女性専用空間

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女性専用空間(じょせいせんようくうかん、英語: women-only space)とは、女性専用空間は、性別分離英語版の一形態であり、女子トイレ、女性更衣室、レイプシェルター、避難所の女性区域、病棟の女性区域、母子寮、女湯、女子刑務所など、男子禁制で女性のみが立ち入ることを許された領域空間である[1][2]。日本では、鉄道における女性専用車両(ただし男性の乗車は違法とされていない)の試みも行われている。女性の人権。即ち、生存権尊厳を守り、女性特有の身体をおびやかされることなく保護される「安全な空間英語版」を確保するために、性別を分離して設けられているのが女性専用空間である。女性専用空間の確保の大きな理由として、男女の性犯罪の非対称性があると主張されることもある。

アメリカ国内のトランスジェンダーへの配慮が強い州や地域では、男女別トイレを、男女共用トイレにすることで女子トイレを廃止するところがある。この目的として、ジェンダーフリーがあるのではないかと主張する者もいる。しかし男女共同トイレ化の問題として、治安の悪化や子供や高齢者、身体障碍者などを含む弱者への暴行、性犯罪への懸念も指摘されている。欧米では「小児性犯罪者を幼児に近づけない」という取り組みがあり、トランスジェンダーへの配慮で間接的に犯罪者が容易に犯行に及ぶ状況を呼び込むのではないかという議論もある[3][4][5][6]

未手術トランス女性の女性専用空間立ち入りに関する倫理的・法的是非論争[編集]

女性専用空間の核心は男性がいない環境の確保にあるため、倫理的および法的な観点で、性別適合手術を受けていないトランス女性が立ち入ることは許されるべきかどうかをめぐり、一部で議論が起きている[7][8][9]。なお、日本では未手術トランス女性の女子トイレ利用は法律で直接規制されていない。

また、 女性の身体保護のために特定の空間を取っておくことの有用性と正当性への反発の声が、海外の親トランス派の一部で上がっている[10]

アメリカのカリフォルニア州ではWi Spa controversy(Wi Spa 公然猥褻事件論争)などが起きているが、カリフォルニア州のようにセルフID制度施行国・地域では女性の性自認を持っていれば、性別適合手術をしていないトランス女性でも、女子トイレや女子風呂などの女性専用空間に入ること自体は非合法ではないとされる。そのため、セルフID制定国・地域ではその存廃・セルフID未制定国では制定への是非が論争となっている[11][12][13]。なお、セルフID国でも、各施設が正当な理由をもって女性専用空間への未手術トランス女性の出入りを拒否することが全面的に禁止されているわけではないようである。

未手術トランスジェンダーによる女子トイレ利用・女性スポーツ競技参加への日本主要政党の賛否[編集]

日本の現行法では、性別変更が許可されているのは、性別適合手術を受けた者のみに限っている。下記の未手術トランスジェンダーによる女性専用空間利用否定派は、未手術トランス女性は女子トイレ利用を自粛するべき・性同一性障害特例法の手術要件は維持すべきなどと主張している。一方、肯定派は、IOCなど開催者が定めた条件を満たす場合、女性スポーツ競技へのトランス女性の参加を問題としない。 未手術トランス女性の女子トイレ利用も自粛する必要はないと主張している。[14][15]

否定的

日本では自民党を中心とする保守派が「性的指向や性自認が定まっていない、心の性と体の性が一致しない人、トランスジェンダーの人が女子トイレに入ってきたらどうするのか[16]」「体は男だけど自分は女だから女子トイレに入れろとか、アメリカなんかでは女子陸上競技に参加してしまってダーッとメダルを取るとか、ばかげたことはいろいろ起きている[17]」として、性自認に基づいた女性専用空間・女性競技への参加に否定的である[16][17]。後述のLGBT法案で、法案の目的と基本理念の項目で「性自認を理由とする差別は許されない」とされている点を問題視している[17][18]

 

肯定的

立憲民主党も「トランスジェンダー女性を犯罪性と結びつけるな」との自民党本部前で抗議集会を紹介し[19]、「ジェンダー平等推進本部」を設置しており[20]、「差別は許されない」の一文をLGBT法案(仮)で追加させている[18]。だが、この追記は自民党保守派の、民主党政権などで検討された、人権侵害の定義が曖昧で、恣意的な運用や「表現の自由」の規制などへの懸念が噴出して廃案となった人権擁護法案の苦い記憶を招いたため、LGBT法案(仮)の廃案に繋がった[18]

日本共産党はトランス女性の女子トイレ利用に関する問いはトランスジェンダー差別(トランス差別)だとして[16]党綱領[21]でもジェンダー平等を目指すとして推進している[16][22]。2022年の公約では、現行の性同一性障害特例法の、性別適合手術者のみに性別変更を許可するという要件の撤廃を主張している。また、「今後、法的にも、男性器を備えたままの性自認女性という存在が認められるということも想定している」と明らかにしている[14]。ただし、性同一性障害特例法で定められている、精神科医2名による性同一性障害の診断を必要とするという要件を見直し・廃止するかどうかは具体的に書かれていない。

社会民主党福島みずほ党首が毎日新聞に、「性別変更 なぜ手術を強いるのか」との記事寄稿している[15]

脚注[編集]

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  1. ^ トランスジェンダーへの誤った認識 自民党勉強会でも” (日本語). 毎日新聞 (2021年5月9日). 2021年10月25日閲覧。
  2. ^ Gale - Enter Product Login”. go.galegroup.com. 2016年10月24日閲覧。
  3. ^ 池田, 真隆. “NYで男女兼用トイレ増加、ジェンダーフリーに配慮” (日本語). オルタナ. 2022年1月23日閲覧。
  4. ^ INC, SANKEI DIGITAL (2015年9月18日). “【話題の肝】行き過ぎ 性的少数者へ配慮で小学校の男女別トイレ廃止 憤懣ぶちまける親の抗議デモ騒ぎに” (日本語). 産経ニュース. 2022年1月23日閲覧。
  5. ^ INC, SANKEI DIGITAL. “男女別トイレ廃止は行き過ぎか? LGBT配慮の米小学校に反発の声” (日本語). SankeiBiz. 2022年1月23日閲覧。
  6. ^ 「ジェンダーフリー・トイレ」は逆に不公平 女性から抗議の声” (日本語). Onlineジャーニー. 2022年1月23日閲覧。
  7. ^ Julia Serano. “On the Outside Looking In”. 2013年1月8日閲覧。
  8. ^ Julian Norman (2012年5月22日). “Legalities of excluding trans women from women only spaces”. 2013年1月8日閲覧。
  9. ^ Murphy, Mary (2014). “FEMINIST SPIRITUALITY AND GENDER Lessons From Beyond Women-Only Space”. Communities 162: 38–72. http://search.ebscohost.com/login.aspx?direct=true&db=aph&AN=94890559&site=ehost-live&scope=site 2014年5月10日閲覧。. 
  10. ^ Julia Long (2012年12月7日). “So I'm a feminist troublemaker for requesting some women-only space?”. The Guardian. 2013年1月8日閲覧。
  11. ^ King, Jordan. “Trans people will not be allowed to self-ID as government reform scrapped – Metro”. 2022年1月23日閲覧。
  12. ^ 秀次, 八木 (2021年12月14日). “【正論】LGBT法案に科学的根拠あるか 麗澤大学教授・八木秀次” (日本語). 産経ニュース. 2022年1月23日閲覧。
  13. ^ Wheesht Spa | Josephine Bartosch” (英語). The Critic Magazine (2021年9月6日). 2022年1月23日閲覧。
  14. ^ a b 12、性的マイノリティー・LGBT/SOGI│2022参議院選挙政策│日本共産党の政策│日本共産党中央委員会” (日本語). 日本共産党. 2022年6月20日閲覧。
  15. ^ a b 性別変更 なぜ手術を強いるのか | トランスジェンダー | 福島瑞穂” (日本語). 毎日新聞「政治プレミア」. 2022年6月20日閲覧。
  16. ^ a b c d 会議室が凍りついた。LGBTQを否定する発言。: こごし智子だより”. kogoshitomoko.seesaa.net. 2022年6月20日閲覧。
  17. ^ a b c 自民・山谷氏「ばかげたこと起きている」 性自認めぐり:朝日新聞デジタル” (日本語). 朝日新聞デジタル. 2022年6月20日閲覧。
  18. ^ a b c INC, SANKEI DIGITAL (2021年5月20日). “保守派異論、了承見送り LGBT法案、「差別」表記などに警戒感” (日本語). 産経ニュース. 2022年6月20日閲覧。
  19. ^ 「トランスジェンダー女性を犯罪性と結びつけるな」自民党本部前で抗議集会。” (日本語). Twitter. 立憲民主党. 2022年6月20日閲覧。
  20. ^ タグ「ジェンダー平等推進本部」- 立憲民主党”. cdp-japan.jp. 2022年6月20日閲覧。
  21. ^ (13)6 ジェンダー平等社会をつくる。 男女の平等、同権をあらゆる分野で擁護し、保障する。 女性の独立した人格を尊重し、女性の社会的、法的な地位を高める。 女性の社会的進出・貢献を妨げている障害を取り除く。 性的指向と性自認を理由とする差別をなくす。
  22. ^ https://twitter.com/takatsuki_mana/status/1301830688530784256” (日本語). Twitter. 高月まな新宿区区議会議員(日本共産党). 2022年6月20日閲覧。 “日本共産党は性自認を理由とする差別に反対しています。(綱領より)。トランス差別反対はフェミニズムとともに。”

関連項目[編集]

外部リンク[編集]