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[[1202年]]にフィボナッチが発行した『[[算盤の書]]』(Liber Abaci) に記載されたが、古くには[[インド]]の数学書にも記載されていた<ref>Parmanand Singh. "Acharya Hemachandra and the (so called) Fibonacci Numbers". ''Math. Ed. Siwan,'' '''20(1)''': pp.28-30, 1986. ISSN 0047-6269.</ref><ref>Parmanand Singh, "The So-called Fibonacci numbers in ancient and medieval India." ''Historia Mathematica'' '''12(3)''', pp.229–244, 1985.</ref>。 |
2012年2月7日 (火) 08:15時点における版
フィボナッチ数(フィボナッチすう、Fibonacci number)は、イタリアの数学者レオナルド・フィボナッチ(ピサのレオナルド)にちなんで名付けられた数である。n 番目のフィボナッチ数を Fn で表すと
で定義される。これは、2つの初期条件を持つ漸化式である。
この数列はフィボナッチ数列(フィボナッチすうれつ、Fibonacci sequence)と呼ばれ、
と続く。最初の二項は0,1と定義され、以後どの項もその前の2つの項の和となっている。
1202年にフィボナッチが発行した『算盤の書』(Liber Abaci) に記載されたが、古くにはインドの数学書にも記載されていた[1][2]。
兎の問題
フィボナッチは次の問題を考案した[3]。
- 1つがいの兎は、産まれて2か月後から毎月1つがいずつの兎を産む。
- 1つがいの兎は1年の間に何つがいの兎になるか?
この条件のもとで、つがいの数は次の表のようになる。どの月のつがいの合計も、その前の2つの月での合計の和となり、フィボナッチ数が現れていることがわかる。
産まれたつがい | 生後1か月のつがい | 生後2か月以降のつがい | つがいの数(合計) | |
---|---|---|---|---|
0か月後 | 1 | 0 | 0 | 1 |
1か月後 | 0 | 1 | 0 | 1 |
2か月後 | 1 | 0 | 1 | 2 |
3か月後 | 1 | 1 | 1 | 3 |
4か月後 | 2 | 1 | 2 | 5 |
5か月後 | 3 | 2 | 3 | 8 |
6か月後 | 5 | 3 | 5 | 13 |
7か月後 | 8 | 5 | 8 | 21 |
8か月後 | 13 | 8 | 13 | 34 |
9か月後 | 21 | 13 | 21 | 55 |
10か月後 | 34 | 21 | 34 | 89 |
11か月後 | 55 | 34 | 55 | 144 |
12か月後 | 89 | 55 | 89 | 233 |
一般項
フィボナッチ数列の一般項は次の式で表される[3]:
ただし、 は黄金比。
この式は1843年にビネ (Jacques Philippe Marie Binet) が発表したことからビネの公式と呼ばれるが、それ以前の1730年 (ド・モアブル)・1765年(オイラー)にも発表されており、ビネは最初の発見者ではない。
この式の第2項は n = 0 のときの が最大で、それを超えることはない。従って、第2項を略した次の式は Fn の値を 0.447 以下(n > 4 のとき1%以下)の誤差で与える近似式である。
この誤差は 0.5 より小さいので、Fn の正確な整数値は以下の式で得られる[3]。
ただし、 は床関数。
フィボナッチ数列の漸化式は次のように行列表現できる[3]:
ゆえに
性質
隣り合うフィボナッチ数の比は黄金比 φ に収束する。この性質は初期値 (F0 = 0, F1 = 1) に拠らない。
導出:
とおけば、
p と q の最大公約数が r であるならば Fp と Fq の最大公約数は Fr である。
このことより以下を導くことができる。
m が n で割り切れるならば、Fm は Fn で割り切れる。
連続する2数は互いに素であることより、隣り合うフィボナッチ数も互いに素である。
Fm が偶数となるのは m が 3 の倍数となるときと一致する。 Fm が 5 の倍数となるのは m が 5 の倍数となるときと一致する。 p が 2 でも 5 でもない素数のとき、m = p − (5/p) とおくと p は Fm を割り切る。ここで (/) はルジャンドル記号である。 フィボナッチ数の累和や累積について以下の式が成り立つ:
次の関係式が知られている。
フィボナッチ数のうち平方数であるものは F1 = F2 = 1, F12 = 144 のみ (Cohn 1964)[4]、立方数であるものは F1 = F2 = 1, F6 = 8 のみ (London and Finkelstein 1969)[5] である。フィボナッチ数のうち累乗数であるものはこれしかない (Bugeaud, Mignotte, Siksek 2006)[6]。
フィボナッチ数の逆数の総和 (reciprocal Fibonacci constant) はある一定の値に収束し、記号ψで表される。
ψは無理数であることが証明されているが (André-Jeannin 1989)、超越数であるかどうかは分かっていない。
その他の話題
- フィボナッチ数は自然界の現象に数多く出現する。
- n 段の階段を1段または2段ずつ登るときに、登る場合の数は Fn+1 通りある。
- ●と○を合わせて n 個並べる。●が2個以上続かないように一列に並べる方法は Fn+2 通りある。
- 為替などのテクニカル分析で、フィボナッチ・リトレースメントという手法がよく使われている。
負数番への拡張
フィボナッチ数列は、漸化式 Fn = Fn−1 + Fn−2 を全ての整数 n に対して適用することにより、n が負の整数の場合に拡張できる。そして F−n = (−1)n+1Fn が成り立つ。この式より、負の番号に対する数項は次のようになる。
…, −55, 34, −21, 13, −8, 5, −3, 2, −1, 1.
類似の数列
トリボナッチ数
トリボナッチ数とは、次のように定義されるトリボナッチ数列に現れる数のことである。
フィボナッチ数列が「前の2項の和」なのに対し、トリボナッチ数列は「前の3項の和」である。
最初のいくつかの項は、次のようになる。
0, 0, 1, 1, 2, 4, 7, 13, 24, 44, 81, 149, 274, 504, 927, 1705, 3136, 5768, 10609, 19513, 35890, 66012, … (A73)
トリボナッチ数列の一般項は次で表される。
ただし、α, β, γ は方程式 x3 − x2 − x − 1 = 0 の3解
であり、ここに
は1の虚の立方根の1つ。
また、上の3つの根のうち、実数解αのことをトリボナッチ定数という。これはフィボナッチ数列の黄金比にあたる定数で、トリボナッチ数列の隣り合う2項間の比は、トリボナッチ定数に収束する。
テトラナッチ数
テトラナッチ数は、トリボナッチ数列と同様に次のように定義される、テトラナッチ数列に現れる数のことである。
フィボナッチ数列が「前の2項の和」、トリボナッチ数列が「前の3項の和」なのに対し、テトラナッチ数列は「前の4項の和」である。
最初のいくつかの項は、次のようになる。
0, 0, 0, 1, 1, 2, 4, 8, 15, 29, 56, 108, 208, 401, 773, 1490, … (A78)
リュカ数
フィボナッチ数列の最初の2項を 2, 1 に置き換えた数列の項をリュカ数という。この数列の一般項は
と表される。
フィボナッチ数列やリュカ数の列を一般化したものがリュカ数列であり、1878年にエドゥアール・リュカが体系的な研究を行い、1913年にロバート・ダニエル・カーマイケル (en) がその結果を整理、拡張した[8]。これらの研究が現代のフィボナッチ数の理論の基礎となった。
関連項目
参考文献
- 中村滋『フィボナッチ数の小宇宙(ミクロコスモス)―フィボナッチ数、リュカ数、黄金分割』日本評論社、2002年 (初版) ISBN 4535782814 / 2008年 (改訂版) ISBN 978-4535784925
- R.A.ダンラップ『黄金比とフィボナッチ数』日本評論社、2003年 ISBN 4535783705
- 佐藤修一『自然にひそむ数学―自然と数学の不思議な関係』講談社〈ブルーバックス〉、1998年 ISBN 406257201X
- Thomas Koshy, "Fibonacci and Lucas Numbers (Pure and Applied Mathematics (Wiley))", Wiley-Interscience, (2001) ISBN 0471399698
- Leonardo Pisano Fibonacci, "The Book of Squares", Academic Press, (1987) ISBN 0126431302
- Laurence Sigler, "Fibonacci's Liber Abaci: A Translation into Modern English of Leonardo Pisano's Book of Calculation (Sources and Studies in the History of Mathematics and Physical Sciences)", Springer-Verlag ; (Paperback; 2004) ISBN 0387407375 / (Hardcover; 2002) ISBN 0387954198
脚注
- ^ Parmanand Singh. "Acharya Hemachandra and the (so called) Fibonacci Numbers". Math. Ed. Siwan, 20(1): pp.28-30, 1986. ISSN 0047-6269.
- ^ Parmanand Singh, "The So-called Fibonacci numbers in ancient and medieval India." Historia Mathematica 12(3), pp.229–244, 1985.
- ^ a b c d 奥村晴彦『C言語による最新アルゴリズム事典』技術評論社、1991年、305頁。ISBN 4-87408-414-1。
- ^ J. H. E. Cohn, On square Fibonacci numbers, J. London Math. Soc. 39(1964), pp.537-540.
- ^ H. London and R. Finkelstein, On Fibonacci and Lucas numbers which are perfect powers, Fibonacci Quart. 5(1969), pp.476-481.
- ^ Yann Bugeaud, Maurice Mignotte, Samir Siksek, Classical and modular approaches to exponential Diophantine equations. I. Fibonacci and Lucas perfect powers. Ann. of Math. 163(2006), pp.969-1018. Yann Bugeaud, Publications, 2006.
- ^ Reciprocal Fibonacci Constant -- from Wolfram MathWorld
- ^ R. D. Carmichael, On the numerical factors of the arithmetic forms αn ± βn, Ann. of Math. 15 (1913), pp.30-70.