デニソワ人

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デニソワ人
地質時代
更新世
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 霊長目(サル目Primates
亜目 : 真猿亜目 Haplorhini
上科 : ヒト上科 Hominoidea
: ヒト科 Hominidae
亜科 : ヒト亜科 Homininae
: ヒト族 Hominini
亜族 : ヒト亜族 Hominina
: ヒト属 Homo
和名
デニソワ人
英名
Denisova hominin
デニソワ人「X woman」が発見されたデニソワ洞窟

デニソワ人(デニソワじん、Denisova hominin)は、ロシア・アルタイ地方のデニソワ(Denisova)洞窟(en)(ロシア、中国モンゴルの国境に近い地域)に約4万1千年前に住んでいたとされるヒト属の個体および同種のヒト属人類である。デニソワ洞窟は、アルタイ地方の中心都市バルナウルから約150km南方に位置する。Homo sapiensの亜種とされることが多く、Homo sapiens ssp. Denisova[1]ともHomo sapiens Altai[2]とも呼ばれる。

ネアンデルタール人と並んで、我々現生人類であるホモ・サピエンス・サピエンス (Homo sapiens) に最も近い化石人類である。また現生人類の一部(メラネシア人など)と遺伝子情報を部分的に共有する可能性が高いとしている。

概要[編集]

2008年、ロシア西シベリアアルタイ山脈のデニソワ洞窟で子どもの骨の断片が発見され、放射性炭素年代測定により約41,000年前のものと推定された[要出典]。また、同じ場所で、大人の巨大な臼歯も発見されている[3]

2010年3月25日付のイギリスの科学雑誌『ネイチャー』(Nature)において、マックス・プランク進化人類学研究所の研究チームは、発見された骨のミトコンドリアDNAの解析結果から、デニソワ人は100万年ほど前に現生人類から分岐した未知の新系統の人類と発表した[4][5]

2010年12月23日、マックス・プランク進化人類学研究所などの国際研究チームにより『ネイチャー』に論文が掲載された。見つかった骨の一部は5-7歳の少女の小指の骨であり[3]細胞核DNAの解析の結果、デニソワ人はネアンデルタール人と近縁なグループで、80万4千年前に現生人類であるホモ・サピエンスとの共通祖先からネアンデルタール人・デニソワ人の祖先が分岐し、64万年前にネアンデルタール人から分岐した人類であることが推定された[6]。デニソワ洞窟は、ネアンデルタール人化石発見地のうち最も近いイラク北部シャニダール遺跡から、約4000kmの距離を隔てている。メラネシア人のゲノムの4-6%がデニソワ人固有のものと一致することから[7]、現在のメラネシア人にデニソワ人の遺伝情報の一部が伝えられている可能性が高いことが判明した[6]。また、中国南部の住人の遺伝子構造の約1%が、デニソワ人由来という研究発表も、スウェーデンウプサラ大学の研究チームより出されている[8]。ネアンデルタール人と分岐した年数も、35万年ほど前との説も浮上している[3]ジョージ・ワシントン大学の古人類学者のブライアン・リッチモンドは、デニソワ洞窟で見つかった巨大臼歯からデニソワ人は体格はネアンデルタール人と同じか、それよりも大きいとみている。[3]

概略のところは、40万-30万年前にアフリカを出、中東を経てヨーロッパに拡がった集団がネアンデルタール人に、中東を経てアジア内陸部に移動した集団がデニソワ人になった。それに遅れて6万 - 5万年前にアフリカを出た我々現生人類の祖先は、まず中東でネアンデルタール人と交わり、さらにアジア内陸部でも先住者のデニソワ人と交雑し、世界中に拡がって現在に至った[要出典]

ネアンデルタール人やデニソワ人はその後絶滅してしまったが、アフリカ土着のネグロイドを除く現在の現生人類遺伝子のうち数%はネアンデルタール人由来である。中東での現生人類祖先とネアンデルタール人との交雑を示す研究成果は2010年5月に発表されているが、2010年12月にアジア内陸部におけるデニソワ人とも現生人類祖先は交雑したとする研究結果が出たことから、この結果が正しければ、過去には異種の人類祖先同士の交雑・共存は通常のことだった可能性が出てきた[9]

なお、アジア内陸部でデニソワ人と交雑した現生人類祖先は、そののち長い期間をかけてメラネシアなどに南下していったと考えられる[要出典]。また、中国方面に移住したグループは漢民族となり、高地に移住したグループはチベット人となったともされる[10]

発見された化石が少ないことから、現生人類との関連などは今後の研究により変更される可能性もある。デニソワ人の体格などの外形、生活様式、人口などはこれからの研究が待たれるが、巨大臼歯からはがっしりした顎を持っていたことが推定される[11]

脚注[編集]

  1. ^ http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Taxonomy/Browser/wwwtax.cgi?lvl=0&id=741158
  2. ^ https://www.ebi.ac.uk/training/online/course/nucleotide-sequence-data-resources-ebi/guided-examples-using-ena/exploring-taxonomy
  3. ^ a b c d Than, Ker (2010年12月24日). “デニソワ人、現生人類と交雑の可能性”. ナショナルジオグラフィック公式サイト. http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/3587/ 2015年11月21日閲覧。 
  4. ^ Krause, Johannes; Fu, Qiaomei; Good, Jeffrey M.; Viola, Bence; Shunkov, Michael V.; Derevianko, Anatoli P. & Pääbo, Svante (2010), “The complete mitochondrial DNA genome of an unknown hominin from southern Siberia”, ネイチャー 464 (7290): 894–897, doi:10.1038/nature08976, PMID 20336068 
  5. ^ “人類に未発見の新系統か、4万年前のシベリアに”. AFPBB News. (2010年3月25日). http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2713491/5535489 2010年12月23日閲覧。 
  6. ^ a b “「デニソワ人」、アジアにも分布か=5万〜3万年前―細胞核ゲノム解読・国際チーム”. 朝日新聞. 時事通信社. (2010年12月23日). オリジナル2011年3月24日時点によるアーカイブ。. http://web.archive.org/web/20110324222251/http://www.asahi.com/national/jiji/JJT201012230006.html 2011年2月14日閲覧。 
  7. ^ “現代人の祖先、別人類「デニソワ人」と交雑”. 読売新聞. (2010年12月23日). オリジナル2010年12月26日時点によるアーカイブ。. http://web.archive.org/web/20101226175733/http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20101223-OYT1T00205.htm 2015年11月21日閲覧。 
  8. ^ Owen, James (2011年10月31日). “アジアでもデニソワ人と交雑の可能性”. ナショナルジオグラフィック公式サイト. http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/5144/ 2015年11月21日閲覧。 
  9. ^ 人類3種が数万年も共存、デニソワ人研究で判明
  10. ^ Ingham, Richard (2014年7月3日). “チベット人の高地適応能力、絶滅人類系統から獲得か 国際研究”. AFPBB News. http://www.afpbb.com/articles/-/3019567 2014年7月5日閲覧。 
  11. ^ ベーポ, スヴァンテ 『ネアンデルタール人は私たちと交配した』 野中香方子訳、文藝春秋2015年6月ISBN 978-4-16-390204-3 [要ページ番号]

関連項目[編集]