留置場
留置施設または留置場(りゅうちじょう、英語: Detention)とは、警察署内に設置されており、逮捕した容疑者の逃走や証拠隠滅を防止するために身柄を拘束(留置)し、警察官が取り調べ・捜査をする施設である[1]。
最近の傾向として「留置施設」「留置管理課」と呼ばれることが多い。
概要
代用刑事施設
留置は、通常で2泊3日、長くても21泊22日が限界で、それ以上の取調べが必要な場合は、起訴し、法務省所管の刑事施設に身柄を移さなければならない。
ただし、刑事施設が定員を超過している場合や、警察が能率を優先させた場合などに、被留置者を刑事施設に移送せず、警察署内の留置施設に留め置かれる場合もある。
これを代用刑事施設と呼び(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第15条)、司法機関ではなく警察官の監督下に置かれることから、自白の強要や冤罪を生みやすいと問題視する意見もある。
弁護人
弁護人(弁護士)は刑事弁護だけで生計を立てることが不可能であるため、他業務と並行して弁護も行っている。代用刑事施設は拘置所より場所・時間的に便利な面があるため廃止された場合に接見に行くことが難しくなるなど、弁護活動に障害が生ずる可能性もある。
代用刑事施設のある警察署は主要な街の中心にあるなど交通の便の良いところにあることが多いが、拘置所(拘置支所)や刑務所にある拘置区は街中にある所は少ない。
保護室
なお「泥酔者を保護するために留置場に入れられる」と勘違いしている人が見受けられるが泥酔者他の「要保護者」が入るのは「保護室」(いわゆるトラ箱)であり警察官職務執行法第3条第1項及び酒に酔つて公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律第3条第1項に基づく警察署内の施設であって、留置場とは全く別の施設である(なお、泥酔して何らかの犯罪に及び、逮捕された場合には、留置場行きである)。
このような勘違いの一因として、留置施設によっては夜間の監視体制等の問題から保護室が留置場に隣接しているケースがあることが考えられる。
留置場での生活
一日の流れ
- 06:30 起床・寝具を布団部屋の所定の棚に収納・清掃・洗面
- 07:00 朝食
- 07:30 運動(官本および私物貸出)
- 部屋ごとに敷地内の運動場で行う
- 電動髭剃り、爪切りが使用可能
- タバコの喫煙については平成25年4月1日より全国の留置施設で禁煙となった[7]。
- 書籍は3冊までが場内に持ち込み可能
- 入浴は週2回程度(5日に1回以上が規定。大体は2週間で3回で運用されている)行われ、入浴日は運動と入浴を同時に行う
- 洗濯は週1回程度行われ、警察官が場内に設置された洗濯機と乾燥機を使って洗濯する
- 検察庁への身柄送致などはこの運動時間に告げられることがある。
- 12:00 昼食
- 17:00 夕食
- 19:00 検室(当直の留置管理職員と、刑事課の刑事による部屋の検査。主に鉄格子、金網などを叩いて異変がないか調べられる
- 20:30 洗面・就寝準備
- 21:00 就寝
- 本などを回収
入場手続
- 診断室と称される部屋で身体検査や所持品検査が行われる
- 貴重品のリストを作成し、場内への持ち込みが認められた所持品以外はすべて預かりとなる
- 入場後は姓名で呼ばれず番号を用いる。
衣服
- 同条件で外部からの差し入れも可能
- 十分な衣服を所持していない場合は警察署より貸与を受けることも可能(貸与品であることを示す「トメ」(留)と表記されている)
- 履物はサンダルを使用する。サンダルには留置されている警察署名と番号が記される(例某何番)
物品の購入
- 洗面用具や便箋、切手などの指定された商品については、週に一回「願箋」(がんせん)を提出し購入することが可能である
- 最近の傾向として、留置管理課職員が必要なものを聞いて回る事がある。
- 容疑者の食事については競争入札で決まった業者(地元の仕出屋、食堂、弁当チェーン等)が警察署に配達する弁当が提供される[8]。被疑者(容疑者)の食事は警察側で用意することが法律で決まっているため「官弁」(かんべん)と言われているが、本来「弁」とは「支弁」の意味であって、「弁当」の「弁」ではない(次項の「自弁」との対語となる)。食事の時間の前にランチョンマットと箸、プラスティック製のコップに茶を入れ、弁当が配られる。弁当はカロリーや栄養バランスが細かく決まっており、落札した業者は仕様書に従って指定数を製造する[8]。また自殺防止のために串や箸、連絡防止のために紙など書き込める素材が禁止されている[8]。近年では宗教やアレルギー、健康状態に対応した食材や調理法の指定もある[8]。異物混入の場合は交換となるが判定が厳しいため、指定よりも多めに作る業者もある[8]。余った弁当は廃棄となるが、税金で購入しているため警察職員が食すと税金を目的外に使ったことになり、処分された事例もある[8]。
- 容疑者が官弁に不満があるなどの場合には自費で別メニューの弁当を注文することも可能で、そうした注文弁当は「自弁」(じべん)と呼ばれている。自弁は昼食のみ可能というケースが多いようであるが、 1回100円程度の菓子が購入できたり、夕食時にパックのジュースやコーヒーが購入できたりと警察署によっては食事以外の自弁制度もある。
- 持病を持った者については食後、就寝前に警察経由で処方された薬を服用させる(服用の仕方は手で薬を受け取り口に入れて舌の上に載せた状態で職員に点検した後、茶で服用し再び口を開けて確認を行う。
接見
- 外部との接見は面会室で行う
- 弁護人(≒弁護士)との接見に関しては秘密交通権が認められているため警察官の立会は行われずいつでも行うことができる
- その他の外部者との接見に関しては指定時間内に警察官の立会いの下で行われる(接見時間は概ね20分を限度とされる)
- 裁判所より接見禁止とされた場合は弁護人以外(ジャーナリストや家族)との接見が許可されない
- 警察官立会いの接見の場合はたとえ外国人同士であろうと日本語の使用となる
- 同様に外部との信書のやりとりも外国語によるものが認められない
- 物品のやり取りを「交通」と称す。外部から内部への移動は「差入れ」、内部から外部への移動は「宅下げ」と称す
- 差入れ可能な物品は警察署ごとに異なるが衣類や書籍、一部の日用品に限定される
- 自殺防止のためヒモまたはヒモ状の物品はもちろん、女性用ブラジャー、マスクなども差入れることはできない
- 薬も差入れることはできない(前述のとおり警察経由で処方される)
- 容疑者に既往症があったり、留置場で発症したりした場合、警察指定医や警察病院で診察を受け、投薬してもらうことになる
検察送致
- 検察庁に送致されることを「順送」(じゅんそう)もしくは「押送」(おうそう)、検察より戻る場合は「逆送」(ぎゃくそう)と称す
- 順送対象者は運動等を優先して行い所定時間に集合し両手錠された上で送致される。その際身体検査と金属探知機で調べられる。
- 検察までは基本的に各警察署を巡回する護送車により送致される
- 勾留質問などで裁判所に送致される場合も検察まで他収容者と共に送致され、そこから裁判所に送致される
釈放
- 勾留期限が満了となる場合、私物を封緘した紙袋に入れ順送され、手続き完了後に検察庁にて釈放される。
- 検察による中間質問または裁判官による勾留質問で釈放となった場合、逆送された後に警察署にて釈放される。
- 略式命令による場合予め依頼した者に検察庁で罰金納付の完了が確認され次第、所持品のチェックが行われた後釈放となる。
その他
脚注
- ^ a b 官弁と獄メシ 生鮮取引電子化推進協議会 事務局長 織田 哲雄
- ^ 松村明 編「豚箱」『大辞林』(第2)三省堂、1995年。ISBN 4-385-13900-8。
- ^ 留置場での生活 | 逮捕・示談に強い東京の刑事事件弁護士
- ^ 留置場での生活 | 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所
- ^ 酒井法子容疑者、留置場ではノーブラ - 日刊スポーツ
- ^ 北芝健『刑事捜査バイブル』双葉社、2011年。p.p.190-191。ISBN 978-4-575-30368-1。
- ^ 留置施設を全面禁煙に 警察庁、受動喫煙を防止 日本経済新聞 2012/12/20
- ^ a b c d e f 日本放送協会. “「留置場」の弁当 4年間食べ続けた警察官|NHK”. NHK NEWS WEB. 2022年10月23日閲覧。