出前

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出前(でまえ)とは、飲食店が自店で提供している料理などの飲食物を、希望する顧客の元へ配送するサービスのことである。仕出し(しだし)と呼ばれる場合もあり、あわせて説明する。

概要[編集]

江戸葺屋町の福山そば屋(1771年)

出前とは、店舗で調理した料理などを希望する顧客宅へ配送する業務で、その起源は江戸時代中頃にまでさかのぼる。

店内に飲食スペースを設けない店や無店舗営業の業者による配送の場合はデリバリーと呼ばれることが多いが、厳密に区別ができるわけではない。同様に、祝い事や法事などに用いる和食の弁当寿司などの配送は「仕出し」と呼ばれることが多いが、こちらも厳密に区別ができるわけではない。

「出前」の場合は、比較的少ない数量を火急に配達することが求められる場合が多く、「仕出し」や「(ケーキなどの)配達」は予約を要する場合や注文数量が多いという違いもある。

類似のサービスにケータリングがある。ケータリングは、注文主が用意する台所、あるいは移動調理車などを使って、現場で調理をするものである。「出前」「仕出し」は、完成した料理を配達するという点で決定的に異なるが、日本では特に法規上の違いは存在しない。

対象商品・業態[編集]

予約が不要な飲食店が提供する出前においては、寿司蕎麦うどん丼物ラーメン中華料理カレーライスピザ洋食など、比較的安価なものが対象となることが多い。

予約をすることが一般的なものには、パーティ用の食べ物や葬祭・宴会などの料理などがあり、しばしば「仕出し」と呼ばれる。これらは一般家庭で用意することが難しい、あるいは面倒なものであり、比較的高価なものが多い。

企業の内部消費や接客用などにコーヒージュースなどの飲料を出前する場合もある。また、出前される飲食物は、配送の都合で内容や量が店舗で出されるものとは異なることがある。

出前・仕出しを行う業種[編集]

業務用の出前[編集]

待合茶屋などのように原則として調理は行わず、客をもてなすための料理はすべて仕出しで用意するといった業態もある。

この業態の現代版として、繁華街においては個人客の出前を受け付けず近隣で営業する店舗などにのみ出前を行うケースもある。店舗側は厨房や要員を節約しつつ多様な料理を提供できるようになるというメリットがある。

注文[編集]

日本においては、注文はほぼ電話による会話だけで行われてきたが、一種の通信販売なので近年はファクシミリをはじめ、店のウェブサイトからインターネット経由で受け付けることが増えている。特に、2000年ごろからインターネットの出前ポータルサイトが普及してきており、NTTドコモのdデリバリーなどいくつかの企業によってサービスが運営されている。

配送[編集]

料金[編集]

配送料金は無料、もしくはあらかじめ飲食物の代金に含まれている場合が多い。このため少量(1人前など)の出前は採算に合わないこともあり、「出前は2人前以上」や「2,000円以上」、「1,000円以下の出前の場合には100円の出前料を頂きます」などとしている店もある。ピザ店は代金に含まれている事が多く、店舗に出向いて直接購入する場合は一定の金額を割り引く事が多い。

形態[編集]

出前用のバイク 荷台に出前機を装備している
岡持ち
丼用の岡持ち

かつては自転車オートバイで配達するとき、片手でハンドルを持ち、肩に蕎麦数十人前を積み重ねたり、片手に岡持ちを提げるアクロバティックな運転がみられた。ホンダ・カブウィンカースイッチが変則的な取り付け方をしてあったり、自動クラッチを採用しているのはこのような用途を念頭において開発されたためであった。しかし片手に重量物を持っての運転は不安定であり、特に蕎麦を肩に担ぐスタイルは片方の視界が妨げられ、出前中の交通事故が多発した。そのため蕎麦店主によって出前機(スプリングやエアクッションがついた専用の岡持ち台)が発明された。それをオートバイに取り付けるか、荷台のある3輪スクーターホンダ・ジャイロ)を使うことが普通になっている。

容器[編集]

飲食物の容器は配送した業者によって、追って数時間後から数日中に回収されることが多いが、近年は使い捨ての容器を用いて回収の手間を省くケースも増えている。

「そば屋の出前」[編集]

注文と配達にはバックオーダーや調理場の混雑具合、道路の渋滞(特に夕刻の渋滞は夕食時間帯と重なる)などの理由により、出前には遅延が付きものである。これに対して苦情の電話を入れるとよく「今出ました」と言い訳されるといわれており、このことに例えて物事の遅延に対する安易な応対や言い訳を「そば屋の出前」と称されている。

配送手段[編集]

配送は自動車原動機付自転車自転車を使用して、あるいは徒歩によって行われる。

配達員をアルバイトによって揃えることが多いため、オートバイでの配達は普通自動車免許でも運転可能な50cc以下の原動機付自転車を用いることが多く、道交法上で自動二輪車に分類される比較的大型のバイクはほとんど使用されない。

海外[編集]

韓国では日本のラーメンと同様に大衆化したチャジャンミョンの出前が古くからある。日本と同様にバイクを使い、運搬には岡持ち(「鉄カバン」と呼ばれる)を使用する。チャジャンミョン以外に、ちゃんぽん、うどん、チャーハン酢豚なども扱っている。

さらに近年ではピザやフライドチキンなどの宅配も登場し、またおでんトッポッキを扱う屋台が携帯電話で注文を受け配達するケースもある。

一方、中国東南アジア諸国では、これまでは、ごく近隣に徒歩で配達することはあるが、日本のようにバイクなどを使っての配達はまず行われなかった。しかし2002年ごろから、香港上海などでバイクや自動車を使っての宅配が急速に普及してきた。

関連項目[編集]