クラインフェルター症候群

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クラインフェルター症候群
Human chromosomesXXY02.png
クラインフェルター症候群の染色体
分類および外部参照情報
診療科・
学術分野
遺伝医学
ICD-10 Q98.0-Q98.4
ICD-9-CM 758.7
MedlinePlus 000382
eMedicine ped/1252
Patient UK クラインフェルター症候群
MeSH D007713

クラインフェルター症候群(クラインフェルターしょうこうぐん、: Klinefelter syndrome)とは、男性の性染色体X染色体が一つ以上多いことで生じる一連の症候群。1942年ハリー・クラインフェルター英語版によって初めて報告された[1]。この症候群の男性は通常、生殖能力が無く他の男性と比較して糖尿病[2]、慢性肺疾患、静脈瘤甲状腺機能低下症乳がんを発症しやすい傾向にあるとされている[3]

原因[編集]

通常の男性の性染色体は「XY」であるが、これにX染色体が過剰で「XXY」となっている。一般に「47 XXY」やモザイク型の「47XY/47XXY 」と表現される[4]。多くの亜型が存在しX染色体が二つ以上多い「XXXY」等もある。25000-50000人に1人程度[5]の割合で「48 XXYY」の例もある[6]。過剰な X 染色体は 60% の症例で母親由来である[7]

疫学[編集]

頻度は男性700-2000人に1人と報告されている[8][3]。ただし、自分が症候群だと知らずに生活してる人間も多数いると推測できる[9]

症状[編集]

学習障害、長い腕と脚、小さな精巣、無精子症による不妊症など[3][6]で、過剰なX染色体が多いほど障害の傾向も強い[10]。しかし診断の契機となる臨床上は少ない。多くは思春期以降の小さく硬い精巣[11]や不妊が契機となって診断に至る。成人以降、突如第二次性徴的変化が始まることもある。アンドロゲン不応症とよく間違われるが、アンドロゲン不応症は染色体異常ではなく別の症状(特に完全型では外見的特長は女性的である)である。

第一次性徴までは一般の男児とさほど変わらない体形だが、第二次性徴から胴体の成長はとまり、首・手・足などが成長するため、華奢で手足の長い細身の体形になる人が多いとされるが、肥満体や、身長は平均並みの人も多く、顕著とも言い切れない。

必ず乳房が発達するというものでもないが、まれというほどでもない。声変わりしない・筋肉が付きにくく運動能力が低い・体毛が薄い、陰毛腋毛が発生しない、もしくは極端に薄い等がある。性同一性障害の割合や、性指向の混乱は一般と比べそれほど多くない。

外性器内性器は通常の男性形である。性欲は一般的に低いが、射精や通常の性行為は問題なくできる。精液はほぼ透明であり、無臭に近く量も少ない。精子の数が極端に少ないため不妊となりやすいが、精巣内精子回収法 (TESE)[12]顕微鏡下精巣内精子採取術[13]による人工授精によって受精出産まで至った例もある[14]。また、XXYと判定されている場合でも実際はXYとXXYのモザイクである可能性もあり、この場合、睾丸内のXY細胞の数が多ければ特に受精に問題は生じない。

認知機能や言語機能の遅れ[2]性同一性障害[15]社会的スキルや感情のコントロールの脆弱性や高い攻撃性が指摘されている[16]

身体が弱く病気がち、特に気管支関連の病気と心臓の病気が多い。中年以降は、男性ホルモン不足によるLOH症候群骨粗鬆症になりやすい。「XXXY」、「XXXXY」の場合に多く観察される。一般にXの数が多いほど症状が深刻である[3]

臨床像[編集]

X染色体が一つ多いことだけで「女性化」と見られる特徴を呈する。

治療[編集]

男性ホルモン補充療法などが行われる。日本では保険適用のエナルモンデポーを2週間に一度注射するが、体内血中濃度が非常に安定しないため、頭痛や怠さが起きやすい。

世界の標準薬はネビド注射治療薬。ネビドは10年前から存在するが、日本やアジアは保険適用にしていないため自費。ネビドは注射してから3〜4ヶ月の持続性があるのでエナルモンデポーの様に短期間の注射が不要である。また、成分が非常に安定しているため、徐々に吸収するので体に負担が少なく頭痛や怠さも無いに等しい。しかし、日本では保険適用外であるために3〜4ヶ月に一度3万円が注射費用となる。

出典[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Klinefelter HFJ, Reifenstein ECJ, Albright F (1942) Syndrome characterized by gynecomastia, aspermatogenesis without a-Leidigism and increased secretion of follicle-stimulating hormone. J Clin Endocrinol Metab 2: 615-622
  2. ^ a b 田中早津紀、前田康司、奥田譲治 ほか、著しいインスリン抵抗性を呈し, チアゾリジン誘導体により糖尿病が改善したと考えられるKlinefelter症候群の1例 糖尿病 45巻 (2002) 10号 p.747-752, doi:10.11213/tonyobyo1958.45.747
  3. ^ a b c d クラインフェルター症候群(Klinefelter'症候群) MSDマニュアル
  4. ^ Jacobs PA, Strong JA (1959) A case of human intersexuality having a possible XXY sex-determining mechanism. Nature 183: 302-303
  5. ^ 市川篤二, 落合京一郎, 高安久雄: 新臨床泌尿器科全書. 第8巻B, p. 126-132, 金原出版, 東京, 1984
  6. ^ a b 池上雅久、橋本潔、大西規夫 ほか、48 XXYYクラインフェルター症候群の1例 日本泌尿器科学会雑誌 85巻 (1994) 12号 p.1781-1783, doi:10.5980/jpnjurol1989.85.1781
  7. ^ 性染色体異常/クラインフェルター症候群(47,XXY) MSDマニュアル プロフェッショナル版
  8. ^ Cynthia MS, William JB (1998) Klinefelter syndrome. Arch Intern Med 158: 1309-1314
  9. ^ 小児内科 2015 Vol.47 増刊号
  10. ^ 山口利仁, 中島育昌, 横山巌: XXYY Klinefelter 症候群の1例. 関東整災誌, 18, 750-755, 1987
  11. ^ 寺田央巳、鈴木和雄、大園誠一郎、PP3-174 クラインフェルター症候群の臨床的検討(一般演題(ポスター)) 日本泌尿器科学会雑誌 95 巻 (2004) 2 号 p. 517-, doi:10.5980/jpnjurol.95.517_2
  12. ^ 江口二朗、野俣浩一郎、西村直樹 ほか、クラインフェルター症候群の臨床的検討(第93回日本泌尿器科学会総会) 日本泌尿器科学会雑誌 96巻 (2005) 2号 p.222-, doi:10.5980/jpnjurol.96.222_3
  13. ^ 磯山忠広、山本泰久、ニコラオス・ソフィキティス ほか、クラインフェルター症候群に対する精巣内精子を用いた顕微授精 : 第86回日本泌尿器科学会総会 日本泌尿器科学会雑誌 89巻 (1998) 2号 p.370-, doi:10.5980/jpnjurol.89.370_1
  14. ^ 山口耕平、近藤有、石川智基 ほか、OP-335 非モザイク型クラインフェルター症候群に対する顕微鏡下精巣内精子採取術の検討(第95回日本泌尿器科学会総会) 日本泌尿器科学会雑誌 98巻 (2007) 2号 p.374-, doi:10.5980/jpnjurol.98.374_3
  15. ^ 佐藤由佳利、大森哲郎、香坂雅子 ほか、II-D-27 人格障害・性同一障害を呈したクラインフェルター症候群の一例(精神神経科II) 心身医学 32巻 (1992) Abs号 p.162-, doi:10.15064/jjpm.32.Abs_162_2
  16. ^ Grammatico, P., Bottoni, U., DeSanctis, S., Sulli, N., Tonanzi, T., Onorio, A. C. and Porto, G. D.: A male patient with 48 XXYY syndrome, importance of distinction from Klinfetter's syndrome. Clin. Genetics, 38, 74-78, 1990.
  17. ^ 安里豊、野中薫雄、青木武雄 ほか、Klinefelter症候群に認めたうっ滞性皮膚炎 西日本皮膚科 66巻 (2004) 6号 p.559-563, doi:10.2336/nishinihonhifu.66.559

関連項目[編集]

外部リンク[編集]