年金手帳

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年金手帳

年金手帳(ねんきんてちょう)とは、日本において公的年金制度の加入者に対して交付される、年金に関する情報が記載された手帳である。

概要[編集]

日本年金機構(旧・社会保険庁)が運営する公的年金制度(国民年金厚生年金船員保険)の被保険者であるという身分を証明するための手帳である。なお、加入している公的年金制度が各共済組合が運営する共済年金のみの者には交付はなく、国民年金擬制加入として、基礎年金番号制度が始まった1997年以降「基礎年金番号通知書」が交付されるだけであるので注意を要する。年金制度の運営責任は国にあるため、年金手帳の発行名義人は日本国(厚生労働大臣)の名義で発行される。

加入者1人につき1冊交付され、一生涯にわたり有効であるため、大切に保管する必要がある。自分自身の「基礎年金番号」などが記載されている。公的年金制度共通のものであり、転職などで加入する年金が変わっても新たに交付されることはなく、同じ手帳を共通して使うことができる。企業に入社する際の厚生年金への加入手続きや、年金を受給する際の手続きなど、年金に関するほとんどの場面で必要となる重要なものである。オレンジとブルーの2種類があるが、決して加入している年金によって色が異なるわけではない。基礎年金番号が導入された1997年以降に交付された年金手帳は、手帳側に基礎年金番号が記載されているため、旧来のものと区別するためにブルーの色になった。

変遷[編集]

「年金手帳」が作られる前は、各年金制度別に「国民年金手帳(国民年金)」「厚生年金保険被保険者証(厚生年金)」「船員保険年金番号証(船員保険)」などがそれぞれ交付され、各年金制度ごとに年金番号が発行されていた。

国民年金より早く運用が始まった厚生年金は、1942年6月から「労働者年金被保険者証」が交付され、1948年頃からは、名称が「厚生年金保険被保険者証」(白色)になった。さらに、1955年頃からは、大きさや色(緑色)が変更になった。一方、国民年金は、制度が始まった1961年から「国民年金手帳」(水色、後にカーキに変更)が交付されていた。1974年11月からは、両制度の手帳が統一され、国民年金・厚生年金共通の「年金手帳」(オレンジ)が交付されるようになった。この手帳には、1冊の中に国民年金・厚生年金の記号・番号記入欄があり、最初に年金手帳の交付を受けた制度から、他の制度に移った場合でも、新しい年金手帳の交付を受けずに済むようになった。その後1997年1月の「基礎年金番号」の導入により、「年金手帳」は現在の形式(ブルー・基礎年金番号あり)に切り替わり、すべての公的年金制度共通のものになった。また、それ以前に発行された年金手帳(オレンジ)を持っている加入者には「基礎年金番号通知書」が送付された。

年金手帳は以上のような変遷をたどってきたため、加入者によって持っている手帳が異なっていたり複数持っている場合がある。

発行[編集]

従来は20歳になり最寄りの市町村役場で国民年金の資格取得手続き(加入手続き)を行うと、社会保険庁から年金手帳が交付されていた。しかし1997年以降は住民基本台帳の個人情報に基づき、20歳になると年金加入手続きを行わなくても職権で加入手続きがとられ、年金手帳が自動的に本人に直接交付される仕組みとなっている(第1号被保険者・第3号被保険者の場合)。ただし加入手続きが遅れると前納できる時期が短くなったり、納付が遅れる事によって障害基礎年金の納付要件を満たさなくなる可能性もあるので誕生日から14日以内に手続きをすることが望ましい(国民年金法にも14日以内と規定されている)。

なお20歳未満で就職した場合(第2号被保険者の場合)などは、事業主が社会保険事務所で厚生年金の資格取得の手続きをするため、事業主を通して年金手帳を交付することができる。

いずれの年金手帳であっても、被保険者が厚生年金の適用事業所に就職した場合は、直ちにその所持する年金手帳を事業主に提出しなければならない。事業主は、提出を受けた年金手帳を確認後、これを返付しなければならない(事業主が年金手帳を日本年金機構に提出することはない)。

再発行[編集]

年金のパンフレットや社会保険庁のホームページでは、年金手帳を紛失した場合に手帳の再発行申請を行うよう説明されている。なお、共済年金のみに加入している場合は「基礎年金番号通知書」の再発行となる。

  • 最寄りの社会保険事務所で、氏名・生年月日・現住所・勤務先の名称と所在地を所定の用紙に記入する。印鑑身分証明書などは不要である。職員がオンラインシステム上の保険料納付記録を照会するのを待ち、記録が確認されたのちに別の用紙に手帳の送付先を記入すると、1週間程度で新しい手帳が発行される。以前は窓口ですぐに再発行されていたが、2007年から郵送になった(但し、即日再発行される社会保険事務所も未だに存在している)。手続き自体は5分程度で完了する。
  • 電子申請を使い、ネット経由で再発行申請を行うことも出来る(24時間・365日)[1]

色の違いと種類[編集]

テレビ新聞などのマスコミによる報道では、主に以下の3種類が取り上げられる。

カーキ
「国民年金手帳」(1961年 - )
オレンジ
国民年金・厚生年金共通の「年金手帳」(1974年11月 - )
ブルー
すべての公的年金制度共通の「年金手帳」(1997年1月 - )

基礎年金番号と年金手帳との関係[編集]

「厚生年金保険被保険者証」や「年金手帳」を両方持っていたり、年金手帳を2冊持っている場合には、それぞれの記号・番号を「基礎年金番号」へ一本化するために、最寄りの社会保険事務所で手続きをする必要がある。「基礎年金番号」は、すべての公的年金の加入記録を一元的に管理するために、被保険者1人あたり一つの番号が割当てられている。そのため、基礎年金番号が記載されている年金手帳1冊があれば、年金給付には問題はない。

基礎年金番号制度が導入される前に年金に加入していた場合や、学生として支払い免除を受けていた場合などは、「基礎年金番号通知書」が送付されているため、これを年金手帳の表紙裏面に貼り付ける必要がある。これは主にオレンジ色の手帳を持っている場合に当てはまり、ブルーの手帳の場合は元から年金手帳に基礎年金番号が印刷されている。

他の証書との関係[編集]

年金証書との違い
年金に加入したときに「年金手帳」が交付されるのに対して、老齢年金の場合の受給年齢に達し年金の受給手続き(裁定請求)を行った上で、受給資格が認定されると交付されるのが「年金証書」である。氏名、生年月日、受給権発生年月日、年金の種類、年金加入期間、平均標準報酬月額、年金額、基礎年金番号、年金コードなどが記載されており、「年金受給権者の身分証明書」ともいえるものである。受給裁定が行われた通知である「裁定通知書」と一緒になっている。年金受給者が、定年退職後に勤務し始めたときや、転居や結婚をしたときなどで必要となる。
厚生年金保険被保険者証との関係
年金の受給手続きには、もちろん年金手帳が必要となるが、「厚生年金保険被保険者証」が年金手帳と同じ目的を果たすということを知らない年金加入者が多い。実は「厚生年金保険被保険者証」と「基礎年金番号通知書」の2つを社会保険事務所に持参すれば、年金の受給手続き(裁定請求)が可能である。団塊の世代の中には、年金手帳の交付を受けていない加入者も多いため注意が必要である。もちろん社会保険庁に対して年金手帳の交付を申請することもできる。これは前述の通り「厚生年金保険被保険者証」が先に交付され、後に年金手帳が交付され始めたことが影響している。つまり「厚生年金保険被保険者証を持っている年金加入者についてはその被保険者証を年金手帳とみなす」ということである。

年金手帳(オレンジ)の記載内容[編集]

年金番号
「厚生年金番号」と「国民年金番号」の2種類が記載されている。これは、以前「厚生年金」と「国民年金」で年金番号を区別していた頃の名残である。
現在は、1人あたり1つ付与されている「基礎年金番号」で年金の加入記録が管理されているため、大抵の場合、表紙裏に「基礎年金番号」の用紙が糊づけされている。なお、糊づけについては加入者に対して社会保険庁から送付された「基礎年金番号通知書」を、加入者自身の手によって糊づけするよう、社会保険庁が加入者に対して文書を通じて連絡している。加えて、「厚生年金番号」と「国民年金番号」のどちらかに「基礎年金番号」と赤色のスタンプが押され、「基礎年金番号」以外の番号に「登録済」と赤色のスタンプが押されている。この場合、「基礎年金番号」の方に別の年金番号の保険料納付記録も一括で登録されていることを示している。もし万が一、社会保険庁から送付された「基礎年金番号」の用紙が無く、「基礎年金番号」の赤色のスタンプも無い上に、2個以上の年金番号や2冊以上の手帳がある場合は、年金の加入記録が一本化がされていない可能性が大きい。最寄りの社会保険事務所で問い合わせる必要がある。
氏名・生年月日・性別
戸籍謄本に掲載されている氏名と違う事例、生年月日がずれている事例が報告されている。最寄りの社会保険事務所で訂正の申請をする必要がある。性別が異なっている事例もあるため、注意が必要である。
住所
近年は事務手続きの省力化のため、記入されていない。しかし、オンラインシステム上にある保険料納付記録と一緒に登録されている住所は修正する必要があるため、転居した場合などには、最寄りの社会保険事務所に届け出る必要がある。
保険料納付記録(年金の加入記録)
以前は、国民年金への加入年月日や、会社の入社日(厚生年金への加入年月日)が記入されていたが、事務手続きの省力化のため、近年では省略されている。依頼すれば役所などで記入してもらうこともできるが、厚生年金の場合は、勤務先は記入してくれないため、空欄になっている加入者が多く、その場合年金手帳を見ただけで自分の保険料納付記録を知ることはできない。転職を繰り返した人や結婚して氏名・住所が変わった人は、ねんきん定期便やねんきんネット等で確認するだけでなく、自ら記録を記入して備忘録として使ってもよい。

身分証明書としての年金手帳[編集]

かつては日本政府(社会保険庁)が発行していた公的書類であることから、現在でも年金手帳を身分証明書として認めている場所は多い。顔写真は添付されていないが、位置づけとしては「健康保険被保険者証(保険証)」と同等である。

施設割引
年金手帳を提示するだけで、使用料が割引になる施設が数多くある。グリーンピアや国民年金の宿[1]ウェルサンピア・ウェルシティ[2]、がその代表例であり、同様のサービスは、かんぽの宿簡易生命保険契約者に対して行っていた(現在は郵政民営化により廃止)。

年金手帳の今後[編集]

年金通帳化[編集]

現在の年金手帳は、基礎年金番号などが記載されているだけであり、自分自身の保険料納付記録については、社会保険庁のオンラインシステムに記録されている。これに対し、いくつかの政党は年金制度の透明化を図るために、2005年衆院選から、金融機関預金通帳と同様に、『支払った金額や将来受け取れる金額などを明示した「年金通帳」の導入』を、政策目標の一つに掲げている。最も早く年金通帳の考えを導入したのは、新党日本であると言われている。新党日本は、支払った金額を1ヶ月毎に印字し、年度末には国費支給分を合算して、確実に給付される合計金額を明示するものを提案している。一方、民主党は、加入年月日、支払った金額(制度別)、年間の受給見込み額を、それぞれ1年単位で印字するものを提案している。社民党は、民主党と同様のものをイメージし「マイ年金通帳」と呼称している。

利点としては、自分自身の保険料納付記録や、将来受け取ることができる金額をすぐに確認できること、年金記録問題を防止できること、などが考えられる。

欠点としては、システム設計費や記帳用の機械の導入・維持費用が膨大になること、長期間保険料を支払い続ける年金制度において、通帳が膨大な冊数になってしまうこと、記帳用機械はおそらく各県に数~数十カ所しか設置されないため非常に利便性が悪く、長期間記帳しない人が現れることが予想されるが、そうなった場合年金記録問題の防止にならないこと、などが考えられる。

社会保障カード化[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 国民年金の宿ホームページ
  2. ^ ウェルサンピア・ウェルシティホームページ

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]