バフォメット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
エリファス・レヴィによるバフォメット

バフォメットBaphomet)は、有名なキリスト教悪魔の一人で、黒ミサを司る、山羊の頭を持った悪魔。

歴史[編集]

バフォメットの起源は判明していないが、11世紀末から12世紀のラテン語書簡などに現れており、これが最古のものとなっている。この時期は、ボゴミル派カタリ派など、グノーシス主義が再び盛んになった頃でもある。当初はキリスト教徒が想像する異教の神のことを指し、十字軍の記録にもモスクをバフォメットの神殿とする記述がある。後の1300年代初頭にテンプル騎士団に対する異端審問の際にバフォメットが大きく取り上げられることになった。テンプル騎士団は、1307年フィリップ4世により偶像崇拝の糾弾を受けた際、このバフォメットの偶像を奉っていたとされている。

19世紀イギリスでテンプル騎士団が本当に異端であったかどうかに関する論争が起きたことでバフォメットが改めて注目を浴びた。19世紀以後はオカルティズムサタニズムの世界でバフォメットは有名となるが、これにはエリファス・レヴィが描いた黒山羊の頭をもつバフォメットの絵の影響も大きい。

語源[編集]

イスラム教を創始した預言者ムハンマド古フランス語での綴り (Mohammed) のもじり、あるいは誤記と考えられているが、様々な異説もある。

ヒュー・ショーンフェルドは、BAPHOMETSOPHIA英知もしくは英知の女神ソピアー)のアトバシュAtbashヘブライ文字換字式暗号)だという説を唱えた。

同一視[編集]

ルシファーベルゼブブアスタロトに仕える上級六大悪魔の一人である大将のサタナキアと同一視する意見もある。

サバトの牡山羊」レオナールと同一視・混同される事も多く、レオナールはただサバトを淫行の舞台として利用する矮小化された悪魔として描かれることが多い。

姿[編集]

神(善) 悪魔(悪)
(白い)羊 (黒い)山羊
白いカラス 黒いカラス
白き月 黒き月
エヴァ リリス
聖母マリア マグダラのマリア

両性具有で黒山羊の頭と黒い翼(カラスの翼とも)をもつ姿で知られるようになり、魔女たちの崇拝対象となった。ただし必ずしもこの姿に限定されている訳ではない。

19世紀にフランス魔術師エリファス・レヴィが描いた絵「メンデスのバフォメット」が最も有名。「メンデス」は、古代エジプトナイル下流にあった、「デデト」、または、「ジェデト」という町の、後の名称である。ヘロドトスは著書「歴史」において、「メンデス」の聖獣を「山羊」だとしている。これが、「メンデスの雄山羊」の由来である。しかし、実際には「メンデス」の聖獣は「羊」であり、ヘロドトスが誤解したものと考えられている。なお、キリスト教においては、「羊」と「山羊」は対比される存在であり、『「羊」は善(=神)、「山羊」は悪(=悪魔)』、という観念がある。

「メンデスのバフォメット」の腕には、上がっている方(右腕)に「Solve」(溶解させる)、下がっている方(左腕)に「Coagula」(凝固させる)、と記されている。これは中世錬金術のラテン語「Solve et Coagula」が元であり、「溶かして(分解して)固めよ」「分析して統合せよ」「解体して統合せよ」といった意味となり、卑金属から貴金属を作り出す狭義の錬金術だけでなく、人間の知のあり方や、世界の変革という広義の錬金術にまで、幅広く応用される言葉である。

また、右手の三本指は右上の「白き月」(「陽」を表す)を、左手の三本指は左下の「黒き月」(「陰」を表す)を指しているようにも見える。三本指は三位一体を表し、即ち、「陽の三位一体」(上向き三角形)と「陰の三位一体」(下向き三角形)を表し、両者が合わさって、「六芒星」となる。

聖母マリアの象徴であるフルール・ド・リスを上下にひっくり返すと、「メンデスのバフォメット」の頭部になる。これは聖母マリア(に代表される「大地母神=天の女王」の系譜の女神)とバフォメット(=悪魔)が、表裏一体の同一の存在であることを示している。また、「聖母マリア=グノーシス主義の女神ソピアー(ソフィアー)」である。

バフォメットの頭頂の燭台には「智慧の炎」が灯っている。

Fleur-de-lis-fill.svg

破壊神 聖母マリア[編集]

以下、人間ではなく、「女神」として解釈された聖母マリアについて、記述する。

聖母マリアは、キリスト教が取り入れた、異教の女神達を起源とする。

聖母マリアは両性具有存在であり、男女の性質を兼ね備えており、そのため独身(処女・童貞)で子を生すことができる。「神の子」を生した聖母マリアは、「神の子の親」であり、即ち、「神そのもの」、である。「天にまします我らの父」は、「天にまします我らの母」、でもある。

両性具有存在であることは、男女の性質だけでなく、「陰」と「陽」などの、相反する性質を併せ持っていることをも、示している。ゆえに、聖母マリアは、「神でもあり、悪魔でもある」、存在である。

「創造神=神」たる聖母マリアは、その慈愛をもって、人類の歴史を始まりから終わりまで見守る内に、人間達の愚さや醜さに、嘆き悲しみ、絶望し、徐々にその輝き(光)を失い、やがてその姿心は真っ黒に染まり、最期には、世界の全てを破壊する、「破壊神=悪魔」と化す。

メンデスのバフォメット ~神が悪魔に 悪魔が神に~[編集]

上記のとおり、古代エジプトの「メンデス」と、11~12世紀の「バフォメット」には、直接の関係は無い。ではなぜ「メンデスの」という形容が付けられたのか。

この場合、「メンデスの聖獣は本来は羊であったが、後に(ヘロドトスによって)山羊と誤記された」という、故事に基づくものだと考えるべきである。

つまり、魔術師であるエリファス・レヴィが、「メンデスの」と形容して、暗に示したかったことは、「バフォメットは山羊(=悪魔)の姿で表されているが、本来は羊(=神)であった」ということなのである。もっと言えば、「「悪魔」とは、「神」が光を失い、堕落(零落)した姿である」、「「神」と「悪魔」は表裏一体の同一の存在である」という、神秘学(陰秘学)の奥義なのである。

関連項目[編集]