預金通帳

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英語表記による預金通帳の例

預金通帳(よきんつうちょう)とは、金融機関が預金者に対して、預金者であることを示す証憑(しょうひょう)として、また預金の受入れ・払戻しの証拠書として交付する冊子をいう。

農業協同組合漁業協同組合においては法律上「貯金」であり、「貯金通帳」と呼称する。ゆうちょ銀行においては法律上の規定はないが、前身の郵便貯金郵便貯金法という法律で規定された「貯金」であった)の流れを受け継いで「貯金通帳」と呼称している。

概要[編集]

預金通帳は預金証書同様、あくまでそれ自体の譲渡が債権の移動を伴うものではなく、有価証券とは異なる(証拠証券と言う)。

なお、預金通帳を発行する代わりに、銀行取引明細書(バンクステートメントなどとも称する)を発行する銀行もある。

通常、印紙税が発生する文書(課税文書)であることから、収入印紙を直接貼る通帳を利用する銀行(あおぞら銀行の債権総合口座通帳などに見られる)を除き、通帳作成地(通常は本店所在地[1])と「印紙税申告納付につき○○税務署承認済」の表示が通帳の見開きページ(三井住友銀行など、裏表紙見開きの場合もある)になされる。

様式[編集]

NCR2000号通帳への統一[編集]

かつては、縦書き、縦開きのものが主流であったが、自動取引装置 (ATM) による機械処理に、より好適な共通規格として、現在の横書き、横開きの様式(NCR2000号通帳)に統一されるようになった。

副印鑑表示の廃止[編集]

金融機関における預金業務のオンライン化が開始され、取引店以外における預金の払戻しが取扱われ始めて以降、預金通帳内には副印鑑(届出印と同一の印影)が表示され、取引店以外の窓口においても、副印鑑と払戻請求書にある印影とを照合して払戻請求者と預金者の同一性を確認していた。

この副印鑑を巡っては、預金通帳を窃取し、副印鑑の印影を電子的に複写して払戻請求書を偽造し、不正な支払いを受ける事件が度々発生した。その際の金融機関の払戻しの過誤を争った預金者の訴訟が提起されるようになるが、1998年(平成10年)前後の事件までは、印影の照合に過失が無いと認められた場合には、民法第478条を適用して金融機関の免責を認める判決が主だった。しかし、副印鑑から印影を偽造する手口が知られる様になり、以後は金融機関の側に厳正な印影照合と本人確認の責任を課して、手続きに過失が認められた場合には預金復元を命じる判決が言い渡されるケースが増えた。

判例が預金者保護の方向で定着したことから、金融機関においては各店舗で管理される印鑑票の印影自体をオンライン参照するシステムへの移行を進め(もしくは払戻しの取扱い店舗を取引店に限定し)、通帳への副印鑑の表示は2000年(平成12年)前後から急速に廃止されていった。ただしゆうちょ銀行ではシステムの導入自体は検討されてはいるものの、民間金融機関の店舗数はせいぜい数百程度なのに対しゆうちょ銀行の取り扱い店舗数は25000店舗以上という店舗数の違いもあり、システムの規模や店舗における照合装置などのコスト面等々の問題から未だ印影のオンライン参照システムを導入せず、従来同様、通帳の副印鑑表示と目視にて照合する運用を継続していた。

しかし、2013年6月3日から、通帳に貼り付けられている副印鑑を廃止すると発表し、ゆうちょ銀行・郵便局の窓口にて印鑑登録を行うことで、これまで通り全国で口座の取引ができるようになった[2]。廃止前は新規申込み時や通帳の再発行時、若しくは、預金者から要望があった場合のみ、副印鑑の印影をスキャナ等で取り込みにくくするための保護シールを貼付することで対応していたが、このシールの実用性はほとんどないので、預金者が通帳を盗まれないようにすることが大切である。廃止に伴って副印鑑を取り外す際には、窓口での印鑑登録の有無を確認する必要があるため、自身で勝手に副印鑑を通帳から剥がしてはいけない[2]

なお、各民間金融機関とも現行の通帳においては通例、副印鑑の表示が廃止されているが、従来発行された通帳に残存した副印鑑や、共通式印鑑票の預金者控などにより印影が第三者に漏洩する可能性があり、従来の副印鑑等についても厳重な管理(または処分)が必要である。また、現行で副印鑑表示のある通帳と、副印鑑を廃止した通帳の両方を持っている場合は、それぞれ別の印章を使用したほうが安全である。同じ印章を使用していた場合、副印鑑表示のある通帳からスキャンした印影で、別の口座の預金まで詐取される恐れがある。

因みに、旧興銀および(旧)みずほ銀行発足初期の「金融債総合口座取引証」には、カードそのものに副印鑑がプリントされていた(同取引証は、キャッシュカードを兼ねていたため、単純な副印鑑シールの貼付ではATMへの挿入が難しくなるなどの理由もあった。なお、窓口端末への読み取りは、磁気部分をスライドしてスキャンする方式となっている)が、2002年6月の通帳副印鑑廃止に伴い、以前の取引証利用者に対して、副印鑑がプリントされないものへの交換を要請している(2013年2月25日以降、金融債総合口座制度が廃止(預金定款上は、総合口座ないしは普通預金・定期預金へ移行)されたため、以降は、一般の総合口座通帳の発行とICキャッシュカードへの切り替えなどを要請している)。

無通帳口座[編集]

法人口座への導入[編集]

企業においては 1日何十件という、あっという間に冊子式通帳を使い切ってしまうほどの取引があり、インターネットや携帯電話が普及する前の1980年代から、冊子式通帳を用いないシステムを金融機関から導入していた。「ファームバンキング」(エレクトリックバンキングの一種)と呼ばれるもので、企業のホストコンピュータと金融機関のホストコンピュータを通信回線で結び専用端末と専用ソフトウェアを使って、送金・振替・残高照会・給与振込・税金納付などの取引や取引情報(入金確認を含む)の照会を行えるものである。このシステムにおいて、通帳の代わりとなる物はプリンタから出力する取引明細(入出金明細)である。個人版もあり「ホームバンキング」と呼ばれる。近年は企業用・個人用ともにインターネットの普及でより手軽なインターネットバンキングへの乗り換えが進んでいる。

個人口座への導入[編集]

預金通帳は預金において重要な役割を担っているが、1960年代の現金自動支払機 (CD) の稼働開始以降、預金者にも銀行取引の自動化の認知と進展が進み、現金取扱事務の削減、銀行の預金獲得と事故抑止と合わせ、キャッシュカードの発行と自動取引装置 (ATM) による取引が一般的になった。そして生活時間帯の拡張による窓口営業時間帯以外の取引、さらには預金の入出金提携の飛躍的な進展による提携金融機関やコンビニATMなどのATM取引で、冊子式通帳を用いずに入出金がされることも多くなった。

記帳をこまめに行わない顧客に対しては、各金融機関の判断により、「おまとめ記帳」・「圧縮記帳」等の名称で、記帳していなかった期間の入出金総額のみを記帳し、取引の流れを省略して記帳するケースも出てきている(その間の明細は、別紙で発行可能なケースが多いが、発行にあたり有償となる金融機関も存在する)。この場合は、未記帳項目数が一定の行数を超えた時点で自動的に行われる場合と、未記帳項目が各金融機関が設定した回数に達していて、事前予告した日時までに記帳しなかった場合に行うケースとがある。

各銀行が提供するテレホンバンキング契約者は電話で記帳を依頼できる銀行も一部であり、公式には、みずほ信託銀行あおぞら銀行などが対応を明言している。また、テレホンバンキングで出来ない銀行であっても、支店裁量で可能なケースがある。(旧)みずほ銀行のシステム統合前後には、メールオーダでの各種通帳繰越を行っていた時期があった。

これにより、入出金に冊子式通帳を用いない預金者、インターネットバンキング等の活用により預貯金口座の入出金明細を冊子式通帳で参照することを重視しない預金者、盗用や不正引出の懸念から冊子式通帳の発行自体を望まない預金者など、預金取引に冊子式通帳を必要としない顧客層も存在する。

一方、冊子式通帳は顧客において保管される媒体であり、折れ、損傷、汚損、磁気消失などは特に安定した機械処理に不具合を招きやすい。また、を用いた現物としての情報処理媒体であり、その入出力システムの管理は、記帳する情報の蓄積や、通帳冊子の作成、配備も含めて、金融機関側にとって一定の負担となることも事実である。また、印紙税の負担もかなりの額にのぼるため(会社法に基づく法人が発行する通帳の場合、通帳1冊の発行につき年間定額の印紙税を発行元の法人は納付する義務が発生する)、インターネットで取引明細が参照でき通帳を発行しない形態に申し込むまたは切り替える事でATM手数料が無料や振込手数料が無料もしくは振込手数料が優遇割引になるなどのサービスも出ている(三井住友銀行SMBCポイントパックりそな銀行埼玉りそな銀行近畿大阪銀行のTIMO等)。

なお、バンクステートメントを発行する金融機関が利用者向けに作成しているバインダフォルダブックには、概ね「印紙税申告納付につき○○税務署承認済」の表示(紙製バインダの場合はあらかじめ印刷されているケースが見られるが、樹脂製のバインダの場合はステッカー貼り付けで対応する形で見られる)がなされている(紙製は新生銀行新銀行東京スルガ銀行など、樹脂製は三井住友信託銀行(旧住友信託銀行とシステム統合済み店舗に限る)などでそれぞれ見られる)。

郵便貯金とゆうちょ銀行の貯金[編集]

郵政省・総務省・日本郵政公社時代[編集]

郵便貯金時代(郵政省時代の様式)の通帳の一部

郵便貯金では郵便貯金総合通帳に、通常貯金担保定額貯金及び担保定期貯金の預払いを記録する。取引毎に主務者印が押されていたが、2001年(平成13年)以降は原則として押されないようになり、2005年(平成17年)3月11日には押印が廃止された。

郵政省から総務省に所管が変更された省庁再編時に通帳の様式が変わり、銀行に類似するようになった。ただし、ゆうちょ銀行に移行した現在でも、郵政省時代の通帳もATMで利用できるようになっている(全銀システム接続に伴い、2009年4月以降に郵政省時代の通帳を窓口に差し出した場合、他行からの振込用の口座番号が郵政省時代の様式では印字出来ないという理由から、強制切替(ゆうちょ銀行では、紛失等ではないものの、「繰越」とは言わず、「再発行」と称する)がなされる。ただし、ATMでの利用は現在でも可能であるため、ATMのみを利用して、記帳欄を使い切るまではATMでの利用を行っても差し支えない)。なお、銀行では廃止されている副印鑑表示を民営化後もしばらく継続していたが、2013年6月3日より廃止され、窓口での手続きを済ませた後に印鑑を取り外す処理を行うことになった。それまでは、新規申込み時や通帳の再発行時、若しくは、預金者から要望があった場合のみ、副印鑑の印影をスキャナ等で取り込みにくくするための保護シールを貼付していた。

一般的に銀行では、ATMでの現金引出にはキャッシュカードと暗証番号が必要であり、通帳と暗証番号のみで現金を引出することはできない。しかし郵便貯金では、通帳と暗証番号のみでもATMで現金引出が出来る。ただし、機械払の対象を「カードのみ」に指定してある場合は、通帳と暗証番号のみでの払戻しはできない。

通帳は種類ごとに番号が付いている(例:チ1001)。

ゆうちょ銀行に移行後[編集]

郵便貯金総合通帳は、順次総合口座通帳に移行している。

通常郵便貯金からリニューアルした、通常貯金のフォーマットは変更はない。最終ページに6桁のナンバリングがスタンプされていたものがあらかじめバーコード印字されたものに変更となっており、ナンバリングは裏表紙に別途機械印字され、横にバーコードが別途機械印字されている。

「通帳は種類ごとに番号が付いている(例:チ1001)」は、これまでと同様。

また、銀行名と印紙税申告納付の記載が見開きページになされている。これまでは、事業主体名・所在地(「日本郵政公社」など)の記載はなかったが、一般の金融機関同様、「通帳作成地」として、霞が関の本社の住所が記載されている(丸の内の本店ではない)。また、民営化に伴い印紙税の納付義務が生じたことから、前述のように「印紙税申告納付につき麹町税務署承認済」という表示もなされている。

2009年1月に開始された他行からの振込に利用する口座番号が発番されたことに伴い、2008年9月下旬以降順次、銀行使用欄の下半分の橙色になっている部分に「他行からの振込用の口座番号」が印字される。総務省時代・日本郵政公社時代に発行された横型通帳についても、窓口に提出した際に相当する位置に印字することになる。これに関連して、郵政省時代(「総務省」ラベル貼付分含む)の縦型通帳の場合は、この処理が不可能であることから、窓口取引の際にゆうちょ銀行名の通帳に強制再発行される。

ゆうちょ銀行移行後も長らく残っていた副印鑑については、2013年6月3日に廃止されたため、以降、従来からの利用者については窓口にて手続を行うことで、印鑑の貼付がない状態の通帳とすることができるようになった(はがした跡には、「副印鑑を廃止しました」というシールが貼付される)。上述した旧郵政省名通帳の差替再発行ないしは満行に伴う再発行(一般の銀行の「繰越」)を行う場合は、副印鑑廃止も同時に行う必要がある。副印鑑廃止日後に発行される通帳は、「副印鑑を廃止しました」というシールを張った状態の在庫を吐き出した後に、印鑑欄のない通帳が発行されるようになった。

それ以外については、ほぼ民営化前と同様である。

磁気バーの様式[編集]

通帳には磁気バー(磁気テープ)がついており、機器が口座番号を読み取るのに使用する。通帳のサイズは各金融機関でだいたい統一されている(例外として、岩手銀行常陽銀行のように横のサイズが広い銀行も存在する)が、磁気バーの仕様は統一されておらず、金融機関によって異なっている。同一金融機関でも三菱東京UFJ銀行は、旧東京三菱店舗の通帳と旧UFJ店舗の通帳では磁気バーの仕様が異なっている(新システム稼働後発行の通帳は、旧東京三菱仕様で統一)。これは、主に、窓口端末のベンダの違いなどによるものだが、同じベンダを利用していても銀行によっては、旧富士銀行のように全く形状が違う場合がある。旧UFJ銀行の磁気バーの仕様は、窓口端末のベンダを、従前の日立仕様のLeadusにしているところで多くみられる。なお、外国系銀行の日本支店など、磁気バーのない通帳が使われている場合がある。

通帳磁気ストライプの種類[編集]

トラック数 メーカー
1トラック
縦タイプ
O-1200
DT-4831
沖電気工業
IBM NEC OLIVETTI
1トラック
横タイプ
HITACHI NCR BURROUGHS
日本ユニシス
2トラック FACOM
5トラック O-1300
沖電気工業

各ストライプ形態の採用行事例[編集]

通帳記入[編集]

  • 長期間、通帳記入の処理がない場合、一定期間の取引を1行にまとめた状態で印字される。また、その処置をとる期間が過ぎたら自動的に休眠口座扱いになり、一切の預金通帳を使っての利用が出来なくなる。

関連項目[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 例外事例として、旧UFJ銀行および三菱東京UFJ銀行のうち、新システムが稼動する前に発行された旧UFJ店マークの入った通帳については、いずれも本店所在地(前者は名古屋市中区錦、後者は東京都千代田区丸の内)ではなく、旧三和銀行の本店所在地(大阪市中央区伏見町)となっていたケースがある。「印紙税申告納付」の表示についても、旧三和銀行本店所在地を管轄する税務署名が表示され、「印紙税申告納付につき東税務署承認済」と表示されていた。ATMでの明細に付された表示についても、旧UFJ店管轄の機械から排出されたケースについても通帳と同様であった。
  2. ^ a b “通帳への副印鑑貼付の廃止について” (プレスリリース), 株式会社ゆうちょ銀行, (2013年5月27日), http://www.jp-bank.japanpost.jp/news/2013/news_id000931.html 2013年6月7日閲覧。 
  3. ^ エヌ・ティ・ティ・データ ジェトロニクスは、オリベッティの旧日本法人である日本オリベッティが前身だが、ジェトロニクスの日本法人(NTTデータとの合弁会社)でもある。
  4. ^ 元は、旧三井信託銀行中央三井信託銀行の様式を継承したもの。このため、三井信託・中央三井信託名(うち、識別マークが●のものと識別マークがないものに限る)、三井住友信託銀行名で旧中央三井店マークのあるものは現在でも使用可能。
  5. ^ かつては、三和銀行UFJ銀行(新システム稼動前の三菱東京UFJ銀行の旧UFJ店を含む)や東海銀行UFJ信託銀行(三菱UFJ信託銀行における、システム統合前の旧UFJ信託店を含む)なども採用。旧東海銀行通帳は、三菱東京UFJ銀行のシステム統合時に使用不可となった(三和銀行名・UFJ銀行名・三菱東京UFJ銀行名の旧UFJ店マーク付きは、現在でも使用可能)。旧東洋信託銀行・UFJ信託銀行名は、システム統合時に使用不可となったが、三菱UFJ信託銀行名の旧UFJ信託マーク付きは、現在でも使用可能。
  6. ^ 住友信託銀行三井住友信託銀行の旧住信店)などもかつて採用していたが、システム統合に伴って使用不可となった。
  7. ^ さくら銀行の前身(法人格上ではない)である旧太陽神戸銀行の方式を継承。勘定系システム住友銀行を継承しているが、通帳印字フォーマットは三井銀行の方式、磁気ストライプは太陽神戸銀行の方式を継承している。
  8. ^ みずほ銀行名の通帳のうち、■印のあるものを含む。

外部リンク[編集]