引火点

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引火点(いんかてん、: flash point)とは、物質が揮発して空気と可燃性混合物を作ることができる最低温度である。この温度で燃焼が始まるためには点火源(裸火、火花など)が必要である。また引火点ぎりぎりでは、いったん引火しても点火源がなくなれば火は消えてしまう。燃焼が継続するためにはさらに数度高い温度が必要で、これを燃焼点という。さらに高温になると点火源が無くとも自発的に燃焼が始まり、この温度を発火点という。

引火点は、火災予防の見地から、燃料やその他の液体の危険性を表現するために用いられる。例えばアメリカ合衆国では引火点が華氏100度(摂氏37.8度)以下の液体を引火性(flammable)、それ以上の液体を可燃性(combustible)と区分する。また日本消防法では、第4類危険物(引火性液体)をその引火点に応じてさらに区分して数量規制を行っている。

仕組み[編集]

あらゆる液体は蒸気圧を持っていて、液体の温度があがると蒸気圧も増加する関係にある。気液平衡が成り立つ状態では、蒸気圧が増加すれば空気中の蒸気濃度も増加するので、可燃性液体から揮発した蒸気濃度は液温によって決まる。

空気中で燃焼できる濃度は物質によって異なっており、燃焼範囲と呼ばれている。液温が十分に低い場合には蒸気が充分な濃度に達しないため、点火源があっても燃焼が始まることはない。温度が上がり液面上での蒸気濃度が燃焼範囲の下限に達して始めて燃焼が始まる。この温度が引火点である。

測定法[編集]

引火点の測定法を大別すると密閉式と開放式がある。密閉式の場合、試料に蓋をして、蓋を通して点火源を出し入れする構造になっている。蒸気の温度が液温と平衡しているか否かによって2通りの方式がある。開放式の場合には蓋がなく蒸気が大気中へ拡散していく。そのため密閉式よりも着火しにくく、蒸気圧が燃焼範囲の下限となる温度よりも高い温度が測定される。また液面からの高さによって蒸気濃度が異なり、試験炎を近づける高さが液面から離れるほど着火しにくく、その結果として測定される引火点は高くなり燃焼点に近づいていく。

タグ密閉法
非平衡密閉式の試験法で、ガソリン灯油などの比較的引火点の低い(93°C以下)石油製品に用いられる。粘性が高かったり、不均質な試料には使えない。日本ではJIS K 2265-1:2007で規定されているが、対応する国際規格はない。
迅速平衡密閉法
セタ密閉式ともいう。石油溶剤など幅広く用いられる。国際規格としてISO 3679:2004があり、日本ではJIS K 2265-2:2007で規定されている。
ペンスキーマルテンス密閉法
平衡密閉式の試験法で、主に原油重油などの燃料油に用いられる。均等に熱が行き届くよう、試料は常に撹拌されながら徐々に加熱されていき、一定の間隔で炎が器に向けられる。国際規格としてISO 2719:2002があり、日本ではJIS K 2265-3:2007で規定されている。
クリーブランド開放法
開放式の試験法で、おもに潤滑油などの引火点の高い(79°C超)石油製品に用いられる。国際規格としてISO 2592:2000があり、日本ではJIS K 2265-4:2007で規定されている。

引火点の利用例[編集]

各種燃料の引火点・発火点
燃料 引火点 発火点
エタノール (70%)[1] 16.6°C 363°C
ガソリン -43°C 246°C
軽油 >62°C 210°C
ジェット燃料 >60°C 210°C
ケロシン >38–72°C 220°C
植物油 327°C
バイオディーゼル >130°C

引火点が利用されている例として、エンジンを用いる。

ガソリンエンジン点火プラグからの火花によって点火するエンジンである。 ガソリンはその蒸気が燃焼範囲に収まるように空気と混合され、引火点より高い温度まで加熱されて、点火プラグで着火する。しかし適切なタイミングよりも前に、エンジンの熱によって発火しては困る。したがってガソリンは低い引火点と高い発火点を持つことが要求される。

一方ディーゼルエンジンには点火源がなく、その代わりに圧縮比が高い。 まず空気が圧縮されて温度がディーゼル燃料(軽油)の発火点を上回る。そこへ高圧の燃料が燃焼範囲になるよう噴射され、発火する。したがって、ディーゼル燃料には高い引火点と低い発火点を持つ事が要求される。

参考文献[編集]

  1. ^ Ethanol MSDS