2006年8月14日首都圏停電
| 首都圏停電 | |
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| 場所 |
旧江戸川 |
| 日付 |
2006年8月14日 - 8月15日 7:38 – 0:54 (日本標準時) |
| 概要 | 作業船がクレーンブームを起こしたまま航行して送電線に接触し、これを切断して大規模停電が発生[1] |
| 原因 | 河川上空を横断する送電線の存在を失念して、航行中にクレーンブームを起こした(上昇させた)[1] |
| 死亡者 | なし |
| 負傷者 | なし |
| 損害 | 電線切断、大規模停電 |
本項では2006年(平成18年)8月14日に日本の首都圏で発生した停電について説明する。この停電では、東京都区部東部と、その周辺139万世帯の住宅や鉄道などに電力が供給されなくなった[2][3][4][5]。三国屋建設所有のクレーン船のクレーンブームが旧江戸川上空を横断する送電線に接触したため生じた地絡放電アークにより一部の電線が溶融損傷し、一部の電線が完全溶断した事故による[2][6][7][8]。
概要
[編集]2006年(平成18年)8月14日7時38分(JST)頃、旧江戸川の千葉県浦安市と東京都江戸川区との境界付近を航行中のクレーン船がブームを江東線78、79号鉄塔間の送電架空線(275kV江東線1、2号)に接触させ、これを切断し[6]、東京都区部にある葛南、世田谷、荏田の3か所の変電所で停電が発生した[2][9]。系統切替により7時46分に荏田変電所が復旧したが、7時58分には系統から孤立していた品川火力発電所が自動停止(朝の需要の伸びに伴い供給力とのバランスが崩壊したため)し、江東、城南変電所が停電した[1]。
これにより東京都区部などで97.4万軒、神奈川県横浜市北部・川崎市西部で22万軒、千葉県浦安市、市川市の一部で19.7万軒、合計約139.1万軒で停電が発生した[6][10]。
軒数としては、1987年7月に発生した首都圏大停電の際の280万軒に次いで当時日本で2番目に多く、電力量では過去4番目となったが、大手会社の多くが夏季休みとなっている時期のため、平日(月曜日)でありながら電力需要が通常より低下していたこともあり、およそ1時間17分後の9時55分に高圧受電2軒を除いた全てが復旧、残る2軒も3時間6分後の10時44分に全面復旧した[6][8][11]。その後、江東線の復旧作業を行い、17日0時54分に1・2号線で送電を再開した[12]。
停電による信号機の停止を始め、鉄道に影響が出たほか、ビルのエレベーターに人が閉じ込められる事故が相次いだ[2][13]。電力の暫定復旧後も電力供給が十分でなかったことから、交通機関では冷房の出力を弱めて運行が行われた[14]。
携帯電話に輻輳が発生し、IP電話が一時不通になった[14]。政府は総理大臣官邸危機管理センターに情報連絡室を設置した[3]。
千葉県警察は、器物損壊罪や電気事業法違反容疑を視野に入れて捜査を行ったが、故意犯ではない事故として同年9月に立件を見送っている[15][16]。
原因
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停電の原因は、三国屋建設が所有するクレーン船(法令上は移動式クレーン)がブームを起こした(上昇させた)まま河川を航行し、旧江戸川上の基幹的な送電線を切断したことによる[6][9][8]。現場の位置は東京ディズニーリゾートの近くであった。
千葉県警察浦安警察署などの調べによると、クレーン船に搭載したジブクレーンの全長33メートルのブームを、浚渫現場に到着後すぐに作業にかかれるように曳航中に起こしていたため、旧江戸川水面上高さ16mを横断する27万5000ボルト(275kV)の送電線に接触し、アーク放電により溶損・溶断に至った[8][17]。
溶断した送電線は、千葉県船橋市の新京葉変電所、東京都江東区の江東変電所、神奈川県横浜市青葉区の荏田変電所を結ぶ「江東線」と呼ばれる27万5000ボルトの特別高圧送電線で[8]、本件事故により本線と予備線の2回路とも損傷したため[18]、7時38分から東京都14区1市の約97万4,000世帯、神奈川県横浜市、川崎市の約22万世帯、千葉県浦安市、市川市の約19万7,000世帯、計約139万世帯が停電した[6]。
クレーン船の乗組員は当初、千葉県警察の調べに対して「係留作業に気を取られ、送電線に気が付かなかった」と話したが、翌日には一転して「過去に上流の工事のため、現場を何回か通ったことがあり、送電線があることを知っていた」と述べた[19][20]。
影響
[編集]政府機関
[編集]政府は総理大臣官邸危機管理センターに情報連絡室を設置した[21][22]。内閣官房長官安倍晋三が関係省庁に原因究明を指示、経済産業省原子力安全・保安院が電気事業法に基づき、東京電力に発生原因および影響範囲を調査報告するよう指示した[22][23]。
鉄道
[編集]道路
[編集]東京都23区で440箇所、千葉県で118箇所の信号が停止[2][28]。警視庁、千葉県警察の警官が交差点で交通整理にあたった[2][28]。
企業
[編集]交通機関停止の影響で職場に遅刻する従業員が多く発生した上、多くの駅、オフィスビルも停電し、業務不能となる企業、事務所が多数発生した[5]。ただし、この日はお盆休みに入っている事業所も多かったため、通常の平日に停電が発生した場合に比べれば少ない被害であった[5]。
通信
[編集]流通
[編集]コンビニエンスストアのセブン-イレブン約200店舗、ローソン約30店舗に影響[14]。スーパーマーケットの西友三軒茶屋店で約1時間営業休止[14]。
製造業
[編集]東京都江戸川区の王子製紙江戸川工場は、機械の停止により復旧に約10時間を要した[14]。千葉県市川市の日新製鋼市川製造所もしばらく停止した[14]。
金融機関
[編集]東京証券取引所は通常通りの取引を行ったが、日経平均株価の計算ができなくなった[19]。1都2県の現金自動預け払い機(ATM)約1,000台が一時停止、特にセブン-イレブンにATMがあるセブン銀行では復旧に2時間半を要した[14]。
その他
[編集]停電によりエレベーターが停止、人が内部に閉じ込められるケースが70件以上発生した[2][29]。東京ディズニーリゾートでは開園を約50分遅らせ、アトラクションを一時中止した[29]。千葉県内で一時断水したほか、東京都内では一部水道水が濁る事態も発生した。
大停電を引き起こした三国屋建設株式会社は孫請であり、元請の大林組は、2日後に予定されていた習志野市から発注を受けていた他の工事について辞退した[30]。また、浦安市は大林組との浚渫工事契約を解除した上で同社を6か月間の指名停止処分とした[31]。
復旧
[編集]8月14日7時38分に発生した停電は、発生から59分後の8時37分に送電復旧した(一部配電機器不具合による停電継続があった)[32]。停電の全復旧は発生から4時間6分後の10時44分だった[32]。
送電設備は8月17日0時54分に本復旧した[32]。
海難審判
[編集]2006年(平成18年)9月22日、横浜地方海難審判理事所は、横浜地方海難審判庁に海難審判開始を申し立てた[33]。
2007年(平成19年)2月5日、理事官は「出港前に安全対策を検討しなかったことや運転士が安全を確認しなかったことが原因」として作業責任者のクレーン船の船長に1か月15日の業務停止命令、クレーン船を牽引していた牽引船の船長には1か月の業務停止命令、クレーン運転士には勧告、三国屋建設には指導是正の勧告を求めた[34]。
2007年(平成19年)3月1日、横浜地方海難審判庁は「水路調査が十分でなく見張りも不十分で、安全確認を行わなかったことが原因」として作業責任者のクレーン船の船長に2か月の業務停止命令、クレーン船を牽引していた牽引船の船長には1か月半の業務停止命令、クレーン運転士には勧告、三国屋建設には指導是正の勧告の裁決を言い渡した[35][23]。
再発防止に向けて
[編集]2006年(平成18年)9月5日、国土交通省は再発防止に向けて以下の再発防止策を実施すると発表した。
- 河川における船舶航行ルールの検討[36]
- 河川・港湾における船舶航行者への高さ制限などの情報提供のあり方の充実[36]
- 河川・港湾における工事情報の一般電気事業者等への情報提供[37]
- 送電線等の横断工作物について周知喚起する標識・掲示の設置[37]
- 事故原因の調査、船舶職員等の教育・講習機関への指導[37]
脚注
[編集]出典
[編集]- 1 2 3 国土交通省 2006, p. 3.
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 「首都圏の139万世帯が停電、交通機関にも大幅な乱れ」『読売新聞』読売新聞社、2006年8月14日。オリジナルの2006年8月19日時点におけるアーカイブ。2025年3月22日閲覧。
- 1 2 「139万世帯影響、鉄道混乱 首都圏で大停電」『中日新聞』中日新聞社、2006年8月14日。オリジナルの2006年8月22日時点におけるアーカイブ。2025年3月22日閲覧。
- 1 2 3 「首都圏で140万戸停電 交通乱れる 送電線に船が接触」『朝日新聞』朝日新聞社、2006年8月14日。オリジナルの2006年8月22日時点におけるアーカイブ。2025年3月22日閲覧。
- 1 2 3 4 5 『毎日新聞』2006年8月14日 東京夕刊 社会面11頁「首都圏大停電:31万人、足止め/お盆「真っ暗」( (その1)」(毎日新聞東京本社)
- 1 2 3 4 5 6 “クレーン船の接触に伴う当社特別高圧送電線損傷による停電事故について”. 東京電力 (2006年8月14日). 2012年1月16日閲覧。
- ↑ 「「送電線から白煙」事故目撃の主婦が証言」『中日新聞』中日新聞社、2006年8月14日。オリジナルの2006年8月18日時点におけるアーカイブ。2025年3月22日閲覧。
- 1 2 3 4 5 “「クレーン船接触に伴う,275kV江東線1,2号の設備損傷ならびに江東変電所ほか供給支障事故報告書」ならびに「電気関係事故報告」の提出について”. 東京電力 (2006年8月24日). 2012年1月16日閲覧。
- 1 2 「爆弾のような音、空に青い炎 送電線損傷の現場」『朝日新聞』朝日新聞社、2006年8月14日。オリジナルの2006年8月22日時点におけるアーカイブ。2025年3月22日閲覧。
- ↑ 国土交通省 2006, p. 4.
- ↑ “江東線損傷による停電事故の復旧経過” (PDF). 東京電力 (2006年8月24日). 2012年1月16日閲覧。
- ↑ 『読売新聞』2006年8月17日 全国版 東京夕刊 夕2社14頁「東京電力、通常ルートで送電再開 停電原因の損壊修復」(読売新聞東京本社)
- ↑ 『読売新聞』2006年8月15日 千葉 東京朝刊 京葉31頁「首都圏大停電 待たされ続きの1日 駅で、TDLで…行楽客うんざり=千葉」(読売新聞東京本社)
- 1 2 3 4 5 6 7 8 『読売新聞』2006年8月15日 全国版 東京朝刊 B経8頁「首都圏大停電 銀行・工場…混乱 危機管理の徹底必要」(読売新聞東京本社)
- ↑ 「クレーンに焦げた跡 首都圏大停電」『中日新聞』中日新聞社、2006年8月15日。オリジナルの2006年8月18日時点におけるアーカイブ。2025年3月22日閲覧。
- ↑ 『読売新聞』2006年9月21日 全国版 東京朝刊 社会35頁「首都圏大停電 三国屋建設の立件見送り/千葉県警」(読売新聞東京本社)
- ↑ 「電力供給の「大本」が損傷、大規模停電に」『読売新聞』読売新聞社、2006年8月14日。オリジナルの2006年8月15日時点におけるアーカイブ。2025年3月22日閲覧。
- ↑ “8月14日に損傷された当社特別高圧送電線「江東線」の復旧について”. 東京電力 (2006年8月17日). 2012年1月16日閲覧。
- 1 2 「停電、クレーン船「送電線に気づかず」」『朝日新聞』朝日新聞社、2006年8月15日。オリジナルの2006年8月21日時点におけるアーカイブ。2025年3月22日閲覧。
- ↑ 「首都圏大停電 一転『送電線知っていた』」『東京新聞』中日新聞東京本社、2006年8月15日。オリジナルの2006年8月21日時点におけるアーカイブ。2025年3月22日閲覧。
- ↑ 「首都圏の大規模停電 政府が連絡室設置」『東京新聞』中日新聞東京本社、2006年8月14日。オリジナルの2006年8月23日時点におけるアーカイブ。2025年3月22日閲覧。
- 1 2 「首都圏停電、政府が情報連絡室・安倍氏「原因究明を指示」」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2006年8月14日。オリジナルの2006年8月21日時点におけるアーカイブ。2025年3月22日閲覧。
- 1 2 “大規模停電対策に関する関係省庁連絡会議” (PDF). 内閣官房 (2009年4月24日). 2012年1月16日閲覧。
- ↑ 国土交通省 2006, p. 10.
- ↑ 国土交通省 2006, p. 9.
- ↑ 『朝日新聞』2006年8月15日 朝刊 横浜・1地方31頁「停電、県内は22万戸 最大8分間 交通機関も大幅乱れ /神奈川県」(朝日新聞東京本社)
- ↑ 『朝日新聞』2008年3月30日 朝刊 横浜・1地方27頁「横浜市営地下鉄グリーンライン、きょう開業 記念式典で900人祝う /神奈川県」(朝日新聞東京本社)
- 1 2 3 「ゆりかもめ3時間ストップ エレベーター閉じ込めも」『朝日新聞』朝日新聞社、2006年8月14日。オリジナルの2006年8月22日時点におけるアーカイブ。2025年3月22日閲覧。
- 1 2 「もろさ露呈…首都圏大停電」『東京新聞』中日新聞東京本社、2006年8月15日。オリジナルの2006年10月23日時点におけるアーカイブ。2025年3月22日閲覧。
- ↑ 『読売新聞』2006年8月30日 千葉 東京朝刊 京葉31頁「クレーン接触・停電事故 浦安署、作業員3人伴い3度目実況見分=千葉」(読売新聞東京本社)
- ↑ 『読売新聞』2006年8月16日 全国版 東京朝刊 2社34頁「首都圏停電事故 浚渫発注の千葉・浦安市、「大林組」契約解除」(読売新聞東京本社)
- 1 2 3 「過去の大規模停電事例」電気学会電気広報特別委員会
- ↑ 『読売新聞』2006年9月22日 全国版 東京夕刊 夕社会19頁「首都圏停電 船長の海難審判へ/横浜」(読売新聞東京本社)
- ↑ 『読売新聞』2007年2月6日 千葉 東京朝刊 京葉31頁「大停電・海難審判 業務停止1か月と1か月15日求める=千葉」(読売新聞東京本社)
- ↑ 『読売新聞』2007年3月2日 全国版 東京朝刊 社会39頁「首都圏大停電 クレーン船長に業務停止 異例の重い裁決/横浜海難審判庁」(読売新聞東京本社)
- 1 2 国土交通省 2006, p. 5.
- 1 2 3 国土交通省 2006, p. 6.
参考文献
[編集]- “大規模停電に対する国土交通省の対策” (PDF). 国土交通省 (2006年9月5日). 2025年3月22日閲覧。
関連項目
[編集]- 1987年7月23日首都圏大停電
- T-33A入間川墜落事故 - 1999年11月22日に起きた航空自衛隊T-33が東京電力の送電線に激突し墜落、乗っていた2人が殉職、墜落時の送電線の切断により約80万世帯が停電した事故。
外部リンク
[編集]- Google地図
- 海難審判庁横浜地方海難審判庁送電線損傷事件の裁決(第一審・平成19年3月1日)
- 過去の大規模停電事例 (PDF) 一般社団法人 電気学会
座標: 北緯35度38分50.68秒 東経139度53分2.33秒 / 北緯35.6474111度 東経139.8839806度
