マイル修行

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マイル修行(マイルしゅぎょう)とは、航空会社の運営するマイレージサービスに沿って多頻度客へ提供される特典を目的とした、有償航空券による旅行の俗称[1]。そのような旅行者は短期間に多回数飛行機に乗り続ける上、体力と時間と金銭を消耗するなど、心身と経済的な苦痛も伴うため、僧侶の修行に例えられ、マイル修行僧と呼ばれる[2][3][4][5]

英語では、マイルやポイント、ステータスなどの最大化をもっぱらの目的として計画、実行される航空機による旅行を「マイレージ・ラン (a milage run)」と称している[6]

概要[編集]

1990年代中頃、当時の円高を反映して、航空券が割安になって、気軽に海外旅行に行く人が増えてきたことを背景に、ユナイテッド航空ノースウエスト航空など、アメリカ合衆国の航空会社が、日本語でマイレージサービスの情報を提供するようになった。

これらのアメリカ系航空会社では、アジア圏内の「自社便特典航空券」を、比較的少ないマイル数で提供しており、ビジネスクラスファーストクラスでは、現金での価格設定に比べてメリットが大きかった(例: 日本~ニューヨークをエコノミークラス格安航空券で2往復すれば、自社の運航するアジア都市間(東京-バンコクなど)を、ビジネスクラス特典航空券で往復することができた)。

この点に着目した旅行者達の間で、近距離特典旅行の獲得を目的として、長距離の太平洋路線を、閑散期の格安運賃で利用することが流行した。エコノミークラスでの長距離旅行は、時間的・身体的に負担がかかり、しかもその旅行の目的地で、観光や用事には大きく執着せず、その搭乗過程で得られたマイルや上級会員資格に「大きな価値を見出す」という、それまでにない旅行のスタイルが出現した[1][2]

1997年平成9年)になると、日本航空全日本空輸日本エアシステムが、それまでのポイントプログラムを改良して「マイレージサービス」を始めると、日本国内線でも、同様の行為が見られるようになった[1]。インターネット上には「マイル修行僧」が情報交換する電子掲示板が幾つもあり、かなりの人数がいるとされる[3]

目的[編集]

  • 総飛行距離に応じてマイレージと交換できる無料航空券や、上級座席(ビジネスクラスなど)へのアップグレード権利[2]
  • 年間飛行距離や年間飛行回数に応じて設定される上級会員資格(JGCSFCなど)の取得[2][4]
  • 得られた上級会員資格の維持[2]

手段[編集]

  • 遠距離の往復搭乗。東京-ワシントン間などの遠距離行路であっても、折り返し便で帰国するなど[1]
  • 経由地点を増やし、搭乗回数を増やす。大阪→札幌の場合でも、大阪→仙台、仙台→札幌とするなど[3]
  • 搭乗時間が短い路線を数往復して搭乗回数を増やす。大阪-但馬(片道35~40分)往復など[7]
  • 周遊飛行をする。札幌→函館→釧路→札幌など[3]

航空会社から見たマイル修行[編集]

  • 当初は航空会社がマイル修行を認識しておらず、予約時に「折り返し便でいいのですか」と聞いてきたり、予約センターが「間違いではありませんか」と問い合わせの電話をかけてくることがあった[1]
  • 2006年、当時の日本航空は、「どのような形であれ、搭乗していただけるのはありがたく、条件を満たせば特典は差し上げる」とし、修行僧の存在を歓迎する意向を明らかにしている[3]
  • 2008年、全日本空輸は搭乗回数によるステータスアップを廃止した[4]。負担した運賃に見合ったステータスに改め、不公平感を無くすための改正であると全日空は報道したが[4]、短距離飛行で搭乗回数を稼ぐマイル修行対策ではないかとも言われた[4]
  • 2012年1月より、JALはJMBクリスタル・JMBサファイアなどへの到達基準として、新規に自社便でのポイント基準を設定し、他社運行便利用による資格獲得の条件が厳しくなった。FLY ONポイントの少なくとも半分を、JALグループ便利用で獲得していないと、ステータスアップができなくなった。回数でのステータスアップとなる場合も、少なくとも半分がJALグループ便で利用することが求められるようになった[8]
  • 2013年1月より、ANAはプラチナサービスおよびブロンズサービスへの到達基準として、新規に自社便でのポイント基準を設定し、他社運行便利用による資格獲得の条件が厳しくなった。プレミアムポイントの少なくとも半分をANAグループ便利用で獲得していないと、ステータスアップができなくなった。これまではANA以外のスターアライアンス加盟会社のみの利用であったとしても、ANAのプラチナサービスおよびブロンズサービスを利用することが可能であった[9]
  • 2014年以降はJAL、ANAともに特に低廉な運賃における積算率の引き下げや、ボーナスマイルの計算に際し積算率を加えるなど、本当に高額な運賃(普通運賃等)で搭乗しなければ大量のマイルを獲得することが難しくなるように改訂されている。
  • 2015年から2016年にかけてデルタ航空ユナイテッド航空アメリカン航空のアメリカ大手航空会社が相次いで自社のマイレージ加算基準を「飛行距離制」から「支払い金額制」へ改めた。(ただし、提携航空会社へマイレージ加算(例…AA便のマイレージをJALへ加算する)する場合や提携航空会社便を利用(例…ANA便のマイレージをUAへ加算する)する場合は従来通り「飛行距離制」となる。)
  • 近年は以上の例のように、ステータス獲得の抜け穴を埋める方向で制度が見直される傾向にある。

マイル修行僧の有名人[編集]

特記事項[編集]

  • 月刊エアライン別冊編集部の佐藤言夫編集長は、実利だけを考えると割に合わないが、ステータスを得た、という達成感が修行僧の動かすのではないかと論じ、山登りに似た感があるとした[4]
  • 航空アナリストの鳥海高太朗は、パラダイス山元の著書「パラダイス山元の飛行機の乗り方」(ダイヤモンド社)の巻末解説に、大人のゲームであり、ファーストクラス特典航空券は、その景品であるという内容の寄稿を行っている。また、その中において「(プレミアムパスを利用して、ひたすら飛行機に乗りまくると言うことは)理論上は可能だが、まさか実際に行動に移す人がいるとは思わなかった」とも記している。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e (つれづれ大分)乗り空、撮り空、マニアの世界 大空会主宰・宇都宮郁さん/大分県『朝日新聞』 2012年03月14日 西部地方版/大分 30頁 大分全県 写図有 (全1,112字)
  2. ^ a b c d e こちら特報部 特典目当て ひたすら搭乗 その名もマイル修行僧 例えば… 札幌から沖縄経由で東京へ 『中日新聞』 2006年06月04日 朝刊 25頁 特報2面 (全909字)
  3. ^ a b c d e 色即是空 マイル修行*新千歳←→羽田 丘珠→函館→釧路→新千歳…ひたすら搭乗*狙うは高特典*航空会社「大歓迎」2006年05月25日 北海道新聞夕刊全道 15頁 夕社 (全1,187字)
  4. ^ a b c d e f (ニュース圏外)飛びまくるヒトビト VIPを目指す「修行僧」『朝日新聞』2011年12月17日 東京朝刊 37頁 3社会 写図有 (全1,510字)。
  5. ^ 特集 激変! ポイントカード&電子マネー経済 (2/3)『週刊ダイヤモンド』2008年07月12日  44-58頁 (全6,538字) 
  6. ^ David Grossman (2005年11月14日). “The art and science of the mileage run”. USA Today. http://www.usatoday.com/travel/columnist/grossman/2005-11-11-grossman_x.htm 2006年9月26日閲覧。 
  7. ^ 但馬情報特急 - 但馬修行
  8. ^ [1]
  9. ^ NEW ANA MILEAGE CLUB

関連項目[編集]