目薬

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保険収載品の目薬

目薬(めぐすり)とは「点眼薬」「点眼液」の通称で、に直接投与する液状のである(薬機法医薬品[注釈 1]に分類されている)。市販されているものと薬局で処方箋なしで買えるもの、医師から処方されるものがある。日本薬局方においては「点眼剤」として規定されている[1]

概要

点眼している人

目の乾燥炎症を抑えるためや、目脂・目のかゆみ解消に使われる。また、単に目をすっきりさせるさしごこちの清涼感を求めることにも使われている。動詞として「目薬を差す(点す)」と使われる。

目薬は刺激を抑えるため、多くはとほぼ同じpH浸透圧に調整されている。また無菌的に製造され、一回使い切りのものを除き無菌性を保つためほとんどの製品は防腐剤が加えられている[注釈 2]。開栓後は早めに使い切った方がよい(1ヶ月程度)。

その他、最近ではコンタクトレンズ利用者の目のトラブルが急増しており、眼科に訪れる客の4割がコンタクトレンズによる目の不調を訴えるという。そのため、ここ最近になって瞳に潤いをもたらす目薬が注目されている。

有効成分が水溶性で、かつ薬液中で安定する場合には水性点眼剤、水に難溶であるが安定する場合は懸濁性点眼剤、水に難溶で、かつ薬液中で不安定な場合には油性点眼剤、水溶性であるが薬液中で不安定な場合には、使用の都度粉末または錠剤を溶解液に溶解して点眼する用時溶解点眼剤として製造される。眼科領域で使用されるうち、点眼剤以外の剤形としては眼軟膏剤がある。これは油性点眼剤と同様に、主に水に難溶で不安定な場合に用いられるが、それ以外の物性でも軟膏が採られることがある[3]

歴史

古代エジプト時代、人間が目脂にが付かないように目に薬を塗っていたのが始まりと言われている。

日本では16世紀末(安土桃山時代)に点眼薬の原型となる「清眼膏」が売られていた。これは二枚貝の片方に軟膏のような薬剤を入れ、もう片方を使い水で薄めて目につける形式のものだった。

江戸時代に入り18世紀に、硫酸亜鉛溶液「精奇水」が発売された。これは小さな陶器製の入れ物に薬液を入れたものであった。

明治に入り、田口參天堂(現・参天製薬)が1899年に点眼方式の目薬を初めて開発し「大學目藥」として発売する。当初は綿棒に薬液を染み込ませ垂らして点眼していたが、後に瓶入りの薬液をスポイトで吸い取り点眼する方法となった。しかし、これらの方法は適量の点眼に向いておらず不衛生である点が問題となっていた。

1931年、信天堂山田安民薬房(現・ロート製薬)が両口式点眼瓶を発明。瓶の上部にゴム製のピストンを取り付け、目に適量を垂らすことが可能になり衛生面の問題も解決。ロート目薬(1909年発売)はこの発明により一躍ヒット商品となるが、大東亜戦争の激化によりゴムが軍事物資として徴用されたことから両口式点眼瓶は姿を消し瓶の底を指で弾いて点眼する一口叩き式点眼瓶に取って代わられた。

第二次世界大戦の終結後は再度、両口式点眼瓶が復活するが1962年、参天製薬が従来のガラス瓶に代わりプラスチック瓶を採用した「スーパーサンテ」を発売。壊れにくく柔軟性があるプラスチックの採用により持ち運びが容易になると共に、容器自体を指でへこませて適量を点眼することが可能になった。

現在の一般的な目薬は点眼口が容器の上にあるが田辺製薬(現・田辺三菱製薬)が容器の横に点眼口のあるサイドドロップ容器を開発、2001年グッドデザイン賞を受賞した。先端恐怖症で点眼が苦手な人でも簡単に点眼することができる。

現在発売されている容器は、中央部がややへこんだ形のものが多くなってきている(ディンプル型)。これはより点眼が容易かつ確実に行えるように工夫されたものである。

有効成分

抗炎症剤ビタミン剤、血管収縮剤、抗ヒスタミン剤など(添加物として防腐剤清涼剤、pH調整剤などを含有する)。

医療用ではこのほかに散瞳剤、縮瞳剤、眼圧降下剤、白内障治療剤、ステロイドホルモン剤、抗生物質、局所麻酔剤などがある。

容器形状

使用法

  • キャップを開け顔を上げて目に対して垂直に2~3センチほどの高さに据え、1~2滴程度の薬液が出る強さで容器を指で押す。あまり高くすると目に入らない。
  • 薬液の汚染を防ぐため、点眼の際には容器の先端がまぶたやまつげに触れないようにする。目薬に混入した異物のほとんどは使い方の誤りによる使用者の目脂であり、このように異物が混入した目薬は絶対に使用を控え薬液を廃棄する。
  • 目薬は1滴で充分な量がある(但し、使い切りタイプを除く)。これは目薬1滴の体積が目の表面にためることのできる容量とほぼ同じかそれ以上であるからであり、2滴以上点眼しても溢れるか鼻腔に流れ込むだけである。また、目から溢れたものはかぶれることがあるので濡らしたガーゼなどで拭き取った方がよい。特に医療用点眼薬は副作用の強いものも多いので、注意が必要である。
  • 点眼後は、薬液が涙道を通って鼻腔に流れ込まないようにするため、1分程度は涙嚢部(目頭)を押さえるべきである。あるいは、単に目を閉じておくだけでも涙嚢部圧迫と同様の効果がある。しかし、目をパチパチ瞬かせてしまうとせっかくの目薬の成分が浸透せず涙と一緒に流れ出てしまい、十分な効果が得られない。
  • 2種類以上の目薬を差す必要がある場合には、5分ほど間隔を空ける。すぐに注しても先に注した目薬が押し出されて流れ出てしまうだけである。
  • コンタクトレンズ装着時には、特に表示や指示がない限り一般的には点眼してはいけない。特にソフトコンタクトの場合は、(一部点眼可能な商品もあるが)必ず外して点眼するべきである。

安全性

副作用

事故

目薬が原因で人が死に至る場合もある。1957年(昭和32年)3月6日付の読売新聞に目薬を点眼した54歳の女性が目薬が原因でショック死したとの記事が書かれている。

その他

特殊な用途

  • 目薬は演技でを流しているように見せるためにも用いられることがある。
  • 流説として、目薬をコーヒーなどの飲み物に垂らして睡眠薬あるいは媚薬として使う方法が知られている。しかし目薬には鎮静作用を促す成分が含まれている場合があるが、そのような効果は期待できない。飲んで効くなら、目に点した方がよほど効果的だとの指摘もある。

他薬品の誤用

目薬と間違えて水虫薬など滴下型の容器に入った薬品を点眼し、負傷する事故が発生している。その防止のため厚生労働省は新たに認可する水虫薬についてはノズル部分を赤、黒、茶色にすること、滴下型の水虫薬を引き続き販売する場合は容量を10ml以上にするなどの対策を製薬会社などに通達している。

主なメーカー

薬局で市販されている目薬

目薬の製造には専用の生産設備が必要なため、これらのメーカーの中にはOEMも多い。例えば、常盤薬品工業が配置用に発売している「アイエースV クール」はロート製薬が製造している。

「目薬」を使った慣用句

  • 「鼻薬」同様に「賄賂に使う極めて少量の金品」の意にも用いられる。「目薬を利かす」など。
  • 周りくどく思い通りにいかないこと。または周りくどく効果がないことを指す「二階から目薬」ということわざがある。

脚注

注釈
  1. ^ なお、2009年度からの改正薬事法によるリスク区分では抗アレルギー成分のケトチフェンフマル酸塩が配合されている目薬は第1類医薬品、40系の目薬や涙液型目薬は第3類医薬品、これ以外の目薬は第2類医薬品に分かれる。
  2. ^ ただ、最近では防腐剤フリーの目薬も出回ってきている(元々添加物として配合されている緩衝剤等を組み合わせることで防腐剤を配合しなくても防腐作用を発揮するものである[2])。主にコンタクトレンズユーザー向けの目薬に多いのだが、一部の涙液型目薬・40系目薬・アレルギー向け(専用)目薬・子供用目薬も防腐剤フリー化されている。
出典
  1. ^ 「日本薬局方」ホームページ - 厚生労働省
  2. ^ スマイルの防腐剤無配合技術について”. ライオン株式会社. 2019年3月14日閲覧。
  3. ^ 医療用点眼剤の製剤設計・製造”. 一般社団法人日本眼科用剤協会. 2017年3月24日閲覧。

参考文献

関連項目

外部リンク