光の花の庭

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光の花の庭
Flower Fantasy
光の花の庭「フラワーキャッスル」
光の花の庭「フラワーキャッスル」
イベントの種類 イルミネーション
開催時期 10月下旬 - 2月上旬[1]
初回開催 2002年[注 1]
開催時間 15:30 - 20:30[注 2]
会場 あしかがフラワーパーク
主催 株式会社足利フラワーリゾート
運営 株式会社足利フラワーリゾート
来場者数 60万人[8]
最寄駅 JR両毛線あしかがフラワーパーク駅[7]
直通バス なし
駐車場 340台(無料)[注 3]
公式サイト
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光の花の庭(ひかりのはなのにわ)は、栃木県足利市にある、あしかがフラワーパークで毎年開催されるイルミネーションイベント。夜景観光コンベンション・ビューローの認定する日本夜景遺産(ライトアップ夜景遺産)[10]関東三大イルミネーションの1つ[11][12][13]。2021年で20周年を迎えた[4]

使用する電球は年々増加しており[6]、2021年には500万球を使用した[3]。装飾は花の栽培を担当するあしかがフラワーパークの職員が企画し[8][14]、すべて職員が手作業で設置している[8][15]

特徴[編集]

イベント名は「光の花の庭」であるが[16]、「あしかがフラワーパークのイルミネーション」とも呼ばれる[13]。名称は年によって多少変わることがあり、2021年度の正式なイベント名称は「光の花の庭 Flower Fantasy 2021-2022」である[17]

みんなの地球

フジをはじめとした、さまざまな植物のあるあしかがフラワーパークを会場とし、カラフルな光で植物をライトアップする[10]。園内全域をイルミネーションで彩る、関東最大級のイルミネーションイベントである[12]。イルミネーションの演出は、子供たちに地球宇宙環境の大切さを知ってほしい、という趣旨で行っており、老若男女を問わず楽しめるように工夫している[16]専門家からの評価も高く、夜景観光コンベンション・ビューローのイルミネーションアワード(夜景鑑賞士らの投票で決定)のイルミネーション部門では、2013年[18][19]と2015年[20]に2位[注 4]、2014年[1]と、2016年から2021年までの6年連続で1位を獲得している[7]

例年、10月下旬から2月上旬まで開催される[1]。イルミネーション開催期間中は、昼の部と夜の部の2部営業となり[注 5]、イルミネーションは15時30分からの夜の部に開催する[9]。ただし、イルミネーションが点灯するのは16時30分からである[9]。終了時刻は20時30分を標準とし、休日等に21時または21時30分まで延長営業する[9]

会期を3つに分け、それぞれのテーマに沿った演出が行われる[21][9]。2021年のテーマは次の通り[9]

  • 10月16日 - 11月中旬:光と花のコラボレーション 〜光とアメジストセージの融合〜
  • 11月下旬 - 12月下旬:フラワーパークのクリスマス 〜クリスマスファンタジー〜
  • 元旦 - 2月14日:ニューイヤーイルミネーション 〜光と冬咲きボタンの競演〜

かつては、あしかがフラワーパークの冬季の来園者は極端に少なかった[22]が、光の花の庭の開催効果で、2019年には1年の来園者数の3分の1が光の花の庭の来園者で占めるほどになった[8]栃木県庁も光の花の庭の集客力に注目し、春節時期の中国人観光客を呼び込もうと、湯西川温泉かまくら祭日光市)と合わせて中国台湾へ売り込みを行っている[23]

イルミネーションスポット[編集]

イルミネーションは9.4ヘクタールある[24]園内全域で行われ[12]、順路の設定がないので、来園者は自由に観覧して回ることができる[24]。毎年訪れるリピーターが多いため[14]、園では毎年新たな目玉となる装飾を登場させている[6]。イルミネーションは、普段は植物の世話を担当する職員が企画し、従業員総出で飾り付ける[14]。担当者は、歌番組のスタジオセットや街中での光の使い方を観察し、色の組み合わせや配置間隔を考え、イルミネーションに生かしている[8]

イルミネーションに使用する電球(発光ダイオードを含む)の数は、回を追うごとに増加している[6]。2002年は4万球(朝日新聞[22]または6万球(下野新聞[3]であったが、2004年に30万球[25]、2005年に50万球[5]、2009年に100万球[6]、2010年に150万球[11]、2013年に210万球[18][26]、2015年に300万球[24]、2017年に400万球[14]、2018年に450万球[13]、2021年には500万球に増えた[3]。イルミネーションの評判が上がるにつれて、従業員が「もっと増やそう」と趣向を凝らした結果、数が増えていった[6]。このため、イルミネーションの準備時期も早まり、2009年時点では夏の終わりごろから始めていた[6]が、2017年には園のシンボルである大フジの見頃が過ぎた直後の6月上旬から開始した[15]

園内各所にイルミネーションスポットを設置し、それぞれのスポットにテーマを設けている[26]。例えば、スノーワールド、日本の四季「こころの故郷」、みんなの地球[26]、光のピラミッド、イルミネーションタワー、レインボーマジックなどがある[7]。フジの木には、それぞれの木が咲かせる花の色をイメージしたイルミネーションを点灯させ[12]、特に園のシンボルである「奇蹟の大藤」が多くの来園者を魅了する[8]。フジのイルミネーションは毎年の定番であるが、より本物のフジの花に近付けられるように、色合いを調節したり、発光ダイオードを花びら形にしたりと、微調整を施している[14][8]薄暮の時間帯は、フジの枝がシルエットとして視認でき、発光ダイオードの光の房がフジの花のように枝から垂れ下がっているように見える[13]

歴史[編集]

あしかがフラワーパークのイルミネーションは、当時園長を務めた樹木医の塚本こなみが、夜のレストランに来店した客を楽しませようと、5頭のトナカイの形の電飾を設置したのが始まりである[6]。イベントとしての始まりは2002年のことで[注 1]、園内の花を光で再現した[11]。同年のイベント名称は「光の祭典」で、使用した電球は4万球[注 6]クリスマスを意識した演出で、11月に始まり12月28日に終了した[22]。12月中の入園料は無料であった[22]

2004年は「光の花の庭」と称し、電球と発光ダイオードを合わせて30万球を使用して、高さ12メートルの光のクリスマスツリーやフジ棚の光のトンネルなどの装飾が為された[25]。入園料は大人200円であった[25]。2005年は斜面にカシオペア座の装飾を施し、足利市民や幼稚園児に飾り付けてもらった電飾でコンテストを開催した[5]。2009年は幅9メートル×長さ40メートルの「天空のお花畑」を目玉とし、入園料は大人500円だった[6]

2010年には150万球を使用し、30万人が訪れた[11]。2011年は東日本大震災からの復興を願って、虹のイルミネーションを導入し、全150万球のうち120万球を発光ダイオードにするとともに電力の一部を自家発電でまかなうなど、節電にも配慮した[27]。2012年10月に、夜景観光コンベンション・ビューローから関東三大イルミネーションに認定され[11]、2017年に同団体から「植物園ならではの独創性」が評価され、日本三大イルミネーションに選出された[8]。日本三大イルミネーションは、同年10月20日に足利市民プラザで開かれた夜景サミットの場で発表され、参加者は閉幕後に光の花の庭を鑑賞した[28]

2019年は台風19号が襲来し、見頃を迎えていたアメジストセージ30万本の半数が被害受けたほか、すでに飾り付けが終わっていた400万球の一部が水没し、泥をかぶった[29]。従業員150人が総出で発光ダイオードの交換・整備を行った結果[30]、同年の光の花の庭は、予定より1週間遅れで開催できた[31]。2020年は新型コロナウイルス感染症が流行していたことから、しばらく夜間の開園を自粛していたが[32]、光の花の庭は開催し、医療従事者への感謝を示すため[32]バラの花を青く点灯する演出を取り入れた[33]。しかし会期中の2021年1月に栃木県が緊急事態宣言の対象区域となったことから、営業時間を平日30分、休日1時間短縮した[34]

2021年は、足利市制100周年と光の花の庭20周年を兼ねて、足利学校鑁阿寺(ばんなじ)など足利市街地で「足利灯り物語」を開催した[35]。この催事は、あしかがフラワーパークが協力して、足利学校などで花手水和傘をライトアップするというものであった[35]。花手水はあしかがフラワーパーク内にも設置された[7]

交通[編集]

イルミネーション点灯中のあしかがフラワーパーク駅

会場の最寄り駅はJR両毛線あしかがフラワーパーク駅であり、会期中は駅に近接した、あしかがフラワーパークの西ゲートが開放される[9]。駅はあしかがフラワーパークのイルミネーションを意識し、正面のガラス壁面に発光ダイオードが取り付けられている[36]。両毛線を行く列車の車窓からイルミネーションが見えるので、車内で携帯電話を使って写真撮影する高校生もいる[24]

東日本旅客鉄道は、イルミネーションに合わせた臨時列車を運行する[37][38]。例えば、2019年度は12月中の7日間、大宮駅足利駅の間を1往復する快速「足利イルミネーション」および1月4日1月11日日立駅足利駅の間を1往復する快速「あしかが光の花の庭号」を[37]、2021年は12月11日12月18日12月25日(すべて土曜日)に立川駅と足利駅の間を1往復する快速「足利イルミネーション」を設定した[38]。足利駅や東武足利市駅から無料シャトルバスが運行されていた時期もあった[24]

フラワーパークの駐車場は通常340台(うち大型車40台)であるが、会期中は最大6,000台の臨時駐車場が用意され、足利駅周辺にも臨時観光駐車場が確保される[9]。周辺では渋滞が発生し、交通規制がかかる日もある[9]。上記のあしかがフラワーパーク駅は、光の花の庭の開催と春の大フジの開花の際に、隣接する佐野市にまで影響が及ぶほどの深刻な渋滞が発生することが、設置の契機となった[39]

脚注[編集]

注釈
  1. ^ a b あしかがフラワーパークは、公式サイトで2021年の開催を「今年で20回目」と表記し[2]、下野新聞も2002年に始まったと報じている[3]。しかし、足利経済新聞は2001年に始まったと報じており[4]、2005年の朝日新聞の記事に「花数も客数も極端に減る冬場の対策として4年前に始めた。」という記述がある[5]。(朝日新聞は2009年の記事では2002年に始めたと記している[6]。)
  2. ^ イルミネーションの点灯は16:30から、終了時刻は変動あり[7]
  3. ^ 会期中は最大6,000台分の臨時駐車場が設けられ、足利駅周辺にも臨時観光駐車場が確保される[9]
  4. ^ 2位になった2013年と2015年は、どちらもなばなの里三重県)が1位を獲得した[18][20]
  5. ^ 昼の部と夜の部の間には30分間の休園時間があり、昼の部の来園者がイルミネーションを見るには、一度退園して、夜の部に再入園する必要がある[9]。昼の部と夜の部は料金が異なり、昼の部から夜の部に再入園する場合は別途、夜の部の料金を支払う[9]
  6. ^ 朝日新聞の2002年当時の報道による[22]。2021年の下野新聞の記事によると6万球[3]
出典
  1. ^ a b c 栃木県 2016, p. 184.
  2. ^ 光の花の庭 Flowe Fantasy 2021-2022”. あしかがフラワーパーク. 2021年12月14日閲覧。
  3. ^ a b c d e 500万球で彩る“光の庭” あしかがフラワーパーク”. 下野新聞 (2020年10月22日). 2021年12月14日閲覧。
  4. ^ a b あしかがフラワーパークでイルミネーション開幕 20周年迎え特別企画も”. 足利経済新聞 (2021年10月23日). 2021年12月12日閲覧。
  5. ^ a b c "「光のフジ棚」今年は輝き増す あしかがフラワーパーク 電飾50万個 昨冬の倍に"朝日新聞2005年12月1日付朝刊、栃木版30ページ
  6. ^ a b c d e f g h i 佐藤孝則「光の花100万 冬の風物詩 あしかがフラワーパーク」朝日新聞2009年11月20日付朝刊、群馬版28ページ
  7. ^ a b c d e あしかがフラワーパーク「光の花の庭〜フラワーファンタジー2021〜」〔足利市〕【イルミネーション】”. とちぎ旅ネット. 栃木県観光物産協会. 2021年12月14日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h 滝沢卓"咲かせる大藤の「光の花」 {約30万輪}"朝日新聞2019年1月21日付朝刊、夕刊be4ページ
  9. ^ a b c d e f g h i j k 関東最大級500万球のイルミネーション「光の花の庭 フラワーファンタジー 2021」特集”. 足たび 学び舎のまち足利. 足利市観光協会. 2021年12月12日閲覧。
  10. ^ a b 丸々・丸田 2012, p. 100, 136.
  11. ^ a b c d e 丸々・丸田 2012, p. 136.
  12. ^ a b c d 栃木県 2016, p. 183.
  13. ^ a b c d 小杉 2019, p. 147.
  14. ^ a b c d e 北崎礼子「寒い冬 カラフル まるで本物 電飾の花 あしかがフラワーパーク」朝日新聞2017年12月16日付朝刊、栃木版25ページ
  15. ^ a b 礒野佑子「ふるさとへ 人・景色に感動」朝日新聞2018年3月16日付朝刊、28ページ
  16. ^ a b 丸々・丸田 2012, p. 100.
  17. ^ 光の花の庭 Flower Fantasy 2021-2022”. あしかがフラワーパーク. 2021年12月14日閲覧。
  18. ^ a b c 友田雄大「足利と奥日光 夜景うっとり 全国ランク トップ10入り」朝日新聞2013年11月20日付朝刊、栃木版32ページ
  19. ^ 「足利 フラワーパーク夜景2位 イルミネーション部門 湯元温泉は総合10位」読売新聞2013年12月21日付朝刊、栃木5、37ページ
  20. ^ a b 寺下真理加「闇破る輝き 名所うまれる 昭和56年(1981年) 札幌でイルミネーション」朝日新聞2015年10月31日付、夕刊be4ページ
  21. ^ 「イルミネーション 豪華さ競う 期間が長期化/プロがデザイン」読売新聞2017年1月10日付朝刊、生活面A、15ページ
  22. ^ a b c d e "光源4万個、幻想世界へ 足利・観光農園「光の祭典」"朝日新聞2002年11月28日付朝刊、栃木1、31ページ
  23. ^ 「春節祝う観光地 訪日客照準 祭りやイベント」読売新聞2017年1月9日付朝刊、栃木1、27ページ
  24. ^ a b c d e 佐藤孝則「300万球演出 輝き進化 電飾 あしかがフラワーパーク」朝日新聞2015年11月6日付朝刊、栃木版28ページ
  25. ^ a b c 「聖夜へ光の競演 各地でイルミネーション」朝日新聞2004年12月21日付朝刊、栃木2、34ページ
  26. ^ a b c 増田政幸「見頃の花 季節ごと満喫 あしかがフラワーパーク(足利市)」2013年11月23日付朝刊、栃木F、25ページ
  27. ^ 「希望に輝くフジ 足利」読売新聞2011年12月17日付朝刊、栃木北29ページ
  28. ^ "日本三大イルミに「光の花の庭」認定 あしかがフラワーパーク"読売新聞2017年10月21日付朝刊、栃木2、32ページ
  29. ^ 北崎礼子「秋の観光 打撃深刻 やな・遊覧船・自然研究路… ●足利」朝日新聞2019年10月18日付朝刊、栃木版25ページ
  30. ^ "打撃の観光業「希望の光」 あしかがフラワーパーク 電球が水没 総出で復旧"読売新聞2019年11月4日付朝刊、栃木1、23ページ
  31. ^ 江口和貴「きらめく花々」朝日新聞2020年1月10日付朝刊、社会面31ページ
  32. ^ a b "フラワーパーク 光の花が「満開」 栃木・足利"朝日新聞2020年10月21日付朝刊、群馬版18ページ
  33. ^ 「光の大フジ 咲き誇る フラワーパーク」2020年10月18日付朝刊、栃木1、31ページ
  34. ^ "収束願い「我慢するしか」 緊急事態宣言 商業施設 時短や休業"読売新聞2021年1月15日付朝刊、栃木1、27ページ
  35. ^ a b "銘仙の灯りで照らす文化財 「足利灯り物語」21日まで"朝日新聞2021年11月17日付朝刊、栃木版23ページ
  36. ^ "「あしかがフラワーパーク駅」お目見え"2018年3月25日付朝刊、栃木1、33ページ
  37. ^ a b 冬の臨時列車運転のご案内”. 東日本旅客鉄道株式会社高崎支社 (2019年10月18日). 2021年12月13日閲覧。
  38. ^ a b JR東「足利イルミネーション」、2021年12月に6本運行 立川〜足利間”. レイルラボ (2021年12月2日). 2021年12月13日閲覧。
  39. ^ 「両毛線足利-富田駅間に新駅設置 18年春までに開業 市とJR側が検討」朝日新聞2016年12月10日付朝刊、栃木版25ページ

参考文献[編集]

  • 小杉国夫『とちぎの絶景』下野新聞社、2019年5月1日、173頁。 
  • 丸々もとお、丸田あつし『最新版 日本夜景遺産』河出書房新社、2012年10月30日、147頁。ISBN 978-4-309-27361-7 
  • とちぎの百様 大図鑑』栃木県、2016年3月、214頁。 NCID BB2120745X 全国書誌番号:22749815

関連項目[編集]

外部リンク[編集]