デュエルガンダム
デュエルガンダム(DUEL GUNDAM)は、テレビアニメ『機動戦士ガンダムSEED』に登場する、モビルスーツ(MS)に分類される架空の有人式人型ロボット兵器の一つ。「デュエル」は英語で「決闘」を意味し、更に「ガンダム」にはバクロニムが設定されており「DUEI General Unilateral Neuro-Link Dispersive Autonomic Maneuver Synthesis System」とも表記される[1]。
本項では、関連作品に登場する派生機についても解説する。
機体解説
人型機動兵器「モビルスーツ」(MS)のひとつ。「地球連合軍」が開発した5機の試作機の1機だが、敵対国家である「プラント」の軍隊「ザフト」に強奪され、ザフトパイロットの一人「イザーク・ジュール」の搭乗機となる。5機の中では最も初期に開発され、スタンダードな武装を備えた汎用型の機体。強奪後の戦闘で受けた損傷がきっかけで、ザフト製の追加装甲ユニットである「アサルトシュラウド」を纏う。
デュエル Duel | |
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型式番号 | GAT-X102 |
分類 | |
全高 | 17.50m |
重量 |
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装甲材質 | フェイズシフト装甲 |
武装 |
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特殊装備 | |
搭乗者 | イザーク・ジュール |
地球連合加盟国の1つである大西洋連邦が、オーブ連合首長国公営企業モルゲンレーテ社の技術協力を受けてオーブ管轄の資源コロニー「ヘリオポリス」で極秘開発した5機の試作型MS(G兵器 / 前期GAT-Xシリーズ)の1機。
シリーズの中でも最初に完成したMSであり、将来の主力MSの基本形として要求性能をバランスよく備えた汎用機というコンセプトで開発された。従来のザフト製MSではMAや戦艦といった兵器群を仮想敵としていたが、戦争序盤でザフトに大敗を喫した連合軍では当初から対MS戦を想定する必要性に迫られ、携行装備に実弾・実体剣を多く持つザフトMSへの対抗策としてGAT-XシリーズではPS装甲を導入した[4]。デュエルはすべてのGATシリーズの母体[5]とも言える機体で、ほかの4機は、本機を基に各々のコンセプトに特化して開発されている。これはフレームの共通化という後々の拡張の為の規格統一と、能力面でコーディネイターに劣るナチュラルが機種転換を容易にできるよう操縦面においても配慮した措置でもある[6]。軽量を活かした高い運動性能と、ビームライフルやビームサーベルを駆使した白兵戦を基本戦術とし、デュエルという機体名もこれに由来する[5]。額には、イタリア語で「1」を指す単語と共に「UNO X-102」と刻印されている。
シリーズ最初期に完成した本機は内外装機材との相性があまり練り込まれておらず、想定性能を充分に発揮できているとは言い難い。しかしながらMSとしては標準的なステータスを持ち、当時のザフト主力MSであったジンをPS装甲・携行型ビーム兵器によって圧倒する[7]。ただし、GAT-Xフレームには常に改良が加えられているため[6]、同じ初期5体におけるX100系フレーム採用型最後発機であるX105 ストライクはより柔軟性・運動性が向上する結果となった[7]。ただし、GAT-Xシリーズは共通規格のコネクターを内蔵したマニピュレーター[8]を採用しているため、各機の手持ち武装の流用が容易という利便性がある。
なお、本機の量産機としてデュエルダガーが一部のエースパイロット向けに少数生産されたが、バスターダガー(X103 バスターの量産型)と同じく量産化は見送られた。
武装
- 75mm対空自動バルカン砲塔システム イーゲルシュテルン
- アークエンジェル級などの艦船が搭載する同名CIWSのMS仕様。ストライクと同様に頭部の眉間付近に2門内蔵している。
- 175mmグレネードランチャー装備57mm高エネルギービームライフル
- 主兵装であるビーム火器。銃身下部に備えられたグレネード(実体弾)と撃ち分けられる性質を連合兵たちに評価され、のちに一定数が量産された[9]。非使用時は右腰へのマウントが可能。
- プラモデルキット『ビルダーズパーツ 1/144「システムウェポン010」』で収録された本装備では銃身とセンサーを組み替えて長射程のロングライフルに改変できるギミックが追加されている。
- ビームサーベル
- バックパックの上部両端に装備されている斬撃武装。
- 対ビームシールド
- ストライクやアストレイのものと色違いの同型シールド。非使用時は本体腰部の側面ないし背面へのマウントが可能とうかがえる描写がある[10]。
- 350mmレールバズーカ ゲイボルグ
- ジンのM68キャットゥスやストライク用バズーカなどの一般的火砲とは異なり、予備バッテリー搭載を兼ねて長大に設計した銃身を使い、砲弾を内部で電磁加速させて撃ち出すリニアキャノンと呼べるもの。デュエルが強奪されたことで本来の主を失い、ヘリオポリス崩壊の裏で起こっていた事件を経てゴールドフレームによって運用された。
- 長らくは単に「デュエルガンダム専用バズーカ」などと表記されていたが、『VS ASTRAY』に登場するレーゲンデュエルの装備品にて制式名称がつけられた。
- 上記の経緯から『SEED』本編には未登場だが、ガンダムコレクションやAdvanced MS IN ACTION・MGプラモデルにおいて手持ち武装として付属しているほか、『ガンダムビルドファイターズ』第10話ではアサルトシュラウドを含めて黒いカラーの本機のガンプラがこの武器を持っている描写がある。
- そのほかの武装
- 『SEED』最終話で借り受けたバスターの超高インパルス長射程狙撃ライフル、ストライクのビームライフル&シールドなど。一方でAdvanced MS IN ACTIONの「デュエルガンダムアサルトシュラウド」には、ショートライフルとスナイパーライフルというオリジナル武器が同梱されている。
デュエルガンダム アサルトシュラウド
ザフトが開発していた、第1世代MS用強化パーツである「アサルトシュラウド」を装備した形態。第11話で損傷したデュエルの修理と並行して特注・装備されたものであり、「シュラウド」とは「死体を包む布」を意味する。
通常の部材で造られているものなのでPS装甲のような革新的堅牢性は無いが、バックパック及び脚部に追加された高出力スラスターによる宇宙戦での機動性と、それぞれの肩部に追加されたレールガンとミサイルによって火力を高めることに主眼が置かれたユニット。そのために総重量が100トン近くにもなるが、高出力スラスターにより有重力下でもある程度の機動性や短時間の飛翔能力も備えている。各部パーツの装着に関しては人的労力が必須だが、戦闘中はパイロットの操作で任意の排除もできる。
大戦後期には地球軍が本機を参考として、同コンセプトの強化装甲「フォルテストラ」を開発した。
- 115mmレールガン シヴァ
- アサルトシュラウド右肩部装甲に設置されたレールガン。速射性に優れ、良好な可動範囲を使って本体(胴体)の進行方向とは全く別の標的も射撃できる。名称はインド神話における破壊神・シヴァに由来する。
- 元々はジン用の追加武装として試験的にクルーゼ隊へ搬入されていた装備であるが、デュエルへ搭載された。この装備は量産化も視野に入れられていたが、GAT-X強奪に伴うビーム兵器の導入によって見送られ、のちにフリーダムに搭載されるクスィフィアスの技術的な礎となった[11]。
- 『VS ASTRAY』では本器を手持ち兵器化したレールライフルが登場。また、MGプラモデルではシヴァにグリップ内蔵ギミックが追加され、本体固定装備と手持ちレールガンのどちらでも装備が可能となっている。
- 220mm径5連装ミサイルポッド
- アサルトシュラウド左肩部装甲内に格納されたミサイルポッド。
劇中での活躍
ヘリオポリスを襲撃したザフト軍のクルーゼ隊によって奪われ、隊員の1人イザーク・ジュールの搭乗機となり、そのままヘリオポリスを脱出したアークエンジェルを追撃する。第5話でストライクによって破壊された腕は、強奪時に一緒に回収していた各機の予備パーツを使って修復される[12]。第11話からはジンなどの追加装備を用いて新造されたアサルトシュラウドを装着。同時に強奪された他の3機と共にアークエンジェルを追い詰めるが、そのたびにキラ・ヤマトの駆るストライクに妨害される。
低軌道会戦を経て地球に降下した後は、再びアークエンジェルを追って北アフリカからマーシャル諸島と転戦するが、キラのストライクに連敗し続ける。オペレーション・スピットブレイク発動後は連合本部アラスカJOSH-A侵攻作戦、パナマ攻略戦にも参加するが、イザークの出番そのものが減少したためにあまり活躍していない。第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦を戦い抜き、後期GAT-Xシリーズ3機のうちフォビドゥン、レイダーの2機を撃墜(スペシャルエディション完結編ではフォビドゥンのみ)。さらに連合軍の旗艦ドゥーリットルを撃沈し、プラント防衛に貢献する。レイダー撃墜後にフェイズシフトダウンを起こすが、中破したバスターと共にアークエンジェルに収容されて補給を受け、ストライク用のライフルとシールドを装備してアークエンジェルの近くを飛行しているシーンが最後の姿となる。
GAT-Xシリーズで唯一稼動状態で停戦を迎えるが、続編の『DESTINY』には登場しないため、その後については不明である。
『機動戦士ガンダムSEED Re:』では、上述のアサルトシュラウド以外にも大気圏内用の専用装備「ジェグス」が登場。空戦MSであるディンの飛行ユニットをベースにしたザフト版I.W.S.P.とも呼べる外観をしており、ディンの整流用エアロシェルが確認できる。
ブルデュエル
ブルデュエル Blu Duel | |
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型式番号 | GAT-X1022 |
全高 | 16.89m |
重量 | 84.24t |
装甲材質 | ヴァリアブルフェイズシフト装甲 |
武装 |
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搭乗者 | ミューディー・ホルクロフト |
地球連合軍第81独立機動群「ファントムペイン」が、アクタイオン・インダストリー社を中心とした複数企業の技術協力を受け推進したエースパイロット用カスタマイズMS開発計画―通称「アクタイオン・プロジェクト」に基づき、再製造されたデュエルを改修した機体。パイロットは「ファントムペイン」特殊戦MS小隊に所属する少尉ミューディー・ホルクロフト。機体名の「ブル」は、イタリア語で「青」を意味する。
僚機である汎用型のX105E ストライクノワール、砲戦型のX103AP ヴェルデバスターとの連携を想定し、近接白兵戦闘を重視したカスタマイズが施されている。各部に配置された増加アーマーは、ロングダガー、デュエルダガーのフォルテストラを再設計した複合兵装ユニットで、追加装備された強化スラスター及び各種火器によって機動力、攻撃力共に格段の向上が成されている。フォルテストラやザフトのアサルトシュラウドは着脱可能なボルトオン装着方式であったが、本機ではそれらを本体と直結された固定装備とすることで電力供給の必要なVPS装甲化が全面的に果たされた[13]。これにより純粋な防御装甲としての機能が高められている。同時に、余分な装甲や構造材を簡略化し軽量化を図ることで、追加ユニット共通の欠点であった運動性の低下が最小限に抑えられてもいる。反面、破損・誘爆の危険のある部位の排除や全追加装甲解除による軽量化などはできなくなっている。
大気圏内飛行能力を持たないため、長距離移動時はヴェルデバスターと同様に輸送ヘリコプターに懸架されて空輸される。
武装(ブル)
- M2M5 トーデスシュレッケン12.5mm自動近接防御火器
- ダガーL以降の連合系量産MSが標準装備する対空防御機関砲。イーゲルシュテルンに替わり頭部に2門内蔵される。
- Mk315 スティレット投擲噴進対装甲貫入弾
- 左肩部増加アーマーのラック内に格納される自推式の投擲兵器。同じく連合系量産MSに広く装備される。劇中ミューディーは使用時に3基を一度に引き抜き投擲する。
- M443 スコルピオン機動レールガン
- 右肩シールド裏に装備された旋回式電磁レール砲塔。AS装備型デュエルの「シヴァ」や、ロングダガー、デュエルダガーのリニアガンに準じた武装。その破壊力はサソリ (Scorpion) の毒針の如く一撃必殺を誇る。
- M7G2 リトラクタブルビームガン
- 両前腕アーマーに一体化されたビームハンドガン。機体特性上敵味方入り乱れる乱戦状態下での使用を想定しており、出力や射程よりも即応性や連射能力を重視した設計としている。使用時は格納されたバレル部を旋回させ射撃体勢を取るが、通常の銃同様掌でグリップを保持する。
- ES05A ビームサーベル
- 両スネアーマー側部にマウントされる斬撃武装。ダガーLやウィンダムが装備するES04B ビームサーベルの改良型。設置位置が肩部から脚部側面に変更されている。
- 対ビームシールド
- 改修前と同一の装備だが、ビームガンが両腕部に固定装備化されたことに伴い、設置位置が右肩アームバーに変更されている。
劇中での活躍(ブル)
本機は、ブレイク・ザ・ワールド事件後キルギスプラントを襲撃したザフト軍の殲滅任務を受けストライクノワール、ヴェルデバスターと共に現場に急行、これを鎮圧する。その後はデストロイを搭載し西ユーラシア地方を進撃中のハンニバル級陸上戦艦ボナパルトの防衛任務に就き、迫り来るザフトのMS部隊を駆逐するが、背後よりバクゥの奇襲を受けビームサーベルで右腕、シールド、レールガンを切断され、更に左足を撃ち抜かれて行動不能となった直後に3機のケルベロスバクゥハウンドのビームファングでコクピットを滅多刺しにされて大破、パイロットのミューディーも戦死する。
レーゲンデュエル
レーゲンデュエル Regen Duel | |
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型式番号 | LR-GAT-X102 |
全高 | 18.16m |
重量 | 64.19t |
装甲材質 | 不明 |
武装 |
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搭乗者 | カイト・マディガン |
「ライブラリアン」がデュエルを独自改修・再設計した機体。型式番号冒頭の「LR」は「ライブラリアン・レーゲン」の略で、「レーゲン」はドイツ語で「雨」を意味する。パイロットはカイト・マディガン。
従来のデュエルの強化プランが追加装甲による火力・防御力の上昇だったのに対し、本機はレールガンやバズーカといった中・遠距離戦能力を付加し、全領域での戦闘を柔軟にこなす機体へと強化されており、装甲の追加はコックピット前面と腰部前面・膝部のみに施されている。足首部分の設計が見直しされ、追加パーツが施されている。基本戦術は、まず砲撃戦で敵の拠点や母艦にダメージを与え、続いて中・遠距離用装備を排除して対MS戦へと移行する。カイトは自分の乗機にはビームと実体弾を切り替えて撃てる専用銃を装備しているが、本機には例外的に装備されていない。
ライブラリアンの強化型Gは全機がストライカーシステムに対応しており[14]、本機もストライカーパック用背部プラグが追加されているため、バックパックはそれ自体をストライカーパック「バズーカストライカー」として着脱可能で、他の強化型Gに装着、または別のストライカーを装着することができる。
顔部が「GZ型」と呼ばれるタイプのものに変更されているが、これはカイトの趣味で変更されたものであり、カイトのコレクション機体からの流用で出所不明だが、通常のデザインの物と性能面の差はない[15]。
武装(レーゲン)
- 115mmレールライフル「ルドラ」
- アサルトシュラウドに装備された115mmレールガン「シヴァ」を手持ち用の武装として改良したもの。手持ち用の武装となったことでより正確な射撃が可能だが、弾数が低下している。
- 「ルドラ」とは、「シヴァ」の別名。
- バズーカストライカー
- 本機が標準装備する砲撃型ストライカー。設計にランチャーストライカーがベースとなっており、通常装備として350mmレールバズーカ「ゲイボルグ」が接続されるが、320mm超高インパルス砲「アグニ」の接続も可能。遠距離から近距離への戦闘移行時には切り捨てられるため、爆破による隠滅も可能。
劇中での活躍(レーゲン)
緒戦でアグニス・ブラーエのターンデルタと交戦し、大破させる。その後、地上でグゥド・ヴェイアのヴァンセイバーと共にイライジャ・キールのイライジャ専用ザクファントムと交戦するが、ヴェイアがイライジャ専用ザクウォーリアを奪って逃走した際には追撃を放棄する。その後、プレアからの命令でザフトのジン部隊と交戦・撃破する。
脚注
- ^ 『MGデュエルガンダム アサルトシュラウド』付属のデカールを参照。
- ^ 『機動戦士ガンダムSEED DESTINY MSエンサイクロペディア』を参照[要ページ番号]。
- ^ 『データコレクション17 機動戦士ガンダムSEED 上巻』22頁。
- ^ 双葉社「機動戦士ガンダムSEED コズミック・イラ メカニック&ワールド」より
- ^ a b ホビージャパン「機動戦士ガンダムSEED モデル vol.4 紅の炎編」
- ^ a b 電撃ホビーマガジン2005年2月号より
- ^ a b プラモデル 『1/60 PG ストライクガンダム』 組立説明書。
- ^ プラモデル 『1/100 MG ストライクガンダム+I.W.S.P.』 組立説明書。なお、同じなのはあくまでも「手」で、ストライクの「腕」だけは特別精密な設計と解説される資料も見られる。
- ^ プラモデル 『1/100 MG ストライクノワールガンダム』 組立説明書。
- ^ 『SEED HDリマスター』第5話Bパートでのグレネードランチャー発射シーンにて描き加えられたが、トリガーを引く右腕側に装備し直しているようにも見えるため。
- ^ プラモデル 『1/100 MG フリーダムガンダム』 組立説明書
- ^ 「月刊ホビージャパン 2003年2月号57頁 『◆SEEDちょっといいハナシ-(2)』」より。
- ^ 『機動戦士ガンダムSEED C.E.73-STARGAZER-』公式サイトの記述による。
- ^ アストレイ ミラージュフレームは対応していない。
- ^ プラモデル『1/100 レーゲンデュエルガンダム』取扱説明書より。