マブ (衛星)

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マブ
Mab
S/2003 U 1 がマブ
S/2003 U 1 がマブ
仮符号・別名 Uranus XXVI
S/2003 U 1
分類 天王星の衛星
発見
発見日 2003年8月25日[1]
発見者 Mark R. Showalter
Jack J. Lissauer
軌道要素と性質
軌道長半径 (a) 97,736 km[2]
離心率 (e) 0.0025[2]
公転周期 (P) 0.923 日[2]
軌道傾斜角 (i) 0.134°[2]
(天王星の赤道に対して)
近日点引数 (ω) 249.565°[2]
昇交点黄経 (Ω) 350.737°[2]
平均近点角 (M) 273.769°[2]
天王星の衛星
物理的性質
直径 24 km[3]
質量 3.0×1015 kg[3]
平均密度 1.3 g/cm3[3] (仮定値)
自転周期 同期回転
アルベド(反射能) 0.070 ± 0.006[4]
表面温度
最低 平均 最高
~64 K
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マブ[5] (Uranus XXVI Mab) は、天王星の第26衛星である。

発見と命名[編集]

2003年8月25日に、ハッブル宇宙望遠鏡を用いてMark R. Showalter と Jack J. Lissauer によって発見された[6]。発見は同年9月25日にキューピッドの発見と合わせて国際天文学連合のサーキュラーで公表され、S/2003 U 1 という仮符号が与えられた[6]。その後2005年12月29日に、ウィリアム・シェイクスピア戯曲ロミオとジュリエット』に伝説上の女王として名前が登場する妖精「マブ」に因んで命名され、Uranus XXVI という確定番号が与えられた[1][7][8]

マブは小さく暗い衛星であるため、ボイジャー2号1986年天王星をフライバイした際に撮影された画像の中からは、細かく探査しても発見することが出来なかった。しかし、ボイジャー2号の画像中で当初は見逃されており、10年以上後の1997年に精査の結果発見されたペルディータよりもマブの方が明るかった。そのため科学者が再びボイジャー2号がかつて撮影した画像を調査した所、マブも写っていることが判明した[4]

物理的特徴[編集]

マブの正確な大きさはまだ判明していない。もしこの衛星がパックと同じくらい暗い表面を持つ場合、直径はおよそ 24 km と推定される。一方ですぐ外側のミランダと同じくらい明るい表面を持つ場合は推定直径はより小さくなり、キューピッドやその他の小さい外部衛星と同程度のサイズになると推定される[4][9]

軌道および環との関係[編集]

マブの軌道は大きな摂動を受けている。この摂動を引き起こしている天体が何かは未だに明らかになっていないが、ベリンダなどの別の衛星、あるいは近傍の複数の衛星が原因だろうと考えられる[4]

マブの軌道は、2003年に発見された天王星の環の一つであるμ環 (R/2003 U 1 という仮符号で呼ばれていたもの) と同じ距離にある[8]。この衛星は環の成分となるダストを生成するのに適したサイズに近い。大きく重い衛星の場合は発生したダストは再び衛星の表面に戻ってしまい、小さい衛星の場合は環の粒子や微小隕石の衝突によってダストを生成するには表面積が小さい[10]。そのため環の材料となるダストを生成し供給するには、中間的なサイズの天体が適している。ペルディータキューピッドに伴った環は発見されておらず、これはこの2つの衛星から生成されたダストの寿命がベリンダによって制限を受けているからだと考えられる[4]

出典[編集]

  1. ^ a b Planet and Satellite Names and Discoverers”. Planetary Names. 国際天文学連合. 2015年1月11日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g Jet Propulsion Laboratory (2013年8月23日). “Planetary Satellite Mean Orbital Parameters”. Jet Propulsion Laboratory Solar System Dynamics. ジェット推進研究所. 2018年12月25日閲覧。
  3. ^ a b c Jet Propulsion Laboratory (2015年2月19日). “Planetary Satellite Physical Parameters”. Jet Propulsion Laboratory Solar System Dynamics. ジェット推進研究所. 2018年12月25日閲覧。
  4. ^ a b c d e Showalter, M. R. (2006). “The Second Ring-Moon System of Uranus: Discovery and Dynamics”. Science 311 (5763): 973–977. doi:10.1126/science.1122882. ISSN 0036-8075. 
  5. ^ 太陽系内の衛星表”. 国立科学博物館. 2019年3月9日閲覧。
  6. ^ a b Daniel W. E. Green (2003年9月25日). “IAUC 8209: S/2003 U 1, S/2003 U 2; P/2003 S2”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 国際天文学連合. 2018年12月25日閲覧。
  7. ^ Daniel W. E. Green (2005年12月29日). “IAUC 8648: Sats OF URANUS; 2005mf, 2005mg; C/2005 U7, C/2005 U8, C/2005 Y1”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 国際天文学連合. 2018年12月25日閲覧。
  8. ^ a b In Depth | Mab – Solar System Exploration: NASA Science”. アメリカ航空宇宙局 (2017年12月5日). 2018年12月25日閲覧。
  9. ^ Scott S. Sheppard. “Uranus Satellite and Moon Data”. Carnegie Science. 2018年12月25日閲覧。
  10. ^ Layton, Laura (2005年12月28日). “Uranus' second ring-moon system”. Astronomy.com. Astronomy Magazine. 2012年3月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年11月22日閲覧。