デューハーストステークス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Zai零細系統保護協会 (会話 | 投稿記録) による 2014年8月14日 (木) 03:31個人設定で未設定ならUTC)時点の版であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

デューハーストステークスDewhurst Stakes)は、イギリスニューマーケット競馬場で10月に行われる競馬の競走。

格付けは最高格のG1で、イギリスの2歳戦としては最も賞金が高い。イギリス国内にとどまらず、ヨーロッパの2歳戦のなかでも特に重要とされており[1]、全欧から選出されるカルティエ賞(1991年創設) で、1991年から2013年までの23回中9回がこの競走の勝馬がヨーロッパ2歳チャンピオンに選ばれている。

2011年に行われたイギリスの秋競馬の日程の改革によって、「フューチャーチャンピオンズデイ」と呼ばれる2歳戦を集めた開催の目玉競走となった。

デューハーストステークス[2]
Dewhurst Stakes
競馬場 ニューマーケット競馬場
ロウリーマイルコース
距離 芝6ハロン(2014年)
(約1207メートル)
格付け G1(2014)
賞金 1着賞金360,000ポンド(2014年)
賞金総額204,156ポンド(2014年)
出走条件 2歳
負担重量 9ストーン1ポンド
(約57.60kg
※牝馬は3ポンド(約1.36kg)減量
テンプレートを表示

概要

イギリスには、G1に格付けされている2歳牡馬戦が3つあるが、デューハーストステークスはその中でも最も賞金が高い競走である。この競走の上位馬は翌年のクラシックで中心視されるようになる。イギリス国内で最高というだけではなく、ヨーロッパの2歳戦のなかでも特に重要な競走と位置づけられてきた[3][4][1]

デューハーストステークスは、トーマス・ギー(Thomas Gee)が1875年に創設した。創設から1912年までは「デューハーストプレートDewhurst Plate)」というプレート競走[注 1]だった。「デューハースト」というのは、ギーがイースト・サセックスのワドハースト(en:Wadhurst)に所有していたデューハースト牧場(Dewhurst Stud)に由来する[3][4][5]

デューハーストプレートは、創設当初の4年間の勝ち馬がすべて翌年のクラシックを勝ち、重要な2歳戦としての価値を確立した。その4頭は次の通り[5][6]

1875年 - Kisber(キシュベル) … 翌年のダービー優勝
1876年 - Chamant … 翌年の2000ギニー優勝
1877年 - Pilgrimage … 翌年の2000ギニー優勝
1878年 - Wheel of Fortune … 翌年の1000ギニーオークス優勝

その後も、デューハーストステークス優勝馬からは多くのクラシック勝馬が誕生している。イギリスクラシック三冠を達成したものだけでも、オーモンドロックサンドニジンスキーがいる。また、競走馬として大成しただけでなく、種牡馬としても極めて重要な活躍を果たしたものも少なくない。たとえばイギリスのチャンピオンサイヤーとなったものとして、オームセントフラスキンバヤルドレンバーグハイペリオン、クレペロ(en:Crepello)、ニジンスキー、ミルリーフがいる。ほかにも、アメリカでチャンピオンサイヤーになったメドラー(en:Meddler)、日本でチャンピオンサイヤーになったレヴューオーダー[注 2]もデューハーストステークスの優勝馬である[3][7]

近年では2012年の優勝馬ドーンアプローチが翌年2000ギニーを制しているほか、2004年のシャマルダルが翌年のフランスダービーを、2005年のサーパーシー(en:Sir Percy)が翌年のイギリスダービーに勝っている。また、ロックオブジブラルタルフランケルのように、2000ギニーを勝った後、中・短距離で目覚ましい活躍をみせたものも出ている[3][4]

中東勢とデューハーストステークス

1986年にドバイシェイク・モハメドがアジダル(en:Ajdal)を出走させ、優勝した。その後しばらく中東勢が躍進した[5]

  • 1986年から2000年までの優勝馬主[5][7]
  • 1986年 アジダル - シェイク・モハメド
  • 1987年 中止
  • 1988年 シーニック(Scenic) - シェイク・モハメド
  • 1989年 (3着 シェイク・モハメド)
  • 1990年 ジェネラス - ファハド皇太子(en:Fahd bin Salman bin Abdulaziz Al Saud
  • 1991年 (2着ファハド皇太子)
  • 1992年 ザフォニック(Zafonic) - ビン・アブトゥッラー(サウジアラビアの王族)
  • 1993年 
  • 1994年 ペニカンプ(Pennekamp) - シェイク・モハメド
  • 1995年 アルハース(Alhaath) - マクトゥームファミリー
  • 1996年 インコマンド(In Command) - マクトゥームファミリー
  • 1997年 ザール(Xaar) - ビン・アブドゥッラー
  • 1998年 ムジャヒド(Mujahid) - マクトゥームファミリー
  • 1999年 ディスタントミュージック(Distant Music) - ビン・アブドゥッラー
  • 2000年 トブグ(Tobougg) - マクトゥームファミリー

スポンサー面でも近年は中東勢が突出している。1998年にサウジアラビア航空(現サウディア)がデューハーストステークスのスポンサーになったのをはじめ、2000年から2008年はシェイク・モハメド殿下のダーレーグループ、2009年はマクトゥーム家が経営する高級ホテルグループ・ジュメイラがスポンサーとなって賞金が30万ポンドを超えた[8]。2010年からはドバイそのものがスポンサーになり、「ドバイ・デューハーストステークス」と銘打っている。イギリスの2歳戦のなかでの最高額賞金は、こうした中東勢に支えられている[5][7][1]

2014年の賞金36万ポンド[注 3]は2歳戦のなかで突出しており、同じイギリスの2歳G1であるレーシングポストトロフィー(20万ポンド)、ミドルパークステークス(18万ポンド)や、G2ジムクラックステークス(20万ポンド)、スーパースプリント(23万ポンド [9])などと比べても10万ポンド以上の差がある。

デューハーストステークス当日には、ドバイが主催する「ベストドレッサー賞(Best Dressed Racegoer)」も行われる。観客の中から2名が選出され、受賞者には翌年2月のドバイ国際競馬カーニバルに招待され、ジュメイラグループのザメイダンホテルに宿泊できる[5][1]

2011年の2歳戦のスケジュール変更

デューハーストステークスは、長いあいだ、ニューマーケット競馬場で10月中旬に行われる「チャンピオンズ開催」の2日目の目玉競走だった。この開催の中核となるのが、イギリスの一流馬がシーズン最後に出走するように企画されたチャンピオンステークスだった。

ところが近年、中長距離の一流馬は、10月初旬のフランスの凱旋門賞から、アメリカやアジアの高額賞金競走へ転戦する傾向があり、イギリスではチャンピオンステークスが本来の意図に適う出走馬を集められるよう、大きく日程を調整することになった。

その結果、チャンピオンステークスは日程を変えてアスコット競馬場で行うことになり、あわせて短距離から長距離までの各部門の「チャンピオン戦」を一日に集中して行う「ブリティッシュ・チャンピオンズデイ」が創設された[10]

もともとチャンピオンステークスが秋シーズンの最大のイベントだったニューマーケット競馬場では、そのイベントをアスコット競馬場へ放出する代償として、10月上旬に主要な2歳戦をまとめて一日で行う「フューチャーチャンピオンズデイFuture Champions Day)」を創設することになった。そのために、従来のミドルパークステークスに加え、デューハーストステークス、2歳牝馬G1のフィリーズマイル[注 4]も加えて行われることになった[11]

これにより、以前はミドルパークステークス(10月初旬)とデューハーストステークス(10月下旬)の両方に出走することが可能だったのだが、変更後はどちらか一方にしか出走できないことになった。

この大改革は、翌2012年以降、見直しが重ねられており、フューチャーチャンピオンズデイで行われる競走の入れ替えや日程の変更が行われている。2014年は、フューチャーチャンピオンズデイは10月中旬に戻り、アスコット競馬場のチャンピオンズデイの前日に行うこととなっている。この一連の改革はまだ進行中であり、まだ固定化されていない[12][13][14]

アメリカのブリーダーズカップチャレンジシリーズとの関連では、2011年にデューハーストステークスはシリーズの1つとなり、優勝馬にはブリーダーズカップジュヴェナイルターフへの優先出走権が与えられることになった。しかし2011年の優勝馬パリッシュホール(Parish Hall)はこれを行使しなかった。2012年以降はこのシリーズから脱したため、同シリーズに加わったのは2011年だけとなった。

歴代勝馬

創設~1985年

  • 「*」は日本輸入馬。国際レース出走などの一時的なものも含む。
  • 略称は下記の通り。
  • MP…同年のミドルパーク優勝馬に「★」
  • 2G…翌年の2000ギニー優勝馬に「★」
  • DB…翌年のダービー優勝馬に「★」

MP 優勝馬 2G DB
1875 Kisber
1876 Chamant
1877 Pilgrimage
1878 Wheel of Fortune
1879 Grace Cup
1880 Bal Gal
1881 Dutch Oven
1882 Ladislas
1883 Queen Adelaide
1884 Paradox
1885 Ormonde
1886 Reve d'Or
1887 Friar's Balsam
1888 Donovan
1889 Le Nord
1890 Corstorphine
1891 Orme
1892 Meddler
1893 Matchbox
1894 Raconteur
1895 St Frusquin
1896 Vesuvian
1897 Hawfinch
1898 Frontier
1899 Democrat
1900 Lord Bobs
1901 Game Chick
1902 Rock Sand
1903 Henry the First
1904 Rouge Croix
1905 Picton
1906 My Pet
1907 Rhodora
1908 Bayardo
1909 Lemberg
1910 King William 及び Phryxus[† 1]
1911 White Star
1912 Louvois
1913 Kennymore
1914 Let Fly
1915 Atheling
1916 Telephus
1917 My Dear
1918 Knight of Blyth
1919 Prince Galahad
1920 中止(第1次世界大戦)
1921 Lembach
1922 Hurry Off
1923 Salmon-Trout
1924 Zionist
1925 *レヴューオーダー
1926 Money Maker
1927 Toboggan
1928 Brienz
1929 Grace Dalrymple
1930 Sangre
1931 Firdaussi
1932 Hyperion
1933 Mrs Rustom
1934 Hairan
1935 Bala Hissar
1936 Sultan Mahomed
1937 Manorite
1938 Casanova
1939 中止(第2次世界大戦)
1940 Fettes
1941 Canyonero
1942 Umiddad
1943 Effervescence
1944 Paper Weight
1945 Hypericum
1946 Migoli
1947 Pride of India
1948 Royal Forest
1949 Emperor
1950 Turco II
1951 Marsyad
1952 Pinza
1953 *インファチュエイション
1954 My Smokey
1955 Dacian
1956 Crepello
1957 Torbella
1958 Billum
1959 Ancient Lights
1960 *バウンティアス
1961 River Chanter
1962 Follow Suit
1963 King's Lane
1964 Silly Season
1965 Pretendre
1966 Dart Board
1967 Hametus
1968 Ribofilio
1969 Nijinsky
1970 Mill Reef
1971 *クラウンドプリンス
1972 Lunchtime
1973 Cellini
1974 グランディ
1975 Wollow
1976 The Minstrel
1977 トライマイベスト
1978 Tromos
1979 Monteverdi
1980 Storm Bird
1981 Wind and Wuthering
1982 Diesis
1983 El Gran Senor
1984 Kala Dancer
1985 Huntingdale
  1. ^ 2頭の同着

1986年以降

  • 「*」は日本輸入馬。国際レース出走などの一時的なものも含む。
  • 略称は下記の通り。
  • C賞…同年のカルティエ賞最優秀2歳馬に「☆」
  • MP…同年のミドルパーク優勝馬に「★」
  • 2G…翌年の2000ギニー優勝馬に「★」
  • DB…翌年のダービー優勝馬に「★」

C賞 MP 優勝馬 2G DB
1986 G1 Ajdal
1987 中止[※ 1]
1988 10/14 G1 Prince of Dance及びScenic[※ 2]
1989 10/20 G1 Dashing Blade
1990 10/19 G1 ジェネラス
1991 10/18 G1 ドクターデヴィアス
1992 10/16 G1 Zafonic
1993 10/15 G1 Grand Lodge
1994 10/14 G1 Pennekamp
1995 10/13 G1 Alhaarth
1996 10/18 G1 In Command
1997 10/18 G1 ザール (競走馬)
1998 10/17 G1 Mujahid
1999 10/16 G1 Distant Music
2000 10/14 G1 Tobougg
2001 10/20 G1 ロックオブジブラルタル
2002 10/19 G1 Tout Seul
2003 10/18 G1 Milk It Mick
2004 10/16 G1 Shamardal
2005 10/15 G1 Sir Percy
2006 10/14 G1 Teofilo
2007 10/20 G1 New Approach
2008 10/18 G1 Intense Focus
2009 10/17 G1 Beethoven
2010 10/16 G1 Frankel
2011 10/8 G1 Parish Hall
2012 10/13 G1 Dawn Approach
2013 10/12 G1 War Command
  1. ^ 強風で施設が損傷したため開催中止
  2. ^ 2頭の同着

脚注

参考文献

基礎資料

歴代結果

解説

注釈

  1. ^ 「プレート競走」というのは競走の賞金の形態による分類。主催者が一定の賞金を供出して行われるため、出走馬の馬主には勝てば少なくとも一定以上の賞金が得られることが保証されている。これに対し「ステークス競走」は、出走を希望する馬主が予め納めた登録料の総額が賞金の元手になる。そのため出走希望者が多い場合には高額の賞金が期待できるが、逆に出走希望馬が少ない場合には賞金は下がってしまう。
  2. ^ 日本のチャンピオンサイヤー統計については、特に古い時代に資料毎の大きな差異がある。レヴューオーダーは1940年の日本のチャンピオンサイアーとするという資料がある。
  3. ^ 2014年8月13日の円・ポンド為替相場で換算すると約6200万円。
  4. ^ のちにフィリーズマイルに代えてロックフェルステークスになった。

出典

  1. ^ a b c d ニューマーケット競馬場公式HP Dubai to sponsor the Dewhurst Stakes at Newmarket2014年8月12日閲覧。
  2. ^ IFHA(国際競馬統括機関連盟)Dubai Dewhurst Stakes2014年7月31日閲覧。
  3. ^ a b c d Betting-Directory Dewhurst Stakes Betting2014年7月31日閲覧。
  4. ^ a b c Dewhurst Stakes History2014年7月31日閲覧。
  5. ^ a b c d e f Dewhurst Stakes Betting2014年7月31日閲覧。
  6. ^ Dewhurst Stakes2014年7月31日閲覧。
  7. ^ a b c Galopp-Sieger Dewhurst Stakes (ex 'Dewhurst Plate') 2014年7月31日閲覧。
  8. ^ ニューマーケット競馬場公式HP It's the Jumeirah Dewhurst Stakes!2014年8月12日閲覧。
  9. ^ スーパースプリントは、特定のセリ市で売買されたものしか出走を認めていないため、グループ制の枠外にある。
  10. ^ JAIRS 2011年11月18日付 英国チャンピオンズデー、世界中の高額競馬イベントをライバル視(イギリス)【開催・運営】2014年7月31日閲覧。
  11. ^ ニューマーケット競馬場公式 フューチャーチャンピオンデイ2014年7月31日閲覧。
  12. ^ ニューマーケット競馬場公式HP EUROPEAN PATTERN COMMITTEE ANNOUNCES CHANGES TO 2013 /2014 EUROPEAN BLACK TYPE PROGRAMME2014年8月13日閲覧。
  13. ^ JAIRS 2013年4月20日付 チャンピオンズデー、2014年に大きく改編予定(イギリス)【開催・運営】2014年7月31日閲覧。
  14. ^ JAIRS 2012年4月12日付 英国、フランス、愛国が秋の主要競走見直し(欧州)[開催・運営]2014年7月31日閲覧。