「民泊」の版間の差分

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== 日本における民泊 ==
== 日本における民泊 ==
=== 定義・法的位置付け ===
=== 定義・法的位置付け ===
日本では民泊自体の法令上の定義はないが、一般的には「住宅([[戸建住宅]]、[[共同住宅]]等)」の全部又は一部を活用して宿泊サービスを提供することを指している<ref>[http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000111008.html#HID3 民泊サービスと旅館業法に関するQ&A Q3]をもとに編集『厚生労働省』2017年2月22日閲覧</ref>。このうち、住宅を活用した宿泊施設を、「宿泊料{{Refnest|group="注釈"|「宿泊料」とは、名目だけではなく、実質的に寝具や部屋の使用料とみなされる、休憩料、寝具賃貸料、寝具等のクリーニング代、光熱水道費、室内清掃費などが含まれる<ref>[http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f532311/ 民泊サービスと旅館業法に関するQ&A Q9]『厚生労働省』2017年2月22日閲覧</ref>。}}を徴収し、反復継続して提供」する場合は[[旅館業法]]の適用を受け、[[簡易宿所]]営業の許可が必要となる{{Refnest|group="注釈"|アパート等の貸室業と違う点は、(1)施設の管理・経営形態を総体的にみて、宿泊者のいる部屋を含め施設の衛生上の維持管理責任が営業者にあると社会通念上認められること、(2)施設を利用する宿泊者がその宿泊する部屋に生活の本拠を有さないこととなる<ref>[http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f532311/ 民泊サービスと旅館業法に関するQ&A Q1]『厚生労働省』2017年2月22日閲覧</ref>。}}<ref>[http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000111008.html 民泊サービスと旅館業法に関するQ&A Q1、Q4、Q8、Q12]をもとに編集『厚生労働省』2017年2月22日閲覧</ref>。宿泊者数が10人未満の施設の場合は、客室延床面積が1人辺り3.3平方メートル以上の基準(10人以上の場合は合計で33平方メートル以上)を満たしていれば営業許可が受けられ、玄関帳場(フロント)の設置も必要ない(ただし[[条例]]で規制も可能)<ref name="minpakuQA1213">[http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000111008.html 民泊サービスと旅館業法に関するQ&A Q12、Q13]をもとに編集『厚生労働省』2017年2月23日閲覧</ref>。この他、旅館業法が適用されない民泊として、[[国家戦略特区]]の認定を受けた区域で、[[政令]]で定められた大枠の範囲内(最低宿泊日数が3日以上など)で、各自治体の[[条例]]によって弾力的に規定される「特区民泊」<ref>{{PDFlink|[http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/pdf/shiryou_tocminpaku.pdf 国家戦略特区 特区民泊について(平成29年2月24日更新)]}}9頁をもとに編集『[http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/tocminpaku.html 旅館業法の特例(特区民泊)について]』2017年2月22日閲覧</ref>、年1回(数日程度)のイベント開催時に、自治体等の要請により自宅を活用した宿泊サービスの提供を可能とする「イベント民泊」<ref>{{PDFlink|[http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000120214.pdf イベント民泊ガイドラインについて(平成28年4月1日)]}}1、2頁をもとに編集『[http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000110603.html 旅館・ホテルのページ 関係通知/Q&Aなど|厚生労働省]』2016年4月1日</ref>がある。また、農林漁業体験を目的とした「農林漁業体験民宿業」で個人や家族経営体が運営する場合は、簡易宿所の客室延床面積の基準が適用除外となる<ref>{{PDFlink|[http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000119903_1.pdf 旅館業法施行規則の一部を改正する省令の施行について(平成28年3月31日)]}}をもとに編集『[http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000110603.html 旅館・ホテルのページ 関係通知/Q&Aなど|厚生労働省]』2016年3月31日</ref>。なお、(外国人の場合も含め)知人・友人を家に無料で宿泊させた、農林漁業体験で体験指導の対価のみを受け取る「農家等民泊(農泊)」、禁煙推進活動の寄付・電子タバコ代など禁煙補助アイテムの対価のみを受け取る「ボランティア民泊」など、宿泊料を受け取らない場合は、法令の適用対象とはならない<ref>[http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000111008.html 民泊サービスと旅館業法に関するQ&A Q5、Q6]をもとに編集『厚生労働省』2017年2月22日閲覧</ref><ref>{{PDFlink|[https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/242541.pdf 農家等民泊の手引き2601改訂 [PDFファイル/4.62MB]]}}4、5頁『[http://www.pref.miyagi.jp/soshiki/nosonshin/gt-index.html みやぎのグリーン・ツーリズム(事業紹介・参考資料) - 宮城県公式ウェブサイト]』2017年2月22日閲覧</ref>。
日本では民泊自体の法令上の定義はないが、一般的には「住宅([[戸建住宅]]、[[共同住宅]]等)」の全部又は一部を活用して宿泊サービスを提供することを指している<ref>[http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000111008.html#HID3 民泊サービスと旅館業法に関するQ&A Q3]をもとに編集『厚生労働省』2017年2月22日閲覧</ref>。このうち、住宅を活用した宿泊施設を、「宿泊料{{Refnest|group="注釈"|「宿泊料」とは、名目だけではなく、実質的に寝具や部屋の使用料とみなされる、休憩料、寝具賃貸料、寝具等のクリーニング代、光熱水道費、室内清掃費などが含まれる<ref>[http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f532311/ 民泊サービスと旅館業法に関するQ&A Q9]『厚生労働省』2017年2月22日閲覧</ref>。}}を徴収し、反復継続して提供」する場合は[[旅館業法]]の適用を受け、[[簡易宿所]]営業の許可が必要となる{{Refnest|group="注釈"|アパート等の貸室業と違う点は、(1)施設の管理・経営形態を総体的にみて、宿泊者のいる部屋を含め施設の衛生上の維持管理責任が営業者にあると社会通念上認められること、(2)施設を利用する宿泊者がその宿泊する部屋に生活の本拠を有さないこととなる<ref>[http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f532311/ 民泊サービスと旅館業法に関するQ&A Q1]『厚生労働省』2017年2月22日閲覧</ref>。}}<ref>[http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000111008.html 民泊サービスと旅館業法に関するQ&A Q1、Q4、Q8、Q12]をもとに編集『厚生労働省』2017年2月22日閲覧</ref>。宿泊者数が10人未満の施設の場合は、客室延床面積が1人辺り3.3平方メートル以上の基準(10人以上の場合は合計で33平方メートル以上)を満たしていれば営業許可が受けられ、玄関帳場(フロント)の設置も必要ない(ただし[[条例]]で規制も可能)<ref name="minpakuQA1213">[http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000111008.html 民泊サービスと旅館業法に関するQ&A Q12、Q13]をもとに編集『厚生労働省』2017年2月23日閲覧</ref>。この他、旅館業法が適用されない民泊として、[[国家戦略特区]]の認定を受けた区域で、[[政令]]で定められた大枠の範囲内(最低宿泊日数が3日以上など)で、各自治体の[[条例]]によって弾力的に規定される「特区民泊」<ref>{{PDFlink|[http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/pdf/shiryou_tocminpaku.pdf 国家戦略特区 特区民泊について(平成29年2月24日更新)]}}9頁をもとに編集『[http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/tocminpaku.html 旅館業法の特例(特区民泊)について]』2017年2月22日閲覧</ref>、年1回(数日程度)のイベント開催時に、自治体等の要請により自宅を活用した宿泊サービスの提供を可能とする「イベント民泊」<ref>{{PDFlink|[http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000120214.pdf イベント民泊ガイドラインについて(平成28年4月1日)]}}1、2頁をもとに編集『[http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000110603.html 旅館・ホテルのページ 関係通知/Q&Aなど|厚生労働省]』2016年4月1日</ref>がある。また、農林漁業体験を目的とした「農林漁業体験民宿業」で個人や家族経営体が運営する場合は、簡易宿所の客室延床面積の基準が適用除外となる<ref>{{PDFlink|[http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000119903_1.pdf 旅館業法施行規則の一部を改正する省令の施行について(平成28年3月31日)]}}をもとに編集『[http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000110603.html 旅館・ホテルのページ 関係通知/Q&Aなど|厚生労働省]』2016年3月31日</ref>。なお、(外国人の場合も含め)知人・友人を家に無料で宿泊させた、農林漁業体験で体験指導の対価のみを受け取る「農家等民泊{{要出典|(農泊)」、禁煙推進活動の寄付・電子タバコ代など禁煙補助アイテムの対価のみを受け取る「ボランティア民泊」|date=2017年2月}}など、宿泊料を受け取らない場合は、法令の適用対象とはならない<ref>[http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000111008.html 民泊サービスと旅館業法に関するQ&A Q5、Q6]をもとに編集『厚生労働省』2017年2月22日閲覧</ref><ref>{{PDFlink|[https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/242541.pdf 農家等民泊の手引き2601改訂 [PDFファイル/4.62MB]]}}4、5頁『[http://www.pref.miyagi.jp/soshiki/nosonshin/gt-index.html みやぎのグリーン・ツーリズム(事業紹介・参考資料) - 宮城県公式ウェブサイト]』2017年2月22日閲覧</ref>。


=== 近年の動向 ===
=== 近年の動向 ===

2017年2月27日 (月) 09:34時点における版

民泊(みんぱく)は、旅行者などが、一般の民家に宿泊することを一般的に意味する日本語の表現であるが[1]、特に、宿泊者が対価を支払う場合に用いられる[2]。また、ホームステイと同義で用いられることもある[3]

世界的観点における民泊

民泊サイト全世界訪問数
(2016年6月、PC・モバイル合計)
サイト名 本部所在国 訪問数
Airbnb アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 1億3040万
HomeAway アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 2111万
VRBO アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 1760万
Wimdu ドイツの旗 ドイツ 325万
FlipKey アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 170万
Villas.com オランダの旗 オランダ 170万
HouseTrip スイスの旗 スイス 149万
HolidayLettings イギリスの旗 イギリス 138万
*シミラーウェブ調べ[4]
*民泊中心のサイトのみ記載

日本の民泊に相当するサービスは欧米で広く行われているが、広い範囲を含む用語としては、一般的にバケーションレンタル(: Vacation rental)の語が用いられている[5]。バケーションレンタル賃貸)の対象施設は、ハワイフロリダ地中海などのリゾート地における別荘から、ニューヨークロンドンなどの大都市におけるコンドミニアムまで包含している。また取引の形態も様々であり、個人が所有する資産の活用(C to C型)によるホームステイやファームステイから、不動産企業など法人が実施する大規模なレンタル事業(B to C型)までが含まれる。これらの事業はいずれも、ホテル宿泊に飽き足りない旅行者層に向けた、あるいはホテル等の施設でまかなえない需要を補う選択肢として、広く利用されている。

2000年代以降、インターネット上で、ホスト(貸し手)とゲスト(借り手)の間の賃貸のプラットフォームを提供する企業が現れ、バケーションレンタルは新たな展開を見せた。Airbnb(エアビーアンドビー)が代表的な企業として知られている。このほか、エクスペディアトリップアドバイザーなどの旅行サイト運営企業が傘下にバケーションレンタルに特化した子会社を持つケースや、ブッキングドットコムなどホテル予約とバケーションレンタルの両方に関与しているケース[6]アコーホテルズのようにホテル運営企業がバケーションレンタル運営の子会社を持つ場合[7]などがある。これらの企業では、シェアリングエコノミーに基づくAirbnb、個人宅・別荘の賃貸を扱うHomeAway、法人による賃貸物件を多く扱うブッキングドットコムなど、取り扱う物件による違いも見られる[8]

これらのサービスの法的位置付けに関して欧米では近年、国または各自治体が法律を制定して運用する動きが広がっている。対応は様々に分かれている[9]

欧米におけるバケーションレンタルは広い範囲を包含する概念であるが、日本語の「民泊」は個人所有の資産活用(個人の貸し手による賃貸)に限定した文脈で用いられる場合[10]と、法人による賃貸事業を含む場合[11]とがあり、後者の場合、民泊の意味はバケーションレンタルとほぼ同一である。

日本における民泊

定義・法的位置付け

日本では民泊自体の法令上の定義はないが、一般的には「住宅(戸建住宅共同住宅等)」の全部又は一部を活用して宿泊サービスを提供することを指している[12]。このうち、住宅を活用した宿泊施設を、「宿泊料[注釈 1]を徴収し、反復継続して提供」する場合は旅館業法の適用を受け、簡易宿所営業の許可が必要となる[注釈 2][15]。宿泊者数が10人未満の施設の場合は、客室延床面積が1人辺り3.3平方メートル以上の基準(10人以上の場合は合計で33平方メートル以上)を満たしていれば営業許可が受けられ、玄関帳場(フロント)の設置も必要ない(ただし条例で規制も可能)[16]。この他、旅館業法が適用されない民泊として、国家戦略特区の認定を受けた区域で、政令で定められた大枠の範囲内(最低宿泊日数が3日以上など)で、各自治体の条例によって弾力的に規定される「特区民泊」[17]、年1回(数日程度)のイベント開催時に、自治体等の要請により自宅を活用した宿泊サービスの提供を可能とする「イベント民泊」[18]がある。また、農林漁業体験を目的とした「農林漁業体験民宿業」で個人や家族経営体が運営する場合は、簡易宿所の客室延床面積の基準が適用除外となる[19]。なお、(外国人の場合も含め)知人・友人を家に無料で宿泊させた、農林漁業体験で体験指導の対価のみを受け取る「農家等民泊(農泊)」、禁煙推進活動の寄付・電子タバコ代など禁煙補助アイテムの対価のみを受け取る「ボランティア民泊」[要出典]など、宿泊料を受け取らない場合は、法令の適用対象とはならない[20][21]

近年の動向

2008年にAirbnb(エアビーアンドビー)がサービスを開始したことを契機に、民泊が過熱する事態が発生した。この背景には、従来からのホームステイ需要に加え、投資を目的とした貸し手がAirbnbのサービスを利用し多数参入したことが指摘されている[22]

参入した貸し手の多くは、米国のAirbnbや中国の自在客[23]など、日本国外の事業者に登録した上で民泊を行っている。厚生労働省と観光庁は、欧米と中国の事業者に対して、登録者の簡易宿所取得を促すよう要請している[24]

個人投資を目的とした空き部屋所有者による民泊の増加を受けて、これを商機ととらえ不動産業観光業や民泊を斡旋する予約サイトを運営するIT業者自身が参入し、新築集合住宅一棟丸ごと全室を民泊化する動きもある[要出典]

2016年(平成28年)4月14日に発生した熊本地震をうけ、Airbnbの日本運営者が期間限定で被災者に対し一時無償で宿泊場所を提供できるホストをサイト上で募り、その二日後に発生したエクアドル地震でも同様の呼びかけが世界規模で行われ日本語サイトも対応している[25]

法的規制の見直し

旅館業法の規制緩和

2016年4月、旅館業法の施行令等が改正され、10人未満の施設の客室延床面積基準の緩和や、フロント設置義務の免除といった、簡易宿所としての要件の一部緩和が行われた[26][16]。また、農林漁業体験民宿業の規制緩和として、簡易宿所の客室延床面積基準の適用除外の対象を、個人の農林漁業者が営む施設に加え、2014年3月には法人経営を行う家族経営体(一戸一法人)についても、2016年3月には農林漁業者以外の者(個人に限る)が居宅で体験宿泊業を行う場合も適用しないこととした[27][28]

特区民泊
国家戦略特区における民泊第一号・SJヴィラ蒲田A(東京大田区認可)

2013年12月、国家戦略特別区域法が成立[29]。これに呼応する形で、2015年10月に、民泊を推進する条例が大阪府議会で可決・成立[30]、また同年10月、国家戦略特別区域指定の東京都大田区で、旅館業法上の特例扱いが認定された[31]。2016年10月には特区民泊の最低宿泊日数要件を、これまでの6泊7日以上から2泊3日以上に緩和する政令が閣議決定された[32]。ちなみに特区の制度では、外国人旅行者の滞在に適した施設であることが要件だが、利用者については規定はなく、日本人でも宿泊できる[33]

民泊新法

政府は、2015年6月に、民泊に関連する規制緩和について、2016年内に結論を出すことを閣議決定[34]、大阪府や大田区の特区民泊の運用実績を参考にした上で、個人の貸し手による民泊と、企業が事業として行う民泊の両方を、2016年から2018年にかけて、一定の法規制を定めた上で、段階的に全国規模で解禁する方針を表明している[11]。そして、これまで旅館業法などの規制の枠内における限りで認められてきた民泊であるが、 2016年6月、民泊新法の制定を視野に入れた最終報告書案が、厚生労働省と観光庁による有識者検討会でまとめられた[35]。同案では、「一定の要件」の範囲内における有償かつ反復継続する民泊を合法とし(「一定の要件」を超える場合は従来通り旅館業法に基づく営業許可が必要)、現在の許可制から登録制(家主居住型(ホームステイ)に適用)または届出制(家主不在型に適用)への転換、営業日数の上限設定(年間180日以下の範囲内を想定)、住居専用地域での営業の合法化が含まれている[35]。また、こうした規制緩和とともに、無許可の民泊に対しては罰金額を現行の3万円から100万円への引き上げの検討や[36]、各自治体の条例で民泊を実施不可とすることも可能としている[37]。民泊新法(住宅宿泊事業法案)は2017年3月の国会提出が予定されている[38]

韓国における民泊

大韓民国における民泊(민박)は宿泊業の一種で、2005年農漁村整備法は民泊を、農漁村地域や準農漁村地域の住民が、居住する一戸建て住宅を利用し、農漁村において所得を増やす目的で、宿泊・炊事施設などを提供する事業と定義している[39][40]。ここでいう農漁村とは、村、に該当する地域や、その他農漁業に関連した地域の農漁民区、および、生活条件などを考慮して農林畜産食品副長官が海洋水産部長官と協議して告示する地域のことである[41]。2005年の法整備以前は、法的規制なしに民泊を営業できたが、法整備以降は民泊事業者指定を受けることが必要となった[40]2007年の時点で、14,805人が農漁村民泊事業者としての登録を行なっていた[40]

評価・論点

世界

論点

  • 民泊においては従来の宿泊業においては見られなかった問題がいくつか発生しており、中でも差別は深刻な問題となっている。Airbnbにおいては宿泊者が黒人LGBTの場合にそれを理由に宿泊を断られた例が報告されており、ハーバード大学で行われた調査では、予約者が黒人の場合に白人と比べて予約成功率に16%の差が見られることが示されている。こうした差別は、既存の宿泊業においては例えば米国では公民権法に基づき禁止されているが、民泊では個人間の取引であることから問題が再発している。Airbnbは差別的な行動を取ったホストを禁止したり、2016年9月には差別防止策を取るなどの対策を進めている[42]

日本

経済効果

  • 清掃業ケータリング出前)・家具レンタルなど、従来の宿泊施設へのサービス提供が民泊へも波及することが予測され、こうした間接的な影響も勘案すると、その経済効果は年間10兆円に及ぶとの試算がある[43]
  • 地域に根差した一般住宅が民泊として利用されることが多く、利用者が地域で飲食や購買などをすることにより経済的に良い効果を及ぼすほか、民泊立ち上げ自体で家具、家電、各種備品、消耗品の購入が行われることから、経済上のメリットが大きい[要出典]
  • 全国的に問題になっている空き家増加と宿泊施設不足の両方を解決する手段としても期待される[要出典]

論点

  • 2017年1月13日に大阪地方裁判所では、マンションの部屋の所有者が違法に民泊を営業しているとして、マンション管理組合理事長が訴えていた訴訟について、民泊営業で生じたごみや騒音などのトラブルが、他の住民に対する不法行為に当たるとして、部屋の所有者に対し50万円の賠償を命じる判決が出された[44]。また、都市再生機構(UR)や各都市の地方住宅供給公社による賃貸物件は、内規によって部屋の転貸(又貸し)が禁止されており、従って民泊も禁止されているが、2016年7月読売新聞などの報道で、こうした物件で違法に民泊が行われている実態が明らかになった[45][46][47]
  • ファミリー向けマンションなど居住用として購入する者が多い物件では治安悪化や資産価値低下を懸念し、民泊禁止を明確にする管理組合も増加しているほか、マンション開発業者もこういった分譲マンションを新規に販売する際、予め民泊禁止とした管理規約を盛り込んだ物件としている事例も増えている[48]2016年1月27日には、マンション管理組合が大阪地方裁判所に起こしていた、民泊を禁止する仮処分申請に対し、同地裁が管理組合の主張を認める形で、部屋の区分所有者に民泊の差し止めを命じている[49]
    • 上記のような事例と懸念から、東京都台東区では簡易宿所へのフロント設置を義務付けるよう条例を改定したほか、世田谷区などでは良好な住環境の維持を目的に、民泊関連の規制緩和を行わない方針を示している自治体もある[50]。また、専門家はファミリー向けマンションは民泊禁止、投資用マンションは民泊用の物件が増えると見込んでいる[48]
  • 宿泊者が滞在中に合鍵を作り後日空き巣に入ることや、犯罪者テロリストの隠れ家になるのではとの懸念も指摘される[要出典]
  • 宿泊業においては保健所指導により衛生管理として風呂寝具消毒を含めた定期的な清掃洗濯が義務付けられているが[51]個人経営の民泊では実質的に家主・管理人の裁量任せとなっており、宿泊者が不利益(この場合感染症罹患)を被る危険性が潜んでいる[独自研究?]
  • 宿泊業では火災地震津波などの災害が発生した場合、宿泊者を避難誘導しなければならないが、スタッフが常駐しない民泊では土地勘のない旅行者や日本語が不自由な訪日外国人安全の確保が課題となっている[要出典]

関連項目

外部リンク

脚注

注釈

  1. ^ 「宿泊料」とは、名目だけではなく、実質的に寝具や部屋の使用料とみなされる、休憩料、寝具賃貸料、寝具等のクリーニング代、光熱水道費、室内清掃費などが含まれる[13]
  2. ^ アパート等の貸室業と違う点は、(1)施設の管理・経営形態を総体的にみて、宿泊者のいる部屋を含め施設の衛生上の維持管理責任が営業者にあると社会通念上認められること、(2)施設を利用する宿泊者がその宿泊する部屋に生活の本拠を有さないこととなる[14]

出典

  1. ^ 大辞林 第三版『民泊』 - コトバンク
  2. ^ 知恵蔵mini『民泊』 - コトバンク
  3. ^ 「民泊」と「ホームステイ」を同義で用いている例:“杉岡昭子さん 民泊留学はどうぞサッポロへ(人きのうきょう)”. 朝日新聞・夕刊: p. 2. (1987年4月20日). "「ことしをホームステイ(民泊)の年」と宣言した札幌市国際交流課長の..." “難民の子ら、信州で民泊”. 朝日新聞・朝刊: p. 22. (1988年8月1日). "… 31日から2日間の日程で長野市内でホームステイし、..."  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
  4. ^ [1]「airbnb.jp」「airbnb.com」など各地域で異なるドメイン名が使用されているサイトは、その合算値に拠る。なお、アクセス数が微少なドメインに関しては集計されていない。
  5. ^ Vacation Rental and Time Share Industry News by Skift” (英語). Skift. 2015年12月31日閲覧。
  6. ^ Airbnb, HomeAway, TripAdvisor, Booking, and Rented talk vacation rentals” (英語). Tnooz (2015年11月3日). 2015年12月31日閲覧。
  7. ^ 仏アコーホテルズが「民泊」事業に参入、高級住宅レンタルの英ワンファインステイ社を買収”. トラベルボイス (2016年4月12日). 2016年5月7日閲覧。
  8. ^ Booking Site CEOs’Most Quotable Moments of 2015” (英語). Skift (2015年12月30日). 2016年1月2日閲覧。
  9. ^ 民泊サービスに係る諸外国における関連規制の概要” (PDF). 内閣府 (2015年11月9日). 2016年5月7日閲覧。
  10. ^ 民泊:訪日客向け拡大 米社に登録、3倍 住宅空室活用 大半無許可、政府調査へ”. 毎日新聞 (2015年8月31日). 2015年12月31日閲覧。
  11. ^ a b 民泊を段階的解禁へ=小規模は来年、営利は18年までに-政府”. 時事通信 (2015年12月30日). 2015年12月31日閲覧。
  12. ^ 民泊サービスと旅館業法に関するQ&A Q3をもとに編集『厚生労働省』2017年2月22日閲覧
  13. ^ 民泊サービスと旅館業法に関するQ&A Q9『厚生労働省』2017年2月22日閲覧
  14. ^ 民泊サービスと旅館業法に関するQ&A Q1『厚生労働省』2017年2月22日閲覧
  15. ^ 民泊サービスと旅館業法に関するQ&A Q1、Q4、Q8、Q12をもとに編集『厚生労働省』2017年2月22日閲覧
  16. ^ a b 民泊サービスと旅館業法に関するQ&A Q12、Q13をもとに編集『厚生労働省』2017年2月23日閲覧
  17. ^ 国家戦略特区 特区民泊について(平成29年2月24日更新) (PDF) 9頁をもとに編集『旅館業法の特例(特区民泊)について』2017年2月22日閲覧
  18. ^ イベント民泊ガイドラインについて(平成28年4月1日) (PDF) 1、2頁をもとに編集『旅館・ホテルのページ 関係通知/Q&Aなど|厚生労働省』2016年4月1日
  19. ^ 旅館業法施行規則の一部を改正する省令の施行について(平成28年3月31日) (PDF) をもとに編集『旅館・ホテルのページ 関係通知/Q&Aなど|厚生労働省』2016年3月31日
  20. ^ 民泊サービスと旅館業法に関するQ&A Q5、Q6をもとに編集『厚生労働省』2017年2月22日閲覧
  21. ^ 農家等民泊の手引き2601改訂 [PDFファイル/4.62MB] (PDF) 4、5頁『みやぎのグリーン・ツーリズム(事業紹介・参考資料) - 宮城県公式ウェブサイト』2017年2月22日閲覧
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