植物性脂肪

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植物性脂肪(しょくぶつせいしぼう)は、植物に含まれている脂肪をいう。

概要[編集]

調理油など食品の材料や揚げ油や炒め油として、また照明燃料として使用されている。

植物性脂肪は不飽和脂肪酸を多く含む(魚類も多量の不飽和脂肪酸を含むものが多い)ので融点が低い。このため、菜種油のように常温液体なものが多い。ただ、ココナッツ油カカオバターのように飽和脂肪酸を大量に含む油もある。

生合成[編集]

飽和脂肪酸[編集]

脂肪酸合成は細胞質で行われる。脂肪酸合成の材料は、アセチルCoAであり、ミトコンドリアから供給される[2]脂肪酸生合成アセチルCoA(炭素数2)を出発物質として、ここにマロニルCoA(炭素数3)が脱炭酸的に結合していく経路である。すなわち、炭素数2個ずつ反応サイクルごとに増加し、任意の炭素鎖を持った脂肪酸が作成されることとなる。最終的には16:0のパルミチン酸が生成する。

一価不飽和脂肪酸[編集]

16:0のパルミチン酸は、長鎖脂肪酸伸長酵素により、18:0のステアリン酸に伸張される。ステアリン酸は、体内でステアロイルCoA 9-デサチュラーゼ(Δ9-脂肪酸デサチュラーゼ)によりステアリン酸のw9位に二重結合が生成されてω-9脂肪酸の一価不飽和脂肪酸である18:1のオレイン酸が生成される。オレイン酸が生成されることで脂肪酸の融点が低下する。

多価不飽和脂肪酸[編集]

植物及び微生物中では、ω6位に二重結合を作るΔ12-脂肪酸デサチュラーゼ によりオレイン酸の二重結合を一個増やしてリノール酸を生成することができる。さらに植物及び微生物中では、ω3位に二重結合を作るΔ15-脂肪酸デサチュラーゼ によりリノール酸の二重結合を一個増やしてα-リノレン酸を生成することができる[3][要高次出典]。不飽和化が進行することで脂肪酸の融点が順次低下する。生成した脂肪酸は、グリセリンエステル結合を行い、植物性脂肪となる。

なお、ヒトを含む動物は、ステアリン酸からオレイン酸を生成するΔ9-脂肪酸デサチュラーゼを有してはいるものの、Δ12-脂肪酸デサチュラーゼもΔ15-脂肪酸デサチュラーゼもどちらも有していないので、リノール酸もα-リノレン酸もどちらも自ら合成することができない。このためω-3脂肪酸ω-6脂肪酸はとともに必須脂肪酸となっている。

種類[編集]

植物性脂肪には次のようなものがある。

植物油の脂肪酸構成[編集]

植物油
種類 飽和脂肪酸[4] 一価不飽和脂肪酸[4] 多価不飽和脂肪酸 オレイン酸
(ω-9)[5]
発煙点
多価合計[4] α-リノレン酸
(ω-3)[5]
リノール酸
(ω-6)[5]
水素添加
キャノーラ油 7.365 63.276 28.142 10 22 62 400 °F (204 °C) [6]
ココナッツ油 86.500 5.800 1.800 - 2 6 350 °F (177 °C) [7]
コーン油 12.948 27.576 54.677 1 58 28 450 °F (232 °C) [6]
綿実油 25.900 17.800 51.900 1 54 19 420 °F (216 °C) [6]
オリーブ油 13.808 72.961 10.523 1 10 71 374 °F (190 °C) [8]
パーム油 49.300 37.000 9.300 - 10 40 455 °F (235 °C) [9]
ピーナッツ油 16.900 46.200 32.000 - 32 48 437 °F (225 °C) [6]
ひまわり油
(中オレイン種)
9.009 57.334 28.962 0.037 28.705 57.029 510 °F (266 °C) [6]
大豆油 15.650 22.783 57.740 7 54 24 460 °F (238 °C) [6]
ベニバナ油
(高オレイン種)
7.541 75.221 12.820 0.096 12.724 74.742 510 °F (266 °C) [6]
水素添加
綿実油 93.600 1.529 .587 .287[4]
パーム油 47.500 40.600 7.500
大豆油 21.100 73.700 .400 .096[4]
値は重量パーセント

健康[編集]

栄養素の一つであるが、重量あたりのカロリーが高いため、多量摂取は肥満の原因となる。

植物性脂肪は、飽和脂肪酸の多い動物性脂肪より不飽和脂肪酸が多いため、比較的健康に良いとされている。

植物性脂肪は、一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸が多いものの、必須脂肪酸等その組成には大きな相違がある場合がある。

脚注[編集]

  1. ^ USDA National Nutrient Database
  2. ^ http://www.my-pharm.ac.jp/~khigashi/higashi/hide/lipid.html 脂質の消化・吸収 [リンク切れ]
  3. ^ I章 最新の脂質栄養を理解するための基礎 ― ω(オメガ)バランスとは?脂質栄養学の新方向とトピックス
  4. ^ a b c d e Nutrient database, Release 24”. United States Department of Agriculture. 2012年3月26日閲覧。 All values in this column are from the USDA Nutrient database unless otherwise cited.
  5. ^ a b c Fats, Oils, Fatty Acids, Triglycerides”. Scientific Psychic (R). 2012年3月26日閲覧。 All values for ω-3, ω-6, ω-9 fats (not hydrogenated) are from Scientific Psychic (R) unless otherwise cited.
  6. ^ a b c d e f g Wolke, Robert L. (2007年5月16日). “Where There's Smoke, There's a Fryer”. The Washington Post. http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/05/15/AR2007051500398.html 2011年3月5日閲覧。 
  7. ^ Nutiva, Coconut Oil Manufacturer,http://nutiva.com/the-nutiva-kitchen/coconut-oil-recipes/
  8. ^ The Culinary Institute of America (2011). The Professional Chef. New York: Wiley. ISBN 0-470-42135-5. 
  9. ^ Scheda tecnica dell'olio di palma bifrazionato PO 64.

関連項目[編集]