)
最高階位・王冠(グランド)を持つ、20代後半ほどの外見をした魔術師。かつて封印指定を受けていたが、数年前の時計塔での騒動の折に解除されている。時計塔の学生時代にはイノライに師事していた。第四次聖杯戦争の際に重傷を負ったケイネスに、義手を提供した人物でもある。
魔法使いの夜』『空の境界』に登場する人物。詳細は当該記事を参照。

書籍

  1. case.剥離城アドラ(2014年12月30日発売) 解説 - 虚淵玄
  2. case.双貌塔イゼルマ(上)(2015年8月14日発売)
  3. case.双貌塔イゼルマ(下)(2015年12月29日発売) 解説 - 成田良悟

注釈

  1. ^ 同年冬開催のコミックマーケット87にて先行販売。

関連項目

外部リンク