半陰陽

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柳水亭種清『快淫水好傳』第三編。1859年[1]

半陰陽(はんいんよう、: Intersexuality, Hermaphroditism)は第一次性徴における性別の判別が難しい状態である。インターセックス: Intersex)ともいう。この性質を持つ人を半陰陽者(はんいんようしゃ)、インターセクシュアルあるいはインターセクシャル: Intersexual、略称: IS)と呼称する場合もある。また、医学的な名称としては性分化疾患 (DSD) が用いられている。

日本では男女両方の性を兼ね備えているという観点から両性具有(りょうせいぐゆう)とも呼ばれ、またふたなり(二形)、 はにわり(半月)などの呼称もあり古くよりその存在が知られていた。この他、半陰陽者のことを指して両性具有者(りょうせいぐゆうしゃ)、アンドロジニー (Androgyny)、アンドロギュノスあるいはアンドロジナス (Androgynous)、アンドロジン (Androgyne)、ギリシャ神話に出てくるヘルマプロディートスの名をとってヘルマプロディトス (Hermaphroditus)、ハーマフロダイトあるいはヘルマフロディーテ (Hermaphrodite) と呼ぶこともある。

名称の使用に関する留意事項については、後述の節も参照

概要[編集]

医学的には性分化疾患 (: Disorders of Sex Development:DSDs ) に分類される。ただし、呼称についてはインターセックス(: Intersexuality)なども含めて当事者の間では賛否両論があり、まとまっていない。詳細は性分化疾患の項目参照。

「半陰陽」は、男女両方の性腺をもつものや外性器の性別が曖昧な真性半陰陽、もしくは外性器が性腺の性と異なる仮性半陰陽(精巣組織に女性様性器を有する男性仮性半陰陽、卵巣組織に男性様性器を有する女性仮性半陰陽)を指す言葉である。[2]

これらの半陰陽が性分化疾患に分類されるため、半陰陽ではない性分化疾患であるクラインフェルター症候群やターナー症候群なども半陰陽と混同されやすい[3]

陽と陰、男と女といった対立的にして補完的なものの調和を重視する陰陽思想などに基づいて、半陰陽を理想的な性別のあり方とする考え方もあった。

生物学的位置づけ[編集]

半陰陽の原因としては、性染色体に稀なものが見られる場合や、胎児の発達途中における母体のホルモン異常が引き起こす場合などがある。また、モザイク体と呼ばれる、性染色体の構成の異なる細胞を併せ持つ場合もある。

男女両性の特質を中途半端に兼ね備える場合や、遺伝子上の性別と肉体的性別が通常の組み合わせとは反対の場合もある。両性の性腺を兼ね備えたものを真性半陰陽、遺伝子と外見とで性別の異なるものを、仮性半陰陽と呼び、後者は性腺上の性別によって、男性仮性半陰陽女性仮性半陰陽として区別される[4]

身体的には、女性仮性半陰陽の場合、が塞がっている場合が多く、また陰核が通常よりも肥大し、これが男性器(ペニス)と間違われることがある。男性仮性半陰陽では、尿道下裂[5]停留睾丸を併せ持った状態のこともある。

真性半陰陽(卵精巣性性分化疾患)[編集]

真性半陰陽では、その性器の状態は人それぞれであり、またその要因は未だ解明されていない。人体に2つある性腺のどちらか一方が精巣、もう一方が卵巣である場合と、卵巣と精巣が混ざった卵精巣を性腺の一方もしくは両側とも有する場合に診断される。染色体構造は「46, XX」に次いで「46, XY」が多く、「46、XX/46、XYモザイク」も多い。仮性半陰陽と比べてもきわめて稀な症例とされ、半陰陽のなかで外性器異常を最も伴いやすい[6]

現在は「半陰陽」という表現が両性具有をイメージしやすいとして適切ではないことから見直され、日本小児内分泌学会性分化委員会による2008年(平成20年)3月1日付けの「性分化異常症の管理に関する合意見解」において、真性半陰陽 (True hermaphrodite) については「 卵精巣性性分化疾患 (Ovotesticular DSD)」と呼称するように提唱されている[7]

  • 対称性真性半陰陽Hermaphroditism usbilateralis: 性腺の両側に、卵巣と精巣の混ざった卵精巣を有する
  • 一側性真性半陰陽H.unilateralis: 性腺の一方が卵巣または精巣で、もう一方に卵精巣を有する
  • 両側性真性半陰陽H.1ateralis: 性腺の一方が卵巣、もう一方に精巣を有する

仮性半陰陽[編集]

男性仮性半陰陽[編集]

精巣組織をもつが内性器または外性器が女性型

  • テストステロン生合成障害:外性器の男性化異常
  • アンドロゲン不応症:完全型の場合、外性器は女性型
  • 5α-還元酵素欠損症:尿道下
  • ミュラー管遺存症候群:外性器は完全に男性型だが子宮と卵管を有する

女性仮性半陰陽[編集]

卵巣組織をもつが陰核肥大などの男性化性器を有する

  • 先天性副腎過形成
  • 水酸化酵素欠損症
  • 男性ホルモン産生腫瘍
  • 非進行性女性仮性半陰陽

仮性半陰陽の発生要因[編集]

仮性半陰陽の発生は、その根本的な原因は様々であるが、少なくとも男性ホルモンが関係しているとされる。

胎児における外性器の分化は、染色体や遺伝子ではなく男性ホルモンの働きによる。外性器の発生する時期にこれが働くことで外性器は男性化を起こし、それがなければ未分化、すなわち女性的な外性器の状態を示す。

遺伝子上は男性であっても、睾丸が男性ホルモンを分泌しない、細胞が男性ホルモンに反応しないなどで外性器が完全には男性化しない、あるいは、遺伝子上は女性であっても母体などからの男性ホルモンの影響で外性器の男性化が起こるといわれている。

二次性徴[編集]

半陰陽の根本的な原因により、第二次性徴の表れ方は様々である。性腺の働きが正常で遺伝子的な異常のない、単純な外性器の発達不全の場合には、第二次性徴期に通常に性ホルモンが分泌され、(外見とは逆の)本来の二次性徴が発現するといわれ、この場合にはこの肉体的変化で気付くことが多い。また、男性仮性半陰陽の中で、睾丸が女性ホルモンのみを分泌する場合には、女性としては十分とはいえないまでも乳房の発達が起こるとされ、この様な場合には男性ホルモンが働かないために陰毛などが発生しないともいわれる。

自己・周囲の認知[編集]

仮性半陰陽の場合、外見的には表に出ている男性または女性そのものであることも少なくないため、周囲はおろか当人も全くそれに気づかない場合もある。精巣や卵巣も形成され、たとえ遺伝子情報のそれと反していても、外見通りの性別に成人する。

たとえば遺伝子は男性だが女性の形態をとる男性仮性半陰陽の場合、本人もそれと知らずに結婚、一生を女性として過ごすこともある。ただしこの場合、はあるものの子宮が痕跡的で少なくとも機能しないため、自然な妊娠はできない。少なくとも現在のところ、男性仮性半陰陽の女性が出産にまで至った事例は知られていない。

社会認知[編集]

社会的には現在、半陰陽の状態を持つ人々は差別以前に日本ではほとんど認知されていない。

ごく最近では、性的ファンタジーとしての両性具有ではない、半陰陽の状態を持つ人の現実的な問題を描いた漫画『IS〜男でも女でもない性〜』(著:六花チヨ講談社刊)が話題となり、以前より少しは半陰陽の状態を持つ人々の存在が認知されるようになった。しかし、これらの作品でも半陰陽について分かりやすい解説を加えているにもかかわらず、その概念が理解できず、未だに「性同一性障害」「トランスジェンダー」と混同している人は少なくない。

法的対応[編集]

出生直後に外見上の性別が不明瞭である場合、出生届等で性別留保という手続きをすれば戸籍には性別は記載されない。 また、一度登録した戸籍性を出生時の性別判断の誤である「性別錯誤」としてもう一方の性に訂正することが可能であるが、性別錯誤に該当するものは染色体の性と反対の性を登録された場合に染色体の性と同様の性に訂正することに限られるなど、その適用範囲は狭い。

手術[編集]

現在、日本で半陰陽の状態を持つ子が生まれた場合、整形手術が行われることが多い。特に生まれてすぐに手術を行うことで生殖能力の保持に関わるケースなどもあり、医師と親の判断に任されることが多々ある。しかし、本人の身体についての説明が十分でない場合、後に本人のアイデンティティを揺るがすことがある。手術をすることによって初めて自分の体に満足する人もいるが、当事者団体では、半陰陽の状態を持つ子供が生まれた場合、即座の整形手術は健康的な問題を含まない限り避けられるべきで、かつ、男性女性どちらかで養育するように推奨している。ただし、後々で明確になる本人の性自認は尊重すべきであり、成長に合わせた柔軟性も必要である。モントリオール宣言ジョグジャカルタ原則第18原則は特にこうした十分なインフォームド・コンセントの伴わない医療介入から児童が保護される必要性を訴えている。

手術の問題点としては、説明が十分になされないゆえのアイデンティティの危機、性感帯の切除による満足の減少、また、ホルモンの減少によって骨粗鬆症になりやすくなる、精神が不安定になる場合がある。骨粗鬆症に関しては、生来的なホルモン不足により起こることがほとんどで、その上ではホルモン投与などの治療はむしろ推奨される。

半陰陽に関連する人物[編集]

  • 橋本秀雄:日本半陰陽者協会代表。
  • ジョン・マネー:アメリカの心理学者・性科学者で、半陰陽の研究で有名。身体的性別とは別個にあるジェンダー・アイデンティティを見いだした。「ジェンダー・アイデンティティの形成は、生物学的要因による先天的なものか環境要因による後天的なものか」との論争において、環境要因を重視し、外性器を失った男児デイヴィッド・ライマーを女児として育てさせるよう両親に勧め、女性としてのジェンダー・アイデンティティを獲得するようカウンセリングをおこなった。しかし当のライマーは環境によって女性であることのジェンダー・アイデンティティを持つことはなく、この悲劇を防ぐために自らの体験談を世間に公表した。
  • スタニスラワ・ワラシェビッチ:元陸上競技選手。女性選手として新記録を残したが、死後、両性具有者であることが判明した。
  • キャスター・セメンヤ南アフリカ共和国の陸上競技選手。2009年世界陸上女子800mで優勝し、その後の医学的検査で両性具有者と判明したと報じられた。[8]

半陰陽に関連する作品[編集]

脚注[編集]

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注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ NCID BA87153387
  2. ^ 東優子(2010). 非典型的な「性」をめぐる性科学の言説(第3回講演)女性学連続講演会. 14, p.48-70.
  3. ^ 半陰陽の芸能人・有名人と半陰陽の芸能人の割合|漫画家”. 2018年6月23日閲覧。
  4. ^ 横田 & 迫間 1935, pp. 785-786
  5. ^ 横田 & 迫間 1935, p. 788
  6. ^ 酒徳, 治三郎;卜部, 敏人.真性半陰陽の1例.泌尿器科紀要 (1957), 3(3): 221-225.)
  7. ^ 性分化異常症の管理に関する合意見解 (PDF) (日本小児内分泌学会性分化委員会、2008年 (平成20年) 3月1日付)
  8. ^ 性別疑惑のセメンヤは両性具有、オーストラリア紙が報じる 国際ニュース : AFPBB News”. 2013年1月閲覧。

参考文献[編集]

横田浩吉; 迫間忠義 「半陰陽」 (pdf)、『京都府立医科大学雑誌』 第15巻第3号785-794頁、1935年NAID 110007118953http://ci.nii.ac.jp/lognavi?name=nels&lang=jp&type=pdf&id=ART00090552852009年10月3日閲覧 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]