ツルナ

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ツルナ
Tetragonia tetragonioides (Flower).jpg
ツルナ(開花時)
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: ナデシコ目 Caryophyllales
: ハマミズナ科 Aizoaceae
: ツルナ属 Tetragonia
: ツルナ T. tetragonioides
学名
Tetragonia tetragonioides
(Pall.) Kuntze
和名
ツルナ(蔓菜)
英名
New Zealand spinach

ツルナ(蔓菜、Tetragonia tetragonioides)はハマミズナ科(以前の体系はツルナ科[1])の多年草多肉海岸の砂地に生え、食用にもされる[1]

名称[編集]

和名の由来は、茎がつる状に地面を這って伸びることから、蔓菜(つるな)とよばれている[2]

地方名はハマジシャ(浜萵苣)[3]ウミジシャ[4]、ハマナ[5]、イソナ[5]、スナカブリ[5]など。沖縄県ではハマホウレンソウ[6]やハマナの名で親しまれており、沖永良部島ではハマチシャと呼ぶ。

中国植物名は、蕃杏(ばんきょう)[4]ニュージーランドマオリ人が食べていたことから、別名「ニュージーランドのホウレンソウ」(英語名:New Zealand spinach)ともよばれている[6]

分布・生育地[編集]

主として太平洋沿岸(アジアオセアニア南米)の熱帯から温帯の海岸に広く分布し、日本では北海道西南部・本州四国九州沖縄に自生する[1][5][7]。各地の海岸の地や地に群生して自生する多年草[4][2]。果実は、波に運ばれて海岸に打ち上げられて繁殖する[2]ヨーロッパでは、野菜として栽培もされている[5]

形態・生態[編集]

は高さ20 - 60センチメートル (cm) で[1][2]つる状に伸びて地面を這うように広がる[5]。やがて枝分かれして、斜めに立ち上がるようになり、夏から秋にかけて、高さ50 cm近くまで生長する[5]互生し、長さ1 - 2 cmの葉柄があり、葉身は多肉で厚く、長さ4 - 7 cm、幅は3 - 4.5 cmで卵状三角形か菱形[2][3]。茎葉は肉質で、表面は細かい粒状突起に被われるため、ざらつき白く光って見える[3]。肉厚な葉は、触ると耳たぶくらいに軟らかい[5]

花期は春から秋まで(北半球で4 - 11月)[3][5]は葉腋に1 - 2個つき、黄色い花が咲く[1][2]。花は径数ミリメートル (mm) 、両性、子房下位で、花弁はなく[3]は4 - 5裂して[1]開花すると萼片の内側が花弁のように黄色くなる[7]。雄蕊は10本前後、花柱は4 - 6本[1]

果実核果で倒卵形[8]。萼に包まれ4 - 6個の固いとげ状のの突起のあり、一見するとヒシを小さくしたような形で、上部に萼片が残る[3][8]。熟すと水に浮くので海流散布する[2]。核果を包む果皮は固く、実の中には白く腎形の種子が数個入っている[8]

栽培[編集]

葉を食用とするために栽培することがある[7]。栽培は容易で、海岸などで野生しているものから種子を採取し、庭やプランターに蒔いて水やりすると、10日ほどで発芽する[2]。基肥は堆肥腐葉土などを1 - 2握り程度与えて土に混ぜる程度でよいとされる[2]

野生化した地方もあり、自生とされるものも一部は栽培から野生化した可能性がある。現代では食用としての栽培ではなく、グラウンドカバーとしても栽培される。

利用[編集]

新鮮な茎葉は食用になり、水分約93%、たんぱく質2%、脂肪約0.3%、含水炭素約2%、ミネラル約1.7%のほか、粘質葉緑素を含み、野菜として販売されることもある[2]。粘質液は、皮膚の傷面や粘膜のただれ面につけると、外部から保護する薄い膜をつくり、腫れを引かせて治りを早める消炎作用がある[2]。栽培もされる[4]

食用[編集]

夏から秋にかけて、若い葉と茎を摘み取って食用にする[3][5]はあくや癖がないため[6]、古くからニュージーランドほか世界各地で食用にされてきたもので、日本の沖縄県鹿児島県奄美群島の一部でも食用にされる。食べたときの食感や質感は、同じハマミズナ科のアイスプラントによく似ている[6]。癖は少ないが、シュウ酸を含むので食べるにはゆでて水さらしするとさらに食べやすくなる。スクランブルドエッグポタージュごま和えなどの料理に活用される[3]

日本では、軽くゆでて水にさらし、野菜としてごま和え酢味噌和えおひたしにすることが多いほか、炒め物味噌汁などの汁の実、生のまま天ぷらにもされる[4][2][3]

台湾では「蕃杏」や「豬母耳」の名で、野草の扱いであるが、食用にする時は入りのスープや炒め物にされることが多い。ブタの餌として与えることもある。

薬用[編集]

花盛りの時期である5 - 10月ころに、地上部の茎葉を花つきのまま刈り取り、粗刻みして日干し乾燥したものが生薬になり、蕃杏(ばんきょう)とよんでいる[2]胃炎腸炎胸焼けに効能があるといわれ、蕃杏1日量5 - 15グラムを約500 - 600 ccの水で半量になるまでとろ火で見つめた煎じ汁を、食間3回に分けて服用する利用法が知られている[4][2]。熱を冷ます薬草であることから、胃腸が冷えやすい人や妊婦への服用は、禁忌とされている[4]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g 『日本の野生植物』p.30
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n 田中孝治 1995, p. 96.
  3. ^ a b c d e f g h i 田中つとむ・松原渓 2003, p. 89.
  4. ^ a b c d e f g 貝津好孝 1995, p. 47.
  5. ^ a b c d e f g h i j 奥田重俊監修 講談社編 1996, p. 118.
  6. ^ a b c d 山下智道 2018, p. 82.
  7. ^ a b c 山田孝彦・山津京子 2013, p. 153.
  8. ^ a b c 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2018, p. 123.

参考文献[編集]

  • 貝津好孝『日本の薬草』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年7月20日、47頁。ISBN 4-09-208016-6
  • 奥田重俊監修 講談社編『新装版 山野草を食べる本』講談社、1996年2月10日、118頁。ISBN 4-06-207959-3
  • 佐竹義輔他『日本の野生植物 草本II 離弁花類』平凡社、1999年、ISBN 4-582-53502-X
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『増補改訂 草木の 種子と果実』誠文堂新光社〈ネイチャーウォッチングガイドブック〉、2018年9月20日、123頁。ISBN 978-4-416-51874-8
  • 田中孝治『効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法』講談社〈ベストライフ〉、1995年2月15日、96頁。ISBN 4-06-195372-9
  • 田中つとむ・松原渓『日本の山菜』高橋秀男監修、学習研究社〈フィールドベスト図鑑13〉、2003年4月1日、89頁。ISBN 4-05-401881-5
  • 山下智道『野草と暮らす365日』山と溪谷社、2018年7月1日、82頁。ISBN 978-4-635-58039-7
  • 山田孝彦・山津京子『万葉歌とめぐる野歩き植物ガイド』太郎次郎社エディタス、2013年8月15日、初版、153頁。ISBN 978-4-8118-0762-1

外部リンク[編集]