スクーナー

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フランス海軍の2本マストスクーナー、エトワール号

スクーナー(schooner)とは、2本以上のマストに張られた縦帆帆装を特徴とする、帆船の一種である。スクーナーは、最初にオランダ16世紀から17世紀にかけて用いられ、アメリカ独立戦争の時期に北米で更に発展した。日本では幕末君沢形と呼ばれた。

名前の由来

スクーナー

ブリタニカ百科事典第11版によると、建築業者アンドリュー・ロビンソンによって建造され、1713年グロスターで進水したものが最初のスクーナーと呼ばれた船であるという。「スクーナー」という名前は、見物人が叫んだ「Oh how she scoons[1]」という言葉が由来であるという。それに対しロビンソンは「A schooner let her be」と言ったという[2]ウォーター・ウィリアム・スキートによると、schの綴りがオランダ語ドイツ語のスペルから取り入れられるまでは「scoon」であったという。

但し、アメリカの帆船研究家チャベルによると、「それ以前に同様の帆船(スクーナー)の絵が発見されており、アンドリュー・ロビンソンがスクーナーを発明した」というのは「後世の作り話だろう」とする。理由は、その絵は縦帆(fore-and-aft sail)だけの船で、「スクーナー」と呼ばれていたかは不明であるが、18世紀の始めにはアメリカ沿岸用として使用されていたのであるから、少なくともアンドリュー・ロビンソンが「スクーナー」の発明者ではない。と推察している。[3]

君沢形

1855年安政2年)、開国の目的で来日したロシアエフィム・プチャーチン一行の喪失した乗艦「ディアナ号」の代りに「ヘダ(戸田)号」(75トン)がロシア人船員(帆船乗員は航海中の船体損傷修理のため造船技術も全般に習得している)に加えて、日本人船大工を交えて幕府により建造された。その後、幕府は戸田村で6隻、石川島で4隻のスクーナーを建造した。この船型を建造地が「伊豆君沢郡戸田村」であったことから「君沢形」と名付けた。その後、同型ではなくともスクーナー一般に対する呼称として、君沢形の名が使われることがあった。

構造

スクーナーの構造

スクーナーは2本以上のマストを持ち、最後部のマストが最も高いか、もしくは全て同じ高さとなっている。最前部のマストが最も高い船をケッチ(Ketch)といい、スクーナーとは分けている。 伝統的なスクーナーは最前のマストにガフセイルを持つ。まれにガフセイルと同時に、上部に横帆のフォアコースセイルが張られる。横帆を持つスクーナーをスクウェアトップスルスクーナーと呼ぶ。前衛的なスクーナーは、マルコーニ帆装あるいはバミューダ帆装であるかもしれない。バミューダ海域では、バミューダ帆装されたスクーナーが19世紀前半まで使用された。バミューダ帆装のスループは、ガフもしくはバミューダ帆装の1本マストの船(バミューダスループ)と併せてBallyhoo schoonersとして知られていた。そのタイプの有名な船は、英国軍艦のピッキーHMS Pickle)である。また、一部のスクーナーはメインマストにバミューダ帆装をもち、フォアマストにはガフセイルを持っていた。ステイスルスクーナーはフォアセイルを持たない代わりにキャリーセイルとメインステイセイルを持つ。

スクーナーは、アメリカ合衆国で多用され、また北ヨーロッパでも人気を得ていた。中でも2本マストのスクーナーが一般的で、少数の船員で帆の操作が行えるのが大きな特徴である。また、逆風時の速度(海流の強い海域での陸岸に対して)が要求される場面、沿岸航行の商船や漁船などの用途で広く使われた。チェサピーク湾周辺では複数の特徴的なスクーナータイプへと進化を遂げた。ボルティモアクリッパーなどがその例で、マストの数が既存の例よりも格段に多かった。小型のスクーナーは2本または3本のマストであることが一般的であったが、これらの船は6本または7本のマストを持っていた。1902年に建造された、唯一7本ものマストを持つのスクーナー(Thomas W. Lawson)は、全長120m高さ47mと最大級で、25枚もの帆を持ちその面積は4,000m²にも及んだ。

エセックスは、スクーナー建造の重要拠点であった。1850年代までに、15箇所の造船所で1年に50隻以上のペースで建造された。エセックスは、北アメリカの漁業用スクーナー製造の中心地として認められていた。合計で4,000隻以上を進水させ、その多くはマサチューセッツ州の漁業の中心地グロスター向けであった[4]

用途

スクーナーは、遠洋航海から沿岸や内陸水域まで、幅広い環境で船荷の輸送に使用されている。スクーナーは北アメリカ大陸で広く使用されており、1800年代の全盛期には、2000隻を越えるスクーナーがアメリカ五大湖を横断して船荷を運んでいた。3本マストの「ターン」は、カナダの沿岸諸州で好まれていた艤装である。2本マストのスクーナーブルーノーズは、極めて有名である。

有名なスクーナー


脚注

  1. ^ scoon : スコットランド語で、「スキップする」あるいは「氷の上を進むように」という意味である。
  2. ^ Babson, John. History of the Town of Gloucester, Cape Ann, including the town of Rockport. 1860. p.251-252.
  3. ^ クリッパーへの道 山形欣哉 (スクーナー)Hobby Japan 1976 4
  4. ^ http://www.essexshipbuildingmuseum.org/shipbldg.html エセックスの造船に関する情報。

外部リンク