行政不服審査法

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行政不服審査法
日本国政府国章(準)
日本の法令
通称・略称 行審法、行服法
法令番号 平成26年法律第68号
効力 現行法
種類 行政法
主な内容 行政不服申立の一般法
関連法令 行政事件訴訟法行政手続法行政機関の保有する情報の公開に関する法律
条文リンク 総務省法令データ提供システム
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行政不服審査法(ぎょうせいふふくしんさほう、平成26年6月13日法律第68号)は、事後における救済制度としての行政不服申立についての一般法1条2項)として制定された日本法律である。行政法における行政救済法の一つに分類され、行審法と略される。

概要[編集]

行政不服申立てとは、国民が行政機関に対して紛争の解決を求める法的な争訟手続である。つまり、「行政庁の公権力の行使」(処分)に対し、私人が「行政機関」に対して不服を申立てることを指す。この場合、私人は裁判所ではなく行政機関を相手として事後的救済を求める争訟を提起することになる。行政不服申立ては裁判ではないので、日本国憲法32条による裁判を受ける権利の対象とはならない。よって、その制度は政策によって変化する。また、行政機関によるものでなく司法上の救済(行政訴訟)については行政事件訴訟法がその一般法として制定されている。行政不服審査法、行政事件訴訟法は、いずれも事後の救済制度であるが、事前の救済制度として行政手続法がある。

行政不服審査法の前身は、1890年に制定された訴願法(明治23年法律第105号)である。訴願法は、「租税及手数料ノ賦課ニ関スル事件、租税滞納処分ニ関スル事件、営業免許ノ拒否又ハ取消ニ関スル事件」等、列記主義の原則により不服申立てのできる場合を限定的に規定していたこともあり、この法律によって十分な救済が図られる内容とは言い難かった。

また、日本国憲法第76条2項後段は行政機関が終審を行うことを禁止しているが、反対解釈すれば前審を禁じてはおらず、裁判所法3条2項も行政機関が裁判所の前審として審判を行うことを認めている。このことから、行政不服審査法は不服申立てのできる場合を限定するのではなくできない場合を例外規定として設け、その他の処分・不作為についてすべて不服申立てができるとする一般概括主義の原則により構成されている。その他、訴願法と行政不服審査法を比較すると、当事者の手続的な権利の充実という面で大きな進展がみられる。

全面改正[編集]

1962年の行政不服審査法制定以来、長らく実質的な改正はなかったが、2014年に現行法を抜本的に改正した行政不服審査法(平成26年6月13日法律第68号)が公布され、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日(平成27年11月26日政令第390号により、平成28年4月1日と決定)から施行されることとなった[1]

これ以前、第169回国会(2008年)において、不服申立て手続の審査請求への原則的一本化、再審査請求の廃止、審理員による審査請求の手続、行政不服審査会等による諮問手続の設置、審査請求期間の3か月への延長などを内容とする全部改正法案が、内閣より提出されたが、2度の継続審査とされた後、第171回国会(2009年)において衆議院解散(7月21日)されたため審議未了により廃案となった。

その後、再審査請求手続は維持するが、原則、審査請求及び再審査請求手続を経なければ出訴できないという二重前置をやめ、審査請求手続を経た後、再審査請求と出訴を自由選択とする等の変更が加わった[2]ものが2014年に成立した改正法である。

行政事件訴訟との比較[編集]

不服審査は、行政事件訴訟と共に法定の争訟手続である。行政権の行使の違法性をめぐる紛争を解決して、国民の権利利益の救済を目的とする手続きである点で、不服審査と行政訴訟は共通している。

他方、相違点として、不服審査では行政機関自身が争訟の裁断を行うのに対し、行政事件訴訟では裁判所が中立的で公平な第三者として紛争の裁断を行う。不服審査では手続が簡易迅速であると共に、処分の妥当性をも争えるのに対し、行政事件訴訟では手続きの対審性を保障し、当事者に口頭弁論を通して立証・反論の機会を保証する慎重な手続きを踏む。ただし、情報公開法18条は、開示請求決定に対する不服申立ては情報公開・個人情報保護審査会に諮問しなければならないとし、審査の透明性を高めて公平性を確保する。

内容[編集]

行政不服審査法の目的は、簡易迅速な手続によって国民の権利利益を救済し、行政の適正な運営を確保することにある(1条1項)。国民の権利利益の救済とは、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為について、国民に対して広く行政庁に対する不服申立ての途を開き、国民の権利利益の救済を簡易迅速に図ることである。

不服申立ての概観[編集]

対象[編集]

不服申立ての対象となるのは行政庁による処分(その他公権力の行使にあたる行為も含む)である。しかし「処分」の具体的な内容が法によって規定されているわけではなく、解釈によって定まる。一般に、「処分」の概念は行政行為とほぼ一致するといわれている。この処分概念を巡っては従来から行政事件訴訟法における処分性論でも同様の論争が続いている。「処分」には、公権力の行使に当たる事実上の行為で、人の収容、物の留置その他その内容が継続的性質を有するものが含まれる(2条)。

また、行政庁が法令に基づく申請に対して期間内に応答しない「不作為」も不服申立ての対象となる。

行政不服審査法は申立ての対象となる処分や不作為を原則として限定していない。このような規定の仕方を一般概括主義または概括主義という。これに対して申立てのできる処分等を条文で列記したものに限定する方法を列記主義という。行政不服審査法が制定される以前に行政不服申立ての一般法であった訴願法はこの列記主義を採用していた。

概括主義の例外として不服申立てができない事項は、4条1項各号に挙げられているもののほか、行政事件訴訟法や独占禁止法など他の法令により規定されたものがある。行政不服申立てにおける一般法である本法は、特別法は一般法に優先するという法原則により地方自治法公職選挙法が独自に定める不服申立て制度には適用されない。また、行政不服審査法に基づく処分も対象外とされている。

種類[編集]

審査請求中心主義が採用され、行政庁の処分に対する不服申立ては原則として審査請求によって行われる。

これに対して、行政庁の不作為に関する不服申立ては、申立てをする者が異議申立てと審査請求のどちらによるかを自由に選択できる(第7条)(自由選択主義)。

しかし処分に対する不服申立てであっても上級行政庁がない場合や法律によって異議申立てをすべきと規定されている場合には審査請求はできない。後者のように異議申立てが可能である場合にはまず異議申立てをし、それでも紛争が解決しない場合にのみ審査請求が可能であるという構成が採られている。これを異議申立前置主義という(第20条)。

異議申立てと審査請求は、一つの処分についてはどちらか一方の不服申し立てしか出来ないのが原則で、これを相互独立主義という。

  • 第3条(行政不服申立ての種類)
    「審査請求」「異議申立て」「再審査請求」の3つが第1項において規定されている。
    • 審査請求 - 処分庁又は不作為庁以外の行政庁に対してするもの。
    • 異議申立て - 処分庁又は不作為庁に対してするもの。(※現在は改正により審査請求に一元化され、廃止)
    • 再審査請求は、審査請求の裁決を経た後さらに行なうもの。
    処分をした行政庁のことを処分庁といい、不作為が問題とされる行政庁を不作為庁という(第2項)。
    再調査の請求 - 処分庁に対してするもの。但し、審査請求をしたときは、この限りではない。
  • 第4条(処分についての不服申立てに関する一般概括主義)
    • 次の各号に掲げる処分、この法律に基づく処分及び他の法律に審査請求又は異議申立てをすることができない旨の定めがある処分については、出来ない。
      1. 国会の両院若しくは一院又は議会の議決によつて行われる処分
      2. 裁判所若しくは裁判官の裁判により又は裁判の執行として行われる処分
      3. 国会の両院若しくは一院若しくは議会の議決を経て、又はこれらの同意若しくは承認を得たうえで行われるべきものとされている処分
      4. 検査官会議で決すべきものとされている処分
      5. 当事者間の法律関係を確認し、又は形成する処分で、法令の規定により当該処分に関する訴えにおいてその法律関係の当事者の一方を被告とすべきものと定められているもの
      6. 刑事事件に関する法令に基づき、検察官検察事務官又司法警察職員が行う処分
      7. 国税又は地方税の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づき、国税庁長官、国税局長、税務署長、収税官吏、税関長、税関職員又は徴税吏員(他の法令の規定に基づき、これらの職員の職務を行う者を含む。)が行う処分
      8. 学校、講習所、訓練所又は研修所において、教育、講習、訓練又は研修の目的を達成するために、学生、生徒、児童若しくは幼児若しくはこれらの保護者、講習生、訓練生又は研修生に対して行われる処分
      9. 刑務所少年刑務所拘置所少年院少年鑑別所又は婦人補導院において、収容の目的を達成するために、被収容者に対して行われる処分
      10. 外国人出入国又は帰化に関する処分
      11. 専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分
    • 4条2項は、1項の除外規定とされる他の法律で審査請求又は異議申立てをすることができない旨の定めがある処分についてそれらに代わる不服申立て制度を認める規定である。
  • 第5条(処分についての審査請求)
    審査請求とは、処分を行った行政庁(処分庁)や不作為に関係する行政庁(不作為庁)とは別の処分庁に対して行われる不服申立てである。原則として審査請求は処分庁の直近上級行政庁に対して行われる。処分や不作為に直接の関連をもたない行政庁が裁断するので、公平性が高いといわれる。また、第三者機関が審査をすべき行政庁(審査庁)として特に定められている場合もあり、そうした場合には公平中立な裁断が期待できる。
    なお、法定受託事務については都道府県の執行機関が行った処分に対しては所管の大臣に、市町村長(補助機関なども含む)は都道府県知事に、市町村教育委員会の行った処分については都道府県教育委員会に、市町村選挙管理委員会の行った処分については都道府県選挙管理委員会に審査請求ができる(地方自治法255条の2)。
  • 第6条(処分についての異議申立て)
    異議申立てとは処分庁や不作為庁に対して直接に翻意を求め、作為を促す不服申立てである。公平中立という観点からは審査請求に劣るが、紛争の当事者である行政庁に対して直接に改善を求めることになるので、迅速性と言う点では優れているとも言われる。
  • 第7条(不作為についての不服申立て)
  • 第8条再審査請求

手続[編集]

処分についての異議申立ては第45条以下に、不作為についての不服申立ては第49条以下に、再審査請求については第53条以下にそれぞれ規定があるが、それらの手続については審査請求の規定が準用されている。各制度特有の手続についてはその都度説明を加える。なお、これらの手続によっても紛争が解決しない場合には行政事件訴訟法に基づいて訴訟を提起し、司法審査(裁判所による裁判)を受けることができる。

  • 第9条(不服申立ての方式)
    書面の提出によって始まるのが原則である。この書面を不服申立書というが、これは異議申し立ての場合を除き正副2通を提出する。
  • 第10条法人でない社団又は財団の不服申立て)
    法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名で不服申立てをすることができる。
  • 第11条(総代)
    行政に関する紛争は当事者が多数となることも多い。そこで不服申立てをする者(申立人という)が多数の場合には、3名以内の総代を互選することができ、場合によっては互選を命じられる。
    総代は、各自、他の共同不服申立人のために、不服申立ての取下げを除き、当該不服申立てに関する一切の行為をすることができる。総代が選任されたときは、共同不服申立人は、総代を通じてのみ当該不服申立て行為をすることができる。
  • 第12条(代理人による不服申立て)
    不服申立ては代理人によって行うこともできる。
    代理人は、各自、不服申立人のために、当該不服申立てに関する一切の行為をすることができる。取下げは、特別の委任を受けた場合に限り、することができる。
  • 第13条(代表者の資格の証明等)
    代表者もしくは管理人、総代又は代理人の資格は、書面で証明しなければならない。
    代表者もしくは管理人、総代又は代理人がその資格を失ったときは、不服申立人は、書面でその旨を審査庁に届け出なければならない。

不服申立ての受理・手続き開始義務[編集]

国民が行政機関を相手として救済を求めるために不服申立て手続きを発意(争訟を提起)しても、これを行政機関が受理しなければ救済手続きは実質的に開始されない。よって、不服申立てを不受理として門前払いすることは許されず、たとえ不適法な申立であっても処分庁または審査庁はこれを受理し、不服申立ての手続きを行わなければならない。このような処分庁または審査庁の不服申立ての受理・手続き開始義務の根拠は、次の点にある。

  • 法の趣旨
    行政不服審査法の法律の趣旨は、「国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによつて、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図る」ことを主要な目的としており、不服申立てを不受理とする処分を行うことは法律の趣旨に反する。
  • 手続開始義務を前提とした制度
    異議申立てに対する決定、審査請求及び再審査請求に対する裁決には、それぞれ「法定の期間経過後にされたものであるとき、その他不適法であるとき」は、これを却下する旨の規定(第47条第2項、第40条第2項)があり、たとえ法定の期間経過後にされた不服申立て、その他不適法である不服申立てであったとしても、これを受理したうえで審理し、却下の決定・裁決をすることとされている。
  • 第14条(審査請求期間)
    審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して90日以内、異議申立て前置の場合は当該異議申立ての決定を知った日の翌日から起算して30日以内にしなければならない(第1項)。
    審査請求は、処分があった日の翌日から起算して1年を経過したときは、正当な理由がない限りできない(第3項)。
    処分がその名宛人に個別に通知される場合においては、「処分があったことを知った日」とは、その者が処分があったことを現実に知った日のことをいい、処分があったことを知り得たというだけでは足りない、とするのが判例である。
    処分が個別の通知ではなく告示をもって多数の関係権利者等に告示される場合においては、「処分があったことを知った日」とは処分の効力を受ける者が現実に処分の存在を知った日ではなく、告示があった日をいう、とするのが判例である。
  • 第15条(審査請求書の記載事項)
    審査請求書には、次の各号に掲げる事項を記載しなければならない。
    1. 審査請求人の氏名及び年齢又は名称並びに住所
    2. 審査請求に係る処分
    3. 審査請求に係る処分があったことを知った年月日
    4. 審査請求の趣旨及び理由
    5. 処分庁の教示の有無及びその内容
    6. 審査請求の年月日
  • 第17条(処分庁経由による審査請求)
    審査請求は、処分庁を経由してすることもできる。
  • 第20条(異議申立ての前置)
    審査請求は、当該処分につき異議申立てをすることができるときは、異議申立てについての決定を経た後でなければ、することができない。
    処分庁が、処分につき異議申立てをすることができる旨を教示しなかつたときは、直ちに審査請求できる。
    前置の目的が処分庁に再度判断をさせることであるから、この決定には不適法を理由としての却下は含まれない。
    地方自治法206条
    地方自治法238条の7(行政財産を使用する権利に関する処分についての不服申立て)
  • 第21条(補正)
    審査請求が不適法であつて補正することができるものであるときは、審査庁は、相当の期間を定めて、その補正を命じなければならない。同条は異議申立てについて第48条において準用、再審査請求について第56条において準用されている。
    補正命令の趣旨は不服申立てについて、それが不適法であっても補正することができるものであるときは、その補正を命じなければならないところにある。換言すれば、たとえ不適法な不服申立てであっても、これを受理したうえで補正することができるものであるときは、その補正を命じることを処分庁または審査庁に義務付けているのである。
    行政庁は申立てがあった場合には何らかの応答をすべき義務を負う。申立てが要件を満たさない場合には却下し、要件を満たした適法な申立てについては審理し、裁決・決定を行う。これを要件審理という。
    具体的には、行政庁による処分または不作為が存在するか、当該不服申立ては当事者能力と当事者適格のある者が、その不服申立てを処理する権限のある行政庁に対して、不服申立て期間内に行われたものであるか、の確認である。たとえ申立てが要件を満たさない不適法なものであっても、補正が可能であれば行政庁は補正を命じなければならないのは前述の通りである。補正を命ぜずに申立てを却下したのなら、その却下裁決は違法となり、結果取消うべき瑕疵を帯びる。
    上記のように、不服申立てには一定の申立て期間が定められている。これを徒過した場合、もはや不服申立てをすることが不可能となる(行政行為の不可争力を参照)。
  • 第22条(弁明書の提出)
    審査請求の場合、審査庁は処分庁に対して弁明書の提出を求め、争点を明らかにすることができる。
    弁明書は、正副2通提出し、副本を審査庁が審査請求人に送付する。ただし、審査請求の全部を容認すべきときは、この限りでない。
  • 第23条(反論書の提出)
    弁明書が提出された場合、これの副本が申立人に送付される。申立人はこれを受けて反論書を提出することができる。
  • 第24条(参加人)
    審査庁に許可を得て、利害関係人が審理に参加することができる。こうして審理に参加した者を参加人という。

審理[編集]

  • 審理原則
    • 書面審理主義
      審理は、原則として書面によって行われる(第25条)。これは迅速で簡易な処理を行うためであり、書面審査主義と言われる。ただし、申立てがあったときは、口頭で述べる機会を与えなければならない。
    • 職権主義
      行政庁は職権によって証拠調べを行う。つまり、申立人の主張しない理由等も独自に調査した上で審理を行うことができる。これは職権主義といわれ、証拠調べは職権主義に則り、審査庁の職権によって行われる。ここでいう「証拠調べ」とは、参考人の陳述や鑑定、書類その他の物件の提出要求、検証、当事者の審尋を指し、職権によって行われる証拠調べのことを職権証拠調べという。やはり迅速・簡易な手続のために有効だが、裏を返せば審理の主導権は行政庁が握るということになり、恣意的な審理が行われるおそれもある。
    • 当事者主義
      そこで行審法は当事者主義的構造をも大幅に採用し、これら原則の欠点を補っている。
      具体的には、審査請求をした申立人や参加人は口頭で意見を述べる機会を与えるよう審査庁に請求することができるとした第16条の規定や審査請求人および参加人からの証拠提出権や証拠調べに立ち会う権利、提出された物権の閲覧請求権などが認められることなどである。
  • 第25条(審理の方式)
    書面審理が原則であるが、申立てがあったときは、審査庁は、申立人に口頭で意見を述べる機会を与えなければならない。
  • 第26条(証拠書類等の提出)
    審査請求人又は参加人は、証拠書類又は証拠物を提出することができる。
  • 第27条(参考人の陳述及び鑑定の要求)
    審査庁は、審査請求人もしくは参加人の申立てにより又は職権で、適当と認める者に、参考人としてその知っている事実を陳述させ、又は鑑定を求めることができる。
  • 第28条(物件の提出要求)
    審査庁は、審査請求人もしくは参加人の申立てにより又は職権で、書類その他の物件の所持人に対し、その物件の提出を求め、かつ、その提出された物件を留め置くことができる。
  • 第29条(検証)
    審査庁は、審査請求人もしくは参加人の申立てにより又は職権で、必要な場所につき、検証をすることができる。
  • 第30条(審査請求人又は参加人の審尋)
    審査庁は、審査請求人もしくは参加人の申立てにより又は職権で、審査請求人又は参加人を審尋することができる。
  • 第33条(処分庁からの物件の提出及び閲覧)
    審査請求人又は参加人は、審査庁に対し、処分庁から提出された書類その他の物件の閲覧を求めることができる。この場合において、審査庁は、第三者の利益を害するおそれがあると認めるとき、その他正当な理由があるときでなければ、その閲覧を拒むことができない。審査庁は閲覧について、日時及び場所を指定することができる。
  • 第34条執行停止
    不服申立による手続が開始されても、問題とされている行政庁の処分は停止しないのが原則である。
    審査請求人の申立てにより、審査庁は重要な損害を避けるため緊急の必要があると認めるときは執行停止をしなければならない。ただし、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、処分の執行もしくは手続の続行ができなくなるおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、この限りでない。
    • 審査庁が、処分庁の上級行政庁である場合、必要があると認めるときは、審査請求人の申立てにより又は職権で、執行停止をすることができる。
    • 審査庁が、処分庁の上級行政庁以外の機関である場合、必要があると認めるときは、審査請求人の申立てにより、処分庁の意見を聴取したうえ、執行停止をすることができる。職権での執行停止はできない。
  • 第35条(執行停止の取消し)
    執行停止後、執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼし、又は処分の執行もしくは手続の続行を不可能とすることが明らかとなったとき、その他事情が変更したときは、審査庁は、その執行停止を取り消すことができる。
  • 第36条(手続の併合又は分離)
    審査庁は、必要があると認めるときは、数個の審査請求を併合し、又は併合された数個の審査請求を分離することができる。
  • 第37条(手続の承継)
    審査請求人が死亡したときは、相続人その他法令により審査請求の目的である処分に係る権利を承継した者は、審査請求人の地位を承継する。
    審査請求の目的である処分に係る権利を譲り受けた者は、審査庁の許可を得て、審査請求人の地位を承継することができる。
  • 第38条(審査庁が裁決をする権限を有しなくなつた場合の措置)
    審査庁が審査請求を受理した後法令の改廃により当該審査請求につき裁決をする権限を有しなくなったときは、当該行政庁は、審査請求書又は審査請求録取書及び関係書類その他の物件を新たに当該審査請求につき裁決をする権限を有することになった行政庁に引き継がなければならない。この場合においては、その引継ぎを受けた行政庁は、すみやかに、その旨を審査請求人及び参加人に通知しなければならない。
  • 第39条(審査請求の取り下げ)
    審査請求人は、裁決があるまでは、いつでも審査請求を取り下げることができる。この取り下げは書面でしなければならない。

手続の終了[編集]

審査請求などの不服申立ての審理は、申立人による申立ての取下げか、審査庁による裁決または決定によって終了する。 裁決とは、審査請求または再審査請求に対する裁断行為をいい(第40条)、決定とは異議申立てに対する裁断行為をいう(第47条)。 裁決・決定には、その内容に応じて却下、棄却、認容の3つに分類される。請求人、申立人の不利益に当該処分を変更することはできない、とする不利益変更禁止の原則がある(第40条第5項、第47条第3項)。

裁決[編集]

裁決はその実効性を確保するため、他の行政機関に対する拘束力をもつ(第43条)。また、裁決を職権によって変更することはできない。これは伝統的に行政行為の不可変更力と言われてきたものである。

  • 第40条(裁決)
  • 第41条(裁決の方式)
    1. 裁決は、書面で行ない、かつ、理由を附し、審査庁がこれに記名押印をしなければならない。
    2. 審査庁は、再審査請求をすることができる裁決をする場合には、裁決書に再審査請求をすることができる旨並びに再審査庁及び再審査請求期間を記載して、これを教示しなければならない。
却下・棄却[編集]

却下は、不服申立てが要件を満たさず、不適法であった場合に行われる。つまり要件審理の段階で裁断されるので、申立ての内容については審理されない。これに対して棄却は、不服申立ての内容を審理したものの申立てを認めるべき理由がない場合に行われる。

ただし、申立ての言い分が正しいと判断しつつも、それを棄却する場合がある。これを事情裁決という(第40条第6項)。つまり、処分が違法又は不当ではあるが、これを取り消し又は撤廃することによって公の利益に著しい障害を生ずる場合には、諸般の事情を考慮して請求を棄却することができるのである。ただしこの場合、審査庁は裁決で当該処分が違法又は不当であることを宣言しなければならない。

認容[編集]

不服申立てに理由があると認められる場合を認容という。その対象が処分についてのものか、事実行為についてのものか、不作為についてのものかに応じて規定が設けられている。処分についての審査請求が認容された場合、審査庁は裁決によって処分の全部または一部を取り消し、さらには審査請求人のために処分の内容を変更する。事実行為に対する審査請求の場合、その全部または一部を撤廃すべきことを命じ、裁決によってそのことを宣言する (40条3項)。

不作為に対する審査請求が認容された場合、審査庁は不作為庁に対して何らかの行為をすべきことを命じ、そのことを宣言する(第51条 3項)。「何らかの行為をすべきことを命ずる」とはいうものの、その内容については争いがある。一つは不作為庁に事務処理促進を命じるにとどまるとする説であり、もう一つはそれだけでなく特定の処分をすべき旨を命じることもできるとする説である。

再審査請求が認容された場合は審査請求が認容された場合とほぼ同様であるが、再審査請求を却下・棄却した裁決に違法や不当の瑕疵があっても従来までの処分に瑕疵がない限り、それが維持される(第55条、裁決)。公示は、掲示日の翌日から起算して2週間が経過した時に裁決書の謄本の送付があったとみなす(第42条、裁決の効力発生)。

決定[編集]

異議申立てが認容された場合にも、同様に異議申立ての対象が処分であるか、事実行為であるか、不作為であるかに応じて異なった規定がある。その内容は審査請求の場合とほぼ同様である(第47条第3項、第4項)が、不作為については異なった扱いがなされている。つまり不作為に対する異議申立てにおいては、申立てのあった日の翌日から起算して20日以内に不作為庁は申請に対する何らかの行為をするか、書面で不作為の理由を示さなければならない(第50条第2項)。こうした制度が設けられたのは不作為庁がすぐさま判断を提示すべきという趣旨からである。よって「何らかの行為」は申請を拒否するという判断であってもよいが、例えば「検討の上、あらためて連絡する」といったように判断を先延ばしにする行為はここでいう「何らかの行為」には含まれない。

事実行為を除く処分についての異議申立てが理由があるときは、処分庁は、決定で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する(第47条 3項)。

異議申立て (改正後は審査請求に一元化され、異議申立ては廃止)[編集]

  • 審査請求に関する規定の準用(第48条
    • 第14条(審査請求期間)1項本文を除く
    • 第15条(審査請求書の記載事項)3項を除く
    • 第16条(口頭による審査請求)
    • 第19条(誤つた教示をした場合の救済)
    • 第21条(補正)
    • 第24条(参加人)
    • 第25条(審理の方式)
    • 第26条(証拠書類等の提出)
    • 第27条(参考人の陳述及び鑑定の要求)
    • 第28条(物件の提出要求)
    • 第29条(検証)
    • 第30条(審査請求人又は参加人の審尋)
    • 第31条(職員による審理手続)
    • 第32条(他の法令に基づく調査権との関係)
    • 第34条(執行停止)3項を除く
    • 第35条(執行停止の取消し)
    • 第36条(手続の併合又は分離)
    • 第37条(手続の承継)
    • 第38条(審査庁が裁決をする権限を有しなくなつた場合の措置)
    • 第39条(審査請求の取下げ)
    • 第40条(裁決)6項
    • 第41条(裁決の方式)2項を除く
    • 第42条(裁決の効力発生)
    • 第44条(証拠書類等の返還)
  • 決定
    処分庁は、審査請求をすることもできる処分に係る異議申立てについて決定をする場合には、異議申立人が当該処分につきすでに審査請求をしている場合を除き、決定書に、当該処分につき審査請求をすることができる旨並びに審査庁及び審査請求期間を記載して、これを教示しなければならない(第47条5項)。

不作為についての不服申立て[編集]

不作為についての不服申立ては、不作為状態が継続している限り認められ、期間の制限はない。

  • 第7条(不作為についての不服申立て)
    行政庁の不作為については、当該不作為に係る処分その他の行為を申請した者は、異議申立て又は当該不作為庁の直近上級行政庁に対する審査請求のいずれかをすることができる(自由選択主義)。
    不作為庁が主任の大臣又は宮内庁長官若しくは外局若しくはこれに置かれる庁の長であるときは、異議申立てのみできる。
  • 第50条(不作為庁の決定その他の措置)
    不作為についての異議申立てが、不適法であり却下する以外は、申立てのあった日の翌日から起算して20日以内に行為をするか、理由を示さなければならない。
  • 第51条(審査庁の裁決)
    不作為についての審査請求が理由があるときは、審査庁は、当該不作為庁に対しすみやかに申請に対するなんらかの行為をすべきことを命ずるとともに、裁決で、その旨を宣言する。
  • 第52条(処分についての審査請求に関する規定の準用)

再審査請求[編集]

  • 第8条(再審査請求)
    例外的な制度であり、審査請求の裁決を経たけれどもその裁決についてなお不服がある場合に行われる不服申立てである。再審査請求は本条第1項に掲げられた事由がある場合にのみ行うことができるという列記主義を採用している。
    具体的には
    1. 法律・条例に再審査請求をすることができる旨の定めがあるとき。
    2. 審査請求をすることができる処分につき、その処分をする権限を有する行政庁(原権限庁)がその権限を他に委任した場合において、委任を受けた行政庁がその委任に基づいてした処分に係る審査請求につき、原権限庁が審査庁として裁決をしたとき。
    列記主義を採用した理由としては、審査請求の裁決に不服があるのならば重ねて行政に判断を求めるのではなく、裁判を提起して司法審査を受けるべきとの考えがある。再審査請求の対象は審査請求の裁決に限らず、原処分についても対象とすることができる。
  • 第53条(再審査請求期間)
    再審査請求期間は、審査請求についての裁決があったことを知った日の翌日から起算して30日以内にしなければならない。
  • 第54条(裁決書の送付要求)
    再審査庁は、再審査請求を受理したときは、審査庁に対し、審査請求についての裁決書の送付を求めることができる。
  • 第55条(裁決)
    審査請求を却下し又は棄却した裁決が違法又は不当である場合においても、当該裁決に係る処分が違法又は不当でないときは、再審査庁は、当該再審査請求を棄却する。
  • 第56条(審査請求に関する規定の準用)

教示[編集]

行政不服審査法において特徴的な制度が教示である。これは行政庁が処分をする際に、不服申立てができる場合には、その処分を受ける相手方に対して、不服申立てをする手続を教えなければならないという制度である。

この制度が設けられた趣旨は国民の権利利益の救済を実質的に保障することであり、それは行政不服審査法の目的でもある。確かに不服申立ての制度は行政不服審査法を通読すれば(少なくとも申立てが可能であるということは)誰でも分かることである。しかしそうした行為を一般市民に要求するのではなく、行政の側から積極的に行政不服審査法の制度活用を国民に呼びかけるのがこの教示制度であり、行政不服審査法の目的をよく表している。

  • 第18条(誤つた教示をした場合の救済)
    審査請求をすることができる処分につき、処分庁が誤って審査庁でない行政庁を審査庁として教示した場合、処分庁が誤って異議申立てをすることができる旨を教示した場合において、その教示された行政庁に書面で審査請求・異議申立てがされたときは、当該行政庁は、すみやかに、審査請求書の正本及び副本を処分庁又は審査庁に送付し、かつ、その旨を審査請求人に通知しなければならない。審査請求書の正本又は異議申立書若しくは異議申立録取書が審査庁に送付されたときは、はじめから審査庁に審査請求がされたものとみなす。
  • 第19条(誤つた教示をした場合の救済)
    行政庁が誤って、法定期間よりも長い期間を教示したために、法定期間を徒過して不服申立てが行われた場合は、当該不服申立ては法定期間内にされたものとみなされる。
  • 第20条(異議申立ての前置)
  • 第46条(誤つた教示をした場合の救済)
  • 第41条2項(裁決の方式)
    審査庁は、再審査請求をすることができる裁決をする場合には、裁決書に再審査請求をすることができる旨並びに再審査庁及び再審査請求期間を記載して、これを教示しなければならない。
  • 第57条(審査庁等の教示)
    処分の相手方に対し、不服申立てをすることができるということ、申立てをすべき行政庁、申立期間を原則として書面によって通知すべきとされている。また、利害関係人から、教示を求められたときは、教示しなければならないが、処分を口頭でする場合は、教示する必要はない(1項)。
    地方公共団体その他の公共団体に対する処分で、当該公共団体がその固有の資格において処分の相手方となるものについては、適用しない(4項)。これらの団体は、不服申立てに関する専門的な知識を持っているのが当然だからである。
  • 第58条(教示をしなかつた場合の不服申立て)
    教示が行われなかった場合、処分を受けた当事者が、例えば審査請求をすべき審査庁ではなく当該処分を行った処分庁に審査請求をしてくるといった事態も考えられる。本来ならば不適法な不服申立てであるとして却下裁決がなされるところだが、そのような申立てが行われてしまった責任は教示すべき義務を怠った行政庁にある。よってこの場合には不服申立てを受けた行政庁はその不服申立書を適法な審査庁へ送付しなければならない。

脚注[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]