谷川健一

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谷川 健一(たにがわ けんいち、1921年7月28日 - 2013年8月24日[1]、満92歳没)は、日本の民俗学者、地名学者、作家歌人日本地名研究所所長。

在野の学者として日本文学民俗学の研究をおこない多くの研究書を著した。日本文学の源流を沖縄鹿児島などの謡にもとめた「南島文学発生論」などの業績をあげ、文化功労者に選出されるなど高く評価された。

来歴・人物[編集]

熊本県水俣生まれ。熊本中学浪速高等学校 (旧制)東京帝国大学文学部卒業(専攻フランス文学)。平凡社の編集者として、『風土記日本』(1957 - 60年)、『日本残酷物語』(1959 - 61年)などを企画編集し、1963年創刊の『太陽』初代編集長を務めた。

その後は執筆活動に重点を置き、1966年、『最後の攘夷党』で第55回直木賞候補になる。1970年代には『青銅の神の足跡』や『鍛冶屋の母』などを発表し、民俗事象と文献資料に独自の分析を加え、柳田國男折口信夫らの学問を批判的に展開した。柳田が提唱した「日本民俗学」がのち組織化が進み善かれ悪しかれ学術化、専門科学化していったのに対し、谷川は、その職業的な背景もあり、在野精神を貫き学会と距離をとった独自の執筆活動を進めた[2]。折口を彷彿とさせる小説家的想像力と、柳田の影響を受けた民俗資料の編纂とがない交ぜになっており、その業績は各界から注目された。従来にない新たな日本像を加えるべく『海と列島文化』(全10巻別巻、小学館、1990-93年)を、日本史の網野善彦文化人類学大林太良、民俗学の宮田登考古学森浩一と共同編集[3]している。

1973年、共編『日本庶民生活史料集成 全20巻』で毎日出版文化賞を受賞。1981年神奈川県川崎市に<日本地名研究所>を設立、所長に就任[1]し、町村合併などに伴う安易な地名変更に警鐘を鳴らすなどした。1986年、共編『日本民俗文化大系 全14巻』で毎日出版文化賞特別賞を受賞。1987年から1996年まで、近畿大学教授・同大学民俗学研究所長を務める。1991年、『南島文学発生論』で芸術選奨文部大臣賞受賞、1992年、南方熊楠賞受賞、2001年、『海霊・水の女』で短歌研究賞受賞。

2007年秋に文化功労者。2008年、日本地名研究所は神奈川文化賞を受賞。2009年歌会始召人として臨み、『陽に染まる飛魚の羽きらきらし海中(わたなか)に春の潮(うしほ)生れて』が朗詠された。

『日本の地名』(正続)、『常世論』、『青銅の神の足跡』、『魔の系譜』、『神・人間・動物』などのほか、『最後の攘夷党』、『海の群星』等の小説作品も執筆した。『海の群星』は1988年に、NHK緒形拳石田ゆり子織本順吉など出演でドラマ化された。

1980年代三一書房で『著作集』(全10巻)が、2007年から2013年(没する直前に完結)に『全集』(冨山房インターナショナル、全24巻)が刊行された。

親族[編集]

詩人谷川雁・東洋史家谷川道雄日本エディタースクール創設者吉田公彦(旧名 谷川公彦)たち、谷川兄弟の長兄である。長男は考古学者・早大教授の谷川章雄。ちなみに日本地名研究所をひきついだ谷川彰英とは血縁関係はない。

著書[編集]

  • 『最後の攘夷党』三一新書 1966
  • 『沖縄 辺境の時間と空間』三一書房 1970
  • 『魔の系譜』紀伊国屋書店 1971、講談社学術文庫 1984
  • 『常民への照射』冬樹社 1971
  • 『孤島文化論』潮出版社 1972
  • 『埋もれた日本地図』筑摩書房 1972
  • 『原風土の相貌』大和書房 1974
  • 『民俗の神』淡交社 1975
  • 『古代史ノオト』大和書房 1975
  • 『神・人間・動物 伝承を生きる世界』平凡社 1975、講談社学術文庫 1986
  • 『私説神風連新人物往来社 1975
  • 『女の風土記』読売新聞社 1975、講談社学術文庫 1985
  • 『黒潮の民俗学 神々のいる風景』筑摩書房 1976
  • 『青と白の幻想』三一書房 1979
  • 『青銅の神の足跡』集英社 1979、集英社文庫 1989、小学館ライブラリー 1995
  • 『鍛冶屋の母』思索社 1979、講談社学術文庫 1985
  • 『北国からの旅人 沖縄との出会い』筑摩書房 1980
  • 『神は細部に宿り給う 地名と民俗学』人文書院 1980
  • 『海の群星』集英社 1981、集英社文庫 1987
  • 『わたしの「天地始之事」』筑摩書房 1982
  • 『常世論 日本人の魂のゆくえ』平凡社選書 1983、講談社学術文庫 1989
  • 『失われた日本を求めて』青土社 1983
  • 『白鳥伝説』(上・下)、集英社 1986、集英社文庫 1988、小学館ライブラリー 1997
  • 『南島論序説』講談社学術文庫 1987
  • 『私の民俗学』東海大学出版会 1987
  • 『民俗・地名そして日本』同成社 1989
  • 『海の夫人』河出書房新社 1989
  • 大嘗祭の成立 民俗文化論からの展開』小学館 1990
  • 『南島文学発生論』思潮社 1991
  • 『民俗の宇宙』三一書房(全2巻) 1993
  • 『海神の贈物 民俗の思想』小学館 1994
  • 『民俗の思想 常民の世界観と死生観』岩波書店・同時代ライブラリー 1996。再編本
  • 『古代海人の世界』小学館 1995
  • 『独学のすすめ 時代を超えた巨人たち』晶文社 1996
  • 『沖縄 その危機と神々』講談社学術文庫 1996。再編本
  • 『日本の地名』岩波新書 1997
  • 『続・日本の地名』岩波新書 1998
  • 『日本の神々』岩波新書 1999
  • 『うたと日本人』講談社現代新書 2000
  • 『神に追われて』新潮社 2000
  • 柳田国男の民俗学』岩波新書 2001
  • 『古代人のコスモロジー 史話日本の古代 別巻』作品社 2003
  • 『心にひびく小さき民のことば』岩波書店 2004
  • 『渚の思想』晶文社 2004
  • 四天王寺の鷹 謎の秦氏物部氏を追って』河出書房新社 2006
  • 『水俣再生への道』熊本日日新聞社 2006
  • 『甦る海上の道・日本と琉球』文春新書 2007
  • 『明治三文オペラ 巫娼から遊女へ』現代書館 2007
  • 『隠された物部王国「日本(ヒノモト)」』情報センター出版局 2008
  • 『妣(はは)の国への旅 私の履歴書日本経済新聞出版社 2009
  • 『賎民の異神と芸能 山人・浮浪人・非人』河出書房新社 2009
  • 『古代学への招待』日経ビジネス人文庫 2010。再編本
  • 『列島縦断地名逍遥』冨山房インターナショナル, 2010
  • 『蛇 不死と再生の民俗』冨山房インターナショナル, 2012
  • 『日本人の魂のゆくえ 古代日本と琉球の死生観』冨山房インターナショナル, 2012
  • 『魂の還る処 常世考』やまかわうみ別冊・アーツアンドクラフツ, 2013
  • 『柳田民俗学存疑 稲作一元論批判』冨山房インターナショナル, 2014

著作集[編集]

  • 谷川健一著作集』全10巻 三一書房, 1980-1988
  • 谷川健一全集』全24巻 冨山房インターナショナル, 2006-2013
    • 全集・最終24巻は、総索引、人名・神名、地名、寺社名、聖地・聖域、書名、事項、年譜、収録作品一覧。

歌集[編集]

  • 『青水沫 谷川健一歌集』三一書房 1994
  • 『海境 谷川健一歌集』ながらみ書房 1998
  • 『谷川健一全歌集』春風社 2007
  • 『露草の青 歌の小径』冨山房インターナショナル 2013。歌論・歌集

対談集[編集]

  • 『民俗論の原像 谷川健一対談集』伝統と現代社 1974
  • 『民俗学の遠近法 谷川健一対談集』東海大学出版会 1981
  • 『対談集 地名と風土』思潮社, 1991
  • 『源泉の思考 谷川健一対談集』冨山房インターナショナル, 2008

関連書籍[編集]

  • 『「青」の民俗学 谷川健一の世界』(岡谷公二・山下欣一編)、三一書房, 1997
  • 『魂の民俗学 谷川健一の思想』(大江修編)、冨山房インターナショナル, 2006
  • 『谷川健一 越境する民俗学の巨人 追悼総特集』 道の手帖:河出書房新社, 2014

主な編著・共著[編集]

  • 女性残酷物語 第1・2 大和書房, 1968
  • 叢書わが沖縄 全6巻 木耳社, 1970-71
  • 近代民衆の記録 3 娼婦 新人物往来社, 1971
  • 沖縄の証言 名嘉正八郎共編 中公新書(上下), 1971
  • 近代民衆の記録 5 アイヌ 新人物往来社, 1972
  • 人と思想 折口信夫 三一書房, 1974
  • 日本文化の源流を求めて 金達寿共編 筑摩書房, 1975
  • 日本古代文化の原像 大林太良共編 三一書房, 1977
  • 出雲の神々 写真・石元泰博 平凡社カラー新書, 1978、新版1997
  • 現代「地名」考 編著 日本放送出版協会〈NHKブックス〉 , 1979
  • 地名の話 平凡社選書, 1979
  • 神々の島 沖縄久高島のまつり 比嘉康雄共著 平凡社, 1979
  • 柳田国男と折口信夫 池田弥三郎と対話 思索社, 1980/岩波書店同時代ライブラリー, 1994
  • 産屋の民俗 西山やよい共著 国書刊行会, 1981
  • 地名と風土 日本人と大地を結ぶ シンポジウム 小学館, 1981
  • 日本の地名 講談社, 1982
  • 地名と日本人 シンポジウム柳田学の継承と展開 講談社, 1983
  • 南島のフォークロア 共同討議 青土社, 1984
  • 風土学ことはじめ 雄山閣出版, 1984
  • 日本の神々 全13巻 白水社, 1984-88、新版2000
  • 東と西-二つの日本 光村図書出版, 1984
  • 沖縄・奄美と日本 同成社, 1986
  • 日本民俗文化資料集成 全24巻 三一書房, 1988-98
  • 地名の古代史 九州篇 金達寿共著 河出書房新社, 1988
  • 地名の古代史 近畿篇 金達寿 河出書房新社, 1991、新版合本, 2012
  • 南方熊楠、その他 思潮社, 1991
  • 南島の文学・民俗・歴史 山下欣一共編 三一書房, 1992
  • 海と列島文化 第6巻 小学館, 1992
  • 稲生物怪録絵巻 江戸妖怪図録 小学館, 1994
  • 加藤清正 築城と治水 冨山房インターナショナル, 2006
  • 日琉交易の黎明 ヤマトからの衝撃 森話社, 2008
  • 父を語る 柳田国男と南方熊楠 冨山房インターナショナル, 2010
  • 海の熊野 三石学共編 森話社, 2011
  • 地名は警告する 日本の災害と地名 冨山房インターナショナル, 2013

主宰[編集]

  • 1994年 「宮古島の神と森を考える会」宮古島の森と信仰行事を保存する目的で発足。事務局長 佐渡山安公 沖縄県宮古島市 2014年 谷川健一没後も継続
  • 1999年 「青」(根釧原野から八重山の礁湖にいたる日本列島を縦断する文化交流誌):2005年 7号終刊
  • 2001年 「花礁」(はなぜ)(南九州と南西諸島をフィールドとする同人誌)

受賞歴[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 民俗学者・文化功労者の谷川健一さんが死去 読売新聞 2013年8月25日閲覧
  2. ^ 著書『独学のすすめ』参照。ちなみに梅田望夫は自身のブログで、この本に勇気づけられたと回想した。
  3. ^ 〈海と列島文化〉完結記念に伴い、シンポジウム(討論記録)『日本像を問い直す』(小学館、1993年)を出版。

外部リンク[編集]