陸戦

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陸戦(りくせん Land warfare)とは陸上における作戦戦闘である。陸上戦闘、陸上作戦とも呼ぶ。

概要[編集]

人間のあらゆる活動の基盤はにあり、究極的にその地域を支配するには陸戦で敵の陸軍力を排除する必要がある。陸戦は地形地勢・時間・攻勢防勢・戦術によってさまざまな形態があり、要する兵員・物資・活動も多種多様かつ膨大である。

特徴[編集]

地形の戦力化[編集]

海軍力空軍力と比較して、陸軍力は地形の影響を多大に受ける。陸地には高低起伏・地表面土質・水系植生・人工物など多様な性格があり、しかも気候・時間によって逐次変化していく。これらは陸上作戦において有利にも不利にもなり、地形は部隊の位置的な優位・視界・射界・偽装・隠蔽・掩蔽などに影響する。したがって地形を戦力に取り込むことができ、特に築城はこの効果を高める。

兵力吸収性[編集]

作戦地域が拡大するほど作戦線が伸長して戦力の密度が下がり、兵站の負担は増し、指揮統率はより困難になる。特に敵地へ侵攻する場合にこの性質が顕著となる。作戦線の伸長に伴う戦力逓減と逆の場合の戦力逓増の原則はカール・フォン・クラウゼヴィッツが「頂点の思想」で述べており、また「山は兵を飲む」と古来より戦訓として伝えられている。

作戦の固定性[編集]

陸上作戦は後方支援に基づいて展開し、かつ後方支援道路鉄道水路都市などに基づいて行うため、作戦は固定的な性質を持つ。また後方支援は厳密な計画に沿って業務を進めるため、簡単には変更できない。

局地的独立性[編集]

海軍力・空軍力に比較して、陸軍力は指揮統制に限界がある。作戦地域の各地で同時多発的に戦闘が起こり、同時進行で事態が進み、また現場指揮官は自己の判断に基づいて行動するためである。大規模な陸戦になればなるほどこの性質は高まり、全体の戦闘をすべて一元的に完全掌握するのは不可能である。

精神力の依存性[編集]

陸軍力の最小単位は一人の人間であり、一人ひとりの判断の蓄積で戦闘行動は進行する。これらすべては把握できないので、個々の現場指揮官とその指揮下にある兵士たちの高度な士気、強固な意思、各員のチームワークと各級指揮官のリーダーシップが重要となる。

形態[編集]

決戦と持久戦[編集]

クラウゼヴィッツは作戦の形態を

  • 敵戦闘力の撃滅
  • 自己戦闘力の保持

に大別し、毛沢東も同様に

  • 敵の撃滅
  • 自己の保存

に分類した。これら2つの側面のどちらを重視するかで、作戦の形態を以下の2種類に分類できる:

決戦
敵の撃滅を重視して、敵を撃滅するために能動的に攻撃しようとする作戦。双方あるいは一方が決戦の意思を持って動く場合に発生する。
持久戦
自己の保全を重視して、決戦を回避するための受動的に防御する作戦。

攻勢・防勢作戦[編集]

攻勢作戦
敵を求めて積極的に敵を探し、発見すれば攻撃する作戦。主導権を掌握しやすく、地域を占領し、敵戦力を効果的に撃滅できるが、充足した戦闘力が不可欠である。
防勢作戦
戦力の劣位を補いつつ、時間的猶予を得るために敵の攻撃を受動的に破砕する作戦。

攻防の選択は、任務を基軸に、攻防両作戦の性質や状況、双方の戦闘力の消費や効果などから総合的判断しなければならない。

外線・内線作戦[編集]

外線作戦
敵に対して後方連絡線を外方向に置き、諸方面から求心的に部隊を配備して行う作戦。包囲・挟撃の位置関係にある。各正面に相互的な関連性があり、一正面の戦果が即時に隣接する地域の戦果に直結する。
内線作戦
後方連絡線を内方向に置き、作戦正面を離心的に部隊を配備して行う作戦。戦力を集中して運用できるものの、各個撃破できないと即座に後方連絡線が敵に晒される危険性がある。

両作戦は相対的な関係にあり、外線作戦は攻勢的で、内線作戦は防勢的である。どちらが有利なのかは、任務・戦闘力・状況に左右される。

各種地形[編集]

  • 着上陸作戦 - 上陸戦の一環で、敵の領地の海岸地域を機動攻撃する攻勢作戦
  • 対着上陸作戦 - 上陸を試みて機動攻撃する敵に対しての防勢作戦
  • 野戦 - 人工建築物・要塞などが存在しない地形での作戦戦闘
  • 陣地戦・要塞戦 - 築城が存在する地形での作戦戦闘
  • 森林戦 - 熱帯雨林など植生が濃い地形での作戦戦闘
  • 湿地戦 - 沼地などの湿り気の多い場所での作戦戦闘
  • 山岳戦 - 高低起伏が激しい、特に高地での作戦戦闘
  • 雪中戦 - 寒冷地での作戦戦闘
  • 砂漠戦 - 砂漠地帯での作戦戦闘
  • 市街戦 - 人工建築物が集中的に存在する都市部での作戦戦闘

参考文献[編集]

  • 内田政三「現代の陸上戦力」防衛大学校・防衛学研究会編『軍事学入門』かや書房、1999年、pp.152-175
  • 陸戦学会『戦理入門』九段社、1995年
  • Bellamy, C. 1987. The future of land warfare. New York: St. Martins Press.
  • Clausewitz, C, von. 1984. On war. Ed. and trans. M. Howard and P. Paret. Princeton, N.J.: Princeton Univ. Press.
  • Dunnigan, J. F. 1983. How to make war. New York: Quill.
  • Gabriel, R. A. 1990. The culture of war: Invention and early development. Westport, Conn.: Greenwood Press.
  • Garden, T. 1989. The technology trap: Science and the military. London: Brassey's.
  • Jones, A. 1987. The art of war in the western world. Oxford: Oxford Univ. Press.
  • Kendall, P. 1957. The story of land warfare. Westport, Conn.: Greenwood Press.
  • Liddell Hart, B. H. 1991. Strategy. New York: Penguin Books.
  • Macksey, K. 1973. Guinness history of land warfare. En-field, England: Guinness Superlatives.
  • NATO. 1984. Land force tactical doctrine ATP-35(A). Military Agency for Standardization. Brussels: NATO.
  • U.S. Department of the Army. 1986. Field Manual 100-5: Operations. Washington, D.C.: Government Printing Office.
  • U.S. Department of the Army. 1994. Field Manual 71-100: Division Operations. Washington, D.C.: Government Printing Office.

関連項目[編集]