聖体
聖体(せいたい)とは、カトリック教会、正教会、東方諸教会などキリスト教諸教派において、ミサや聖体礼儀で拝領、礼拝するために聖別されたパンを指す。キリストの体の実体として信じられている[1]。
聖別によってパンとぶどう酒(赤ワイン)がキリストの体と血の実体に変化することを聖変化という[2]。聖変化が典礼中のどの時点で行われるかについては、教派によって神学的見解が異なる。
各教派の伝統[編集]
カトリック[編集]
カトリックでは、聖体のパンとしてイースト菌(酵母)を使わない一種のウエハースを用い、これをホスチアと呼ぶ。ホスチア (hostia) はラテン語で「いけにえ(の供え物)」という意味で、もともとは聖体として聖別されたパンとぶどう酒を指していたが、聖別されたパンの方だけをホスチアと呼ぶようになり、さらには聖餐用に作られた聖別される前の種なしパンをもホスチアと呼ぶに至った[3]。聖餐式にホスチアと呼ばれるパンを用いるようになったのは12世紀頃からであるが、種なしパンの使用は9世紀頃に遡る[4]。カトリック教会の場合、パンとぶどう酒の両方を指して聖体という場合がある[5]。その両方を信者が拝領することを「両形態による聖体拝領」と呼ぶ[6]。
正教会[編集]
正教会では尊体と尊血を基本的につねにともに領聖するため、特別の用語は存在しない[要出典]。また正教会では、変化したぶどう酒とセットに捉えて「尊体尊血」(そんたいそんけつ)と呼ぶことも多い[要出典]。
カトリック教会および正教会においては、乳児や重篤な病人などで固形物を嚥下不可能な場合、聖体の拝領を行わず御血のみをもって聖体の拝領とみなすことがある[要出典]。なおカトリック教会、正教会共に「御聖体」(ごせいたい)と呼ぶことが多い。
東方教会[編集]
東方教会ではイーストを用いた発酵パンを使用する[7]。聖変化する前のパンをプロスフォラ(聖餅; せいへい、聖パン)と呼ぶ(なお、聖変化に用いるパン以外にも「記憶」の祈りなどに聖餅の用途は存在する)。変化したのちのものを「聖体」と呼ぶことはカトリック教会と同様である。
プロテスタント[編集]
プロテスタントの共在説や象徴説、臨在説では化体説を認めないので、聖体という呼び方はしない。ただし、プロテスタント教派に分類されているうちで、聖公会(アングリカン)では聖別後のパンとぶどう酒をそれぞれ聖体・聖血と呼ぶ。ラテン典礼の流れを汲む聖公会でも、カトリックのホスチアと同様のイーストを使用しない無発酵のパンを用い、ウエファーやホストと呼ぶ。また、聖公会の聖餐式(ユーカリスト)で信者は両方を受けるが、この形を「二種陪餐」という。
ギャラリー[編集]
ベネディクト16世によるミサの司式
聖爵(コストロマのイパチェフ修道院のもの・セルゲイ・プロクジン=ゴルスキーにより1911年撮影)
脚注[編集]
- ^ カンタラメッサ 1997, p. 86.
- ^ カンタラメッサ 1997, p. 218-219.
- ^ 大貫 2002, p. 1038.
- ^ 大貫 2002, p. 653.
- ^ カンタラメッサ 1997, p. 106-107.
- ^ カンタラメッサ 1997, p. 116.
- ^ 種なしパンで行う領聖について(長司祭長屋房夫によるページ)[リンク切れ]
参考文献[編集]
- ラニエロ・カンタラメッサ、片岡仁志/庄司篤(マリオ・カンドゥッチ監修)訳 『ミサと聖体―私たちの成聖』 聖母の騎士社、1997年9月1日。ISBN 4882161559。
- 大貫隆/宮本久雄/名取四郎/百瀬文晃 『岩波キリスト教辞典』 岩波書店、2002年6月10日。ISBN 978-4000802024。