ホモ・サピエンス

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ホモ・サピエンス
Cees de steentijdman2.jpg
近世ヨーロッパのホモ・サピエンス・サピエンスの男性。ホモ・サピエンス・サピエンスは分類学上のホモ・サピエンスに属する唯一の現生人類であり、旧人類と区別する場合には狭義のヒトを指す。
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svg
地質時代
0.195–0 Ma
更新世中期–現在
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
下綱 : Placentalia
: サル目 Primates
亜目 : 直鼻猿亜目 Haplorrhini
下目 : Simiiformes
上科 : ヒト上科 Hominoidea
: ヒト科 Hominidae
亜科 : ヒト亜科 Homininae
: ヒト族 Hominini
亜族 : ヒト亜族 Hominina
: ヒト属 Homo
: ホモ・サピエンス
H. sapiens
亜種 : 以下の†はすでに絶滅
ホモ・サピエンス・イダルトゥ
ホモ・サピエンス・サピエンス
ホモ・ネアンデルターレンシス?
ホモ・ローデシエンシス?
デニソワ人?
馬鹿洞人?
学名
Homo sapiens リンネ , 1758

ホモ・サピエンス英語: Homo sapiensラテン語で「賢い人間」を意味する)は、現生人類の属する学名である。ネアンデルタール人(ホモ・ネアンデルターレンシス)などのすでに絶滅した多くの旧人類もこれに含める。ヒト属の唯一の現存種である。

種の下位の亜種の分類では、現生人類をホモ・サピエンス・サピエンスとすることで、彼らの祖先だと主張されてきたホモ・サピエンス・イダルトゥと区別している。創意工夫に長け、適応性の高いホモ・サピエンスはこれまでに疑いようもなく、地球上で最も支配的な種として繁栄してきた。国際自然保護連合が作成した絶滅危惧種のレッドリストでは、「軽度懸念」(低危険種)とされている[1]

分類[編集]

「ホモ・サピエンス」という学名1758年カール・フォン・リンネによって考え出された[2]ラテン語名詞で「homō」(属格の「hominis」)は「人間」を意味する。

ホモ・サピエンスの亜種にはホモ・サピエンス・イダルトゥと唯一現存するホモ・サピエンス・サピエンスが含まれる。いくつかの情報源ネアンデルタール人(ホモ・ネアンデルターレンシス)も一亜種(ホモ・サピエンス・ネアンデルターレンシス)としている[3][4]。これと同様に、標本が発見されたホモ・ローデシエンシスもいくつかで一亜種(ホモ・サピエンス・ローデシエンシス)に分類されている。しかし、後の2つの亜種は科学者にあまり受け入れられていない。

起源[編集]

古人類学ではホモ・サピエンスの起源に関してアフリカ単一起源説多地域進化説英語版の2つの仮説があり、長年激しく対立してきたが、現在ではアフリカ単一起源説が主流になっている。多地域進化説は1988年[5]ミルフォード・H・ウォルポフ英語版[6]が人類の進化の流れを説明するために提唱した。これは更新世の始まりの250万年前から現在まで世界中の各地域で人類がそれぞれ独自に進化してきたとする説である。

人類が共通の祖先を持つという仮説は1871年にチャールズ・ダーウィンが著した『人間の由来英語版』の中で発表された。この説は古い標本に基づいた自然人類学上の証拠と近年のミトコンドリアDNAの研究の進展により、1980年代以降に立証されることになった。遺伝的な証拠および化石の証拠によると、非現生人類のホモ・サピエンスは20万年前から10万年前にかけてもっぱらアフリカで現生人類に進化した後、6万年前にアフリカを離れて長い年月をかけて世界各地に広がり、先住のネアンデルタール人やホモ・エレクトスなどの初期人類集団との交代劇を繰り広げた。

現生人類すべての起源が東アフリカにあるという説は科学界においてほぼ合意に近い状態になっている[7][8][9][10][11]。しかしながら、ネアンデルタール人のゲノムの解析(DNAシークエンシング)を行った研究チームはサハラ以南のアフリカ以外の起源を持つすべての現生人類がゲノムに1%から4%のネアンデルタール人のDNAを持つことを確認している。この研究は同時に、ヒトとネアンデルタール人が古代の遺伝系統を共有する別の理由があるかもしれないことを示唆している[12]。2012年8月に発表されたケンブリッジ大学の科学者による研究結果はこの結論に疑問を呈した。その代わりに、DNAの重複はネアンデルタール人と現生人類の双方の共通の祖先の名残りだと仮定している[13][14]

進化[編集]

ヒト属チンパンジーの共通祖先が分岐したのはおよそ200万-1,000万年前、ホモ・サピエンスとホモ・エレクトスの共通祖先が分岐したのはおよそ20万-180万年前と見られている。

現生人類はホモ・サピエンス種である。そして、そのうち唯一現存する亜種はホモ・サピエンス・サピエンスとして知られる。他の既知の亜種であるホモ・サピエンス・イダルトゥはすでに絶滅している[15]。一時期、ホモ・ネアンデルターレンシスと呼ばれて亜種に分類されていたネアンデルタール人は3万年前に絶滅している。遺伝学研究は現生人類とネアンデルタール人の共通祖先がおよそ50万年前に分岐したことを示唆する[16]

現生人類の最も古いおよそ195,000年前の化石エチオピアオモ遺跡英語版から発見されており、分子生物学の研究結果からすべての現生人類がおよそ20万年前のアフリカ人祖先集団に由来するとした証拠が示されている[17][18][19][20][21]。アフリカ人の遺伝的多様性に関する広範な研究から、14の「祖先集団クラスター」に由来するサンプリングされた113の様々な集団のうち、サン人の遺伝的多様性が最も高いことが判明している。また、この研究報告は南西アフリカのナミビアアンゴラの沿岸境界近くが現生人類の移動の起点だとしている[22][23]

直近15,000年のゲノムを解析した結果、ヒト個体群の自然淘汰が現在も作用を続けていることが判明している[24]

出典[編集]

  1. ^ a b Global Mammal Assessment Team (2008年). Homo sapiens. 2008 IUCN Red List of Threatened Species. IUCN 2008. 2015年10月22日閲覧。
  2. ^ Linné, Carl von (1758). Systema naturæ. Regnum animale. (10 ed.). pp. 18, 20. http://www.biodiversitylibrary.org/item/80764#page/28/mode/1up 2015年10月22日閲覧。. 
  3. ^ Hublin, J. J. (2009). “The origin of Neandertals”. Proceedings of the National Academy of Sciences 106 (38): 16022–7. Bibcode 2009PNAS..10616022H. doi:10.1073/pnas.0904119106. JSTOR 40485013. PMC 2752594. PMID 19805257. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=2752594. 
  4. ^ Harvati, K.; Frost, S.R.; McNulty, K.P. (2004). Neanderthal taxonomy reconsidered: implications of 3D primate models of intra- and interspecific differences. PMID 14745010. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14745010/ 2015年10月22日閲覧。. 
  5. ^ Wolpoff, MH; JN Spuhler; FH Smith; J Radovcic; G Pope; DW Frayer; R Eckhardt; G Clark (1988). “Modern human origins”. Science 241 (4867): 772–4. doi:10.1126/science.3136545. PMID 3136545. http://www.sciencemag.org/cgi/pdf_extract/241/4867/772. 
  6. ^ Wolpoff, MH; Hawks, J; Caspari, R (2000). “Multiregional, not multiple origins”. Am J Phys Anthropol 112 (1): 129–36. doi:10.1002/(SICI)1096-8644(200005)112:1<129::AID-AJPA11>3.0.CO;2-K. PMID 10766948. http://www3.interscience.wiley.com/journal/71008905/abstract. 
  7. ^ Hua Liu, et al. A Geographically Explicit Genetic Model of Worldwide Human-Settlement History. The American Journal of Human Genetics, volume 79 (2006), pages 230–237, quote: Currently available genetic and archaeological evidence is generally interpreted as supportive of a recent single origin of modern humans in East Africa. However, this is where the near consensus on human settlement history ends, and considerable uncertainty clouds any more detailed aspect of human colonization history.
  8. ^ Out of Africa Revisited - 308 (5724): 921g - Science”. Sciencemag.org (2005年5月13日). doi:10.1126/science.308.5724.921g. 2015年10月22日閲覧。
  9. ^ Nature. “Access : Human evolution: Out of Ethiopia”. Nature. 2015年10月22日閲覧。
  10. ^ Origins of Modern Humans: Multiregional or Out of Africa?”. ActionBioscience. 2015年10月22日閲覧。
  11. ^ Modern Humans - Single Origin (Out of Africa) vs Multiregional”. Asa3.org. 2015年10月22日閲覧。
  12. ^ Green et al., RE; Krause, J; Briggs, AW; Maricic, T; Stenzel, U; Kircher, M; Patterson, N; Li, H et al. (2010). “A Draft Sequence of the Neandertal Genome”. Science (Science) 328 (5979): 710–22. doi:10.1126/science.1188021. PMID 20448178. http://www.sciencemag.org/cgi/content/full/328/5979/710. 
  13. ^ Study casts doubt on human-Neanderthal interbreeding theory, The Guardian, 2012年8月14日
  14. ^ Anders Eriksson and Andrea Manica Effect of ancient population structure on the degree of polymorphism shared between modern human populations and ancient hominins PNAS 2012 : 1200567109v1-201200567. 2015年10月22日閲覧
  15. ^ Human evolution: the fossil evidence in 3D, by Philip L. Walker and Edward H. Hagen, Dept. of Anthropology, University of California, Santa Barbara. 2005年4月5日
  16. ^ Green, R. E., Krause, J, Ptak, S. E., Briggs, A. W., Ronan, M. T., Simons, J. F. (2006). Analysis of one million base pairs of Neanderthal DNA. Nature. pp. 16, 330–336. http://www.nature.com/nature/journal/v444/n7117/abs/nature05336.html. 
  17. ^ nsf.gov - National Science Foundation (NSF) News - New Clues Add 40,000 Years to Age of Human Species - US National Science Foundation (NSF)
  18. ^ “Age of ancient humans reassessed”. BBC News. (2005年1月16日). http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/4269299.stm 2015年10月22日閲覧。 
  19. ^ The Oldest Homo Sapiens: – 2009年5月15日閲覧
  20. ^ Alemseged, Z., Coppens, Y., Geraads, D. (2002). “Hominid cranium from Homo: Description and taxonomy of Homo-323-1976-896”. Am J Phys Anthropol 117 (2): 103–12. doi:10.1002/ajpa.10032. PMID 11815945. 
  21. ^ Stoneking, Mark; Soodyall, Himla (1996). “Human evolution and the mitochondrial genome”. Current Opinion in Genetics & Development 6 (6): 731–6. doi:10.1016/S0959-437X(96)80028-1. 
  22. ^ Henn, Brenna; Gignoux, Christopher R.; Jobin, Matthew (2011). “Hunter-gatherer genomic diversity suggests a southern African origin for modern humans”. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (National Academy of Sciences) 108 (13): 5154–62. doi:10.1073/pnas.1017511108. 
  23. ^ Gill, Victoria (2009年5月1日). “Africa's genetic secrets unlocked”. BBC News. http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/8027269.stm ; the results were published in the online edition of the journal Science.
  24. ^ Wade, N (2006年3月7日). “Still Evolving, Human Genes Tell New Story”. The New York Times. http://www.nytimes.com/2006/03/07/science/07evolve.html 2015年10月22日閲覧。